このページの要点
- 割賦販売法の対象かは、決済サービスの名称でなく、代金を誰が立て替え誰が回収するかで決める。自社で2か月以上・3回以上に分けて受けるなら割賦販売(2条1項1号)に当たり得る。
- 施行令の指定役務には「技芸又は知識の教授」の包括項目がある。特商法の7役務に当たらない講座でも、割賦販売法の対象になる場合がある。
- カード払いは30条の4(リボルビングは30条の5)、個別クレジットは35条の3の19が抗弁の接続を定め、政令の金額(4万円、リボルビングは3万8千円)に満たない支払総額には適用しない。
- 個別クレジットには与信会社へ書面で行う申込みの撤回等(35条の3の10・35条の3の11)がある。事業者は、返金と請求停止、与信会社への連絡の手順を決済方式ごとに持つ。
結論:決済方式ごとに「誰が代金を立て替え、誰が回収するか」を先に決める
講座やスクール、会員制のサービスは、料金が高額になるほど「分割にできますか」「カードで払えますか」という申し出が増えます。分割払いとクーリング・オフは別々の制度ですが、購入者が特定商取引に関する法律(以下「特商法」)に基づいてクーリング・オフの通知を出したとき、代金の回収の仕組みが違えば、事業者が取る手順も変わります。書面や通知の受付といった特商法側の整備だけを済ませ、決済の側の法律である割賦販売法が抜けている、というのが、分割払いを取り入れた事業者に多く見られる状態です。
最初に結論を三つ置きます。第一に、自社が代金を2か月以上にまたがって3回以上の分割で受け取るなら、割賦販売法2条1項1号の「割賦販売」に当たり得ます。この規制は指定商品・指定権利・指定役務に限って及び、講座は施行令の別表にある「技芸又は知識の教授」に当たる場合があるため、特商法の7役務に入らない講座でも、割賦販売法の側では対象になることがあります。第二に、カードの分割払いやリボルビング払い(包括信用購入あっせん)と、カードを使わない、販売店と信販会社が提携した個別クレジット(個別信用購入あっせん)では、事業者に生じた事由を理由に与信会社への支払いを拒める「抗弁の接続」が法律で定められ、個別クレジットには与信会社へ書面で行う申込みの撤回等の制度も加わります。第三に、決済代行や分割サービスの名称が何であっても、法律上の位置づけは、代金を誰が立て替え、購入者が誰にいつ支払うのかという仕組みで決まります。名称だけを見て「うちには義務がない」と決めないことが出発点です。
決済の形ごとの整理(割賦販売法の位置づけと、クーリング・オフの場面)
| 決済の形 | 割賦販売法の位置づけ | 事業者に生じること | クーリング・オフの場面 |
|---|---|---|---|
| 自社で分割して受け取る | 割賦販売(2条1項1号)。指定商品・指定権利・指定役務が対象 | 条件の表示(3条)、契約後に遅滞なく書面(4条)、解除の制限(5条)、損害賠償等の上限(6条) | 受領済みの賦払金を返し、未払いの分は請求しない |
| カードで分割・リボ | 包括信用購入あっせん(2条3項)。事業者は加盟店の立場 | 抗弁の接続の対象(30条の4。リボルビングは30条の5)。特定継続的役務なら概要書面などに事項を記載 | カード会社への取消し処理と、代金の返還の経路を決める |
| 個別クレジット(信販会社の分割払い) | 個別信用購入あっせん(2条4項)。特定の販売を条件に与信会社が立て替える | 抗弁の接続(35条の3の19)。与信会社への申込みの撤回等(35条の3の10。特定継続的役務は35条の3の11) | 購入者は与信会社へ書面で撤回等。与信会社から受けた金額は事業者が返す(35条の3の10第8項) |
| 一括払い、契約から2か月以内に全額を受領 | 包括・個別の定義から除かれる(2条3項1号・4項のかっこ書)。自社の場合も2か月以上・3回以上に当たらない | 上の割賦販売法の義務は生じない | 特商法の通知を受けて、代金を返還する |
カード等を使って金融機関から借り入れ、事業者がその返済を保証する「ローン提携販売」(2条2項)の抗弁は、29条の4第2項が30条の4を準用して定めています。この記事では扱いません。
この記事は事業者の側から見て、分割払い・カード払いを受け付けている、または導入を考えている場合に、クーリング・オフの手順と契約書面のどこを整えるかを順に説明します。クーリング・オフそのものの期間や数え方は8日・20日の数え方、通知を受けた後の返金は解除後の清算で扱います。
自社で分割を受けるとき:割賦販売の要件と、書面・解除・損害賠償の定め
