特商法7類型のクーリング・オフ早見表

7つの取引類型ごとに、期間・起算日・必要な書面・中途解約・広告規制・禁止行為を、根拠条文つきで一覧にしました。起算日をめぐる裁判例と行政処分の型も確認できます。

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このページの要点

  • クーリング・オフは訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入が8日、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引が20日で、通信販売にはない
  • 起算日は契約日ではなく、書面を受領した日。記載に不備があれば、起算日が到来しないことがある
  • 中途解約が特商法にあるのは特定継続的役務提供(49条)と連鎖販売取引(40条の2)だけ
  • 表の数字は、30秒診断・サービス別ページの表と同じ

結論:7類型の違いは、期間・書面・中途解約・広告の4点で見る

このページの結論

誰に当てはまるか
講座・スクール・サロン・オンラインサービスなど、役務や商品を売る事業者
何をすべきか
自社の導線がどの類型に当たるかを決め、その類型の行の書面と期間をそろえる
期限
クーリング・オフの期間は訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入が8日、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引が20日、通信販売はなし

特商法の取引類型は、訪問販売、電話勧誘販売、通信販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引、訪問購入の7つです[1][3]。どの類型に当たるかは30秒診断で確かめられます。この表の各欄の末尾には根拠条文を付けています。表の数字は、30秒診断・サービス別ページの表と同じものを使っています。

  1. まず定義の表で、自社の導線がどの類型に当たるかを決める(導線が複数ならそれぞれ)。
  2. その類型の行で、クーリング・オフの期間・起算日・通知の方法を確認する。
  3. 同じ行で、必要な書面と赤枠、中途解約、広告規制、禁止行為を確認する。
  4. 最後に、適用除外と解除時の上限の表で、自社の取引が除かれるか、請求できる範囲がどこまでかを確認する。

表を読むときの前提は2つあります。1つ目は、7類型は排他的ではないことです。特定継続的役務提供は勧誘の場所・手段を問わないため、店舗で自分から申し込んだ契約でも、要件を満たせば対象になり、さらに訪問販売や電話勧誘販売の要件にも当たる場合があります。2つ目は、通信販売だけが、クーリング・オフではなく返品の定めで規律されていることです。

7類型の定義と、当てはまる場所・手段

取引の類型定義場所・手段
訪問販売営業所等以外の場所で申込みを受け・契約を結ぶ販売や役務の提供、営業所等でも特定顧客(呼び止めて同行させた者など)から申込みを受け・契約を結ぶもの(特商法2条1項1号・2号)自宅・職場などの訪問先、セミナー会場・貸会議室・展示会など営業所等以外の場所/呼び出した特定顧客(特商法2条1項、同法施行規則1条、同法施行令1条)
電話勧誘販売事業者が電話をかけ(又は政令の方法で電話をかけさせ)、その電話で勧誘して、郵便等により申込みを受け・契約を結ぶ販売や役務の提供(特商法2条3項、同法施行令2条)事業者からの電話、通話・Web会議での勧誘(インターネット回線の通話を含むかは消費者庁Q&Aで確認)(特商法2条3項)
通信販売郵便等で申込みを受けて行う商品・特定権利の販売や役務の提供のうち、電話勧誘販売に当たらないもの(特商法2条2項)ネットのフォーム、LINE、メール、書面など、通話・会場での勧誘を伴わない申込み(特商法2条2項)
連鎖販売取引物品の販売・役務の提供の事業で、再販売・受託販売・販売のあっせん等をする者を特定利益の収受で誘引し、特定負担を伴う取引をするもの(特商法33条1項)勧誘の場所・手段を問わない(店舗等によらないで事業を行う個人が相手のときの規律)(特商法37条1項・40条1項)
特定継続的役務提供政令で定める7つの役務を、政令の期間を超えて提供し、政令の金額を超える金銭を受け取る契約(特定権利の販売を含む)(特商法41条1項・2項、同法施行令24条・25条・別表第四)勧誘の場所・手段を問わない(店舗でも、ネットでも、要件に当たれば対象)(特商法41条)
業務提供誘引販売取引提供・あっせんする業務で得られる利益(業務提供利益)で誘引し、特定負担を伴う商品販売・役務提供の取引をするもの(特商法51条1項)勧誘の場所・手段を問わない(事業所等によらないで業務を行う個人が相手のときの規律)(特商法55条1項・58条1項)
訪問購入物品の購入を業とする者が、営業所等以外の場所で売買契約の申込みを受け・契約を結んで行う物品の購入(特商法58条の4)自宅など営業所等以外の場所での買取(店舗への持込みは含まない)(特商法58条の4、同法施行規則1条)

