このページの要点
- 契約書面が必要なのは訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入の6類型。通信販売には交付義務がない。
- 記載事項は条文の号と省令(規則5条・93条・94条など)で定まる。事業者情報、担当者、年月日、対価の明細、支払の時期と方法、提供時期、解除の事項、特約を欄として設ける。
- 規則6条の基準に触れる免責条項、解約不可条項、法令違反の特約は、書面に置けない。解除に関する事項は、赤枠の中に赤字で具体的に書く。
- 交付の遅れや記載の欠けは、クーリング・オフの期間が数え始められない原因になる。裁判所の判断は分かれうるため、記載事項を一つずつ満たす運用が確実。
結論:契約書面は6つの類型で必要。民事の契約書をそのまま使うと、法定の事項が欠けやすい
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 訪問販売・電話勧誘販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引・訪問購入を行う事業者。通信販売だけを行う事業者には、契約書面の交付義務はない。
- 何をすべきか
- 契約を結んだら、条文の号と省令が定める事項をすべて記載した書面を、赤枠・赤字・8ポイント以上の書式で渡す。民事の契約書で兼ねる場合は、法定事項の欠けを一つずつ点検する。
- 期限
- 契約を結んだとき遅滞なく(申込み時の書面を省略できた場合と、現金取引で全部が履行された場合は直ちに)。クーリング・オフの期間はこの書面の受領日から数え始める。
契約書面(契約を結んだあとに渡す、契約の内容を明らかにする書面。用語集)は、契約の内容を相手に示すと同時に、クーリング・オフの期間を数え始める起点になります。訪問販売では、特商法9条1項が、5条1項又は2項の書面を受領した日から8日を数えると定めています(その前に4条1項の申込み時の書面を受領していれば、その日から)[1]。
そのため、契約書面が欠けたり、法定の事項が欠けたりすると、期間が数え始められません。これは「書面不備」と呼ばれる問題で、クーリング・オフの期間が過ぎないまま、相手がいつでも解除できる状態が続くことを意味します。期間への影響は書面の不備で詳しく扱います。
このページは、契約書面の記載事項を条文の号ごとに並べる一覧です。実務の流れや分離型・一体型の設計は契約書面・概要書面、契約の前に渡す書面は概要書面、赤枠の範囲は赤枠の一覧で扱っています。
契約書面が必要になる取引
次の一覧で、7類型のどこで契約書面が必要かを確認します。通信販売だけが「不要」で、前払式の通信販売では、承諾等の通知(特商法13条)という別の書面が定められています。
契約書面が必要になる取引の一覧
| 取引の類型 | 要否 | 条件・補足 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 要 | — | 特商法5条1項・2項 |
| 電話勧誘販売 | 要 | — | 特商法19条1項・2項 |
| 通信販売 | 不要 | 前払式の通信販売では承諾等の通知(13条) | 特商法13条 |
| 連鎖販売取引 | 要 | — | 特商法37条2項 |
| 特定継続的役務提供 | 要 | — | 特商法42条2項 |
| 業務提供誘引販売取引 | 要 | — | 特商法55条2項 |
| 訪問購入 | 要 | — | 特商法58条の8第1項・2項 |
要=法令で必要/条件付き=場合により必要/任意=法令上の義務はないが実務上置く/不要=不要。
類型ごとの契約書面の条文
| 類型 | 契約書面の根拠 | 記載事項を定める条文 | 渡す時期 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 特商法5条1項・2項 | 4条1項各号、特商法施行規則5条・14条、特商法施行規則6条・7条 | 契約を結んだとき遅滞なく。現金取引で全部が履行されたとき(5条2項)は直ちに。 |
| 電話勧誘販売 | 特商法19条1項・2項 | 18条1項各号、特商法施行規則45条・54条、特商法施行規則46条・47条 | 訪問販売と同じ構造。 |
| 特定継続的役務提供 | 特商法42条2項(役務提供)・3項(権利販売) | 42条2項各号、特商法施行規則93条・94条(権利販売は特商法施行規則95条・96条) | 契約を結んだとき遅滞なく。 |
| 連鎖販売取引 | 特商法37条2項 | 37条2項各号、特商法施行規則79条・80条 | 契約を結んだとき遅滞なく。 |
| 業務提供誘引販売取引 | 特商法55条2項 | 55条2項各号、特商法施行規則120条・121条 | 契約を結んだとき遅滞なく。 |
