このページの要点
- 通信販売にクーリング・オフの規定はない。商品と特定権利には、引渡しから8日以内の返品のルール(15条の3)があり、広告に返品特約を表示すれば特約が優先する。
- 返品特約は、広告に見やすく表示し、インターネット通販では最終確認画面にも表示する(施行規則24条・44条)。
- 役務の通信販売は返品のルールの対象外だが、撤回・解約に関する事項を広告に表示する義務があり、解約と返金の条件は自分で決めて表示する。
- 通話勧誘や会場申込みがある導線では、規約で「適用されない」と書いてもクーリング・オフを排除できない。表記・規約・申込み画面の内容はそろえる。
結論:「クーリング・オフがない」は、返品も解約も自由に断れるという意味ではない
通信販売の規約や特定商取引法に基づく表記に、「通信販売のため、クーリング・オフは適用されません」と書く事業者は少なくありません。この一文は、条文の一部を言い当てているものの、書き方によっては二つの誤りを含みます。一つは、クーリング・オフがない代わりに用意されている返品のルールや、役務の解約に関する表示の義務を見落とすこと。もう一つは、実態が通信販売でない導線にまで、その一文を当てはめてしまうことです。
消費者庁の特定商取引法ガイドは、クーリング・オフを、法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間内に無条件で解約することと説明し、通信販売にはクーリング・オフに関する規定がないと整理しています。通信販売は、広告を見て自分から申し込む取引で、訪問販売のような不意打ち性が小さいため、事業者が特約で排除できない強行規定としてのクーリング・オフを置くのは適切でない、というのが逐条解説の考え方です。そのかわり、返品や交換のトラブルが多いことから、商品や特定権利には返品のルール(15条の3)が置かれています。
- 通信販売にクーリング・オフの規定はない。ただし、商品と特定権利には、引渡しを受けた日から8日以内は申込みの撤回や解除ができるという返品のルールがあり、広告に返品特約を表示すれば特約が優先する(15条の3)。返送の費用は購入者の負担。
- 役務の通信販売は、返品が観念できないため15条の3の対象ではない(逐条解説)。ただし、役務でも、申込みの撤回や解除に関する事項を広告に表示する必要がある(11条5号)。
- インターネット通販では、返品特約は広告に加えて、申込みの操作を行う最終確認画面などにも、見やすく表示する必要がある(施行規則44条)。
- 通話での勧誘や会場での申込みがある導線は、通信販売ではなく電話勧誘販売や訪問販売として、クーリング・オフが強行規定として適用される。規約の一文では排除できない。
- 「クーリング・オフはない」と「返品・返金・解約の条件」は別の話。前者を書いても、後者を決めたことにはならない。
取引類型の判定の流れは取引の見分け方にあります。このページは、通信販売の側に整理された契約について、クーリング・オフとの違い、返品特約の意味、役務の解約の定め方に絞って説明します。
15条の3の仕組み:クーリング・オフとの違い
15条の3は、通信販売で商品や特定権利の販売条件を広告した事業者に対し、購入者が、商品を受け取った日(特定権利は移転を受けた日)から数えて8日以内は、申込みを撤回し、または契約を解除できるとする条文です。もっとも、事業者が撤回等に関する特約を広告に表示していた場合は、その特約に従います。つまり、返品を認める原則を置き、事業者が広告で「返品不可」などと明示すれば、その特約が優先するという二段構えです。
クーリング・オフと、通信販売の返品のルール
| 比べる点 | クーリング・オフ(訪問販売など) | 通信販売の返品のルール(15条の3) |
|---|---|---|
| 対象 | 商品・権利・役務の契約 | 商品と特定権利の売買契約。役務は対象外(逐条解説) |
| 8日の起算点 | 法定の書面を受け取った日 | 商品の引渡しを受けた日(特定権利は移転を受けた日) |
| 事業者の特約 | 不利な特約は無効(9条8項・24条8項・48条8項) | 返品特約を広告に表示していれば、特約に従う |
