このページの要点
- 最初に、相手方が消費者契約法の『消費者』か、取引が特商法の類型か、定めが『解除に伴う』ものかを順に確かめる。特商法の類型なら、強行規定と上限が先に働く。
- クーリング・オフの排除、特定継続的役務提供の中途解約の排除や上限超過、入会金の不返還は、特商法の強行規定により無効(9条8項・24条8項・48条8項、49条7項)。
- 解除に伴う違約金・キャンセル料は、消費者契約法9条1項1号で平均的な損害の額を超える部分が無効。区分は解除の事由、時期など。解除と無関係の違約金は9条1項1号の対象外。
- 事業者の責任の全部免除は8条、解除権の放棄は8条の2、一方的な不利益は10条で無効。直し方は、時期区分と根拠を付け、法令が返金を求める場面を具体的に書く。
結論:「返金しない」「解約不可」は、特商法と消費者契約法の二重の点検にかけて有効性が決まる
規約に「理由を問わず返金しません」「契約期間中は解約できません」と書けば、事業者の損失は防げるように見えます。しかし、これらの定めは、書いたとおりの効力を持つとは限りません。個人の購入者を相手にする契約では、二つの法律が別々の角度から効力を点検します。一つは特定商取引法(以下「特商法」)で、クーリング・オフや特定継続的役務提供の中途解約のように、法律が購入者に与えた権利を契約で奪えないようにする強行規定です。もう一つは消費者契約法で、損害賠償や違約金の定め、事業者の責任を免除する定め、消費者の利益を一方的に害する定めを無効にします。
点検の順番を間違えると、判断を誤ります。たとえば「キャンセル料は平均的な損害の範囲に収まっているから大丈夫」と考えても、その契約が特定継続的役務提供なら、特商法の上限が優先して働き、平均的な損害の枠内でも上限を超えていれば請求できません。逆に、特商法の類型にあたらないサービスの返金の定めは、消費者契約法の8条、8条の2、9条1項1号、10条が主な点検の物差しになります。無効になるのは、条項全体とは限らず、超える部分や、効力が認められない部分です。
- 最初に確かめるのは、購入者が消費者契約法の『消費者』にあたるかです(2条1項)。事業者名義でも、実質で判断される場面があります(事業者間契約の除外)。
- 特商法の取引類型にあたるときは、クーリング・オフを排除する定め、特定継続的役務の中途解約を認めない定め、上限を超える違約金の定めは、いずれも購入者に不利な特約として効力がありません。
- 解除に伴うキャンセル料や不返還の特約は、消費者契約法9条1項1号により、同じ種類の契約が解除されたときに事業者に通常生ずる『平均的な損害』の額を上回る分が無効です。
- 事業者の債務不履行の責任を全部免除する定めは8条、債務不履行による消費者の解除権を放棄させる定めは8条の2で、それぞれ無効です。
- 上記のいずれにもあたらなくても、消費者の利益を一方的に害する定めは10条で無効になります。単なる契約違反への違約金は、9条1項1号ではなく、民法420条・90条と10条の枠組みで検討します。
このページは、特商法との関係を軸にして、点検の順番、特商法の側で無効になる定め、9条1項1号の平均的な損害、8条・8条の2・10条の読み方、規約の直し方を整理します。本ページの条文は2026年10月22日時点で施行されているものです。施行前の改正は反映していません。返金ポリシーの作り方そのものは「返金しない」条項の書き方、キャンセル料の算定はキャンセル料と平均的な損害、無効になる類型の探し方は解約・返金の条項が無効になる類型で扱っています。
点検の順番:消費者か、特商法の類型か、解除に伴うか
規約の一文を点検するときは、問いを決まった順番で当てはめます。順番が結論を左右するからです。
「返金しない」「解約不可」の点検の順番
- 1
相手方は、消費者契約法の『消費者』(個人。ただし、事業として、または事業のために契約を結ぶ場合を除く)にあたりますか。
はい次の問いへ。
いいえ消費者契約法は適用されない。民法の公序良俗や賠償額の予定の規定、特商法の適用の有無で点検する(個人事業主・副業の場合の判断は別のページ)。
- 2