定義の欄は、どの類型にも「営業所等以外の場所」「電話」「郵便等」「店舗等によらない個人」といった要素があり、これらの組み合わせで類型が決まることを示しています。同じ事業の中に複数の導線があれば、導線ごとに別の類型に当たります。

クーリング・オフの有無・期間・起算日・通知の方法

通信販売にクーリング・オフはありません。その代わり、商品・特定権利は、引渡しを受けた日から8日間は撤回・解除ができる定めがあります(15条の3)。広告に返品の特約を表示していれば、この定めは適用されません。役務は15条の3の対象外です[1][4][6]。

条文の引用特定商取引に関する法律 第15条の3第1項(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。」

「当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合」

解説1つ目が返品の定め、2つ目がただし書の特約です。クーリング・オフとは異なり、起算日は書面の受領日ではなく商品の引渡し等を受けた日で、特約を表示すれば適用されません。消費者庁のガイドの通信販売のページは、この仕組みを「申込みの撤回等」と説明しています。

7類型のクーリング・オフ:有無・期間・起算日・通知

取引の類型クーリング・オフ起算日通知の方法と効力
訪問販売あり:8日(特商法9条1項)5条1項又は2項の書面を受領した日から数える(その前に4条1項の書面を受領していれば、その日から)(特商法9条1項ただし書、同法施行規則7条1項)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。損害賠償・違約金は請求できない(特商法9条2項・3項)
電話勧誘販売あり:8日(特商法24条1項)19条1項又は2項の書面を受領した日から数える(その前に18条1項の書面を受領していれば、その日から)(特商法24条1項ただし書、同法施行規則47条1項)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。損害賠償・違約金は請求できない(特商法24条2項・3項)
通信販売クーリング・オフの定めなし。商品・特定権利は引渡し(移転)を受けた日から8日間は撤回・解除ができる(広告に特約を表示していれば適用なし)。役務は対象外(特商法15条の3第1項)商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して8日(特商法15条の3第1項)返送・返還の費用は購入者の負担(特商法15条の3第2項)
連鎖販売取引あり:20日(店舗等によらないで行う個人に限る)(特商法40条1項)37条2項の書面を受領した日から数える(特定負担が再販売する商品の購入で、その商品の最初の引渡しが後なら、その引渡しを受けた日から)(特商法40条1項)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。商品の引取り費用は事業者負担(特商法40条2項・3項)
特定継続的役務提供あり:8日(関連商品の販売契約も解除できる)(特商法48条1項・2項)42条2項の書面を受領した日から数える(特商法48条1項)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。損害賠償・違約金、提供済み役務の対価は請求できない(特商法48条3項・4項・6項)
業務提供誘引販売取引あり:20日(事業所等によらないで業務を行う個人に限る)(特商法58条1項)55条2項の書面を受領した日から数える(特商法58条1項)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。商品の引取り費用は事業者負担(特商法58条2項・3項)
訪問購入あり:8日(期間中は物品の引渡しも拒める)(特商法58条の14第1項、58条の15)58条の8第1項又は2項の書面を受領した日から数える(その前に58条の7第1項の書面を受領していれば、その日から)(特商法58条の14第1項ただし書)書面又は電磁的記録で通知。通知を発した時に効力が生じる。損害賠償・違約金は請求できない(特商法58条の14第2項・4項)

通信販売を除き、起算日は「契約日」ではなく「書面を受領した日」です。先に申込み時の書面を受け取っていれば、その日から数える類型(訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入)と、契約書面の受領日から数える類型(特定継続的役務提供・連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引)があります。