| 引取り・返送の費用 | 事業者の負担(9条4項・24条4項・48条5項) | 購入者の負担(15条の3第2項) |
| 規定の趣旨 | 不意打ちの勧誘から消費者を守る強行規定 | 返品トラブルを防ぐため、原則と特約の調整を定める規定 |
条文は2026年10月22日時点(e-Gov法令検索)。起算点の違いは、クーリング・オフが「書面の受領」、返品のルールが「商品の受領」であることです。
表のうち、特約の扱いが決定的に違います。訪問販売や電話勧誘販売で、「クーリング・オフはできません」と書面に書いても、その特約は無効です。通信販売の返品は、広告に「返品不可」と表示していれば、そのとおりになります。だからこそ、返品特約は表示の仕方が問われます。逐条解説は、特約を微細な文字で表示するなど、15条の3ただし書の特約として認められないような場合は、施行規則24条3号の表示方法に反して、特約は無効になると説明しています。
返品の原則が事業者の負担になりすぎないよう、返送の費用は購入者が負担する、と15条の3第2項が定めています。クーリング・オフでは、引取りや返還の費用は事業者の負担です。この違いは、規約に「返品の送料はお客様負担」と書く場面で、どの類型の契約にその文を当てはめるのかを意識する手掛かりになります。
返品特約の表示:広告と最終確認画面に、見やすく書く
返品特約をどこに、どのように書くかは、施行規則が定めています。まず、通信販売の広告の必要表示事項(11条)のうち、申込みの撤回または解除に関する事項(5号)は、特約がある場合はその内容を含みます。消費者庁の特定商取引法ガイドは、広告の表示事項を一部省略できる場合の整理でも、返品の可否、返品の期間などの条件、返品の送料負担の有無という返品特約の内容は省略できないものとしています。
次に、施行規則24条3号は、申込みの撤回または解除に関する事項(特約を含む)を、顧客にとって見やすい箇所で、明瞭に判読できるように、あるいは容易に認識できるように表示するよう求めています。さらに、インターネット通販のように、電子消費者契約に当たる場合は、広告に表示するだけでは足りません。15条の3ただし書は、広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法で主務省令が定める方法により表示していた場合に、特約が優先するとしています。施行規則44条は、その方法を、顧客が申込みとなる操作を行うための表示、つまりいわゆる最終確認画面などで、顧客にとって見やすい箇所に明瞭に判読できるように、または容易に認識できるように表示する方法と定めています。
申込みの画面についてはもう一つ規律があります。事業者が定めた様式の書面や、画面上の手続でお客様が申込みを行う場合(特定申込み)には、12条の6が、その書面や画面に、商品や役務の分量と、価格・支払の時期と方法・引渡しや提供の時期・申込みの期間・申込みの撤回や解除に関する事項(11条1号から5号)を載せるよう求め、申込みになることや、これらの事項を誤認させる表示を禁止しています。表示が不実だったり欠けていたりして、お客様が誤認して申し込んだときは、その意思表示を取り消すことができます(15条の4)。返品や解約の条件は、広告だけでなく、申込みを確定する画面でも、お客様が認識できる形で示す必要がある、ということです。
- 広告(LP、商品ページ):返品の可否、期間、方法、費用の負担を、価格や申込みボタンの近くなど、見やすい箇所に書く。
- 最終確認画面:申込みを確定する操作の直前の画面にも、返品特約を表示する。LPの下部だけに書いている形では足りない。
- 特商法に基づく表記と規約:表記欄と規約にも同じ内容を書き、LPや最終確認画面と食い違わせない。
消費者庁の逐条解説は、返品特約の表示方法の詳細として「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」を参照するよう案内しています。このガイドラインの本文は、このページでは要約しません。実際に表示を整えるときは、ガイドラインの本文と合わせて確認してください。広告全体の必要表示事項や、誇大な表示の禁止は広告・LPの表示とクーリング・オフ表示で扱います。
