このページの要点
- 概要書面が必要なのは連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引の三つ。訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入は「申込み時の書面」で、申込みと同時の契約なら契約書面だけで足りる。
- 特定継続的役務提供の概要書面は、特商法施行規則92条1項1号のイからルまで(役務の内容、概算額、期間、クーリング・オフと中途解約、割賦販売法の事項、前払取引の保全措置、特約)を記載する。
- 書面の内容を十分に読むべき旨は赤枠の中に赤字で、文字は8ポイント以上(特商法施行規則92条2項・3項ほか)。書式を欠くと、記載が正しくても法定の書面と認められないおそれがある。
- 電子メールなどで渡すには、相手の承諾が先に必要。承諾を得たことを証する書面の交付と、交付の日・方法・担当者の記録を、契約の前に整える。
結論:「概要書面」が必要なのは3つの取引。訪問販売などでは「申込み時の書面」が似た働きをする
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 指定7役務(エステ・美容医療・語学・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介)で期間と金額が要件を超える契約、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引を行う事業者。訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入を行う事業者は「申込み時の書面」を確認する。
- 何をすべきか
- 契約を結ぶ前に、省令が定める事項を記載した書面を、赤枠・赤字・8ポイント以上の書式で渡す。渡した日・方法・担当者を記録に残す。
- 期限
- 概要書面は契約を結ぶまでに。申込み時の書面は、申込みを受けたら直ちに(電話勧誘販売は遅滞なく)。
概要書面(契約の前に渡す、取引の条件をまとめた書面。用語集)は、連鎖販売取引(特商法37条1項)、特定継続的役務提供(同法42条1項)、業務提供誘引販売取引(同法55条1項)の三つで、契約を結ぶ前に渡すことが義務づけられています[1]。これに対して、訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入には、申込み時の書面(申込みを受けた時点で、申込みの内容を記載して渡す書面。用語集)があります(同法4条1項、18条1項、58条の7第1項)。
両者は名前も根拠も別ですが、「契約が結ばれる前の段階で、取引の条件を相手に見せる」という役割は共通です。そのため、どの取引にどちらの書面が要るのかを取り違えると、必要な書面を渡していないことになります。このページでは、必要になる取引を表で確かめ、記載事項を条文の号ごとに一覧にし、よくある漏れを正しいやり方と対比して整理します。
契約を結んだあとに渡す契約書面、赤枠の範囲を扱う赤枠の一覧とは役割が違います。書面を渡す順序と一体型・分離型の設計は、実務の流れとして契約書面・概要書面で説明しています。
三つの書面の違い(概要書面・申込み時の書面・契約書面)
| 書面 | 渡す時期 | 当てはまる取引と根拠 |
|---|---|---|
| 概要書面 | 契約を結ぶまでに(契約を結ぼうとするとき) | 連鎖販売(特商法37条1項)、特定継続的役務提供(同法42条1項)、業務提供誘引販売(同法55条1項) |
| 申込み時の書面 | 申込みを受けたとき直ちに(電話勧誘販売は遅滞なく)。その申込みの際に契約も結んだ場合は不要 | 訪問販売(特商法4条1項)、電話勧誘販売(同法18条1項)、訪問購入(同法58条の7第1項) |
| 契約書面 | 契約を結んだとき遅滞なく(申込み時の書面を省略できた場合は直ちに) | 上の6類型(詳しくは契約書面のページ) |
| いずれも不要 | — | 通信販売。書面の交付義務はなく、広告の表示事項(特商法11条)と申込み画面の表示(同法12条の6)が別に定められている |
訪問販売の「直ちに」「遅滞なく」の目安は、通達で「遅滞なく」が通常3〜4日以内とされています(消費者庁通達、PDF11〜12頁)。
概要書面・申込み時の書面が必要になる取引
最初に、次の一覧で、7つの取引類型のうちどれで要るのかを確認します。「要」は法令で必要、「条件付き」は場合により必要、「不要」は不要という意味です。
概要書面・申込み時の書面が必要になる取引の一覧
| 取引の類型 | 要否 | 条件・補足 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 条件付き | 申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要 | 特商法4条1項 |
| 電話勧誘販売 | 条件付き | 申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要 | 特商法18条1項 |
| 通信販売 | 不要 | — | — |
