このページの要点
- 語学の教授は三の項。教える内容と、期間・総額の要件で決まり、対面かオンラインか、名称が何かは判断を左右しない
- 期間と総額を空欄にせず、入会金・教材費を含む費目ごとの明細と合計、役務の種類・形態・数量・講師の特約を契約書面に書く。前払いなら保全措置の記載も
- クーリング・オフ後も契約期間中は中途解約が可能。請求できるのは、提供済みの対価と上限額まで。提供済みの対価は契約時の単価で計算する
- 月額制と総額払いの分割を先に決める。分割払いでは割賦販売法の規定になり、特商法の上限規定は適用されない(50条2項)
結論:語学の教授は三の項。提供の方法に関係なく、期間と総額の要件で決まる
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 英会話・韓国語・中国語などの語学の教授を、対面でもオンラインでも、期間が2月を超え、総額が5万円を超える契約で提供する語学教室・スクールの事業者
- 何をすべきか
- 三の項に当たる契約には、概要書面を契約前に、契約書面を契約後遅滞なく渡し、赤枠の中に赤字で解除の事項を表示する。提供期間と総額を空欄にせず、費目ごとの明細と合計を書く
- 期限
- クーリング・オフは契約書面を受領した日から数えて8日。その後も契約期間中は、理由を問わず中途解約ができる
結論の表:語学教室
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当てはまる取引の類型 |
指定役務の要件
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| 当てはまらない場合の条件 |
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| 必要な書類(要るもの・要らないもの) |
共通して確認するもの
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| クーリング・オフの期間 |
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| 中途解約の有無と上限 |
|
オンラインで提供しても、教授の内容が語学なら対象です。『伴走』『コーチング』と名付けても、教授の実態で判断されます。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。
語学教室は、特定商取引法(以下「特商法」)の特定継続的役務提供(エステや語学教室など政令で指定された7つの役務を、長い期間・高い金額で提供する契約。用語集)の中でも、典型的な業種として政令に掲げられています。[1][6][10]対面かオンラインかは判断を左右しません。判断の軸は、教える内容が語学かどうかと、期間・総額の要件を超えるかどうかです。
このページは、語学教室を営む事業者が、自社のコースが三の項に当たるかを判定し、必要な書類と中途解約の精算を整える順番を示します。7業種の全体は特定継続的役務の7業種、上限額の一覧は7業種の早見表、診断の分かれ道は診断の結果(特定継続的役務提供)と期間・金額が決まらない場合にあります。
判定の根拠:三の項の範囲、期間と総額、オンライン提供
語学の教授は、別表第四の三の項に掲げられている
特商法41条2項は、特定継続的役務を、身体の美化や知識・技能の向上などの目的で誘引が行われ、目的が実現するかどうかが役務の性質上確実でないもので、政令で定めるものと定義しています。[1]政令は施行令25条で、別表第四の第一欄に掲げる役務を指定しています。語学の教授は、その三の項です。[6]
「…入学者を選抜するための学力試験に備えるため又は同法第一条に規定する学校(大学を除く。)における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く。」
期間と金額は、施行令24条で定められています。語学の教授の期間は2月を超えること、金額は5万円を超えることです(どちらも『超える』)。[6]下の表は、施行令別表第四から作成した、三の項の要件と上限です。
特定継続的役務7業種の要件と中途解約の上限
| 項と役務 | 期間・金額の要件 | 中途解約の上限(提供開始後) | 提供開始前の費用の上限 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|---|
| 三の項 語学の教授 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 1万5千円(施行令31条、別表第四) | 語学教室 |
四の項と五の項は、上限の金額が違うため別の行にしています。要件は「期間が政令の期間を超え、かつ金額が5万円を超える」で、いずれも『超える』です(特商法41条1項、施行令24条)。
オンライン・通信でも対象になる