取引は、特商法の類型(訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供など)にあたりますか。
はいクーリング・オフの排除、特定継続的役務の中途解約の排除や上限超過、訪問販売・電話勧誘販売の解除時の上限超過は、効力がない。次の問いへ。
いいえ次の問いへ。
- 3
その定めは、契約の『解除に伴う』損害賠償の額の予定、または違約金ですか(キャンセル料、不返還の特約など)。
はい消費者契約法9条1項1号。同じ種類の契約が解除されたときに事業者に通常生ずる損害の額(平均的な損害)を、解除の時期などの区分ごとに考え、それを上回る分は無効。
いいえ次の問いへ。
- 4
その定めは、事業者の債務不履行の責任を免除するもの、または事業者の債務不履行による消費者の解除権を放棄させるものですか。
はい8条(損害賠償責任の免除)、8条の2(解除権の放棄)。該当すれば無効。
いいえ次の問いへ。
- 5
その定めは、任意規定どおりの場合より消費者に不利で、信義則に反して一方的に害するものですか。
はい10条で無効。
いいえここまでの条文では無効とされない。ただし、解除と無関係の違約金は民法420条・90条でも点検する。
順番は『消費者か → 特商法の類型か → 解除に伴うか → 責任免除・解除権の放棄か → 一方的に害するか』です。特商法の類型にあたるときは、消費者契約法の点検より前に、特商法の上限と強行規定を確認します。
この順番を決めておくと、二つのことが避けられます。一つは、「平均的な損害の枠内」という消費者契約法の物差しで安心して、特商法の強行規定を見落とすことです。もう一つは、特商法の類型にあたらないと分かった時点で、点検を終えたつもりになることです。特商法の類型にあたらなくても、消費者契約法の8条から10条は残ります。逆に、事業者名義の購入者を理由に消費者契約法の適用がないと整理するときは、その判断の根拠を契約の実態で説明できなければ、規約の前提が崩れます。類型の判断は取引の見分け方で扱っています。
特商法の強行規定で無効になるもの
特商法のクーリング・オフの規定は、「これらの規定に反する特約で購入者に不利なものは、無効とする」と定めています(訪問販売9条8項、電話勧誘販売24条8項、特定継続的役務提供48条8項)。特定継続的役務提供の中途解約にも、同じ趣旨の規定があります(49条7項)。また、訪問販売と電話勧誘販売で契約が解除されたときの損害賠償や違約金には、上限があります(10条、25条)。規約の定めがこれらに触れると、触れる範囲で効力を失います。
規約の定めと、特商法の強行規定
| 規約の定め | 抵触する規定 | 結果 | 直し方の方向 |
|---|---|---|---|
| 『クーリング・オフは適用されません』(実態は訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供) | 9条8項・24条8項・48条8項 | 期間内の解除を排除する特約は無効 | 『該当する場合は法令に従い、書面または電磁的記録で解除できる』と、類型ごとの書面で書く |
| 『理由を問わず、既払い金は返金しません』(クーリング・オフ期間内も適用) | 9条5項・6項、24条5項・6項、48条6項・7項 | 提供済みの対価の請求や受領金銭の不返還は認められない | クーリング・オフが成立する場合を除く旨を、具体的な場面とともに書く |
| 『契約期間中の中途解約はできません』(特定継続的役務提供) | 49条1項、7項 | 中途解約を排除する特約は無効 | 『期間中いつでも将来に向かって解約できる』と書き、精算を別項で定める |
| 『入会金は返還しません』(特定継続的役務提供) | 49条2項、7項 | 上限に含まれない金銭の不返還特約は無効 | 提供済みの対価に相当する範囲に限って精算に含め、内容を書面に明記する |
| 『中途解約の場合は残りの期間の料金全額を支払う』(特定継続的役務提供) | 49条2項 | 上限を超える部分は請求できない | 提供済みの対価と、役務ごとの上限内の損害額に収める |
| 『契約解除の場合は代金の一定割合を違約金とする』(訪問販売・電話勧誘販売) | 10条1項、25条1項 | 上限を超える請求は認められない | 解除の時期ごとに、提供済みの対価・契約の締結と履行に通常要する費用の範囲に収める |