条文の引用特定商取引に関する法律 第9条第1項ただし書・第2項(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「申込者等が第五条第一項又は第二項の書面を受領した日(その日前に第四条第一項の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合」

「申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。」

解説訪問販売の例です。1つ目が起算日の定め、2つ目が発信時に効力が生じる定め(発信主義)です。電話勧誘販売(24条)、訪問購入(58条の14)も同じ構造で、書面の条番号だけが異なります。

通知の方法は、2022年6月1日の施行で、書面に加えて電磁的記録でもできるようになりました[1]。消費者庁のQ&Aは、電子メール、記録媒体、事業者サイトの専用フォーム、FAXなどを例に挙げ、事業者が受け付ける方法を契約書面等で特定して示すことはできる一方、不合理に限定する特約は消費者に不利な特約として無効になりうるとしています[5]。書面の電磁的方法による提供(4条2項・5条3項など)は2023年6月1日の施行です。この2つの日付を取り違えないようにしてください。

必要な書面と赤枠

7類型の必要な書面

取引の類型概要書面・申込み時の書面契約書面赤枠
訪問販売条件付き:申込み時の書面(申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要)(特商法4条1項)要:契約書面(特商法5条1項・2項)要:読むべき旨とクーリング・オフの事項を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上(特商法施行規則6条2項・3項、7条6項)
電話勧誘販売条件付き:申込み時の書面(申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要)(特商法18条1項)要:契約書面(特商法19条1項・2項)要:読むべき旨とクーリング・オフの事項を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上(特商法施行規則46条2項・3項、47条6項)
通信販売不要(書面の交付義務なし)(特商法第2章第2節)不要。前払式の通信販売では承諾等の書面による通知(13条)(特商法13条)なし
連鎖販売取引要:概要書面(特定負担をしようとする者に、契約を結ぶ前に)(特商法37条1項)要:契約書面(特商法37条2項)要:読むべき旨を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上。解除の事項も赤枠の中に赤字で(特商法施行規則78条2項、80条2項・4項)
特定継続的役務提供要:概要書面(契約を結ぶまでに)(特商法42条1項)要:契約書面(特商法42条2項)要:読むべき旨を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上。解除の事項も赤枠の中に赤字で(特商法施行規則92条2項、94条3項・4項)
業務提供誘引販売取引要:概要書面(特定負担をしようとする者に、契約を結ぶ前に)(特商法55条1項)要:契約書面(特商法55条2項)要:読むべき旨を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上。解除の事項も赤枠の中に赤字で(特商法施行規則119条2項、121条3項・5項)
訪問購入条件付き:申込み時の書面(申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要)(特商法58条の7第1項)要:契約書面(特商法58条の8第1項・2項)要:読むべき旨と解除・引渡し拒絶の事項を赤枠の中に赤字で、8ポイント以上(特商法施行規則133条2項・3項、134条2項)

申込み時の書面は、申込みを受けた際に契約を結ぶ場合は不要になる類型(訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入)と、契約を結ぶ前に必ず交付する概要書面の類型(連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引)に分かれます。書面を電磁的方法で提供する場合は、承諾を得たことを証する書面も必要です。赤枠の事項は、施行規則が類型ごとに定めています[2]。大阪高等裁判所は令和6年3月14日の判決(令和5年(ネ)第4号)で、クーリング・オフの記載が赤字でない、役務提供済みでも対価を請求できない旨の記載がないといった不備のある書面を法定書面と認めず、期間は進行していないと判断しました[7]。通達は、クーリング・オフに関する事項の記載がない書面は法定書面と認められないとし、書面を交付しなかった場合や重要事項が欠けた場合には起算日が到来せず、クーリング・オフできる状態が続くとしています(PDF19頁)[6]。詳しくは概要書面、契約書面の事項、赤枠の一覧で整理します。