| 連鎖販売取引 | 要 | 契約を結ぶ前に交付 | 特商法37条1項 |
| 特定継続的役務提供 | 要 | 契約を結ぶまでに交付 | 特商法42条1項 |
| 業務提供誘引販売取引 | 要 | 契約を結ぶ前に交付 | 特商法55条1項 |
| 訪問購入 | 条件付き | 申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要 | 特商法58条の7第1項 |
要=法令で必要/条件付き=場合により必要/任意=法令上の義務はないが実務上置く/不要=不要。
表の「条件付き」は、訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入の申込み時の書面です。条文には「ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない」という但し書きがあり、申込みと契約が同時なら、申込み時の書面は不要で、契約書面だけを直ちに渡せば足ります[2]。
連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引の概要書面は、相手方が「店舗等によらないで」事業を行う個人(業務提供誘引販売では「事業所等によらないで」業務を行う個人)である場合の規律です(同法37条1項、55条1項)。法人や、店舗・事業所を構えて行う事業者が相手の取引は、この書面の義務の対象から外れます。ただし、名義でなく実態で判断されるため、個人事業主や副業の個人は、対象に入りうると考えて準備します。
指定7役務のどれに当たるかは、期間と金額で決まる
特定継続的役務提供の概要書面は、指定7役務の契約で、政令の期間を超え、かつ5万円を超える金銭を受け取るときに必要です(特商法41条1項、同法施行令24条・別表第四)。下の表は施行令から機械的に照合したもので、本文中の数字はこの表と一致させています。
特定継続的役務7業種の要件と中途解約の上限
| 項と役務 | 期間・金額の要件 | 中途解約の上限(提供開始後) | 提供開始前の費用の上限 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|---|
| 一の項 エステティック | 期間が1月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 2万円又は契約残額の10%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 2万円(施行令31条、別表第四) | エステ |
| 二の項 美容医療 | 期間が1月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 2万円(施行令31条、別表第四) | 美容医療 |
| 三の項 語学の教授 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 1万5千円(施行令31条、別表第四) | 語学教室 |
| 四の項 学力の教授・家庭教師型 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 2万円(施行令31条、別表第四) | 学習塾・家庭教師 |
| 五の項 学力の教授・学習塾型 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 2万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 1万1千円(施行令31条、別表第四) | 学習塾・家庭教師 |
| 六の項 電子計算機・ワープロの操作の教授 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 1万5千円(施行令31条、別表第四) | パソコン教室 |
| 七の項 結婚相手の紹介 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 2万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 3万円(施行令31条、別表第四) | 結婚相談所 |
四の項と五の項は、上限の金額が違うため別の行にしています。要件は「期間が政令の期間を超え、かつ金額が5万円を超える」で、いずれも『超える』です(特商法41条1項、施行令24条)。
概要書面か、申込み時の書面か:当てはめの順番
- 1
指定7役務を、政令の期間を超えて提供し、5万円を超える金銭を受け取る契約か(入学金・教材・関連商品を含めた総額で見る)
はい特定継続的役務提供。契約を結ぶまでに概要書面(特商法42条1項)。契約後に契約書面(同条2項)
いいえ次へ。ただし期間・総額が要件に届かなくても、勧誘の場所や手段で類型が決まる
- 2
購入すると他の人を紹介して報酬が出るとして誘い、金銭の負担(特定負担)を伴わせる取引か
はい連鎖販売取引。個人が相手なら概要書面(同法37条1項)
いいえ次へ
- 3
購入すると、こちらが提供・あっせんする業務で収入が得られると説明し、金銭の負担を伴わせる取引か
はい業務提供誘引販売取引。個人が相手なら概要書面(同法55条1項)
