このページの要点
- 判定は契約を単位に行い、営業のための契約か、勧誘の場所と手段、役務の種類、収益をうたう取引、通信販売の順に当てはめる。
- 訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入は8日、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引は20日。通信販売にクーリング・オフの規定はない。
- 一つの契約が複数の類型に当たるときは、各類型の規定が重ねて適用される。導線ごとに書面と期間の書き方を分ける。
- 通信販売や指定7役務に当たらないという結論は終点ではない。広告・申込み画面の表示、返品のルール、消費者契約法が残る。
結論:契約ごとに、営業のための契約か、勧誘の場所と手段、役務の種類の順で当てはめる
クーリング・オフとは、事業者と結んだ契約について、法律が定めた書面を受け取った日から一定の日数のあいだ、理由を問わずに申込みの撤回や契約の解除ができる仕組みです。消費者庁の特定商取引法ガイドは、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入は8日以内、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引は20日以内とし、通信販売にはクーリング・オフの規定がないと整理しています。
講座、スクール、サロン、オンラインサービスを運営する事業者から最初に出る質問は、「うちのサービスにクーリング・オフはあるのか」です。答えは、サービスの呼び名や業界では決まりません。決めるのは、一つひとつの契約が、特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます)の定める取引類型のどれに当たるかです。同じ講座でも、会場でその場で申し込んだ人、通話で勧められて申し込んだ人、広告を見てフォームだけで申し込んだ人とでは、当てはまる類型が違うことがあります。
このページでは、判定の順番を六つの問いにして、類型ごとの期間、導線(お客様が広告から申込みまでたどる道筋)ごとの当てはめ、判定が途中で止まりやすい場面、規約への書き方、ヒヤリングで確かめる項目を順に整理します。
- 判定は契約を単位に行う。会場申込み、通話勧誘、フォームのみの申込みが同じ事業の中に同居していれば、導線ごとに類型を決める。
- 順番は、営業のための契約か、勧誘の場所と手段(訪問販売・電話勧誘販売)、役務の種類(特定継続的役務提供)、収益をうたう取引(連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引)、どれにも当たらない通信販売、の順。
- ある契約が複数の類型に当たるときは、それぞれの類型の規定が重ねて適用される(消費者庁の逐条解説)。
- 通信販売に当たる、あるいは指定7役務に当たらない、という結論は特商法の規律の終わりではない。広告と申込み画面の表示、返品のルール、消費者契約法が残る。
- 「個人事業主向け」「事業者間契約」という整理は、実質で判断される。名義や肩書だけでは決まらない。
取引類型の判定は、書面の中身(契約書面・概要書面の記載事項)、赤枠の書き方、期間の数え方、通知を受け取ったときの動きのすべての前提になります。判定を誤ると、書面も期間も規約も、土台の違うものを整えることになります。
取引類型と期間の早見表:特商法が定める七つの取引
特商法が定める取引類型のうち、事業者が一般の個人に商品や役務を提供する場面で関係するものを表にします。期間は、法律が決めた書面を受け取った日から数えます。数え方は8日・20日の数え方で扱います。
取引の類型・当たる場面・クーリング・オフの期間
| 取引 | 当たる場面(要旨) | 期間 | 根拠条 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 営業所等以外の場所で申込みを受け、または契約を結ぶ取引。営業所等で契約する場合でも、呼び止めて同行させた人や、来訪を要請して誘った人(特定顧客)との契約を含む | 書面受領日から8日 | 2条1項・9条1項 |