割賦販売法2条1項1号の割賦販売とは、購入者から代金(役務の場合は対価)を、2か月以上かけて、3回以上の分割で受け取ることを前提に、指定商品や指定権利を売り、または指定役務を提供する取引です。購入者に指定の預金口座へ2か月以上3回以上預金させ、そこから受領する形も含まれます。この定義には三つの要件が重なっています。期間が2か月以上であること、回数が3回以上であること、そして対象が指定されたものであること、です。回数だけ、期間だけを見て「うちは関係ない」と判断するのは誤りのもとになります。
対象の指定は施行令1条で定められています。役務は別表第一の三に掲げられ、エステティックのための施術、美容のための医学的処置、保養・スポーツ施設の利用、語学の教授、入学試験や学校教育の補習のための学力の教授、コンピュータの操作の教授、結婚を希望する人への異性の紹介などが並びます。特商法の特定継続的役務にあたる七つ(語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介、エステティック、美容医療)には、いずれも対応する項目がこの別表にあります。別表の最後には、語学・学力・パソコンの各項目を除いた「技芸又は知識の教授」という包括的な項目が置かれています。したがって、特商法の7役務に当たらないコーチングや趣味・資格の講座でも、教授の内容によっては、割賦販売法の指定役務に当たることがあります。当たるかどうかは講座の内容を一つずつ見て確認する必要があり、「7役務ではないから対象外」と結論づけることはできません。この点は特定継続的役務の7業種の記事とは別の物差しです。
自社割賦に当たる場合に、事業者に生じる義務を条文の順に挙げます。3条1項は、カード等を使わない割賦販売について、販売条件の提示として現金提供価格、割賦提供価格、支払の期間と回数、割賦販売の手数料の料率を、省令の定めるところにより、あらかじめ相手方に示すことを求めています。4項はこれらの事項を広告するときの表示を定めます。4条1項は、契約を結んだら遅滞なく、契約の内容を明らかにする書面を渡すことを求めており、書くべき事項には、割賦提供価格のほか、毎回の賦払金の額、その支払の時期と方法、役務をいつ提供するか、解除についての定め、所有権の移転についての定めがある場合はその内容などが含まれます。この書面は特商法の契約書面とは別の法律上の書面です。講座の契約書が特商法の書面を兼ねるなら、記載事項を二つの法律の分だけ重ねて確認します。
5条1項は、賦払金の支払が滞ったときに、事業者が書面で支払を催告し、しかも20日以上の相当な猶予を置いて、その期間が過ぎても払われない場合でなければ、滞納を理由とする契約の解除や、期限の来ていない賦払金の請求ができないとしています。2項は、これに反する特約を無効としています。「一回でも遅れたら残額を直ちに一括請求する」という期限の利益喪失条項は、この形に直す必要があります。6条1項は、解除された場合に請求できる損害賠償等の上限を定め、役務の提供開始前の解除なら契約の締結と履行に通常要する費用、開始後の解除なら提供された役務の対価に、割賦提供価格と現金提供価格の差額を加えた額までとしています。特定継続的役務に当たる場合は、中途解約の上限(特商法49条)と調整するため、さらに別の定めが重なります。
特商法側にも接続の規定があります。26条8項は、割賦販売に当たる訪問販売・電話勧誘販売には、特商法10条(訪問販売の解除時の損害賠償額の上限)と25条(電話勧誘販売での同趣旨の規定)を適用しないとし、割賦販売法6条の枠に委ねています。50条2項は、特定継続的役務または関連商品を割賦販売で提供・販売する場合に、49条2項・4項・6項(中途解約の損害賠償額の制限)を適用しないとして、同じく割賦販売法の側で制限をかけます。つまり、分割払いを自社で受けている特定継続的役務は、中途解約の上限の計算の根拠条文が変わります。特商法49条2項の上限は特定継続的役務の中途解約と上限の記事で扱っていますが、自社で分割を受けている場合は、割賦販売法6条1項の算式で見る点が異なります。
クーリング・オフが行われたときの扱いは、特商法の効果規定が優先して働きます。解除により契約はなかったことになるので、受領済みの賦払金は速やかに返し、未払いの賦払金は請求できません。損害賠償や違約金、提供済みの役務の対価、その他の金銭も請求できません(特商法9条3項・5項・6項、24条3項・5項・6項、48条4項・6項・7項)。割賦の手数料に相当する上乗せ分を、解除後に請求する形は、その他の金銭の請求に当たるおそれがあるため、置かない方が安全です。