いいえ次へ
- 4
相手の自宅や会場など営業所等以外の場所で申込みを受けるか。または事業者側からの通話・Web会議の勧誘のあとに申込みを受けるか。または営業所等以外の場所で物品を買い取るか
はい訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入。申込み時の書面(同法4条1項、18条1項、58条の7第1項)。申込みと同時の契約なら契約書面のみ
いいえ次へ
- 5
通話も会場もなく、ネットのフォームだけで申込みを受けるか
はい通信販売。書面の交付義務はない。広告の表示事項と申込み画面の表示を整える
いいえ取引の類型の判定に戻る(診断の結果のページ)
判定の根拠と14の結果は、診断の結果のページと7類型の早見表で確認できます。
条文で確認する:いつ、何を渡すか
まず、特定継続的役務提供の概要書面の条文です。要の部分は「契約を締結するまでに」「主務省令で定めるところにより」「概要について記載した書面」の三点です。
「役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務の提供を受けようとする者又は特定継続的役務の提供を受ける権利を購入しようとする者と特定継続的役務提供契約又は特定権利販売契約…を締結しようとするときは、当該特定継続的役務提供等契約を締結するまでに、主務省令で定めるところにより、当該特定継続的役務提供等契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。」
次に、訪問販売の申込み時の書面です。条文は、書面に載せる事項を六つの号で定め、六号で省令(施行規則)に委ねています。
「…直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。」
「ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。」
「一 商品若しくは権利又は役務の種類」
「二 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価」
「三 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法」
「四 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期」
「五 第九条第一項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項」
「六 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」
記載事項の一覧:条文の号ごと
特定継続的役務提供の概要書面(特商法施行規則92条1項1号)
特定継続的役務提供の概要書面に載せる事項は、特商法施行規則92条1項が、役務提供契約(1号)と特定権利販売契約(2号)に分けて、イからルまで(2号はイからヌまで)列挙しています。次の引用は、役務提供契約の部分から要の号を抜いたものです。
「イ 役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名」
「ニ 役務の対価その他の役務の提供を受けようとする者が支払わなければならない金銭の概算額」
「ヘ 役務の提供期間」
「ト 法第四十八条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項を含む。)」
「チ 法第四十九条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項、第五項及び第六項の規定に関する事項を含む。)」
「ヌ 特定継続的役務提供に係る前払取引…を行うときは、当該前払取引に係る前受金について保全措置を講じているか否か及び、保全措置を講じている場合には、その内容」
概要書面の記載事項(特定継続的役務提供・特商法施行規則92条1項1号イ〜ル)
| 号 | 記載する事項 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| イ | 事業者の氏名又は名称、住所、電話番号、法人は代表者の氏名 | 屋号だけの記載、電話番号や代表者氏名の欠け |
| ロ | 提供される役務の内容 | コース名だけで、回数や提供の形態が分からない |
| ハ | 購入する必要のある商品があるときの商品名・種類・数量 | 関連商品を「おすすめ品」として別に扱い、書かない |
| ニ | 支払う金銭の概算額 | 入会金・教材・施設費・商品代を含まない総額、内訳のない総額だけの記載 |
| ホ | ニの金銭の支払の時期及び方法 | 分割払いのときの回数・時期の欠け |
| ヘ | 役務の提供期間 | 「随時」「期間の定めなし」とだけ書く |
| ト | クーリング・オフ(48条1項)に関する事項。2項から7項の事項を含む | 「法令に従います」の一般条項だけにして、期間・方法・効果を書かない |
| チ | 中途解約(49条1項)に関する事項。2項・5項・6項の事項を含む | 計算方法を書かない、上限を超える定め |