| 電話勧誘販売 | 事業者が電話をかけ、または政令の方法で電話をかけさせ、その電話で勧誘し、申込みを郵便等(フォーム・メールなどを含む)で受ける取引 | 書面受領日から8日 | 2条3項・24条1項 |
| 特定継続的役務提供 | 指定された7つの役務を、政令の期間を超えて提供し、5万円を超える金銭を受け取る契約。勧誘の場所や手段は問わず、店舗での契約も含む | 書面受領日から8日 | 41条・48条1項 |
| 訪問購入 | 購入業者が営業所等以外の場所で物品を買い取る取引。講座やサービスの提供とは通常関係しない | 書面受領日から8日 | 58条の4・58条の14 |
| 連鎖販売取引 | 収益が得られることをうたって勧誘し、商品の購入や取引料などの特定負担を伴う取引 | 書面受領日から20日(注) | 33条・40条1項 |
| 業務提供誘引販売取引 | 提供する業務で収入が得られることをうたって勧誘し、特定負担を伴う取引 | 書面受領日から20日 | 51条・58条1項 |
| 通信販売 | 広告を見て、郵便・電話・フォーム・メールなどで申込みを受ける取引(電話勧誘販売を除く) | クーリング・オフの規定なし。商品等には返品のルール(15条の3) | 2条2項・15条の3 |
(注)連鎖販売取引で、特定負担が商品の再販売のための購入である場合は、最初の商品の引渡しが書面の受領より後なら、その引渡しを受けた日から数えます。条文は2026年10月22日時点(e-Gov法令検索)です。
表の読み方に、三つの注意があります。一つ目は、訪問販売と電話勧誘販売の定義が、商品の種類ではなく「どこで」「どんな手段で」勧誘し申込みを受けたかで作られていることです。業種を問わず、サロンでも講座でも当たります。二つ目は、特定継続的役務提供だけが勧誘の場所や手段で区切られていないことです。消費者庁の逐条解説も、店舗外で契約したものだけでなく店舗で契約したものも対象になると説明しています。三つ目は、通信販売の行に期間がないことです。通信販売は、広告を見て自分から申し込む取引とされ、一方的な解除権としてのクーリング・オフは置かれていません(通信販売の返品特約で詳しく扱います)。
連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は、収益が得られるとうたって誘い、加入や契約の際に金銭の負担を伴わせる取引です。「この講座を修了すれば仕事を紹介する」「業務を請け負えば収入になる」といった売り方が、教材費や登録料の負担と組み合わさると、この類型が問題になります。特商法26条1項の適用除外は訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定についての定めで、この二つの類型は事業を行う個人が相手方になることを前提に作られています。逐条解説も、参加する個人が商人である場合も、実態は取引に不慣れな一般の消費者であるとして同じ保護の対象にしていると説明しています。
相談の件数から見る類型の比重
どの類型の相談が多いのかを、国民生活センターが公表した2025年度の全国の消費生活相談(PIO-NET)の集計で見ておきます。件数は相談の数であって、クーリング・オフの件数や違反の件数ではありません。
2025年度の販売購入形態別の相談件数(全国)
| 販売購入形態 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 通信販売 | 382,721件 | 38.0% |
| 店舗購入 | 200,695件 | 19.9% |
| 訪問販売 | 78,392件 | 7.8% |
| 電話勧誘販売 | 66,768件 | 6.6% |
| 訪問購入 | 7,523件 | 0.7% |
| マルチ取引 | 4,003件 | 0.4% |
| 合計(ネガティブ・オプション、その他無店舗販売などを含む) | 1,006,377件 | 100.0% |
出典:国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況―PIO-NETより―」(2026年8月5日公表)。確認日:2026年10月22日。