消費者庁のQ&Aは、対象となる役務が、ファックス、電話、インターネット、郵便などで提供される場合も、広く含まれるとしています(Q2)。[11]ビデオ通話によるマンツーマンのレッスンや、アプリ上のレッスン、動画教材と添削の組み合わせも、教授の内容が語学で、期間と総額が要件を超えれば、三の項の対象になりえます。
名称にも注意が必要です。『伴走プログラム』『コーチング』『オンラインサロン』といった名称を付けても、条文は役務の内容で定義しているため、名称を理由に対象から外れる定めはありません。実際にレッスンや添削、発音指導などの語学の教授を行っているなら、コースの実態で判断します。通達は、複数のコースがあるときは、個々のコースごとに判断するとしています。[12]
期間と総額は、空欄にしない
期間は、書面に記載する役務の提供期間で判断します。有効期限のあるチケット制は、その期限を提供期間とみなし、有効期限のないものは、常に政令の期間を超えるものとして扱われます(Q3)。[11][12]総額は、授業料のほか、入会金、教材費、購入が必要な商品の代金を含みます。
契約書の提供期間や総額の欄が空欄のまま、あるいは『別途お見積り』のままだと、該当性が決まらず、概要書面・契約書面の記載事項も確定しません。契約書面には、役務の提供期間と、費目ごとの明細と合計を記載することが法令上の要請です(42条2項2号・4号、規則94条1項)。[2][7]コースの設計の段階で、期間と総額を確定させておきます。
語学教室の契約を判定する順番
- 1
教える内容は語学ですか(入学試験に備えるもの、学校教育の補習は除く)。
はい次の問いへ。
いいえ三の項には当たらない。入試・補習なら学習塾・家庭教師のページ、そのほかの講座は電話勧誘販売や通信販売などの類型を確認する。
- 2
提供期間は2月を超えますか(有効期限のないチケットは期間を超えるものとして扱う)。
はい次の問いへ。
いいえ三の項には当たらない。月額制で毎月更新の設計でも、入会時に総額が確定する設計になっていないか確認する。
- 3
入会金・教材費・購入が必要な商品を含む総額は5万円を超えますか。
はい特定継続的役務提供に当たる。概要書面・契約書面・赤枠・関連商品の記載が必要。
いいえ当たらない。フォームで申込みを受けるなら通信販売の表示、分割払いなら割賦販売法を確認する。
対面・オンラインの別は、この判定に影響しません。判定が決まらないコース(無期限のチケット、月額制と総額払いの混在)は、先に期間と総額を確定します。
よくある誤り→正しいやり方
語学教室の契約書・規約で、よく見られる書き方のうち、判定や書面の誤りにつながりやすいものを、多い順に並べます。特定の事業者の書類を指すものではなく、一般的な型です。
書き方の例(一般的な例) 語学教室の契約書・規約で起きがちな書き方
① 特定継続的役務提供に当たるかの判定
② オンラインの扱い
理由インターネットなどによる提供も、対象に含まれます(Q&A Q2)。[11]
③ 名称で整理する
理由条文は役務の内容で定義しており、名称による除外はありません。[1]
④ 期間・総額が空欄
理由金額の欄には費目ごとの明細と合計を記載します(規則94条1項)。空欄では対象かどうかも、精算の計算も決まりません。[7]
書類の作り方の要点
三の項に当たる契約では、概要書面を契約前に、契約書面を契約後遅滞なく渡します。[2]語学教室の契約書面で特に重要なのは、レッスンの内容を具体的に書くことと、金額の費目別の明細、前払いの保全措置の記載です。
1 役務の内容は、種類・形態・数量・講師の特約まで書く
契約書面の第1号の役務の内容は、施行規則93条1項が、次の事項と定めています。[7]
「役務の種類」
「役務提供の形態又は方法」
「役務を提供する時間数、回数その他の数量の総計」
「施術を行う者、講師その他の役務を直接提供する者の資格、能力等に関して特約があるときは、その内容」
2 金額は費目ごとの明細と合計。前払いなら保全措置の記載
金額は、入会金、授業料、施設整備費、購入が必要な商品(教材)の価格などを、費目ごとに書き、その合計も書きます(規則94条1項)。[7]また、役務の提供に先立って5万円を超える金銭を受領する前払取引を行うときは、前受金を守る保全措置をとっているか、とっているならどのような措置かを、概要書面と契約書面に書きます(規則92条1項1号ヌ、93条2項6号)。さらに、前払取引を行う事業者は、業務と財産の状況を書いた書類を事務所に置いておき、相手方から請求があれば閲覧させなければなりません(45条1項・2項、施行令27条)。[7][3]語学教室は前払いのコースが多いため、この点が漏れやすい項目です。
3 赤枠とクーリング・オフの表示
契約書面には、書面の内容を十分に読むべき旨と、クーリング・オフの事項を、赤枠の中に赤字で書き、8ポイント以上の文字を使います(規則94条3項から5項)。[7]関連商品の使用・消費で解除できないとする場合は、商品の名称とその旨も赤枠の中です。書き方の考え方は赤枠の書き方、取引ごとの一覧は赤枠の一覧にあります。
4 関連商品(書籍・教材・記録物など)