賦払金の遅滞と催告(自社で分割を受ける場合の論点)
- 購入者が賦払金の支払を遅滞した場合、当社は、20日以上の相当な期間を定めて、書面によりその支払を催告する。
- 前項の催告に定めた期間内に支払がないときに限り、当社は、賦払金の支払の遅滞を理由として、本契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができる。
- 購入者が特定商取引に関する法律に基づいて申込みの撤回又は契約の解除を行った場合、前二項は適用せず、当社は、受領済みの賦払金を速やかに返還し、未払の賦払金は請求しない。
割賦販売法5条を受けた論点ごとの条文例です。契約書全体ではありません。催告の方法(書面)と20日以上の期間を、期限の利益喪失条項と合わせて見直すときに使います。
カード払いと個別クレジット:抗弁の接続と、与信会社への「申込みの撤回等」
カードを使った分割払いやリボルビング払いは、割賦販売法の「包括信用購入あっせん」(2条3項)です。カード会社が販売業者・役務提供事業者に代金に相当する額を交付し、購入者から後で受領する仕組みで、契約から2か月を超えない範囲で定められた時期までに受領する一括払いは、この定義から除かれています。事業者は、カード会社と加盟店契約を結んで売る側に立ちます。もう一つの「個別信用購入あっせん」(2条4項)は、カード等を使わず、特定の販売業者の販売や特定の役務提供事業者の役務提供を条件として、与信会社が代金に相当する額を事業者に交付し、購入者から後で受領する仕組みです。信販会社が販売店と提携し、申込書でその場で審査を受けて組む分割払いなどがこれに当たります。
二つの仕組みに共通するのが「抗弁の接続」です。30条の4第1項は、包括信用購入あっせんの分割払いなどについて、購入者や役務の提供を受ける者は、販売した事業者・役務を提供する事業者に対して生じている事由、たとえば契約の解除や、役務が提供されないことをもって、支払の請求をしてくる与信会社に対抗できると定めます。2項で購入者に不利な特約は無効、3項で、対抗する購入者が与信会社から事由の内容を書いた書面の提出を求められたときは提出に努めることを定めています。4項は、政令の金額に満たない支払総額には適用しないとし、施行令21条1項はその金額を4万円としています。リボルビング払い(30条の5)は、読み替えによって基準が現金販売価格または現金提供価格に置き換わり、施行令21条2項の金額は3万8千円です。個別クレジットについては、35条の3の19が同じ内容を定め、施行令26条が4万円としています。
事業者から見ると、抗弁の接続は「自社との間で契約を解除した購入者は、その後の分割払いの請求を拒める」という帰結を意味します。クーリング・オフが成立した後に、カード会社や信販会社から請求が続くことは、本来あってはならない状態です。クーリング・オフを受けた事業者が、与信会社への連絡と、立替払いされた代金の返還の経路を確認しておく必要があるのは、このためです。
個別クレジットには、与信会社に対する独自の撤回の制度があります。35条の3の10は、訪問販売・電話勧誘販売に係る個別クレジット契約について、購入者が書面で申込みの撤回等を行えるとし、特定継続的役務に係る個別クレジット契約は35条の3の11が8日の同様の制度を置いています。特商法のクーリング・オフが事業者に宛てるものであるのに対し、こちらは与信会社に宛てる別の書面で、宛先と根拠が異なります。次の表に、事業者が押さえておく要点を整理します。
個別クレジットの「申込みの撤回等」(35条の3の10)のあらまし
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 誰が、誰に | 購入者が、個別クレジットの与信会社に宛てて、書面で行う | 1項 |
| 期間 | 与信会社が交付する書面(35条の3の9第3項)を受領した日から8日。それより前に同条1項の書面を受領していればその日から数える | 1項ただし書 |
| 行使を妨げられた場合 | 不実告知や威迫で期間内に行わなかったときは、撤回等ができる旨を記載して交付した書面の受領日から8日 | 1項ただし書 |
| 効力の発生 | 書面を発した時(発信主義) | 2項 |
| 販売契約への波及 | 撤回等があると、事業者との販売契約の申込み・契約も撤回・解除されたものとみなされる(購入者が書面で反対の意思を示したときを除く) | 5項 |