通信販売が最多で、全体のおよそ4割を占めます。ただし、通信販売の相談の多さは、講座やサロンの契約に特商法の規律が少ないことを意味しません。同じ国民生活センターのビジネス講座に関する注意喚起(2026年9月16日公表)は、以前はSNS広告をきっかけにした通信販売の相談が多かったが、近年はWeb会議サービスなどで勧誘を受けて契約したケースが見られ、電話勧誘販売に該当する場合があると指摘し、2025年度の平均契約購入金額を通信販売64万円、電話勧誘販売(Web会議での勧誘を含む)87万円としています。導線が違えば類型が変わり、類型が変われば必要な書面とクーリング・オフの有無が変わる、ということです。
判定の順番:六つの問いを上から当てはめる
判定の順番は、結論を左右します。たとえば、最初に「営業のための契約か」を見ずに類型だけで考えると、個人事業主の購入者を一律に除外したり、逆に法人名義でも個人用の購入を見落としたりします。次の図は、問いを上から当てはめていく順番です。
取引類型の判定の順番(契約ごとに当てはめる)
- 1
その契約は、購入者が営業のために(営業として)結ぶものか
はい訪問販売・通信販売・電話勧誘販売に関する規定は適用除外になる(特商法26条1項1号)。特定継続的役務提供も同様に除外される(50条1項1号)。ただし購入者が法人や事業者名であることだけでは決まらず、目的・内容・事業の実態から総合的に判断される
いいえ次の問いへ
- 2
営業所等以外の場所で申込みを受けたか。または、営業所等でも、呼び止めて同行させた人や来訪を要請して誘った人との契約か
はい訪問販売に当たる(8日)。続けて下の問いも確かめる
いいえ次の問いへ
- 3
事業者が電話(通話アプリ・Web会議を含む)をかけたか、政令の方法で電話をかけさせ、その通話で勧誘して、申込みをフォームなどで受けたか
はい電話勧誘販売に当たる(8日)。続けて下の問いも確かめる
いいえ次の問いへ
- 4
提供する役務が指定7役務のどれかで、政令の期間を超え、支払総額が5万円を超えるか
はい特定継続的役務提供に当たる(8日)。勧誘の場所・手段にかかわらず、上の類型に重ねて適用される
いいえ次の問いへ
- 5
収益が得られることをうたって勧誘し、商品の購入や取引料などの負担を伴う契約か
はい連鎖販売取引または業務提供誘引販売取引に当たりうる(20日)
いいえ次の問いへ
- 6
上のいずれにも当たらず、広告を見てフォーム・メールなどで申込みを受けるだけか
はい通信販売。クーリング・オフはないが、広告の表示、返品のルール、申込み画面の表示、消費者契約法は残る
いいえ事実関係をさらに確かめる
問い2〜5は重ねて当たることがあります。支払いが分割やクレジットなら、割賦販売法も別に点検します(分割払い・カード)。
この図のうち、問い1は事業者どうしの契約が対象外になる場面で、問い3はオンライン講座・Web会議の勧誘で、問い4は特定継続的役務の7業種で掘り下げます。このページでは、問い2と問い6の境目を中心に、導線ごとの当てはめを見ていきます。
導線ごとの当てはめ:一つの事業に複数の類型が併存する
実際の事業では、導線が一つとは限りません。セミナー会場で申込みを受け、後日の通話で追加の契約を勧め、広告のページからはフォームだけで申し込めるようにしている、というのは珍しくない形です。導線ごとに、当たりうる類型と見るところを表にします。
導線ごとに当たりうる類型
| 導線 | 当たりうる類型 | 見るところ |
|---|---|---|
| セミナー・説明会の会場でその場で申込み | 訪問販売 | 会場が営業所等(営業所・代理店・露店等・店舗に類する場所など、施行規則1条)に当たるか。1日限りの会場は当たらない方向で読まれる |
| 事業者の店舗や事業所に来て説明を受け、契約する | 原則として訪問販売ではない | 来訪の要請が、勧誘目的を告げない、または著しく有利な条件を告げたものでなかったか(施行令1条) |
| Web会議・通話アプリでの個別相談から申込み | 電話勧誘販売 | 誰が誰に通話を設定したか、通話で契約を勧めたか、申込みの手段(記事2) |
| SNSのメッセージで連絡し、通話へ誘導 | 電話勧誘販売 | 通話を要請する際に、勧誘目的や商品の種類を告げたか(施行令2条) |