返品特約を広告に表示していないのに、「返品には応じられない」と言って受け取った代金の返還を拒むことは、債務の履行を拒否する行為として、行政上の指示の対象になりうる例だと、逐条解説は14条1項1号の解説で述べています。表示していない特約を、後から主張することはできません。
返品特約で決めて書く項目
| 決める項目 | 書き方の観点 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 返品の可否 | 返品を受け付けるか、受け付けないか。受け付けないなら「返品不可」と明確に書く | 消費者庁ガイド:返品の可否は省略できない表示事項 |
| 期間などの条件 | 商品の引渡しを受けた日から何日以内か。未開封であることなどの条件があるか | 同ガイド:返品の期間等の条件も省略できない表示事項。8日は特約がない場合の原則 |
| 費用の負担 | 返送の費用を誰が負担するか。不良品や誤配送の場合の扱いを分けるか | 同ガイド:返品に係る費用負担の有無も表示事項。原則は購入者の負担(15条の3第2項) |
| 通知の方法 | 誰に、どの手段(フォーム、メール、電話)で返品の意思を伝えるか | 運用の項目。ガイドが挙げる法定の表示事項そのものではない |
| 返金の時期と方法 | 返品を受けたあと、いつ、どの方法で返金するか | 運用の項目。返金の拒否や不当な遅れは指示の対象になりうる(14条1項1号) |
「位置づけ」は、表示事項として消費者庁のガイドと逐条解説が示す範囲と、事業者が運用で決める範囲を分けたものです。
役務の通信販売:返品のルールの対象外でも、決めて表示することは残る
講座、コーチング、サロンの予約、サブスクリプション型のサービスは、役務の通信販売です。15条の3は、返品が観念できない役務の通信販売には働きません(逐条解説)。そのため、事業者が何も定めなければ、解約と返金は契約の定めと民法などの一般のルールで決まります。そして、定めがあれば、その内容を広告で示す義務があります。
令和3年の法改正で、広告の表示事項である「申込みの撤回または解除に関する事項」(11条5号)は、商品や特定権利の売買契約だけでなく、役務提供契約も対象になりました。逐条解説は、役務提供契約の場合は、1回の役務提供を行う契約であれば申込みの撤回の可否やその方法などを、複数回または一定期間続く役務の契約であれば途中解約の方法などを、分かりやすく表示しなければならないと説明しています。定期購入の契約で、解約の申出に期限がある場合はその期限も、解約時に違約金などの不利益がある契約内容ならその旨と内容も含まれるとされています。
役務の通信販売で、解約について表示する内容
| 表示する内容 | 具体的に決めること |
|---|---|
| 撤回・解約の可否 | 申込み後に撤回できるか。提供開始後に解約できるか。できない場合はその旨 |
| 方法と受付 | 連絡の手段(フォーム、メール、電話など)、受付の時間帯、電話を受け付けるなら確実につながる番号 |
| 期限 | 解約の申出に期限があるなら、その期限(たとえば、次回更新日の何日前まで) |
| 金銭の取扱い | 違約金などの負担が生じるならその内容と額、返金があるなら条件と時期 |
出典:消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」11条の解説(通信販売)の要旨。確認日:2026年10月22日。
解約の方法を特定の手段に限る場合の注意も、逐条解説に書かれています。電話をかけたうえでさらにメッセージアプリを操作しなければならない、追加の個人情報の提出が必要、解約受付を特定の時間帯に限る、申込みの際の手段に照らして容易にできる手段での連絡を受け付けない、といった場合は、消費者が明確に認識できるように表示する必要があります。表示された電話番号に電話してもつながらない、折り返しを依頼しても連絡がない、という運用は、表示義務に違反するおそれがあると指摘されています。同じ解説は、制約を表示したことで民事上も有効になるわけではなく、不当に消費者の権利を制限する条項は消費者契約法などにより無効になりうると、念を押しています。