| 事業者への影響 | 撤回等に伴う損害賠償・違約金は請求できない。与信会社から受けた金額は与信会社に返還する | 6項・8項 |
| 与信会社の義務 | 購入者から契約に関連して受けた金銭を速やかに返還する | 9項 |
対象は、訪問販売・電話勧誘販売に係る契約(35条の3の10)と、特定継続的役務提供等契約(35条の3の11)です。通信販売の完結型の申込みには、この制度は用意されていません。
35条の3の13は、別の角度から事業者の説明に網をかけています。訪問販売・電話勧誘販売で個別クレジットの契約を勧誘するとき、支払総額、各回の支払分と時期・方法、商品や役務の内容、引渡しや提供の時期、申込みの撤回・解除に関する事項などについて、事業者が不実のことを告げたり、一部の事項を故意に告げなかったりして購入者が誤認し、契約の申込みや承諾をした場合、購入者は与信契約の申込み・承諾の意思表示を取り消せるとしています。取消権は追認できる時から1年、契約締結の時から5年で時効により消えます(同条7項)。「分割手数料の総額を伝えていなかった」「いつでも解約できると説明したのに実際は違った」といった事業者の説明が、そのまま与信契約の取消しの事由になり得るということです。説明の中身は勧誘の前後の規制の記事とも重なります。
最高裁判決から読む、抗弁の接続の考え方
抗弁の接続は、もともと判例と実務で形づくられてきた考え方を、法律が受け取った制度です。今の条文を読むときに、条文のない時代の判断と、条文ができた後の判断を取り違えないよう、裁判所のウェブサイトで確認できた三つの最高裁判決を、事業者が読む視点で整理します。要旨は当サイトでまとめたもので、判決の文言ではありません。
抗弁の接続に関わる最高裁判決(裁判所ウェブサイトで確認)
| 裁判所・日付 | 事件 | 判断の要旨 | 事業者の読み方 |
|---|---|---|---|
| 最高裁判所第三小法廷 平成2年2月20日 | 昭和59年(オ)第1088号 立替金請求事件(集民159号151頁) | 30条の4が設けられる前の個品割賦購入あっせんで、売買契約が販売業者の不履行を理由に合意解除されても、立替払契約に特別の定めがある場合や、あっせん業者が販売業者の不履行を知り得たのに立替払を実行したなど信義則上相当とする事情がない限り、購入者は請求を拒めないとした | 条文がなかった時代の枠組み。現行は、法が購入者の拒絶を定めている(30条の4、35条の3の19) |
| 最高裁判所第三小法廷 平成23年10月25日 | 平成21年(受)第1096号 債務不存在確認等請求及び当事者参加事件(民集65巻7号3114頁) | 個品割賦購入あっせんの事案で、売買契約が公序良俗違反で無効とされる場合でも、立替払契約の効力まで失われるのは、販売業者とあっせん業者の結びつきの強さやあっせん業者がどこまで事情を知っていたかなどから、立替払契約も否定するのが信義則にかなうといえる特別の事情があるときに限る、と判断した | 販売契約の無効がそのまま与信契約の無効になるとは限らない。事業者は、自社の契約が法に適合していることが前提 |
| 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月21日 | 平成27年(受)第659号 立替金等請求本訴、不当利得返還請求反訴事件(民集71巻2号99頁) | 個別信用購入あっせんで、販売業者に頼まれて名義だけの購入者になることを承諾した場面について、販売業者の告知が35条の3の13第1項6号の重要事項に当たると判断した | 事業者の告知の内容が、与信契約の取消しの判断に影響する。分割の仕組みの説明は慎重に |
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(確認日:2026年10月22日)。判決の全文は出典欄のURLで確認できます。
三つに共通するのは、事業者と与信会社の関係が深いほど、与信会社が事業者の不履行や不適切な勧誘を理由とする拒絶を受け入れる余地が広がる、という見方です。個別クレジットや決済代行のように、事業者が与信会社に購入者を紹介し、手続を代行している形は、その関係が深い形です。「分割は信販会社が決めているので自社は関係ない」という説明が通りにくい理由はここにあります。