表の各規定は、2026年10月22日時点の現行版の特商法で確認しています。上限の計算は、特定継続的役務提供のページ(中途解約と上限)で扱っています。
特商法の強行規定の特徴は、契約書に書いてあっても、書いていなくても、法律どおりの結果になる点です。「返金しない」と書いて購入者が納得して署名したとしても、クーリング・オフ期間内の解除や、特定継続的役務提供の中途解約の権利は消えません。消費者庁のQ&Aも、入会金や入学金は精算のルールに従って返還すべき性格のもので、『入会金は返還しない』という特約は無効になる、と説明しています。
特商法の取引類型に該当しないサービスは、ここまでの強行規定の外にいます。しかし、規約の中に「クーリング・オフは適用されません」と書いてあるのに、実際には会場での当日申込みや通話での勧誘で契約している、という場面は少なくありません。規約の側で適用除外を宣言しても、類型の判断を左右することはできません。実態が訪問販売や電話勧誘販売なら、規約に書いたかどうかにかかわらず、クーリング・オフの規定が働きます。通信販売の返品やクーリング・オフの意味は通信販売にクーリング・オフがない意味と返品特約で整理しています。
消費者契約法9条1項1号:解除に伴う違約金は『平均的な損害』が上限
消費者契約法9条1項1号は、契約の解除を前提にした金銭の定めを規律します。解除に伴って支払う損害賠償の予定や違約金を定める条項は、その合計額が、解除の事由や時期などの区分ごとに見た平均的な損害の額(同じ種類の契約が解除されたとき、事業者に通常生ずる損害の額)を上回るとき、上回った分が無効になります。規約でいえば、キャンセル料、解約手数料、「既払い金は返還しない」という不返還の特約が、典型です。
条文から読み取れる点は三つあります。第一に、「解除に伴う」ものに限られることです。契約の解除と無関係な、特定の義務違反への違約金(たとえば、秘密保持義務の違反や、教材の転載の禁止への違反に科す違約金)は、9条1項1号の直接の対象ではありません。これらは、民法420条(賠償額の予定についての規定で、違約金は賠償額の予定と推定されます)と民法90条(公序良俗)、消費者契約法10条の枠組みで検討します。「平均的な損害」という物差しを、解除に関係のない違約金にそのまま持ち込むと、分析の筋がずれます。
第二に、区分ごとに考えることです。条文は、解除の事由、時期などの区分に応じて平均的な損害を考える形になっています。解約が早い時期なら事業者に生ずる損失は小さく、直前や開始後なら大きいのが通常です。時期を区別せずに一律のキャンセル料を置くと、早い時期の解除では、平均的な損害を超える部分が出ます。
第三に、無効になるのは超える部分であることです。キャンセル料全体が無効になるのではなく、平均的な損害を超える部分が無効になります。その代わり、どこまでが平均的な損害なのかを、後から説明できなければなりません。違約金を請求する場面で、消費者から求められたときに算定根拠の概要を説明する努力義務も、9条2項にあります。
最高裁判所は、大学の在学契約について、この問題を整理しています(最高裁判所第二小法廷平成18年11月27日判決、平成17(受)1158号、民集60巻9号3437頁。裁判所ウェブサイトの判例検索で確認)。要点は、授業料などを返還しないという特約は、解除に伴う損害賠償額の予定または違約金の性質を持ち、消費者契約法9条の解除に伴う違約金の規定(現行の9条1項1号。判決当時は9条1号)の対象になること。平均的な損害を超える部分の主張立証は、事実上の推定が働く余地があるとしても、基本的には無効を主張する側が負うこと。入学金は、特段の事情がなければ入学し得る地位の対価であり、返還義務がないこと。そして、解除の意思表示の時期によって結論が分かれ、早い時期の解除では平均的な損害が存在せず特約がすべて無効となる一方、遅い時期の解除では超える部分がないとされたことです。