広告の表示と実際の対応がずれたときのために、12条と13条の2もあります。12条は、申込みの撤回または解除に関する事項(15条の3ただし書の特約を含む)について、事実と著しく食い違う表示や、実際より著しく有利と思わせる表示を禁止しています。13条の2は、申込みの撤回や解除を妨げるために、その撤回や解除に関する事項(15条の3に関する事項を含む)について不実のことを告げる行為を禁止します。「いつでも解約OK」と広告に書きながら、実際には解約を受け付けない運用は、これらの条文の問題になりえます。
売るものによる整理
| 売るもの | 返品のルール(15条の3) | 広告に示す撤回・解約の事項 | 決めること |
|---|---|---|---|
| 商品(物品) | 対象。引渡しを受けた日から8日以内。広告に特約があれば特約 | 返品特約があれば、その内容(可否・期間などの条件・費用負担) | 返品の条件、送料の負担、不良品の扱い、返金の時期 |
| 役務(講座、コース、予約制のサービス) | 対象外(逐条解説) | 1回の契約なら撤回の可否と方法、複数回や一定期間なら途中解約の方法など | 解約の可否、方法、期限、返金の条件、違約金の有無と額 |
| 定期購入・継続課金 | 商品の定期購入なら、商品の返品のルールが関係する。役務の継続提供なら対象外 | 解約の申出の期限、解約時の違約金などがあればその内容 | 解約の期限、次回分の取扱い、2回目以降の価格などの表示(広告・最終確認画面) |
特定権利も15条の3の対象です。表は逐条解説の整理を、事業者が決める項目の観点でまとめたものです。
ダウンロード型の教材や動画講座のように、商品と役務のどちらに当たるかが分かりにくい場合があります。分類の結論はこのページでは示しません。契約の内容、提供の方法、継続性を見て判断し、どちらと整理するにしても、返品や解約の取り扱いを表記・規約・最終確認画面で明示しておく必要があることに変わりはありません。
「適用されません」と書く規約の問題と、直し方
規約や表記に「通信販売のため、クーリング・オフは適用されません」と書くことで起きる問題は、三つに分けられます。
- 役務の返金条件が定まっていない:役務型の講座やサービスで、返品のルールがないことだけを書いて、解約と返金の条件を別に定めていない。
- 導線の実態と合っていない:通話での勧誘や会場での申込みが併存しているのに、全体を通信販売として書いている。電話勧誘販売や訪問販売のクーリング・オフは強行規定で、規約では排除できません(9条8項・24条8項)。
- 表示がそろっていない:LP、表記、規約、最終確認画面で、返品や解約の条件が違っている。表示と実態の食い違いは、12条の問題にもなる。
書き方の例(一般的な例) 通信販売の規約・表記の書き方
規約の一文
理由返品・解約・返金の条件を別に定めることを示し、クーリング・オフが適用される導線を排除しない形にします
商品の返品特約
理由返品の可否・期間・方法・費用負担を書き、広告と最終確認画面に見やすく表示します(15条の3、施行規則24条・44条)
役務の解約
理由役務は返品のルールの対象ではないため、解約と返金の条件を自分で決めて表示する必要があります。「一切応じません」の効力は、別に点検が必要です(「返金しない」規約が無効になる場面)
導線の整理
理由実態が通話勧誘や会場申込みであれば、導線ごとに類型が変わります。規約で一律に通信販売と書いても実態は変わりません
規約の条文の書き方の一例です。商品の返品特約と役務の解約を分けて書き、法令上の権利を制限しないことを明記する形です。
商品の返品と役務の解約の分け方
- 商品の返品は、商品の引渡しを受けた日から○日以内に、○○の方法で当社に通知した場合に限り、受け付ける。返品に要する費用は、お客様の負担とする。
- 前項の定めにかかわらず、届いた商品が注文内容と異なる場合又は不具合がある場合は、当社の負担で交換又は返金する。
- 役務の申込みの撤回及び契約の解約は、第○条の定めによる。