| 訪問購入(物品の買取) | 特商法58条の8第1項・2項 | 58条の7第1項各号、特商法施行規則132条〜134条 | 契約を結んだとき遅滞なく。代金の支払と物品の引渡しが済んだときは直ちに。 |
表の「規則」は特商法施行規則の略です。訪問販売の特商法5条2項の書面の省令事項は同法施行規則14条、電話勧誘販売の特商法19条2項の書面の省令事項は同法施行規則54条が定めています。
消費生活相談の数からも、これらの類型で書面が問題になる場面の多さが分かります。国民生活センターのPIO-NET(経由相談を除く)では、2025年度の販売購入形態別の件数は、訪問販売が78,392件、電話勧誘販売が66,768件でした[9]。件数は相談の数であって、書面の不備の数ではありません。ただ、書面の不備は相談の入口でよく問題になります。
条文で確認する:訪問販売の契約書面
訪問販売の契約書面は、5条1項が、申込み時の書面と同じ各号の事項について、契約の内容を明らかにする書面を交付することを求めています。要の部分は、次の引用のとおりです。
「販売業者又は役務提供事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、…遅滞なく(前条第一項ただし書に規定する場合に該当するときは、直ちに)、主務省令で定めるところにより、同条第一項各号の事項(同項第五号の事項については、売買契約又は役務提供契約の解除に関する事項に限る。)についてその売買契約又は役務提供契約の内容を明らかにする書面を購入者又は役務の提供を受ける者に交付しなければならない。」
「一 営業所等以外の場所において、商品若しくは特定権利につき売買契約を締結したとき又は役務につき役務提供契約を締結したとき…」
「二 営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利又は役務につき売買契約又は役務提供契約の申込みを受け、営業所等においてその売買契約又は役務提供契約を締結したとき。」
「三 営業所等において、特定顧客と商品若しくは特定権利につき売買契約を締結したとき又は役務につき役務提供契約を締結したとき。」
「同条第一項各号」とは、4条1項の一号から六号です。つまり、契約書面の事項は、①商品・権利・役務の種類、②販売価格・対価、③代金・対価の支払の時期と方法、④引渡時期・移転時期・役務の提供時期、⑤解除に関する事項、⑥省令の定める事項、の六つの枠に分かれます。ただし五号は「解除に関する事項に限る」とされ、契約書面ではクーリング・オフの事項が中心になります。
省令事項(規則5条)と、書面の基準(規則6条)
六号の省令事項は、特商法施行規則5条が、一号の事業者情報から九号の特約まで、九つを定めています。電話勧誘販売は規則45条が同じ内容です。
契約書面に載せる省令事項(訪問販売は規則5条、電話勧誘販売は規則45条)
| 号 | 事項 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 一 | 事業者の氏名又は名称、住所、電話番号、法人は代表者の氏名 | 屋号のみ、住所が事業所の所在地でない、電話番号の欠け、代表者氏名の欠け |
| 二 | 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名 | 担当者名の欄がない、押印者名が個人名か分からない |
| 三 | 契約の申込み又は締結の年月日 | 「契約日」の欄を空欄のまま交付する、申込日と契約日が混在する |
| 四 | 商品名、商品の商標又は製造者名 | 商品名だけで、製造者名を書かない |
| 五 | 商品に型式があるときはその型式 | 型式のある商品なのに型式を書かない |
| 六 | 商品の数量 | 「一式」「セット」とだけ書く |
| 七 | 契約不適合の場合の事業者の責任の定めがあるときの内容 | 責任を負わない旨を書くと、規則6条の基準に反する |
| 八 | 契約の解除に関する定めがあるときの内容 | 解除の定めが民法より購入者に不利だと、規則6条の基準に反する |
| 九 | その他の特約があるときの内容 | 約款や別紙に特約があるのに、契約書面に写さない |
商品の記載が不要な役務だけの契約でも、役務の種類と内容は、4条1項一号・四号により特定できる程度に書く必要があります(通達、PDF10〜11頁)。
省令事項のうち七号・八号・九号は「定めがあるときは」記載する事項です。しかし、規則6条1項は、書面の内容そのものに基準を設けています。契約不適合の責任を負わない旨、購入者からの解除ができない旨、法令に反する特約を定めること自体が禁じられているため、免責条項や解約不可条項を置いた民事の契約書は、そのままでは法定書面になりません。