| リ | 分割払いに割賦販売法を使うときの抗弁の対抗 | クレジットを使う取引なのに載せていない |
| ヌ | 前払取引の保全措置の有無と内容 | 前受金があるのに、措置の有無自体を書かない |
| ル | 特約があるときの内容 | 特約を契約書面にだけ書き、概要書面に載せない |
2号の特定権利販売契約(権利の購入)は、役務の内容が「権利の行使により受けることができる役務」になるなど、同じ構造で別に定められています。
書式の要件:赤枠・赤字と8ポイント
概要書面には、内容を記載する以外に書式の定めがあります。特定継続的役務提供では、特商法施行規則92条2項と3項が、読むべき旨を赤枠の中に赤字で書くこと、日本産業規格Z8305で定める8ポイント以上の文字と数字を使うことを求めています。
「前項の書面には書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載しなければならない。」
「第一項の書面には日本産業規格Z八三〇五に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければならない。」
連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引の概要書面
この二つの類型の概要書面も、条文は「概要について記載した書面」と定め、記載事項は施行規則が列挙します。連鎖販売取引の概要書面は特商法施行規則78条1項の一号から十号、業務提供誘引販売取引の概要書面は特商法施行規則119条1項の一号から七号です。どちらも、読むべき旨を赤枠の中に赤字で書く定め(特商法施行規則78条2項、119条2項)と8ポイント以上の定め(特商法施行規則78条3項、119条3項)があります[3]。
連鎖販売取引の概要書面(特商法施行規則78条1項)
| 号 | 記載する事項 |
|---|---|
| 一・二 | 統括者の氏名又は名称・住所・電話番号・法人は代表者氏名。連鎖販売業を行う者が統括者でないときは、その者の同じ事項 |
| 三・四 | 商品・権利・役務の種類と性能・品質等の重要な事項、商品名 |
| 五 | 販売価格、引渡しや移転の時期・方法など販売条件、または役務の対価・提供条件に関する重要な事項 |
| 六 | 特定利益に関する事項 |
| 七 | 特定負担の内容 |
| 八 | 契約の解除の条件その他、契約に関する重要な事項 |
| 九 | 割賦販売法の抗弁の対抗(クレジットなどを使う場合) |
| 十 | 禁止行為(特商法34条)に関する事項 |
特定利益は、他の者の取引に応じて収受できる利益をいいます(特商法33条1項)。計算の方法や支払われない場合の条件は、契約書面の側でさらに細かく定められています。
業務提供誘引販売取引の概要書面(特商法施行規則119条1項)
| 号 | 記載する事項 |
|---|---|
| 一 | 業務提供誘引販売業を行う者の氏名又は名称・住所・電話番号・法人は代表者氏名 |
| 二・三 | 商品・権利・役務の種類と性能・品質等の重要な事項、商品名 |
| 四 | 商品や役務を利用する業務の提供又はあっせんの条件に関する重要な事項 |
| 五 | 特定負担の内容 |
| 六 | 契約の解除の条件その他、契約に関する重要な事項 |
| 七 | 割賦販売法の抗弁の対抗(クレジットなどを使う場合) |
業務の内容・回数や時間・報酬の単価と計算の仕方などの具体的な条件は、契約書面で記載が求められます(特商法施行規則121条2項の表)。
申込み時の書面の記載事項(訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入)
申込み時の書面は、特商法の各号(訪問販売は4条1項一号から六号)に加えて、六号が委ねる事項を施行規則が定めます。訪問販売は特商法施行規則5条、電話勧誘販売は特商法施行規則45条の一号から九号が同じ内容で、訪問購入は特商法施行規則132条の一号から八号です[3]。
申込み時の書面に載せる省令事項(訪問販売は特商法施行規則5条、電話勧誘販売は特商法施行規則45条)
| 号 | 記載する事項 |
|---|---|
| 一 | 事業者の氏名又は名称、住所、電話番号、法人は代表者の氏名 |
| 二・三 | 申込み又は契約の締結を担当した者の氏名、申込み又は契約の締結の年月日 |
| 四・五・六 | 商品名と商標又は製造者名、型式があるときはその型式、数量 |
| 七 | 商品が契約の内容に適合しない場合の事業者の責任の定めがあるときの内容 |
| 八・九 | 契約の解除に関する定めがあるときの内容、その他の特約があるときの内容 |
訪問購入(特商法施行規則132条)は、商品名ではなく物品名と物品の特徴、物品や附属品に商標・製造者名・販売者名の記載があるときはその記載などを定めています。
申込み時の書面にも、読むべき旨を赤枠の中に赤字で書くこと、8ポイント以上の文字を使うことが求められます(訪問販売は特商法施行規則6条2項・3項、電話勧誘販売は特商法施行規則46条2項・3項、訪問購入は特商法施行規則133条2項・3項)。解除に関する事項を赤枠の中に赤字で書く定めもあり、訪問販売は特商法施行規則7条6項、電話勧誘販売は特商法施行規則47条6項、訪問購入は特商法施行規則134条2項です。