中途解約・広告規制・勧誘前の明示・禁止行為

7類型の中途解約・広告規制・勧誘前の明示・禁止行為

取引の類型中途解約広告規制勧誘前の明示・再勧誘禁止行為
訪問販売特商法に定めなし(特商法第2章第2節(9条〜10条))広告の表示事項の定めなし(特商法第2章第2節)氏名等の明示、契約しない意思を示した者への勧誘の禁止(特商法3条・3条の2)不実告知、故意の不告知、威迫、勧誘目的を告げない誘引後の勧誘(特商法6条)
電話勧誘販売特商法に定めなし(特商法第2章第3節(24条〜25条))広告の表示事項の定めなし(特商法第2章第3節)氏名等の明示、契約しない意思を示した者への勧誘の禁止(特商法16条・17条)不実告知、故意の不告知、威迫(特商法21条)
通信販売特商法に定めなし(特商法第2章第2節)広告の表示事項、誇大広告等の禁止、メール・FAX広告の規制、申込み画面の表示(特商法11条・12条・12条の3〜12条の5・12条の6)定めなし解除の妨害となる不実告知の禁止、誇大広告等(特商法13条の2・12条)
連鎖販売取引あり:20日経過後は将来に向かって解除できる(特商法40条の2第1項)広告の表示事項、誇大広告等の禁止、メール広告の規制(特商法35条・36条・36条の3)氏名等の明示(再勧誘の禁止に当たる規定は、条文の見出しの確認の範囲では見当たらない)(特商法33条の2)不実告知、故意の不告知、威迫、勧誘目的を告げない誘引後の勧誘(特商法34条)
特定継続的役務提供あり:8日経過後はいつでも将来に向かって解除できる。損害賠償等は政令の上限まで(特商法49条1項・2項、同法施行令30条・31条)誇大広告等の禁止(表示事項を義務づける定めはない)(特商法43条)定めなし不実告知、故意の不告知、威迫(特商法44条)
業務提供誘引販売取引特商法に定めなし(特商法第3章の2(51条〜58条の3))広告の表示事項、誇大広告等の禁止、メール広告の規制(特商法53条・54条・54条の3)氏名等の明示(特商法51条の2)不実告知、故意の不告知、威迫、勧誘目的を告げない誘引後の勧誘(特商法52条)
訪問購入特商法に定めなし(特商法第3章の3(58条の4〜58条の17))広告の表示事項の定めなし(特商法第3章の3)氏名等の明示、勧誘の要請をしていない者への勧誘の禁止、契約しない意思を示した者への勧誘の禁止(特商法58条の5・58条の6)不実告知、故意の不告知、威迫(物品の引渡しを受けるためのものを含む)(特商法58条の10)

中途解約が特商法に定められているのは、特定継続的役務提供(49条)と連鎖販売取引(40条の2)だけです。ほかの類型は、解約や返金の条件を契約で定め、その定めは消費者契約法の規制を受けます。なお、広告規制の欄は「表示事項を義務づける定め」の有無を示しており、誇大広告等の禁止は、特定継続的役務提供(43条)を含めて広く及びます。

適用除外・解除時の上限・取消し

7類型の適用除外・解除時の上限・取消し

取引の類型適用除外解除時の損害賠償等の上限取消し・過量販売・引渡しの拒絶など
訪問販売営業のため・営業として結ぶ契約、住居での申込み・締結を請求した者、政令指定の役務・商品など(特商法26条1項1号・3項〜6項)解除時の損害賠償等の額の制限(特商法10条)過量販売の解除、申込み・承諾の意思表示の取消し(特商法9条の2・9条の3)
電話勧誘販売営業のため・営業として結ぶ契約、契約のために電話をかけることを請求した者、政令指定の取引の態様など(特商法26条1項1号・7項1号・7項2号)解除時の損害賠償等の額の制限(特商法25条)過量販売の解除、申込み・承諾の意思表示の取消し(特商法24条の2・24条の3)
通信販売営業のため・営業として結ぶ契約など(特商法26条1項1号)定めなし特定申込みの意思表示の取消し(特商法15条の4)
連鎖販売取引解除の主体は店舗等によらないで行う個人に限る(特商法40条1項)解除時の損害賠償等の額の制限(特商法40条の2第3項・4項)申込み・承諾の意思表示の取消し、商品販売契約の解除(特商法40条の3、40条の2第2項)
特定継続的役務提供営業のため・営業として結ぶ契約など(特商法50条1項1号)中途解約時の上限は役務ごとに政令で定める(特商法49条2項、同法施行令30条・31条・別表第四)申込み・承諾の意思表示の取消し(特商法49条の2)
業務提供誘引販売取引解除の主体は事業所等によらないで業務を行う個人に限る(特商法58条1項)解除時の損害賠償等の額の制限(特商法58条の3)申込み・承諾の意思表示の取消し(特商法58条の2)
訪問購入営業のため・営業として結ぶ契約、住居での申込み・締結を請求した者など(特商法58条の17第1項1号・2項1号)解除時の損害賠償等の額の制限(特商法58条の16)物品の引渡しの拒絶、引渡拒絶の告知、第三者への引渡しの通知(特商法58条の15・58条の9・58条の11)