三の項の関連商品は、書籍、音・影像・プログラムを記録した物、そしてファクシミリ装置とテレビ電話装置が指定されています(施行令29条1項、別表第五第三号)。[6]語学教室では、テキスト、音声教材、アプリのライセンスがこれに当たる場合があります。契約が解除されると、関連商品の売買契約も解除でき(48条2項)、引き渡した商品の引取りの費用は販売した者の負担です(同条5項)。[4]詳しくは関連商品の書面をご覧ください。
5 電子での交付と概要書面
オンライン完結の語学スクールでは、書面を電磁的方法で提供することが多くなります。この場合、あらかじめ方法の種類と内容を示して、書面等によって相手方の承諾を得る必要があり(42条4項、施行令26条1項)、承諾の記録も残します。[2][6]手順は書面の電子交付の手順と承諾書面の一覧で説明しています。概要書面の項目の一覧は概要書面の記載事項一覧にあります。
中途解約の精算を定める条項の考え方(骨子)
- 受講者は、契約書面を受領した日から起算して【法定の期間】を経過した後は、契約期間中、将来に向かって本契約を解除できる。
- 前項の解除の場合に当社が請求できる金額は、①提供済みの役務の対価(契約時に定めた単価により計算する)と、②特定商取引法及び同法施行令が定める上限の範囲内で、解除により通常生ずる損害の額(役務の提供開始前の解除では、契約の締結及び履行に通常要する費用の額)に、法定利率による遅延損害金を加えた額を超えない。
- 提供済みの役務の対価は、本契約で定めたレッスン1回又は1ポイントあたりの単価に、受講したレッスンの回数又は使用したポイント数を乗じて計算する。
- 既に受領した金額が前二項により計算した金額を超えるときは、当社は、その超過額を速やかに返還する。
論点ごとの骨子です。ポイント制・回数券制を採る場合は、第3項の『単価』を契約時に書面で明示します。入会金など初期費用を精算に含めるなら、その費目と金額を契約書面の金額の欄に具体的に書く必要があります。
中途解約の精算:上限額と、提供済みの対価の数え方
クーリング・オフの期間が過ぎても、契約期間中であれば、受講者は理由を問わず将来に向かって契約を解除できます(49条1項)。事業者が請求できる額には、役務ごとの上限があります。語学教室は、三の項の上限が適用されます。[5][6]
「役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。」
「当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額」
「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」
「当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」
計算例(すべて架空の数字。上限は施行令別表第四の値から計算)
| 例 | 契約の内容 | 提供済みの対価 | 通常生ずる損害の上限 | 請求できる最大額と返還額 |
|---|---|---|---|---|
| 低額の継続コース(開始後) | 総額36万円(月3万円×12か月)。4か月受講して解約 | 12万円 | 契約残額24万円の20%=4万8千円と5万円のうち低い4万8千円 | 最大16万8千円。総額を受領済みなら19万2千円以上を返還 |
| 高額の長期コース(開始後) | 総額120万円。30万円分を受講して解約 | 30万円 | 契約残額90万円の20%=18万円と5万円のうち低い5万円 | 最大35万円。総額を受領済みなら85万円以上を返還 |
| レッスン開始前の解約 | 最初のレッスンの前に解約 | なし(提供前) | 適用なし | 1万5千円(契約の締結・履行に通常要する費用の上限) |
『以上を返還』としているのは、上限まで請求できるとは限らないからです。実際に生じた損害や費用が上限を下回るときは、その額までしか請求できません。
上の計算で注意したいのは、契約残額に率をかけた額と定額のうち、低い方が上限になることです。契約が高額になるほど、定額の上限が先に効きます。逆に、低額のコースでは、契約残額の割合の方が低くなります。上限は請求の権利を与える規定ではなく、実際の損害や費用が上限を下回るなら、その額までしか請求できません。
次に、提供済みの対価の計算です。基本は、契約を結んだときに定めた単価で計算します。消費者庁のQ&Aも、入会金・入学金に相当する初期費用を精算に含める場合は、書面にその内容と、中途解約の場合に請求する旨を具体的に書く必要があるとしています(Q14・Q15)。[11]ポイント制や回数券制で、解約のときにだけ割引前の高い単価を使うと、次のように差額が上乗せされます。
提供済みの対価の数え方(架空の数字)
| 計算の仕方 | 式 | 提供済みの対価 |
|---|---|---|
| 契約時の単価で計算する | 30万円÷100ポイント=1ポイント3千円。20ポイント使用 | 6万円 |
| 解約のときにだけ使う高い単価で計算する | 1ポイント3800円。20ポイント使用 | 7万6千円 |
| 差額 | 事業者が上乗せして取得する額 | 1万6千円 |