| 広告・LPからフォームだけで完結 | 通信販売 | 勧誘に当たる働きかけがないか。広告の表示事項と申込み画面の表示 |
| 勧誘の場で、事業者の指示を受けて自分の端末からフォーム申込み | 訪問販売または電話勧誘販売になりうる | 外形がフォーム申込みでも、勧誘に引き続き実質その場で申し込んだといえるか |
| 指定7役務の講座・コース | 上の類型に加えて特定継続的役務提供 | 期間と金額の要件。店舗での契約も対象 |
会場での申込みと「営業所等」
訪問販売は、営業所等以外の場所で申込みを受け、または契約を結ぶ取引です。営業所等として施行規則1条が挙げるのは、営業所、代理店、露店・屋台店とそれに類する店、商品を一定期間陳列して販売する店舗類似の場所、自動販売機などの設備がある場所です。逐条解説は、4つ目の「一定の期間」を通常は少なくとも2、3日以上と説明し、商品を陳列して消費者が自由に選べる状態であることも求めています。そのうえで、会議室や集会場を使う販売の例として、1日だけ会場を借りて販売するケースは訪問販売に当たるとしています。
規則1条4号は、商品を陳列して販売する場所を想定した定めです。会場で講座やコースの申込みだけを受ける場面が、この「店舗に類するもの」に当たるのかは、慎重に見る必要があります。少なくとも、「貸会議室だから店舗ではない」と「会場だから必ず訪問販売」のどちらも、結論として言い切る根拠にはなりません。会場の使い方、開催の日数、何をどのように見せて申込みを受けているかを、事実として確かめることになります。
来店のみでも訪問販売になる場合
営業所等で契約する場合でも、訪問販売に当たることがあります。呼び止めて営業所等に同行させた人や、施行令1条が定める方法で来訪を要請して誘った人(特定顧客)との契約です。施行令1条の方法は二つで、契約の勧誘が目的であることを告げずに来訪を要請すること、他の人より著しく有利な条件で契約できると告げて来訪を要請すること(以前に取引のあった人への要請を除く)です。逐条解説は、勧誘する商品を扱う事業者だと名乗っただけでは、勧誘の意図を告げたことにならない場合があると説明しています。「無料体験」「相談会」といった名目で誘い、来店後に契約を勧めるときは、来訪を求めた時点で何をどこまで告げていたかの確認が欠かせません。体験や相談の案内文にどこまで書いていたかを、現物で確認しておくことになります。エステサロンの体験当日の契約については、体験コースと勧誘のルールで業種の事情を扱っています。
通話での勧誘と、申込みがフォームの場合
電話勧誘販売は、事業者が電話をかけ、または政令の方法で電話をかけさせ、その電話で勧誘し、申込みを郵便等で受ける取引です。「郵便等」には、情報処理の用に供する機器を利用する方法(施行規則2条)が含まれますので、勧誘は通話で、申込みはフォームやメールで、という流れも範囲に入ります。インターネット回線の通話は映像を伴っても「電話」に当たるというのが、消費者庁の逐条解説とQ&Aの考え方です。詳しい当てはめは次のページで扱います。
フォームの外形と、実質
通信販売か、訪問販売か電話勧誘販売かは、画面の見た目だけでは決まりません。逐条解説は、営業所等以外の場所で勧誘を行い、あるいは営業所等で特定顧客に勧誘を行ったうえで、顧客が事業者のウェブサイトなどを使って申込み手続を行った場合でも、その手続が事業者の指示で勧誘に引き続いて行われるなど、実質的に事業者にその場で申し込んだといえるなら、通信販売ではなく訪問販売に当たるとしています。「申込みはフォームですから通信販売です」と整理する前に、その申込みが勧誘とどうつながっていたかを見ます。
契約単位の重ねての適用と、書面の設計
消費者庁の逐条解説(第1条の解説)は、特商法の各規定の適用は契約を単位として判断し、ある契約が複数の取引類型に当たるときは、各類型の規定が重ねて適用されると説明しています。たとえば、会場で勧誘して指定7役務のコースを売れば、訪問販売の書面と特定継続的役務提供の書面の両方の規律を考えることになります。