国民生活センターが2026年9月16日に公表した、ビジネス講座に関する注意喚起でも、相談事例の一つとして、クレジットを組んで高額の契約をした結果、支払いが困難になった例が挙げられています。同じ注意喚起は、問題点として、事前説明のない勧誘、クレジット利用による契約の高額化、解約条件の説明不足を挙げています。事業者から見れば、分割払いの導入は売上を伸ばす手段であると同時に、契約の説明を厳しく見られる場面が増えることを意味します。
よくある失敗と直し方
分割払いとクーリング・オフが交わる場面で、書面や運用にしばしば見られる失敗を、書き方の例と合わせて整理します。書き方の例は一般的な例で、特定の事業者の書面を示すものではありません。
書き方の例(一般的な例) 分割払い・カード払いに関する書面の書き方
抗弁の接続に関する事項(概要書面・契約書面)
理由特定継続的役務では、概要書面(特商法施行規則92条1項1号リ)と契約書面(同規則93条2項5号)に、割賦販売法の抗弁に関する事項を記載することが求められています。約款への丸投げでは、記載したことになりません。
賦払金が遅れたとき
理由割賦販売法5条は、書面での催告と20日以上の期間を経ない解除・請求を認めず、これに反する特約を無効としています。自社割賦の指定役務に当たる場合に、期限の利益の喪失の条項を見直す必要があります。
決済代行・分割サービスの説明
理由決済代行という名称では、法律上の位置づけが分かりません。クーリング・オフの際にどの経路で返金するかを、事前に書面で示しておく方が、事業者自身の手続も明確になります。
クーリング・オフ後の返還(支払方法ごとの論点)
- 購入者が特定商取引に関する法律に基づいて申込みの撤回又は契約の解除を行ったときは、当社は、購入者から受領した代金を、次の方法により速やかに返還する。(1)銀行振込により受領した代金は、購入者が指定する口座への振込みにより返還する。(2)クレジットカードにより支払を受けた代金は、当社がカード会社に取消しの処理を依頼し、カード会社の定める方法により返還する。(3)信販会社の分割払いを利用した場合は、信販会社から当社が受領した金額を信販会社に返還し、購入者が信販会社に支払った金銭は、法の定めに従い信販会社が返還する。
- 前項の返還に要する費用は、当社が負担する。
支払方法ごとの返還の経路を示す論点の例です。カード会社・信販会社との加盟店契約の内容に合わせて、各号の手順を調整します。購入者の側の手続(与信会社への書面)を案内する文を、別に添えておきます。
上の条文例の第2項にある、返還の費用の負担は、振込手数料などを購入者の負担として差し引く運用を防ぐための論点です。クーリング・オフでは、商品の引取り・返還の費用が事業者の負担であり(9条4項、24条4項、48条5項)、「その他の金銭」を請求できないとされています。振込手数料は条文に明示されていませんが、差し引いた結果として返金額が減るなら、その他の金銭の請求と受け取られるおそれが残ります。返金の細目は通知を受け取ったときの事業者の対応の記事も合わせて見てください。
もう一つ見落とされがちなのが、返金と同時に分割の残りを止める連絡です。自社割賦なら、予定していた口座振替や請求書の発行を止めます。カード払いや個別クレジットなら、与信会社に契約が解除された事実を伝え、以後の請求や引落としが行われないことを確認します。クーリング・オフを受け付けたあとにも請求が続いていると、購入者の不信を招くだけでなく、事業者が解除の効果を認めていない扱いと受け取られます。
分割払い・カード払いで起きがちな失敗
- 自社で2か月以上・3回以上に分けて受け取りながら、割賦販売法の条件の表示と書面の交付を整えていない。
- 決済代行の分割払いなら事業者側に義務はないと考え、概要書面に抗弁に関する事項を載せていない。
- 技芸・知識の教授が割賦販売法の指定役務に包括されていることに気づかず、特商法の7役務ではないことだけで判断している。
- クーリング・オフを受けたとき、カード会社や信販会社への連絡手順がなく、返金と請求停止がずれる。
- 期限の利益喪失の条項が、書面による催告と20日以上の期間を経ずに解除・一括請求できる形になっている。
導入前の判定と、手順書に書くこと
割賦販売法の判定の順番
- 1
事業者自身が、代金を2か月以上にわたり3回以上に分けて受け取りますか
はい割賦販売(2条1項1号)に当たり得る。次に、役務が指定役務(施行令別表第一の三)かを確かめる
いいえ次の問いへ
- 2
カード等を提示して支払い、カード会社が代金を立て替えて、契約から2か月を超えて購入者から受領しますか
はい包括信用購入あっせん(2条3項)。抗弁の接続(30条の4、リボルビングは30条の5)の対象かを、金額の基準(4万円、3万8千円)と合わせて確認