クーリング・オフが働く場合の清算は、解除に伴う損害賠償・違約金を請求できないことが共通の骨格です(9条3項、24条3項、58条の14第4項など)。特定継続的役務提供の関連商品や、連鎖販売取引の商品販売契約の解除は別の仕組みで、詳細は7業種の早見表で扱います。

起算日をめぐる裁判例・処分例・相談件数

7類型の表で最も読み違えやすいのは、「起算日」と「通知の効力」です。起算日は契約日ではなく、法定書面を受領した日だからです。この点が実際の争いになった裁判例を、類型の違いに沿って3件確認します。いずれもその裁判所の判断で、他の事案に当然に当てはまるものではありません。

裁判例記載の不備で法定書面と認められず、期間が進行しないとされた例(訪問販売)[8]

裁判所・判決日
京都地方裁判所 平成17年5月25日
事件番号
平成16年(ワ)第3331号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/6686/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨自宅を訪問した業者から水道管の洗浄、浄水器等の売買と取付け、床下換気工事を相次いで契約した高齢の消費者が、クーリング・オフなどで支払額の返還を求めた事案です。

判断の要点交付された契約書は、事業者の住所・代表者名・担当者名の欠落、商品の特定の不足、支払方法が「ローン」とあるだけであること、クーリング・オフの要件・効果の記載の欠落などがあり、5条の書面に当たらないとされました。そのため解除の期間は進行しておらず、解除は有効として、支払済みの代金の返還が認められています。

事業者の実務への示唆訪問販売の起算日は「5条の書面」を受領した日です。契約書があっても、記載事項の一つ一つが欠けていれば起算日は到来しません。複数の契約を続けて結ぶときは、契約ごとに書面が必要です。

裁判例法人名・代表者名の誤記を理由に期間が進行しないとされた例(電話勧誘販売)[9]

裁判所・判決日
東京簡易裁判所 平成17年5月26日
事件番号
平成17年(少コ)第1186号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/8971/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨高齢者に電話で商品を勧誘して約18万円で売った事業者が、代金を請求した事案です。購入者の家族が電話でクーリング・オフを申し出、商品は3回返送されましたが、事業者は受領を拒否していました。

判断の要点契約確認書に販売業者の法人名と代表者名の誤記があり、電話勧誘販売で交付が必要な書面に当たらないため期間は進行しないとされました。また、通知は書面でするものでも、趣旨は後日の紛争防止にあるとして、電話による意思表示の存在が証拠上認められれば足りるとし、事業者の請求を棄却しています。少額訴訟の判断で、射程は限定的に読む必要があります。

事業者の実務への示唆電話勧誘販売の起算日は、現行では19条の書面を受領した日(その前に18条の書面を受領していればその日)です。書面の記載の誤りは、期間が始まらない原因になります。通知を書面に限る運用は、実際には受付の方法を広げて対応する必要があります。

裁判例契約書面が契約時に交付されず、解約の申出がクーリング・オフと評価された例(特定継続的役務提供)[10]

裁判所・判決日
東京簡易裁判所 平成16年9月29日
事件番号
平成16年(ハ)第2054号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨外国語の指導契約(6か月、約135万円の一括払い)を結んだ受講者が、内容証明郵便で解約を通知した事案です。事業者は、面談後に新しい契約を結んだと主張し、新契約は中途解約できないと争いました。