この前提に立つと、全部の導線に同じ一通の「契約書」を交付して済ませる設計は危うくなります。導線によって、書面の根拠条文、記載事項、クーリング・オフの起算点の書き方、赤枠に入れる内容が変わるからです。導線ごとに書面を分ける、または最も要件の重い類型に合わせた共通の書面にして、導線ごとの差を別に管理する、のどちらかを選ぶことになります。記載事項は契約書面・概要書面、赤枠は赤枠の書き方で整理しています。
「通信販売だから」「7役務ではないから」で止まるときに残るもの
判定が途中で止まる場面の代表が二つあります。「うちは通信販売だからクーリング・オフはない」と「うちの講座は指定7役務ではないから特商法は関係ない」です。どちらも、クーリング・オフの有無の話としては、条件つきで当たっていることがあります。しかし、そこで止まると、残っている規律を見落とします。
- 通信販売に残るもの:広告の必要表示事項(11条)、誇大広告等の禁止(12条)、申込み画面で分量や代金などを表示する義務と誤認させる表示の禁止(12条の6)、解除妨害のための不実告知の禁止(13条の2)、商品等の返品のルール(15条の3)。役務の申込みでも、解約や撤回に関する事項は広告に表示する必要があります(通信販売にクーリング・オフがない意味)。
- 7役務に当たらなくても残るもの:導線によっては訪問販売や電話勧誘販売のクーリング・オフ、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引の規律、分割払いやカード払いに伴う割賦販売法、消費者契約法(不当な条項の無効、不実告知等による取消し)。
- 営業のための契約と整理しても残るもの:その整理が実質に照らして成り立つか。成り立たなければ、除外されたはずの規定が戻ってくる。連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引には26条1項の除外が及ばない。
個別の適用除外もあります。特商法26条は、そのほかにも、自動車の販売や貸与のように交渉に時間がかかるのが通常の取引(26条4項1号、施行令14条)、書面を受け取った後に、使うと価値が著しく減る商品として政令が定めるものを(事業者が使わせた場合を除いて)使用した場合(26条5項1号)、契約を結んだその場で履行を終えて代金の全部を受け取る取引で総額が3,000円に満たない場合(26条5項3号、施行令17条)などを、訪問販売・電話勧誘販売のクーリング・オフの除外としています。また、自宅での契約を自ら請求した人への訪問販売(26条6項1号)、契約の申込みや締結のために電話をかけることを請求した人への電話勧誘販売(26条7項1号)も、一定の規定の適用除外です。ただし、電話の請求が勧誘目的を告げずに誘われたものであれば、この除外から外れます(施行令19条)。こうした除外は、条文の文言どおりに狭く読みます。「お客様の希望で来た」「お客様が電話を請求した」という事情が、契約の申込みや締結のためのものだったのかを、事実で確かめます。
訪問購入(物品の買取り)や出張買取りは、物品を買い取る事業の規律です。たとえば、中古品の買取りを併せて行う通販事業の場合は出張買取りの規制と契約書面で整理されています。リフォームなど工事の契約と訪問販売の関係はリフォームのクーリング・オフを参照してください。このガイドは、役務を提供する事業を中心に、類型の判定から運用までを横断して扱います。
よくある失敗と直し方
類型の見立てが一つだけ、という失敗が、規約や書面に現れる形を整理します。ここで示すのは、多くの契約書で見られる傾向としての書き方です。
書き方の例(一般的な例) 取引類型の書き方
規約の一般条項
理由導線の実態が通話での勧誘や会場での申込みであれば、クーリング・オフに反する不利な特約は無効です(9条8項・24条8項・48条8項)。規約で「適用しない」と書いても、実態を変えることはできません
書面の根拠と期間
理由クーリング・オフの起算点は契約日ではなく、書面を受け取った日です。20日の類型もあります
社内の判定記録
理由一つの類型に当たらないことは、他の類型に当たらないことを意味しません。契約を単位に判断し、複数に当たれば重ねて適用されます
購入者の属性
理由除外は購入者の肩書ではなく、契約の目的と内容で判断されます(26条1項1号に関する逐条解説)