「引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に販売業者がその不適合について責任を負わない旨が定められていないこと。」
「購入者又は役務の提供を受ける者からの契約の解除ができない旨が定められていないこと。」
「法令に違反する特約が定められていないこと。」
解除に関する事項(規則7条1項):役務提供契約の場合
契約書面の中心は、解除に関する事項です。規則7条1項は、商品の売買、権利の売買、役務提供の三つに分けて、書くべき事項をイからトまで(役務は七つ)列挙します。役務提供契約の場合は次のとおりです。
役務提供契約のクーリング・オフに関する事項(規則7条1項の表・三)
| 号 | 書く事項 |
|---|---|
| イ | 契約書面(先に申込み時の書面を受け取っていればその書面)を受け取った日から8日が過ぎるまでは、書面または電磁的記録により申込みの撤回・解除ができること |
| ロ | 事業者が不実のことを告げて誤認させた、または威迫して困惑させ、期間内に行使できなかった場合は、改めて交付した書面を受け取った日から8日を経過するまで行使できること |
| ハ | 通知を発した時に効力が生じること |
| ニ | 損害賠償又は違約金の支払を請求できないこと |
| ホ | すでに役務が提供されていても、役務の対価その他の金銭の支払を請求できないこと |
| ヘ | 契約に関連して金銭を受領しているときは、速やかに全額を返還すること |
| ト | 役務の提供で土地・建物などの現状が変更されたときは、無償で原状回復を請求できること |
商品の売買では、引取り費用の事業者負担と、使用利益の請求不可が加わります。権利の売買では、返還費用の事業者負担などが加わります。これらの事項は、すべて赤枠の中に赤字で書きます(規則7条6項)。
条文で確認する:特定継続的役務提供・連鎖販売・業務提供誘引販売・訪問購入
特定継続的役務提供の契約書面は、特商法42条2項が七つの号を定めます。一号は役務の内容と購入が必要な商品の商品名、二号は対価その他の金銭の額、三号は支払の時期と方法、四号は提供期間、五号は8日のクーリング・オフ、六号は中途解約、七号は省令事項です。
「役務提供事業者は、特定継続的役務提供契約を締結したときは、遅滞なく、主務省令で定めるところにより、次の事項について当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。」
「一 役務の内容であつて主務省令で定める事項及び当該役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名」
「二 役務の対価その他の役務の提供を受ける者が支払わなければならない金銭の額」
「三 前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法」
「四 役務の提供期間」
「五 第四十八条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項を含む。)」
「六 第四十九条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項、第五項及び第六項の規定に関する事項を含む。)」
「七 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項」
省令では、一号の「役務の内容」として、役務の種類、提供の形態又は方法、時間や回数などの数量の合計、役務を直接提供する人の資格・能力などに関する特約の四つが定められ(規則93条1項)、七号の省令事項として、次の八つが定められています(規則93条2項)。
「二 特定継続的役務提供契約の締結を担当した者の氏名」
「三 特定継続的役務提供契約の締結の年月日」
「七 役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合には、当該商品を販売する者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあつては代表者の氏名」
二号の金額は、総額だけでは足りません。規則94条1項の表は、金額を「費目ごとの明細及びその合計」で書くことを求めています。
「入学金、入会金、授業料その他の役務の対価、施設整備費、入学又は入会のための試験に係る検定料、役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品の価格その他の費目ごとの明細及びその合計」