よくある漏れ:誤りと正しいやり方
概要書面の漏れは、契約書面と取り違える誤りと、記載事項を欠く誤りに分かれます。実務でよく見られる順に、対比で整理します。
書き方の例(一般的な例) 概要書面のよくある漏れ
概要書面そのものがない・契約書面と同時
理由概要書面は契約を結ぶまでに交付する書面で(42条1項)、契約書面(同条2項)は契約を結んだ後の書面です。役割が違うため、一方で他方を代えることはできません。
金額が総額だけ
理由概要書面には金銭の概算額(特商法施行規則92条1項1号ニ)と、購入が必要な商品の名称・種類・数量(同号ハ)が必要です。金額の要件は総額で判断されるため、総額の見え方が要件の判断にも直結します(通達、PDF82〜83頁)。
中途解約の書き方
理由概要書面には中途解約(49条)に関する事項を含める必要があり(特商法施行規則92条1項1号チ)、上限を超える部分は請求できません(特商法49条2項)。上限は7業種の早見表で確認できます。
前払取引の保全措置
理由前払取引は、役務の提供に先立って5万円を超える金銭を受け取る取引です。特商法施行規則92条1項1号ヌが、措置の有無を概要書面に明記することを求めています。
割賦販売法の事項
理由特商法施行規則92条1項1号リが、割賦販売法の規定に基づく抗弁の対抗を概要書面の記載事項にしています。決済方式ごとの整理は分割払い・カードにあります。
「渡した」の証拠
理由法は受領の記録そのものを義務づけていませんが、交付が契約の前だったかは、書面不備の争いで事業者が示す側になります。実務では交付時期が分かる記録を残す運用がよく見られます。
書式
理由特商法施行規則92条2項・3項が、書式を義務としています。内容が正しくても、書式を欠けば法定の書面とは認められないおそれがあります。
類型ごとの注意:電子交付、重なる類型、注意しておく運用
概要書面を電子メールやPDFで渡すには、書面の代わりに電磁的方法で事項を提供することについて、相手の承諾を得る必要があります(特商法42条4項。連鎖販売は37条3項、業務提供誘引販売は55条3項、訪問販売は4条2項、電話勧誘販売は18条2項、訪問購入は58条の7第2項)。特定継続的役務提供では、承諾を得たことを証する書面を、電子的に提供するまでに交付することも必要です(特商法施行規則99条7項)。[6]手順は承諾書面と書面の電子交付で扱います。
一つの契約が複数の類型に当たることもあります。たとえば、エステを自宅への訪問で契約させた場合は、訪問販売と特定継続的役務提供の両方の規定を確認する必要があります。重なったときの書面の整理は、条文の確認の範囲では一つに定まらないため、それぞれの類型の書面を、それぞれの時期までに渡しておく設計が安全です。
運用の手順は、次の流れで固めると漏れが減ります。
- 取引を類型に当てはめる。導線ごと(フォーム、通話、会場、訪問)に分けて、概要書面か申込み時の書面かを決める
- 書面の様式を作る。条文の号ごとの一覧と照らして、記載事項、赤枠・赤字、8ポイント以上を確認する
- 契約より前に渡す。交付日、方法、担当者を記録する。電子で渡すときは承諾の取得と、承諾を得たことを証する書面の交付を先に済ませる
- 契約を結んだら、概要書面とは別に契約書面を渡す。交付の記録を契約ごとにまとめて保存する
業種ごとの具体的な書き方は、エステ事業者向けの概要書面・契約書面の解説、学習塾向けの概要書面・契約書面の解説、結婚相手紹介サービス向けの概要書面・契約書面の解説にあります。語学教室とエステの判定は語学教室とエステ、取引類型ごとの一覧は7類型の早見表で確認できます。
裁判例と行政処分に見る概要書面
概要書面については、裁判所の判断が少ないため、確認できた裁判例を一件と、行政処分の公表資料を載せます。
裁判例業務提供誘引販売取引の概要書面と契約書面の記載が争われた事例[7]
- 裁判所・判決日
- さいたま地方裁判所 平成23年2月2日
- 事件番号
- 平成22年(行ウ)第29号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨副業の開業を支援する会員制の取引を行っていた事業者が、広告の収入表示などを理由に、都道府県知事から業務の停止を命じられ、その取消しを求めた事案です。
判断の要点この取引は業務提供誘引販売取引に当たるとしたうえで、概要書面については、重要な事項が明記されていれば足り、契約書面ほど詳細でなくてもよいとの前提で、違反とはしませんでした。一方、契約書面に、一定の期間内にあっせんする業務の回数の記載がない点は、契約書面の義務に反するとしました。結論は、命令の前に事業者が広告を改める意向を示していたのに確認しなかったことを理由に、処分を取り消しています。上級審の結果は確認していません。
事業者の実務への示唆概要書面は「重要な事項を明記する書面」で、契約書面は「具体的な条件を詳細に書く書面」という違いが示された事案です。概要書面に細目まで書き込めない場合でも、重要な事項が欠けないようにし、細目は契約書面で補う設計が考えられます。