二つ目の計算は、実質的に違約金を上乗せする結果になるため、後に見る裁判例では許されないと判断されています。
入会金についても、『入会金は返金しない』という特約はそのままでは認められず、原則として精算のルールに従って扱います(Q15)。[11]初期費用相当分を精算に含められるのは、合理的に説明でき、書面に具体的に記載している場合です。
関係する判例・相談事例
語学教室の中途解約については、裁判所の裁判例検索で、最高裁判所の判決と、地方裁判所・簡易裁判所の判決が確認できました。いずれも、判決当時の特商法に基づく判断ですが、中途解約の精算の基本的な考え方を示しています。以下は、その裁判所の判断であり、控訴・上告の結果を確認していないものは、確定したとは扱いません。詳しい整理は特定継続的役務の中途解約の判例にあります。
裁判例外国語会話教室:解約時に高い単価を使う精算規定
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日
- 事件番号
- 平成17(受)第1930号(解約精算金請求事件。民集61巻3号967頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ(判示事項・裁判要旨)https://www.courts.go.jp/hanrei/34469/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨外国語会話教室の受講契約で、ポイントを前払いで登録し、1ポイントで1回の授業を受ける仕組みでした。登録ポイントが多いほど単価が安く、受講開始後に解除した受講者が、規定に基づく精算金の返還を求めました。
判断の要点裁判所の裁判要旨によれば、使用したポイント数以下で最も近い登録ポイント数に対応する高い単価で、使用済みポイントの対価を計算する精算規定は、契約時の単価で計算する場合より常に高額になり、特商法49条2項1号に定める額を超える金銭の支払を求めるものとして無効とされました。[14]
事業者の実務への示唆ポイント制・回数券制では、契約時に定めた単価が精算の基準になります。『割引前の単価に戻して精算する』設計は、このページで見た差額の上乗せになります。
裁判例外国語教室:数量割引の制度を理由とする異なる単価
- 裁判所・判決日
- 京都地方裁判所 平成18年1月30日
- 事件番号
- 平成17(ワ)第784号(不当利得返還請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の判決の頁 https://www.courts.go.jp/hanrei/6676/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨外国語教室の長期の受講契約(ポイント制、有効期限3年)を平成16年に中途解約した受講者が、既払金の返還を求めた事案です。教室側の規定は、消化済みの受講料を、契約時の単価ではなく、使用ポイント数以下で最も近いコースの単価で算定するものでした。
判断の要点前払金の授受のときに単価が定められていた場合、提供済みの役務の対価は原則としてその契約時の単価で算定すべきで、合理的な理由なく受講者の負担が増える単価を使うのは、実質的に違約金の請求であり、特商法49条2項1号の趣旨に反して49条7項により無効としました。事業者の損害は、49条2項1号ロ(通常生ずる損害の額。上限あり)の範囲で対処すべきで、数量割引の維持や他の受講者との公平は、異なる単価を使う理由にならないとしました。[15]
事業者の実務への示唆割引制度を採る講座で、解約時に精算の単価を変える設計は、無効とされるリスクが高いと考えられます。事業者の損害は、法定の上限の枠の中で請求します。
裁判例外国語会話教室:精算規定の無効と手数料の上限
- 裁判所・判決日
- 東京地方裁判所 平成17年2月16日
- 事件番号
- 平成16(ワ)第25621号(解約精算金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の判決の頁 https://www.courts.go.jp/hanrei/5508/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨外国語会話教室に入学し、ポイントを前払いした受講者が、平成16年に中途解約し、約款の精算規定による控除の無効と、精算金の支払を求めた事案です。
判断の要点前払時に単価が定められていた場合、提供済み役務の対価は前払時の単価で算定するのが原則で、約款が最大で約1.9倍の高い単価を使うのは、中途解約権の行使を必要以上に制約するとして、49条2項・7項により控除できる額を制限しました。大量購入の悪用防止や他の受講者との公平といった事業者の主張は採りませんでした。中途解約手数料は、控除後の額の2割が定額の上限を超えるため、定額の上限を手数料の限度としました。[16]
事業者の実務への示唆提供済みの対価の単価と、手数料の上限(契約残額の2割と定額のうち低い方)の二段階で確認します。現行の上限は、このページの表のとおり施行令で確認してください。