この判例は、そのまま講座やサロンの返金に当てはまるわけではありません。教育サービスの、しかも入学試験の合格者という特殊な事情を前提にしています。特に入学金については、特定継続的役務提供なら、特商法49条の精算のルールが働き、『入会金は返還しない』特約が無効になる扱いが、消費者庁のQ&Aに示されています。判例から取り出せる実務上の教訓は、時期によって事業者の損失が変わることを前提にして、時期ごとの区分と根拠を用意することです。
キャンセル料の時期区分と、根拠として整理する項目(例)
| 時期の区分 | 事業者に生じうる損失 | 根拠として整理しておく項目 |
|---|---|---|
| 役務の提供の準備に入る前 | 申込みの受付や決済の処理にかかる事務費用 | 処理にかかった作業の内容と、1件あたりの費用の内訳 |
| 準備に入ったあと、提供の開始前 | 講師や会場、枠の確保、教材の準備にかけた費用 | 準備の内訳、他の申込者で枠を埋められる時期かどうか、回収できない費用の範囲 |
| 役務の提供の開始後 | 提供済みの部分の対価、固定費の負担 | 契約時の単価、提供の記録、残りの期間の枠の扱い(特定継続的役務提供にあたるときは、49条の上限が優先) |
具体的な割合や金額は、サービスごとの実際の費用から導くもので、一般の目安をそのまま使うことはできません。ここでは数字を示していません。
支払の遅れに対する損害賠償の予定や違約金は、同じ9条の1項2号が規律します。上限は、支払期日に支払うべきだった額(既払い分を除く)に、期日の翌日から支払済みの日までの日数に応じて年14.6パーセントをかけた額で、これを超える部分が無効です。分割払いで滞納があったときの遅延損害金を規約に書くときは、この割合を超えていないかを点検してください。
消費者契約法8条・8条の2・10条:責任の免除、解除権の放棄、一方的な不利益
「返金しない」「解約不可」という定めは、9条1項1号だけでなく、次の三つの条文でも点検します。
8条1項1号は、事業者が約束を果たさなかったために消費者に損害が生じても、賠償を一切しないとする条項を無効にします。賠償の責任があるかどうかを事業者が決められるとする条項も、同様です。「当社は、いかなる場合も損害を賠償しません」「サービスが提供できなかった場合でも責任を負いません」といった書き方がこれにあたります。故意または重大な過失による場合には、一部を免除する条項も無効です(同項2号)。
8条3項は、損害賠償の責任を一部免除する条項について、もう一つの縛りを置いています。賠償額の上限を定めるような条項で、その条項自体に、事業者側(代表者や使用人を含む)の故意や重大な過失の場合を対象から外していることが、条項そのものの中で示されていないものは、無効になります。別の項に「法令により制限できない場合は適用しない」という一般の留保を置いても、この問題の解決にはなりません。上限を定める一文そのものに、故意または重大な過失があるときは除くという限定を入れる必要があります。
8条の2は、事業者が約束を果たさなかったときに消費者に生ずる解除の権利を、あらかじめ放棄させる条項や、その権利があるかどうかを事業者が決められるとする条項を、無効にします。サービスが約束どおりに提供されないのに「いかなる場合も解約できない」「解約の可否は当社が決める」と書く規約は、これにあたるおそれがあります。民法上の解除は、相手方に債務不履行があるときの基本的な権利で、その行使を規約で一方的に封じることは認められにくいのです。
10条は、受け皿の条文です。民法などの任意規定どおりになる場合と比べて、消費者の権利を狭め、または義務を重くする条項のうち、信義誠実の原則(民法1条2項)に照らして消費者の利益を一方的に害するものを、無効にします。9条1項1号や8条にあたらない定めも、この条文で点検されます。たとえば、「契約期間中に利用しなかった分の権利は消滅し、一切返金しない」という定めは、解除に伴う金銭の定めとは言い切れない場合でも、10条の点検を受けます。一概に無効とはいえませんが、提供していない役務の対価を事業者が取得する結果になるなら、その合理性を説明できなければなりません。