規約の書き方の例として、導線ごとの取り扱いを分けて案内する一般的な条文の構成を示します。全文ではなく、論点の置き方のためのものです。
クーリング・オフの適用関係を案内する条項
- 会員が、当社の営業所等以外の場所で申込みをした場合、当社からの電話(通話アプリ及びオンライン会議の機能を用いた通話を含む。)による勧誘を受けて申込みをした場合その他、特定商取引に関する法律の規定によりクーリング・オフが適用される場合は、同法の定めるところによる。
- 前項に該当しない、当社のウェブサイトを通じた申込み(通信販売)の場合の解約及び返金の条件は、第○条に定める。
- 前二項の定めは、法令により会員に認められる権利を制限するものではない。
第1項で適用の場面を網羅的に書こうとせず、「法令によりクーリング・オフが適用される場合」に含まれる、と書く形にしています。どの導線がこれに当たるかは、規約の外で、導線ごとに整理しておきます。
書面に不備があるとき、または規約と実態が食い違っていたときの影響は、書面に不備があるとクーリング・オフ期間が始まらないで扱います。表記欄に「クーリング・オフ」「返品」をどう書くかは、特定商取引法に基づく表記が必要になる取引の判定と合わせて読むと整理しやすくなります。
ヒヤリングで確かめること
類型を決めるには、書類の文言よりも先に、販売の流れの事実を集めます。次の問いは、導線ごとに答えを書き出して、類型の判定メモにします。
確かめる問いと理由導線ごとに事実を集める問い
お客様は、どこで勧誘を受け、どこで申し込んだか(会場、店舗・事務所、自宅、オンライン)
営業所等以外での申込みか、営業所等でも特定顧客に当たるかは、場所で決まります。会場の使い方(開催日数、陳列の有無)も併せて聞きます。
勧誘の手段は何か(対面、電話、通話アプリ・Web会議、SNSやメールのメッセージ)。誰が誰に連絡して設定したか
電話勧誘販売は、事業者が電話をかけたか、政令の方法でかけさせたかで決まります。予約を入れたのが事業者かお客様かだけで結論を出さず、通話の目的をどう告げていたかも確かめます。
申込みの方法は何か(書面、フォーム、メール、口頭、メッセージアプリ)。勧誘の場で、事業者の指示を受けて行うか
外形がフォーム申込みでも、勧誘に引き続き実質その場での申込みなら、通信販売ではなく訪問販売や電話勧誘販売として扱われることがあります。
提供する役務は何か。提供期間(無料期間を含む)と支払総額(入会金・教材費・消費税を含む)はいくらか
指定7役務に当たるか、期間と金額の要件を超えるかを確かめます。月額制や回数券の場合は、有効期限と更新の仕組みも必要です。
購入者は誰か(個人、個人事業主、法人)。購入の目的は何か
営業のための契約かは、名義ではなく目的・内容・事業の実態で総合判断されます。申込み時にどう確認しているかも聞きます。
広告・LP・申込み画面・案内文の現物は何があるか。支払方法は何か(一括、分割、カード)
勧誘目的を告げていたか、通信販売の表示事項が足りているかは現物で確かめます。分割払いは割賦販売法の点検が別に必要になります。
答えが導線ごとに違うときは、違いをそのまま書き出します。一つの答えに丸めると、導線ごとの書面設計ができなくなります。
起きがちなこと:類型の見立てが一つしかない
判定で起きがちなこと
- セミナー会場や通話で勧誘しているのに、規約と書面が「通信販売」の前提で作られている。
- 「特定継続的役務に当たらないから大丈夫」で止まり、訪問販売や電話勧誘販売の可能性が検討されていない。
- 「通信販売だから適用されません」と規約に書いてあるが、実態に照らすと、クーリング・オフに反する特約として無効になる導線がある。
- 申込みがフォームだという理由だけで通信販売と整理している。勧誘から申込みまでの流れが記録されていない。
- 導線が増えたとき(無料相談の追加、通話の導入、会場開催)に、類型の判定をやり直していない。
- 法人・個人事業主を一律に対象外とし、購入の目的や事業の実態を確認していない。
類型の判定は、一度行えば終わりではなく、導線が変わるたびに見直す項目です。書面の交付日、勧誘の手段、申込みの方法を申込みごとに記録しておくことが、後の判定の裏付けになります(チェックリストと記録の残し方)。個人事業主向けの講座や副業スクールの場面では、パーソナルジムの特定継続的役務への当てはめや、エステのクーリング・オフと中途解約のように、業種ごとの事情を扱ったガイドも参考になります。