裁判例外国語(試験対策)の指導契約:新契約とする主張と、書面不交付
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所 平成16年9月29日
- 事件番号
- 平成16(ハ)第2054号(清算金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の判決の頁 https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨外国語の指導契約(6か月、一括払い)を結んだ受講者が、内容に不満で内容証明郵便により解約を通知した事案です。事業者は、面談後に新しい契約(留学手続の請負・数学指導)を結んだ、新契約は特定継続的役務に当たらず中途解約できない、と主張しました。
判断の要点新契約とされるものは、原契約の受講内容を変更したもので、語学指導を中心とした特定継続的役務提供契約に当たるとし、『中途解約できない』とする約款は49条7項により無効としました。原契約について契約書面が当初は交付されず、解約を申し出た後に作成・交付されていたことから、書面を交付した日から数える期間は進行しておらず、解約の申出はクーリング・オフと評価できるとして、受講者の請求を認めました。[17]
事業者の実務への示唆契約の『変更』や『新契約』という形式にしても、実態で判断されます。契約書面は、契約時に渡していないと、クーリング・オフの期間が進みません。
四つの裁判例の整理
| 論点 | 裁判所の判断(その裁判所の判断として) | 契約書面・運用への示唆 |
|---|---|---|
| 提供済みの対価の単価 | 契約時の単価で算定するのが原則。割引前の高い単価は許されない(最高裁、京都地裁、東京地裁) | 契約時の単価を書面に明示する |
| 事業者の損害の請求 | 法定の上限の範囲で請求する。数量割引の維持は理由にならない(京都地裁) | 上限を超える違約金を定めない |
| 手数料の上限 | 控除後の額の2割と定額の関係で上限を判断した(東京地裁) | 施行令の現行の上限で計算する |
| 書面の不交付・契約の変更 | 書面が未交付なら期間は進まず、新契約という形式でも実態で判断(東京簡裁) | 契約時に書面を渡し、変更も書面で行う |
国民生活センターは、クーリング・オフの一般的な説明で、語学教室を含む特定継続的役務提供の期間を8日と案内しています。[13]語学教室に限った相談件数の公表は、確認できていないため、このページでは件数を載せていません。裁判例が示すとおり、トラブルの多くは、中途解約の精算の単価と、書面の交付に集中しているため、この2点を契約の設計の段階で固めておくことが有効です。
ヒヤリングで確かめること、業種サイトの詳しい記事
確かめる問いと理由語学教室の契約を整える前に
教える内容は語学ですか。入試対策や学校の補習は含みますか。
三の項か、四の項・五の項かを決めるため
レッスンはマンツーマンですか、グループですか。対面ですか、オンラインですか。1回の時間と総回数は。
契約書面の役務の内容(種類・形態・数量)のため
提供期間は固定ですか、毎月更新ですか、有効期限のあるチケットですか。
期間の判定と、月額制か分割払いかの整理のため
入会金・教材費・アプリのライセンス料はありますか。購入は必須ですか。
総額と関連商品、費目別の明細のため
受講料を前払いで受け取りますか。保全措置を講じていますか。
前払取引の記載と、書類の備付けのため
ポイント制・回数券制ですか。解約時の精算の単価はどう定めていますか。
契約時の単価での精算になっているかを確認するため
業種ごとの事情を含む詳しい記事は、各業種のサイトにあります。語学教室の契約書面の書き方は教室・スクール向けのサイト、オンライン講座の中途解約と返金は講座向けのサイトで扱っています。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律41条1項・2項(定義) https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351AC0000000057?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律42条1項から4項(概要書面・契約書面・電磁的方法による提供)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律45条1項・2項(前払取引を行う場合の書類の備付け)、同法施行令27条確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律48条1項から8項(クーリング・オフと関連商品の解除)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律49条1項から7項、50条1項・2項(中途解約・適用除外)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行令24条・25条・29条・30条・31条、別表第四(三の項)、別表第五第三号 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351CO0000000295?