判断の要点裁判所は、新契約とされるものは原契約の受講内容を変更したもので、語学指導を中心とする特定継続的役務提供に当たり、中途解約を認めない約款は無効としました。また、契約書面が当初は作成・交付されず、解約を申し出た後に交付されたことから、書面の交付日から数える期間は進行しておらず、解約の申出はクーリング・オフと評価できるとしています。

事業者の実務への示唆特定継続的役務提供の起算日は、契約書面(42条2項)を受領した日です。契約を「変更」や「新契約」と呼び替えても、実質で判断されます。

類型ごとに、公的資料の数字を並べると、どこにトラブルが集まっているかが分かります。国民生活センターの2025年度のPIO-NET(経由相談を除く)によれば、全体の相談は約100.6万件で、このうち通信販売が38.0%を占めます[11]。通信販売の中でも定期購入に関する相談は93,065件に上り[12]、訪問購入は7,523件[13]、マルチ取引(連鎖販売取引を含む)は4,003件です[14]。通信販売にはクーリング・オフがありませんが、トラブルの量は最も多く、表示と返品・解約条件の整え方が大きな課題であることが分かります。

国民生活センターのクーリング・オフの説明は、起算を「申込書面又は契約書面のいずれか早い方を受け取った日」とし、書面に不備があれば期間を過ぎても行使できることがあるとしています[15]。この説明は、表の「起算日」の欄と同じ内容を、受け手の側から述べたものです。

類型ごとの行政処分の公表資料に見る、違反の型(事業者名は省略)

類型処分日・処分庁・内容公表資料に挙がった違反の型
電話勧誘販売令和7年1月22日 消費者庁 業務停止命令3か月・指示ほか勧誘に先立つ事業者名の不明示、契約内容を明らかにする書面の不交付、「クーリング・オフなどはない」などと告げた解除の妨害[17]
特定継続的役務提供令和8年1月29日 消費者庁 業務停止命令3か月・指示ほかエステの契約で、関連商品販売契約を含む解除に関する事項の不実告知、断る意思を示した者への迷惑を覚えさせる勧誘[18]
連鎖販売取引令和5年3月29日 消費者庁 取引等停止命令9か月・指示ほか(3事業者)氏名等の不明示、役務の内容の不告知、勧誘目的を告げずに誘引した者への勧誘、断定的判断の提供、概要書面・契約書面の交付義務違反(条番号は公表当時のもの)[19]
業務提供誘引販売取引令和5年5月17日 消費者庁 業務停止命令3か月・指示ほか(8事業者)広告に特定負担や事業者の住所等を表示しない、契約書面の交付義務違反、契約に基づく債務の一部の履行拒否(条番号は公表当時のもの)[20]
訪問販売令和8年9月17日 関東経済産業局 業務停止命令9か月・指示ほか契約書面の記載不備、解除に関する事項の不実告知、債務の一部の履行拒否など(消費者庁「執行状況」一覧の記載による)[16][21]
訪問購入令和8年8月4日 九州経済産業局 業務停止命令9か月・指示ほか氏名等の明示義務、勧誘の要請をしていない者への勧誘、書面の交付義務、引渡しの拒絶に関する告知義務(一覧の記載による)[16][22]
通信販売令和8年3月23日・26日 消費者庁(3社) 業務停止命令6か月・指示ほか定期購入の広告の誇大広告、申込み手続の画面での誤認表示(一覧の記載による)[16][23]

処分日は命令日。公表ページに違反行為が書かれていないものは、消費者庁「執行状況」の一覧の記載によりました。

読み違えやすい点と、よくある誤り→正しいやり方

書き方の例(一般的な例) 早見表の読み方でつまずく点

通信販売の返品を「クーリング・オフ」と呼んで、書面の受領日から数える

よくある書き方ネットショップの規約に「商品到着後8日以内ならクーリング・オフできます」と書き、起算日の根拠を書面の受領日と説明する。
整えた書き方通信販売は、商品の引渡しを受けた日から数える返品の定めとして書く。返品を制限するなら、特約を広告と申込み画面に表示する(15条の3)。