行政処分では、連鎖販売取引について、消費者庁が2023年3月29日に取引等停止命令を出した事案で、違反の型として、氏名等の明示義務違反のほか、概要書面の交付義務違反(37条1項)と契約書面の交付義務違反(37条2項)が挙げられています[8]。公表資料の条番号は処分当時のもので、現行条文は上のとおり37条1項(概要書面)・2項(契約書面)です。概要書面を渡さない運用は、行政処分の対象になりうる違反の一つです。
概要書面や契約書面を渡さなかった場合、あるいは法定の事項を欠いた書面を渡した場合の罰則は、特商法71条1号が「六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金」と定め、併科もあります[1]。
この書類の作成・点検は、事務所で承ります(料金のご案内)。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律4条1項・2項、18条1項、37条1項、42条1項・4項、55条1項、58条の7第1項、71条1号(e-Gov法令検索、法令ID:351AC0000000057) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律41条1項、42条1項、4条1項、18条1項(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則5条、6条2項・3項、7条6項、45条〜47条、78条、92条、99条7項、119条、132条〜134条(e-Gov法令検索、法令ID:351M50000400089) https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付)、第2章第2節3(3)(PDF11〜12頁)。「遅滞なく」の目安、申込書面の「直ちに」の考え方 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達(同上)、第4章2(PDF85〜86頁)。概要書面は契約締結まで、契約書面は締結後遅滞なく https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律42条4項、同法施行規則99条7項(承諾を得たことを証する書面) https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 裁判例さいたま地方裁判所 平成23年2月2日判決(平成22年(行ウ)第29号)。確認の範囲:全文。上級審の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/82103/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 公表資料(連鎖販売取引、2023年3月29日処分、3月30日公表)。違反の型:概要書面・契約書面の交付義務違反ほか https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_230330_01.pdf確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
訪問販売でも概要書面を渡す必要はありますか。
訪問販売には概要書面の定めはなく、申込みを受けたときに渡す「申込み時の書面」(特商法4条1項)と、契約後の契約書面(同法5条)が定められています。ただし、申込みと同時に契約を結ぶ場合は、申込み時の書面は不要で、契約書面を直ちに渡します。
契約書面を契約と同時に渡せば、概要書面は省略できますか。
できません。特定継続的役務提供・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引では、概要書面は契約を結ぶまでに交付する独立した書面です(特商法42条1項、37条1項、55条1項)。契約書面で代えることはできないため、別の書面として先に渡します。
概要書面は、メールで送れば足りますか。
書面に代えて電磁的方法で事項を提供するには、相手の承諾を得る必要があります(特商法42条4項など)。承諾の前に、方法や効果などの説明と確認を行い、特定継続的役務提供では承諾を得たことを証する書面も交付します(特商法施行規則99条7項)。承諾のないメール送付は、書面を交付したことになりません。
概要書面にも赤枠と赤字が必要ですか。
必要です。特定継続的役務提供の概要書面は、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で書き、8ポイント以上の文字と数字を使います(特商法施行規則92条2項・3項)。連鎖販売取引(特商法施行規則78条2項・3項)、業務提供誘引販売取引(特商法施行規則119条2項・3項)も同様です。
通信販売の事業者にも、概要書面や申込み時の書面は必要ですか。
通信販売には、書面の交付義務はありません。広告に表示する事項(特商法11条)や、申込み画面に表示する事項(同法12条の6)を整える必要があります。通話や会場の導線が併存するときは、その導線が別の類型になるため、その類型の書面を確認します。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所