いいえ次の問いへ
- 3
カード等を使わず、自社の販売を条件に与信会社が立て替え、購入者が与信会社へ2か月を超えて後払いしますか
はい個別信用購入あっせん(2条4項)。抗弁の接続(35条の3の19、4万円)と、与信会社への申込みの撤回等(35条の3の10・35条の3の11)を確認
いいえ次の問いへ
- 4
上のいずれでもない(一括払い、または2か月以内に全額を受領)
はい割賦販売法の上記の義務は生じない。特商法の書面と通知への対応を整える
いいえ仕組みを書き出し直し、立て替える者と回収する者を確かめる
判定は取引の仕組みで行います。決済代行や分割サービスの名称では決まりません。複数の方式を併用するなら、方式ごとに判定します。
判定が済んだら、手順書に書くことを決めます。クーリング・オフの通知が来たとき、誰がどの順番で動くのかを、決済方式ごとに紙一枚で示せる状態が目標です。通知の受付、契約の特定、返金方法の確認、与信会社への連絡、請求の停止、返金の実行、記録の保存の七つが基本の流れで、各方式の「誰が」と「いつまでに」を書き込みます。記録の残し方はチェックリストと記録の残し方の記事に、項目の一覧があります。
最後に、他の業種サイトで扱っている分割払いの記事との違いを一言整理します。個別の業種で、分割にしたときの契約書の組み立てや決済会社との関係をどう整えるかは、パーソナルジムの分割払い・ローンと割賦販売法、講座代金の分割払いと割賦販売法、受講料の分割払い・カード・信販と割賦販売法が、それぞれの業種の事情に即して説明しています。分割やカード決済がからむ解約の整理は分割払い・カード・決済代行がからむ解約の整理に、決済会社を通じた取消し(チャージバック)の扱いはチャージバック・不正利用の対応と規約にあります。この記事は、それらに共通する、割賦販売法とクーリング・オフの接続の部分を受け持ちます。
ヒヤリングで確かめること
分割払い・カード払いを導入する前に、あるいは既に導入している状態を見直すときに、事業者から聞き取る項目を問いの形で並べます。これらが揃うと、割賦販売法の対象か、書面のどこに何を書くか、クーリング・オフの手順をどう組むかが決まります。
確かめる問いと理由決済と分割払いの確認項目
分割払いは、自社で受け取りますか。それともカード会社・信販会社が立て替えますか
立て替える者と回収する者で、割賦販売(2条1項1号)、包括信用購入あっせん、個別信用購入あっせんのどれに当たるかが決まります。
分割の回数と期間はどうなっていますか。最後の支払いは契約から何か月後ですか
自社なら2か月以上・3回以上、カード・個別クレジットなら契約から2か月を超えるかが、定義の分かれ目です。
講座・サービスの内容は何ですか。施行令別表の指定役務に当たりますか
技芸または知識の教授など、包括的な項目に当たるかを、教授の内容で確認します。特商法の7役務かどうかとは別に見ます。
分割手数料は誰が負担し、購入者にどう示していますか
手数料の料率の表示は、自社割賦なら3条、広告にも関わります。与信会社の手数料の場合は、事業者の説明が取消しの事由になり得ます。
決済代行・分割サービスの契約書には、事業者の義務としてどんな手順が書かれていますか
取消しの連絡、返金の経路、期限、負担の割合などが、クーリング・オフの手順に直結します。
契約書面・概要書面の、割賦販売法に関する事項の欄には何が書かれていますか
特定継続的役務では記載が求められる事項で、約款への丸投げになっていないかを確認します。
起きがちなことと、出典
最後に、分割払いとクーリング・オフが交わる場面で起きがちな流れを三つ示します。いずれも、決済の方式を決めた時点で、クーリング・オフ時の手順まで決めていなかったことから始まります。
一つ目は、返金だけが先に進み、請求が止まらない流れです。クーリング・オフを受け付けて返金の準備を進めたものの、信販会社への連絡が漏れ、購入者のもとに支払いの請求が届き続ける。購入者が抗弁の接続や申込みの撤回等で対応することになり、事業者は与信会社から説明を求められます。
二つ目は、分割の説明が不十分なまま契約が成立し、後から取消しの対象になる流れです。支払総額や手数料、解約の条件について、勧誘の場で曖昧な説明をしていた場合、個別クレジットの契約は35条の3の13による取消しの対象になり得ます。この場合、与信会社から事業者への調整や返還の求めに発展します。