- 本条の定めは、特定商取引法のクーリング・オフその他、法令により会員に認められる権利を制限するものではない。
論点は三つです。商品と役務を分けること、返品の期間・方法・費用負担を書くこと、クーリング・オフなどの法令上の権利を除外していないことです。期間や費用の具体的な数字は、事業の実態に合わせて決めます。
表記・規約・申込み画面をそろえる:役割の違うページとのつなぎ方
返品と解約の条件は、いくつもの場所に現れます。LPなどの広告、特商法に基づく表記、規約、最終確認画面、申込み後のメールです。どこかが食い違えば、広告の表示として問題になるか、規約の条項の有効性で争いになります。
表示の食い違いの点検
- 返品・解約・返金の条件(可否、期間、方法、費用)が、LP、表記、規約、最終確認画面で同じになっている。
- 返品特約が、見やすい箇所に、判読できる大きさで書かれている。
- インターネット通販では、最終確認画面にも返品特約が表示されている。
- 役務の通信販売では、解約の方法、期限、違約金の有無と額が、広告に表示されている。
- 解約の受付手段(フォーム、メール、電話)が実際に機能し、折り返しや受付確認の連絡が行われている。
- 「全額返金保証」「いつでも解約OK」などの広告の文言と、規約の条件が合っている。
それぞれの文書の書き方は、役割の違うページに分かれています。表記欄に返品や解約をどう置くかは特商法表記の返品・キャンセル・解約の書き方、返金ポリシーそのものの作り方は「返金しない」条項の書き方、物販の返品特約は返品特約と返品ポリシー・返金ポリシー、定期購入の最終確認画面は定期購入の規約・最終確認画面の表示・解約条項、教材やオンライン講座の表記は教材販売・オンライン講座の特商法表記が扱っています。このガイドの役割は、それらの前提になる、クーリング・オフとの関係と返品特約の意味の整理です。
ヒヤリングで確かめること
確かめる問いと理由通信販売の返品・解約を整えるための問い
お客様が申し込む導線は、広告から自分で申し込む形だけか。通話での勧誘、会場での申込み、無料相談を経た申込みはあるか
導線によっては、通信販売ではなく電話勧誘販売や訪問販売になります。通信販売として整理できるのは、勧誘を伴わない導線に限られます。
売るものは、商品か、役務か、デジタルコンテンツか、組み合わせか
返品のルールは商品と特定権利が対象で、役務は対象外です。組み合わせの場合は、部分ごとの扱いを確かめます。
返品・返金・解約に、実際に応じている条件は何か(期間、方法、費用、返金額の計算)
表示する内容は運用と一致している必要があります。運用の実態が、表示の元になります。
返品や解約の条件を、LP、表記、規約、最終確認画面、申込み後のメールのどこに、どう書いているか。現物はあるか
食い違いは現物を並べて初めて見つかります。画面の見た目(文字の大きさ、位置)も併せて確かめます。
定期購入や継続課金はあるか。解約の期限と、解約時の違約金はあるか
定期購入は、解約の期限や不利益を広告に表示する必要がある典型です。2回目以降の価格の表示も確かめます。
解約の受付手段は何か。連絡は実際につながり、返信や折り返しは行われているか
表示した受付手段が機能していないと、表示義務に違反するおそれがあります。
返品特約の文面を作る前に、実際の運用と導線を書き出します。
起きがちなこと:規約の一文で、返品も返金も導線の違いも片づけたつもりになる
通信販売の返品・解約で起きがちなこと
- 「通信販売のためクーリング・オフは適用されません」の一文だけで、返品・返金・解約の条件が定まっていない。
- 返品特約が、表記ページの隅や規約の末尾だけにあり、LPと最終確認画面に表示されていない。
- 役務型のサービスに、商品の返品の期間や送料負担の文を、そのまま当てはめている。
- LP、表記、規約、最終確認画面で、返金の条件が違う。「全額返金保証」と書きながら、規約には返金不可の条項がある。
- 通話での勧誘や会場での申込みがあるのに、規約全体を通信販売の前提で書き、クーリング・オフを案内していない。
- 解約の受付手段が電話だけで、つながらない時間帯が長く、折り返しの運用がない。