理由通信販売にクーリング・オフはなく、返品の定めは商品・特定権利に限られ、役務は対象外だからです。

起算日を契約日・申込日にする

よくある書き方契約書に「契約日から8日以内であれば解除できます」とだけ書く。
整えた書き方「書面を受領した日から起算して8日(先に申込み時の書面を受領した場合はその日から)」と、類型ごとの起算日を赤枠の中に赤字で書く。

理由法定の起算日は書面を受領した日であり、書面に不備があれば起算日が到来しないためです(9条1項、通達PDF19頁)。

通知を書面のみとする、または到達時に効力が生じると書く

よくある書き方「クーリング・オフは書面で、当社に到達した時点で効力が生じる」と定める。
整えた書き方書面又は電磁的記録で通知でき、通知を発した時に効力が生じると書く。受付の方法を特定する場合も、実際に使われる連絡手段を不合理に外さない。

理由効力は発信時(9条2項など)で、これに反する特約で申込者等に不利なものは無効だからです(9条8項など)。

特定継続的役務提供を「勧誘の場所によって決まる」と考える

よくある書き方店舗で本人が申し込んだ契約は、訪問販売でも電話勧誘販売でもないので、特商法の対象外と整理する。
整えた書き方指定7役務で期間・総額が要件を超えるなら、場所を問わず特定継続的役務提供として概要書面・契約書面・赤枠を整える。

理由特定継続的役務提供の規定は、勧誘の場所・手段を問わず適用されるためです(41条)。

連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引の20日を、相手が法人でも使う

よくある書き方相手が法人のときも、20日の赤枠を使うべきだと考えて整理する。
整えた書き方20日の解除は、店舗等・事業所等によらないで事業を行う個人が相手のときの規律であることを前提に、買い手の区分を確認する。

理由40条1項・58条1項の括弧書きが、解除できる相手を個人に限っているためです。

早見表のあとにすること

  • 自社の導線を書き出し、導線ごとに類型を決めた(診断または定義の表)
  • 類型ごとの起算日・通知の方法・書面・赤枠を、書面と運用の両方にそろえた
  • 規約・広告・申込み画面・書面で、返金・解約・クーリング・オフの文言が食い違っていない

実際の事業は、複数の導線を併せ持つことがほとんどです。20のサービスごとの導線と必要な書類は、サービス別早見表と、各サービスのページの冒頭にある結論の表にまとめています。判定の順番は取引の見分け方、期間の数え方は期間の数え方、用語は用語集にあります。他サイトの関連ガイドとして、特商法に基づく表記の適用判断は特商法に基づく表記の適用判断の記事、オンライン講座はZoom個別相談の記事、エステはエステの特定継続的役務の記事があります。