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則92条・93条・94条 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351M50000400089?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文割賦販売法2条1項・30条の4、同法施行令別表第一の三(第五号) https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/336AC0000000159?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文消費者契約法9条1項1号・10条 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/412AC0000000061?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」特定継続的役務提供 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」Q&A 特定継続的役務提供(Q2、Q3、Q13から16) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/continuousservices.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達「特定商取引に関する法律等の施行について」令和6年11月19日付 第4章(PDF 82頁から91頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「クーリング・オフ」(2022年6月1日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日判決(平成17(受)1930号、民集61巻3号967頁) https://www.courts.go.jp/hanrei/34469/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例京都地方裁判所 平成18年1月30日判決(平成17(ワ)784号) https://www.courts.go.jp/hanrei/6676/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京地方裁判所 平成17年2月16日判決(平成16(ワ)25621号) https://www.courts.go.jp/hanrei/5508/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所 平成16年9月29日判決(平成16(ハ)2054号) https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
オンラインだけのレッスンでも、概要書面や契約書面は必要ですか。
必要になる場合があります。対面かオンラインかは判断に影響せず、教える内容が語学で、期間が2月を超え、総額が5万円を超えれば三の項に当たります(消費者庁Q&A Q2)。書面は電磁的方法で提供できますが、あらかじめ相手方の承諾を得る必要があります。
月額制で、毎月更新の契約なら、対象外になりますか。
毎月の更新が実質的な選択になっているかによります。入会時に総額が確定し、それを3回以上に分割して支払わせる設計は、月額制ではなく、総額払いの分割とみなされるおそれがあります。月額制か、総額払いの分割かを先に決めてください。
ポイント制で、解約のときの単価を高くしても構いませんか。
契約時に定めた単価で、提供済みの対価を計算します。解約のときにだけ高い単価を使う規定は、上限を超える金額を求めるものとして、無効とされた裁判例があります(最高裁判所平成19年4月3日判決など)。
入会金は、解約のときに返金しなくてよいですか。
『入会金は返金しない』という特約は、特定継続的役務提供に当たる契約では、そのままでは認められません。精算に含められるのは、提供済みの対価と、書面に具体的に記載した合理的な初期費用の範囲です(Q&A Q14・Q15)。
クーリング・オフの期間は、いつから数えますか。
契約書面を受領した日から数えて8日を経過するまでです(特商法48条1項)。書面を渡していない、または法定の事項が欠けた書面を渡した場合は、期間が進まないと考えられています。契約日から数える運用は、法の内容と食い違います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所