三つ目は、決済の方式を途中で増やし、書面が追いつかない流れです。最初は一括払いのみで運用していたのが、後から分割払いを加えたとき、契約書面の抗弁に関する事項や、自社割賦の条件の表示が更新されないまま運用される。方式を増やす前に、この記事の判定の順番を使い、必要な書面の改訂を洗い出してください。
この記事の出典
- e-Gov法令検索:割賦販売法(昭和36年法律第159号)2条・3条・4条・5条・6条・29条の4・30条の4・30条の5・35条の3の8から35条の3の13・35条の3の19、割賦販売法施行令1条・21条・26条・別表第一の三(確認日:2026年10月22日)
- e-Gov法令検索:特定商取引に関する法律9条・24条・26条・48条・50条、同施行規則92条・93条(確認日:2026年10月22日)
- 裁判所「裁判例検索」:最高裁判所第三小法廷 平成2年2月20日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/62922/detail2/index.html)、同 平成23年10月25日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/81723/detail2/index.html)、同 平成29年2月21日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/86517/detail2/index.html)(確認日:2026年10月22日)
- 国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日公表、https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html)(確認日:2026年10月22日)
よくあるご質問
決済代行会社の分割払いを使えば、うちは割賦販売法を気にしなくてよいですか。
名称だけでは判断できません。購入者が支払う相手と、代金を立て替える者を確かめます。事業者が決済代行から代金を一括で受け取り、購入者が決済代行や信販会社へ分割で支払う形なら、自社が2か月以上・3回以上で受領する割賦販売には当たらない場合があります。ただし、特定継続的役務なら概要書面に抗弁に関する事項を記載することが求められ、クーリング・オフを受けたときの取消しの連絡や返金の経路も必要です。「義務がない」とまとめず、方式ごとに確認します。
2回払いなら、割賦販売法は関係しませんか。
自社で受け取る割賦販売は「2か月以上」かつ「3回以上」が要件なので、2回払いは2条1項1号の割賦販売に当たりません。カード払いの場合は、回数ではなく、契約から最後の受領まで2か月を超えるかで包括信用購入あっせんかどうかを見ます。2回払いでも最終の支払時期が2か月を超えて設定されていれば、対象になり得ます。
特商法の7役務に当たらない講座でも、割賦販売法の指定役務になりますか。
なり得ます。施行令別表第一の三には、語学・学力・パソコンの項目を除いた「技芸又は知識の教授」という包括的な項目があるため、コーチングや趣味・資格の講座も、教授の内容によっては指定役務に当たります。特商法の特定継続的役務は限定列挙の7つですが、割賦販売法の指定役務は別のリストで、この記事で説明したとおり判断の物差しが異なります。
購入者がカード会社に「抗弁」を主張すると、事業者には何が起きますか。
カード会社から事業者に対して、契約の解除や役務の提供状況についての確認が入ることが想定されます。事業者が負う具体的な負担(代金の返還や、調整の費用など)は、加盟店契約の内容で決まる部分が大きく、法律だけでは決まりません。加盟店契約を結ぶときに、クーリング・オフや解除があったときの取消しの手順、返還の期限、費用の負担を読み込んでおくことが現実的です。
クーリング・オフの通知は、カード会社や信販会社にも出してもらう必要がありますか。
特商法のクーリング・オフは、事業者に宛てて行います。カード払いの場合は、事業者がカード会社に取消しを依頼して返金する流れが一般的です。個別クレジットを使った場合は、購入者が与信会社に書面で行う「申込みの撤回等」が別にあり、宛先が異なります。購入者がどちらの手続を取る必要があるかを、契約書面や案内文で示しておくと、通知の行き違いを減らせます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月22日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所