10条は、特商法の側でも登場します。逐条解説は、新聞購読契約と一緒に渡す景品の返還を求める特約が信義則に反するときは、その特約自体が消費者契約法10条により無効となる可能性がある、と述べています。特商法の強行規定が直接及ばない周辺の定めも、10条が拾うという構図です。
規約の直し方:時期区分、根拠、法令の場面を具体的に書く
直し方の方向は一貫しています。返金しない場面を具体的に区切り、それぞれに根拠を付け、法令が返金を求める場面は具体的に書くことです。次の表は、一般的な書き方と、整えた書き方を並べたものです。
書き方の例(一般的な例) 「返金しない」「解約不可」の条項
返金の可否の全体
理由法令が返金を求める場面を、除く場面として列挙します。具体的な場面の列挙があって初めて、窓口の担当者も購入者も、返金すべき場面を判断できます。
未提供分の権利
理由提供していない部分の対価を一律に取得する定めは、9条1項1号と10条の点検を受けます。時期の区分と根拠が必要です。
事業者の都合・不可抗力
理由提供できないのに対価を取得する定めは、8条1項、8条の2、10条の点検を受けます。
キャンセル料
理由解除の事由、時期などの区分に応じて、平均的な損害を超える部分が無効になります。区分と根拠を用意して初めて、説明できます。
『法令を除き』の一文
理由『法令』が何を指すのかが読み取れない一文は、規約を読む購入者にも、社内の担当者にも、返金すべき場面を示しません。賠償の上限を定める条項は、条項自体に『故意又は重大な過失による場合を除き』と書きます(8条3項)。
事業者名義の購入者
理由消費者契約法の『消費者』にあたるかは、名義ではなく契約の実態で判断されます。規約の宣言で適用を排除することはできません。
入会金
理由特定継続的役務提供では、入会金も精算ルールに従い、不返還特約は無効です。それ以外でも、入会金の性質と額が説明できなければ、10条の点検を受けます。
返金の条項:全体の骨格(論点別の抜粋)
- 乙(事業者)は、本契約に基づき受領した料金を、次の各号の場合を除き、返金しない。(1) 購入者が、特定商取引法の定めにより、本契約の申込みの撤回又は解除を行った場合 (2) 購入者が、特定商取引法の定めにより、本契約を中途解約した場合 (3) 乙の責めに帰すべき事由により、乙が役務を提供できなかった場合
- 前項第1号及び第2号の場合は、乙は、特定商取引法の定めるところにより精算し、返金する。同項第3号の場合は、提供できなかった部分に相当する対価を返金する。
- 乙の本契約に基づく損害賠償の責任は、乙の故意又は重大な過失による場合を除き、購入者が現に支払った料金の額を上限とする。
第3項は、条項自体の中に『故意又は重大な過失による場合を除き』を入れた形です。全文を載せるものではなく、論点ごとの骨格です。
確かめる問いと理由ヒヤリングで確かめること
返金の実際の運用は、規約の文面とそろっていますか。
規約は『返金しない』でも、実際には多くの場合に返金している運用があるなら、規約の文面のほうを実態に合わせて直す必要があります。運用が先にあって、それを根拠に区分を作れます。
キャンセルの時期ごとに、事業者にどんな費用や損失が生じていますか。
区分ごとの根拠は、実際の費用から導きます。講師や会場の確保、教材の準備、広告の費用などを、時期ごとに分けて整理します。
取引は特商法の類型にあたりますか。導線ごとに確かめていますか。
類型にあたるなら、強行規定と上限が先に働きます。会場での申込み、通話での勧誘、フォームのみの申込みなど、導線ごとに判断します(取引の見分け方)。
購入者の名義と契約の目的を、申込み時に確認していますか。
消費者契約法の『消費者』にあたるかは、実態で判断されます。個人の購入が混ざっているのに適用外と整理していると、規約の前提が崩れます。
返金の手続と期限は、窓口でそろっていますか。
返金が必要な場面で動けないと、規約の文面以前に、履行の遅延が問題になります(通知を受け取ったときの対応、解除後の清算)。
広告やLPに書く「全額返金保証」「いつでも解約OK」の表示と、規約の返金条件の食い違いも、同じ点検の対象になります。表示と規約をそろえる点は広告・LPの表示で、パーソナルジムの返金保証は全額返金保証・成果保証の作り方で、高齢者向けサービスの契約の変更や解約、精算の書き方は契約の変更・解約・返金・終了で扱っています。