連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引の契約書面は、条文が五つの号を定めます(特商法37条2項、55条2項)。商品・役務の種類と内容、再販売や業務提供の条件、特定負担、解除に関する事項、省令事項です。連鎖販売取引は、商標・商号の使用条件、特定利益の計算の仕方と支払の条件などが特商法施行規則79条・80条で、業務提供誘引販売取引は、提供する業務の内容・回数や時間・報酬の単価と計算の仕方が、特商法施行規則121条2項で、細かく定められています[3]。
訪問購入の契約書面は、物品の購入の取引であるため、58条の8第1項が、58条の7第1項の各号(物品の種類、購入価格、代金の支払の時期と方法、引渡時期と引渡しの方法、解除に関する事項、引渡しの拒絶に関する事項、省令事項)を引いて定めます。解除に関する事項と引渡しの拒絶に関する事項は、赤枠の中に赤字で書きます(特商法施行規則134条)[3]。
よくある漏れ:誤りと正しいやり方
契約書面の漏れは、民事の契約書を契約書面として使う場面で最も多く起こります。実務でよく見られる順に、八つの型を対比で示します。
書き方の例(一般的な例) 契約書面のよくある漏れ
民事の契約書で兼ねる
理由民事の契約書は、当事者の合意に必要な事項を書く書面です。契約書面は、法定の事項がすべて記載されて初めて、クーリング・オフの期間を数え始める起点になります。
解除の定めが一般条項だけ
理由解除に関する事項は、条文が書かせる中心の事項です。法令に従うと書くだけでは、購入者がクーリング・オフの内容を知る手がかりにならないため、記載したことになりません。
提供時期・対価・支払方法
理由4条1項二号から四号が、価格・対価、支払の時期と方法、引渡時期・提供時期を求めています。特定継続的役務提供では、費目ごとの明細と合計が規則94条1項の表で必要です。
参照切れ・約款の組入れ
理由法定事項が書面のどこにも見つからない状態になると、書面として不備です。記載しきれない場合に別紙を同時に交付する扱いは、通達が示しています(PDF10〜11頁)。
交付の時期
理由契約書面は遅滞なく交付する義務があります(5条1項)。「遅滞なく」の目安は通達が示しています(PDF11〜12頁)。交付が遅れる間、クーリング・オフの期間は数え始められません。
書面の交付前の着手
理由クーリング・オフが成立すると、すでに役務が提供されていても、対価の請求はできず(9条5項)、役務に伴う現状変更は無償で原状回復を請求できます(9条7項)。着手が早いほど、戻す範囲が大きくなります。
事業者情報の開示方法
理由通信販売の広告の表示(11条)で、請求に応じて開示する運用が許される範囲と、契約書面の義務(規則5条一号)は別の規定です。契約書面では開示を省略できません。
読むべき旨の赤枠
理由規則6条2項・3項(訪問販売)が、この定めを置いています。電話勧誘販売は規則46条2項・3項、特定継続的役務提供は規則94条4項・5項です。
裁判例と行政処分に見る契約書面
契約書面の不備は、裁判で「期間が進行したか」という形で争われます。確認できた裁判例を、判断が分かれている点も含めて載せます。いずれも下級審の判断で、他の事案に当然に当てはまるとはいえません。
裁判例契約書の記載事項の欠落が争われた事例(訪問販売)[4]
- 裁判所・判決日
- 京都地方裁判所 平成17年5月25日
- 事件番号
- 平成16年(ワ)第3331号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨自宅を訪問した事業者と、水道管の洗浄、浄水器などの売買と取付け、床下換気工事を相次いで契約した高齢の消費者が、クーリング・オフなどで支払額の返還を求めました。
判断の要点交付された契約書には、事業者の住所・代表者名・担当者名の欠け、商品の特定の不足、支払方法が「ローン」とだけ書かれていること、クーリング・オフの要件と効果の記載の欠けなどがありました。裁判所は、いずれも5条の書面に当たらないと判断し、期間は進行していないとして、クーリング・オフを有効とし、支払済みの代金の返還を認めました。
事業者の実務への示唆複数の契約を重ねるときは、契約ごとに書面の記載事項が必要です。「契約書がある」だけではなく、記載事項の一つ一つが問われます。
裁判例書面の記載不備が「期間が進行しない」と判断された事例(住宅リフォーム)[5]
- 裁判所・判決日
- 大阪高等裁判所 令和6年3月14日
- 事件番号
- 令和5年(ネ)第4号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨リフォーム工事の契約をした施主が、工事後に生じた別の出来事を契機に、クーリング・オフを通知して支払済みの申込金の返還を求め、事業者は書面が法定書面であること、請求による訪問であること、権利の濫用であることを主張しました。