通信販売の規律は、返品のルールだけではなく、広告の表示事項、誇大広告の禁止、申込み画面の表示義務(12条の6)など、連続した義務の束になっています。このページで扱った返品と解約は、その一部です。通信販売に当たる導線を整理したら、次は、広告・LP・最終確認画面の表示全体を広告・LPの表示とクーリング・オフ表示で点検し、必要な記録をチェックリストと記録の残し方で運用に落とします。
この記事の出典
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」特定商取引法とは/通信販売(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/ 、/what/mailorder/)(確認日:2026年10月22日)
- e-Gov法令検索:特定商取引に関する法律2条・9条・11条・12条・13条の2・14条・15条の3・24条・48条、同施行規則23条・24条・44条(確認日:2026年10月22日)
- 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第11条・第14条・第15条の3の解説(通信販売)(令和7年6月1日時点版、特定商取引法ガイド掲載)(確認日:2026年10月22日)
よくあるご質問
通信販売では、クーリング・オフはまったく使えませんか。
通信販売には、クーリング・オフの規定がありません。ただし、商品と特定権利には、引渡しや移転を受けた日から8日以内は申込みの撤回や解除ができるという返品のルールがあり、事業者が広告に返品特約を表示していれば特約に従います(15条の3)。役務の通信販売は、この返品のルールの対象ではありません。申込みの実態が通話での勧誘や会場での申込みであれば、通信販売ではなく電話勧誘販売や訪問販売として、クーリング・オフが適用されます。
規約に「通信販売のため、クーリング・オフは適用されません」と書いてよいですか。
その一文だけでは、足りません。役務型のサービスでは返品のルールの対象外でも、解約と返金の条件を別に定めて広告に表示する必要があります。また、通話での勧誘などがある導線は、クーリング・オフが強行規定として適用され、不利な特約は無効です(9条8項・24条8項・48条8項)。「通信販売による申込みにはクーリング・オフの制度がない。解約と返金は第○条による。クーリング・オフが適用される申込みは同法に従う」という趣旨に書き分けます。
返品特約は、どこに表示すればよいですか。
広告に、見やすい箇所で明瞭に判読できるように表示します(施行規則24条3号)。インターネット通販では、広告に加えて、申込みの操作を行う画面(いわゆる最終確認画面)にも、見やすく表示する必要があります(15条の3ただし書、施行規則44条)。特商法に基づく表記と規約にも同じ内容を書き、内容を食い違わせないようにします。
講座やサロンのような役務の申込みでも、解約の条件を広告に書く必要がありますか。
書く必要があります。令和3年の改正で、広告の必要表示事項である申込みの撤回または解除に関する事項(11条5号)に、役務提供契約も含まれることになりました。消費者庁の逐条解説は、複数回または一定期間の役務を提供する契約では、契約途中の解約に係る方法などを分かりやすく表示するよう説明しています。解約の期限や違約金があれば、その内容も表示します。
返品特約を表示していないのに「返品はできない」と答えてよいですか。
広告に返品特約を表示していなければ、商品や特定権利は、引渡しを受けた日から8日以内は撤回や解除ができるのが原則です(15条の3)。特約を表示していないにもかかわらず、返品に応じられないと言って代金の返還を拒むことは、債務の履行を拒否する行為として、行政上の指示の対象になりうる例だと、逐条解説は説明しています。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月22日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所