起きがちなこと
「返金しない」「解約不可」の規約で起きがちなこと
- 『いかなる理由でも返金しません』と書き、クーリング・オフが成立する契約にも適用して、期間内の解除を断る。
- 『契約期間中は解約できません』と書いたまま、特定継続的役務提供にあたる契約を運営している。
- キャンセル料を時期を問わず一律にして、早い時期の解約にも平均的な損害を超える請求をする。
- 未提供分の権利を消滅させ、返金しない定めを置くが、時期区分も根拠もない。
- 事業者の都合や不可抗力でサービスが提供できなくなっても返金しない、と定める。
- 『法令上の義務を除き』の一文で足りると考え、返金が必要な場面を具体的に書かない。
- 賠償額の上限を定める一文に『故意又は重大な過失による場合を除き』を入れず、別の項の一般の留保で済ませる。
- 規約に『事業者の方には消費者契約法は適用されません』と書いて、個人の購入者にも適用を排除したつもりになる。
この記事の出典
- e-Gov法令検索:消費者契約法(2条、8条、8条の2、9条、10条)、特定商取引に関する法律(9条、10条、24条、25条、48条、49条)、民法(420条、90条)(確認日:2026年10月22日)
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」Q&A「特定継続的役務提供」Q15、逐条解説(訪問販売)(確認日:2026年10月22日)
- 最高裁判所第二小法廷平成18年11月27日判決(平成17(受)1158号、民集60巻9号3437頁):裁判所ウェブサイト(確認日:2026年10月22日)
よくあるご質問
規約に『理由を問わず返金しません』と書けば、返金を断れますか。
断れない場面があります。クーリング・オフが成立する契約や、特定継続的役務提供の中途解約では、特商法の強行規定が優先し、これに反する特約は無効です。そうでない契約でも、解除に伴う不返還の特約は、消費者契約法9条1項1号で、平均的な損害の額を超える部分が無効になり、10条の点検も受けます(確認日:2026年10月22日)。
『平均的な損害』の具体的な金額や割合は、決まっていますか。
法律に一律の金額や割合は書かれていません。同じ種類の契約が解除されたとき事業者に通常生ずる損害の額を、解除の事由や時期などの区分ごとに考えます。サービスごとの実際の費用から導く必要があり、他社の割合をそのまま使うことはできません。説明を求められたときに算定根拠の概要を説明する努力義務もあります(9条2項)(確認日:2026年10月22日)。
特定継続的役務提供のキャンセル料は、消費者契約法の平均的な損害でよいですか。
特定継続的役務提供にあたる契約では、特商法49条の上限(提供済みの対価と、役務ごとの定額・割合)が働きます。平均的な損害の枠内でも、この上限を超える請求はできません。両方の枠を重ねて点検し、厳しいほうに収めるという考え方になります(確認日:2026年10月22日)。
録画の禁止に違反した場合などの違約金は、9条1項1号の対象ですか。
9条1項1号の対象は、契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金です。解除と無関係の義務違反(秘密保持、教材の転載の禁止など)への違約金は、直接の対象ではなく、民法420条と90条、消費者契約法10条の枠組みで過大でないかを点検します(確認日:2026年10月22日)。
購入者が個人事業主の場合は、消費者契約法は適用されませんか。
名義だけでは決まりません。消費者契約法でいう『消費者』は個人ですが、その個人が事業のために、あるいは事業として契約を結ぶ立場なら、消費者にはあたりません。購入の目的や実態から判断します。規約に適用を排除すると書いても、判断は変わりません。特商法の適用除外の判断とは別の判断です(確認日:2026年10月22日)。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月22日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所