判断の要点契約書の一部のクーリング・オフの記載は赤字になっておらず、すでに役務を提供した場合でも対価を請求できないことや、原状回復を無償で請求できることの記載が欠けていました。注文書にはクーリング・オフの記載自体がありませんでした。裁判所は、これらを理由に法定書面に当たらず、期間は進行していないとしました。重要な事項が書いてあれば足りるとする事業者の主張は、規則が記載事項を具体的に定めた趣旨から採りませんでした。
事業者の実務への示唆注文書や見積書を契約書面として使うときも、クーリング・オフの記載の赤字、効果の全項目が必要です。事案は特殊な背景を持つため、射程を広げすぎずに読みます。
裁判例書面の記載に一部の欠けがあっても、法定書面の効力が否定されなかった事例[6]
- 裁判所・判決日
- 山口地方裁判所 平成15年3月31日
- 事件番号
- 平成12年(ワ)第86号、同第304号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨布団の販売とモニター契約を組み合わせた商法で、購入者が割賦購入あっせん(信販会社の立替払い)の支払を拒み、クーリング・オフなどを主張した事案です。当時の訪問販売法の規定が問題になりました。
判断の要点商品名と販売価格など、購入者が正確に認識できる記載があれば、多少の欠けがあっても法定書面の効力は左右されないと判断し、法定記載事項が一つでも欠ければ法定書面ではないとの購入者の主張を採りませんでした。複数の書面を合わせて判断し、書面が交付されたと認められた購入者については、期間の経過を理由にクーリング・オフを認めませんでした。
事業者の実務への示唆判断の厳しさは時期と事案で異なります。この判決を根拠に軽微な欠けを許容する運用を作るのは避け、判断が分かれうる論点であることを前提に、記載事項を一つずつ満たす運用が確実です。
裁判例契約書面が契約時に交付されなかった特定継続的役務提供の事例[7]
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所 平成16年9月29日
- 事件番号
- 平成16年(ハ)第2054号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨外国語の指導契約(6か月、一括払い)を結んだ受講者が、内容に不満で内容証明郵便で解約を通知し、事業者は新契約を結んでおり中途解約できないと主張しました。
判断の要点裁判所は、新契約とされたものも特定継続的役務提供契約に当たり、中途解約を認めない約款は無効としました。さらに、契約書面が当初は作成・交付されておらず、解約の申出の後に作成・交付されたことから、クーリング・オフの期間は進行しておらず、解約の申出はクーリング・オフと評価できるとして、受講者の請求を認めました。
事業者の実務への示唆契約書面は、契約時に渡す必要があります。契約の「変更」や「新契約」という名目を付けても、実質で判断されます。
行政処分では、消費者庁が2025年1月22日に出した電話勧誘販売の業務停止命令(3か月)の事案で、違反の型として、勧誘に先立つ事業者名の不明示、契約内容を明らかにする書面の不交付(19条1項)、解約に関する不実の告知が挙げられています[8]。書面を交付しない運用が、不実告知と組み合わさって処分に至った型です。
また、消費者庁の執行状況の一覧には、訪問販売で契約書面の記載不備(5条1項)や、書面の不交付(5条2項)を違反事実とする処分が複数掲載されています(一覧の記載による。個別の公表ページの本文は確認していません)[10]。契約書面の義務違反は、罰則(特商法71条1号)の対象でもあります。
運用の手順:契約書面を契約ごとに確認する
最後に、契約書面を運用に落とすための手順を整理します。
- 取引を類型に当てはめる。導線ごと(訪問、会場、通話、フォーム)に類型を決め、契約書面が要る導線を特定する
- 条文の号と省令の表に照らして、様式の欄を作る。事業者情報、担当者、年月日、対価の明細、支払の時期と方法、提供時期、解除の事項、特約の欄を設ける
- 解除に関する事項を、赤枠の中に赤字で書く。民事の契約書の免責条項や解約不可条項が、規則6条の基準に触れないかを確認する
- 契約を結んだら遅滞なく渡す。電子で渡すなら承諾の取得と、承諾を得たことを証する書面の交付を先に済ませる
- 交付の日・方法・担当者を契約ごとに記録し、渡した版(編集用でなく交付用)の写しを保存する
電子で渡す場合の承諾の取り方は承諾書面、業種ごとの具体的な書き方はオンライン講座向けの契約書面と赤枠の解説、住宅リフォーム向けのクーリング・オフの解説、エステ向けの概要書面・契約書面の解説にあります。訪問サービスの判定は訪問サービスで確認できます。