根拠・出典

本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。

  1. 条文特定商取引に関する法律 2条、3条・3条の2、4条・5条、6条、9条、10条、11条〜13条の2、15条の3・15条の4、16条〜19条、21条、24条・25条、26条、33条〜37条、40条〜40条の3、41条〜44条、48条〜50条、51条〜55条、58条〜58条の3、58条の4〜58条の17。e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
  2. 条文特定商取引に関する法律施行規則6条・7条・46条・47条・78条・80条・92条・94条・119条・121条・133条・134条。e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
  3. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」特定商取引法とは(取引類型ごとのクーリング・オフ期間) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/確認日:2026年10月23日
  4. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/確認日:2026年10月23日
  5. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/coolingoff.html確認日:2026年10月23日
  6. 消費者庁消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付。PDF18〜20頁・44頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
  7. 裁判例大阪高等裁判所 令和6年3月14日判決(令和5年(ネ)第4号)。裁判所「裁判例検索」(全文を確認) https://www.courts.go.jp/hanrei/92978/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  8. 裁判例京都地方裁判所 平成17年5月25日判決(平成16年(ワ)第3331号)。裁判所「裁判例検索」(全文を確認。上級審の結果は未確認) https://www.courts.go.jp/hanrei/6686/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  9. 裁判例東京簡易裁判所 平成17年5月26日判決(平成17年(少コ)第1186号、少額訴訟)。裁判所「裁判例検索」(全文を確認) https://www.courts.go.jp/hanrei/8971/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  10. 裁判例東京簡易裁判所 平成16年9月29日判決(平成16年(ハ)第2054号)。裁判所「裁判例検索」(全文を確認) https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  11. 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表。総件数約100.6万件、通信販売38.0%。経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html確認日:2026年10月23日
  12. 国民生活センター国民生活センター「定期購入」(相談の件数や傾向。通信販売での定期購入、2025年度93,065件。2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/subscription_traps.html確認日:2026年10月23日
  13. 国民生活センター国民生活センター「訪問購入」(2025年度7,523件。2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/doorstep_purchase.html確認日:2026年10月23日
  14. 国民生活センター国民生活センター「マルチ取引」(2025年度4,003件。2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/multi.html確認日:2026年10月23日
  15. 国民生活センター国民生活センター「クーリング・オフ」(2022年6月1日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html確認日:2026年10月23日
  16. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」執行状況(行政処分の一覧) https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/確認日:2026年10月23日
  17. 消費者庁消費者庁 電話勧誘販売の事業者に対する行政処分(令和7年1月22日付。公表資料) https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_250123_01.pdf確認日:2026年10月23日
  18. 消費者庁消費者庁 特定継続的役務提供の事業者に対する行政処分(令和8年1月29日付。公表資料) https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_260130_01.pdf確認日:2026年10月23日
  19. 消費者庁消費者庁 連鎖販売取引の事業者に対する行政処分(令和5年3月29日付。公表資料) https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_230330_01.pdf確認日:2026年10月23日
  20. 消費者庁消費者庁 業務提供誘引販売取引の事業者に対する行政処分(令和5年5月17日付。公表資料) https://www.caa.go.jp/notice/entry/033261/確認日:2026年10月23日
  21. 消費者庁関東経済産業局 訪問販売の事業者に対する行政処分(令和8年9月17日付。公表ページ) https://www.caa.go.jp/notice/entry/047504/確認日:2026年10月23日
  22. 消費者庁九州経済産業局 訪問購入の事業者に対する行政処分(令和8年8月4日付。公表ページ) https://www.caa.go.jp/notice/entry/047077/確認日:2026年10月23日
  23. 消費者庁消費者庁 通信販売の事業者に対する行政処分(令和8年3月23日・26日付。公表ページ) https://www.caa.go.jp/notice/entry/045634/確認日:2026年10月23日

よくあるご質問

通信販売にクーリング・オフがないのはなぜですか?

特商法の通信販売の章に、クーリング・オフに当たる定めがないためです。そのかわり、商品・特定権利は引渡しから8日間の返品を認める15条の3があり、広告に特約を表示すれば制限できます。役務は対象外です。

8日と20日はどの類型に当たりますか?

訪問販売(9条1項)、電話勧誘販売(24条1項)、特定継続的役務提供(48条1項)、訪問購入(58条の14第1項)は8日です。連鎖販売取引(40条1項)と業務提供誘引販売取引(58条1項)は20日です。

契約書面だけで足りる類型はありますか?

訪問販売・電話勧誘販売・訪問購入は、申込みを受けた際に契約を結ぶ場合、申込み時の書面は不要で契約書面だけで足ります(4条1項ただし書、18条1項ただし書、58条の7第1項ただし書)。連鎖販売取引・特定継続的役務提供・業務提供誘引販売取引は、契約前の概要書面と契約書面の両方が必要です。

中途解約の定めがない類型は、いつでも解約を断れますか?

断れるとは限りません。特商法に中途解約の定めがなくても、契約の解約・返金の条件は消費者契約法の規制を受け、平均的な損害を超える違約金や、消費者の利益を一方的に害する条項は無効になりえます。

適用除外は、どの類型にもありますか?

ほとんどの類型で、営業のため・営業として結ぶ契約は適用除外とされています(26条1項1号、50条1項1号、58条の17第1項1号)。連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引は、店舗等・事業所等によらないで行う個人が相手のときの規律です。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所

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