この記事の出典
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」特定商取引法とは/通信販売(https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/)(確認日:2026年10月22日)
- e-Gov法令検索:特定商取引に関する法律2条・9条・15条の3・24条・26条・33条・40条・41条・48条・50条・51条・58条・58条の4・58条の14、同施行令1条・2条・17条・19条、同施行規則1条・2条(確認日:2026年10月22日)
- 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第1条・第2条・第26条・第41条の解説(特定商取引法ガイド掲載、確認日:2026年10月22日)
- 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況―PIO-NETより―」(2026年8月5日公表)(確認日:2026年10月22日)
- 国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日公表)(確認日:2026年10月22日)
よくあるご質問
通信販売でもクーリング・オフは使えますか。
通信販売には、クーリング・オフの規定がありません。ただし、商品や特定権利の通信販売には、引渡しを受けた日から8日以内は申込みの撤回や解除ができるという別のルールがあり、広告に返品特約を表示していれば特約が優先します(15条の3)。役務は、この返品のルールの対象ではありません。ただし、実態が通話での勧誘や会場での申込みであれば、通信販売ではなく電話勧誘販売や訪問販売として扱われ、クーリング・オフが適用されます。
会場での申込み、通話での申込み、フォームだけの申込みがある場合、書面は一本でよいですか。
契約を単位に判断するため、導線ごとに当たる類型が変わります。複数の類型に当たる契約には、各類型の規定が重ねて適用されると、消費者庁の逐条解説は説明しています。一通の書面で全導線を処理するのではなく、導線ごとに書面と期間の書き方を整理するか、最も要件の重い類型に合わせた共通書面にして差を別に管理する形を考えます。
指定7役務に当たらなければ、特商法は関係ないのですか。
いいえ。指定7役務に当たらないことは、特定継続的役務提供に当たらないという結論にすぎません。導線によっては訪問販売や電話勧誘販売に当たり、通信販売であっても広告の表示事項や申込み画面の表示、返品のルールがあります。支払方法が分割ならば割賦販売法、規約の内容によっては消費者契約法も問題になります。
「個人事業主のお客様は対象外」と規約に書けば足りますか。
足りません。特商法26条1項1号の適用除外は、契約の目的・内容が営業のためのものかで判断され、購入者が事業者名や法人であることだけで一律に決まらないと、逐条解説は説明しています。副業や開業準備中の購入者の扱いは、実質で総合的に判断されます。連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引には、この除外が及びません。
連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は、いつ問題になりますか。
収益や収入が得られることをうたって勧誘し、商品の購入や取引料などの金銭の負担を伴わせるときです。講座の売り方に「受講後に仕事を紹介する」「業務を請け負えば収入になる」といった要素があり、教材費や登録料の負担が組み合わさると問題になります。クーリング・オフの期間は8日ではなく、書面を受け取った日から20日です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月22日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所