この書類の作成・点検は、事務所で承ります(料金のご案内)。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律9条1項、24条1項、48条1項、71条1号(e-Gov法令検索、法令ID:351AC0000000057) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律4条1項、5条1項・2項、18条1項、19条1項・2項、37条2項、42条2項・3項、55条2項、58条の7第1項、58条の8(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則5条、6条、7条、14条、45条〜47条、54条、79条〜80条、93条、94条、120条、121条、132条〜134条(e-Gov法令検索、法令ID:351M50000400089) https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 裁判例京都地方裁判所 平成17年5月25日判決(平成16年(ワ)第3331号)。確認の範囲:全文。上級審の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/6686/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例大阪高等裁判所 令和6年3月14日判決(令和5年(ネ)第4号)。確認の範囲:全文。上告の有無は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/92978/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例山口地方裁判所 平成15年3月31日判決(平成12年(ワ)第86号、同第304号)。確認の範囲:全文。上級審の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/7998/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所 平成16年9月29日判決(平成16年(ハ)第2054号)。確認の範囲:全文。上級審の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 公表資料(電話勧誘販売、2025年1月22日処分、1月23日公表)。業務停止命令3か月、違反の型:契約内容を明らかにする書面の不交付ほか https://www.caa.go.jp/notice/entry/040837/確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表)。販売購入形態別の件数(経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」執行状況(年度別一覧)。訪問販売の処分の違反事実は一覧の記載による https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
民事の契約書と契約書面は、別々に作る必要がありますか。
別々に作る義務はありません。民事の契約書に、条文の号と省令が定める事項をすべて記載し、赤枠・赤字・8ポイント以上の書式を満たせば、一つの書面で兼ねられます。ただし、免責条項や解約不可条項など、規則6条の基準に触れる定めが入っていると、法定の書面になりません。
契約書面の交付が遅れると、どうなりますか。
契約書面は契約を結んだとき遅滞なく交付する義務があり(特商法5条1項など)、交付が遅れると、クーリング・オフの期間を数え始める起点が来ません。通達は、遅滞なくの目安を通常3〜4日以内としています。罰則は、書面を交付しない場合に定められています(71条1号)。
契約書面に、商品の製造者名や型式まで書く必要がありますか。
商品を売る取引では必要です。訪問販売の契約書面は、規則5条の四号から六号で、商品名と商標又は製造者名、型式があるときはその型式、数量を求めています。役務だけの契約では、役務の種類と内容を特定できる程度に書きます。
契約書面は、電子で渡せますか。
相手の承諾を得れば、書面に代えて電磁的方法で事項を提供できます(特商法5条3項など)。承諾の取得の前に説明と確認を行い、承諾を得たことを証する書面を渡す手順が必要です。承諾を得ない電子送付は、書面を交付したことになりません。手順は電子交付の承諾書面のページで扱っています。
通信販売の事業者は、契約書面を渡さなくてよいのですか。
通信販売には、契約書面の交付義務はありません。ただし、広告の表示事項(特商法11条)、申込み画面の表示(12条の6)、前払式の場合の承諾等の通知(13条)は定められています。通話や会場の導線が併存するときは、その導線の類型の契約書面が必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所