このページの要点
- 抗弁の接続は民法の当然の帰結ではなく、法律が特に認めた制度。カード払いの分割・リボは割賦販売法30条の4、個別クレジットは35条の3の19が定め、支払総額が政令の金額(4万円、リボ払いは3万8千円)に満たなければ働かない。
- 個別クレジットは、訪問販売・電話勧誘販売に係る契約で、勧誘時の不実告知を理由に与信契約を取り消せる場合がある(割賦販売法35条の3の13)。最高裁平成29年判決は、名義貸しの勧誘での告知を重要なものと判断した。
- 下級審は、モニター商法で全部の支払拒絶を認めた例(広島高裁岡山支部)、信義則で一部の支払を命じた例(名古屋地裁)、名義貸しを理由に抗弁を認めなかった例(札幌地裁)に分かれ、上級審の結果は未確認のものがある。
- 販売時の説明と書面は、与信会社との関係にも影響する。決済方式の整理、書面の記載、クーリング・オフ後の連絡の手順を、導入前に決めておく。
結論:クレジットを使う販売は、販売方法の問題が与信会社にも及ぶ場面と、及ばない場面がある
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 講座・スクール・会員制サービスなどで、カード払いの分割・リボ払い、信販会社の分割払い、決済代行会社の分割払いを受け付けている(または導入を考えている)事業者。
- 何をすべきか
- 決済が自社割賦・包括信用・個別信用のどれに当たるかを先に決める。そのうえで、勧誘の説明と書面(契約書面・概要書面)を、与信会社との関係でも問題にならない水準に整える。
- 期限
- 決済方式を決める前。個別クレジットの取消権は、追認できる時から1年間・契約締結から5年で消える(割賦販売法35条の3の13第7項)が、事業者の側の見直しは導入前から始める。
クレジットや分割払いを受け付けると、販売代金は事業者の手元に早く入ります。その反面、販売の方法に問題があったとき、購入者が与信会社(代金を立て替えたカード会社や信販会社)への支払を止めたり、契約そのものを取り消したりする道が、法律で用意されています。[1]裁判所はこの仕組みを、条文と事案に即して一つずつ判断してきました。
このページは、割賦販売法の「抗弁の接続(購入者が販売業者に対して主張できる事由を、代金の立替払いを請求してきた与信会社にも主張できる仕組み。用語集)」と「個別信用購入あっせんの取消し」について、最高裁判所の判決3件と、下級審の判決6件を整理します。決済方式ごとの義務の整理は分割払い・カードのクーリング・オフ、書面の記載は契約書面の事項で扱います。
判決から読み取れる結論は三つです。第一に、抗弁の接続は民法の当然の帰結ではなく、法律が特に認めた制度です。第二に、個別クレジットでは、勧誘時の不実告知を理由に、クレジット契約自体を取り消せる場合があります。第三に、購入者が仕組みを理解して関わった事案では、抗弁が認められていません。[4][6][9]
三つの決済方式と、販売の問題が及ぶ範囲(条文の整理)
| 決済方式 | 根拠条文 | 販売の問題が与信会社に及ぶ形 | 事業者の側に残ること |
|---|---|---|---|
| カード払いの分割・リボ(包括信用購入あっせん) | 割賦販売法30条の4(リボは30条の5) | 販売業者に対して生じている事由を、請求してきたカード会社に対抗できる(抗弁の接続)。政令の金額に満たない支払総額には働かない | 返金の協力、カード会社への連絡の手順、加盟店としての説明[1][2] |
| 信販会社の分割払い(個別信用購入あっせん) | 割賦販売法35条の3の19が抗弁の接続、35条の3の13が取消し、35条の3の10が申込みの撤回等 | 抗弁の接続に加え、訪問販売・電話勧誘販売に係る契約では、不実告知などを理由に与信契約を取り消せる。書面による撤回等の規定もある | 勧誘時の告知内容の正確さ、与信会社への通知の手順[1] |
| 自社で分割して受け取る(自社割賦) | 同法2条1項1号ほか | 与信会社が介在しないため、販売の問題は事業者自身に対する主張になる | 割賦販売法の書面・表示、解除の制限、損害賠償等の上限を自社で整える |
表の整理は条文の文言に基づきます。個々の取引がどの欄に当たるかは、代金を誰が立て替え、誰が回収するかで決まります。
条文の枠組み:誰が、何を、いつまで対抗できるか
最初に、判決が前提にしている条文を確認します。カード払いの分割・リボ払いについて、割賦販売法30条の4第1項は、購入者が販売業者に対して持っている事由を、請求してきた包括信用購入あっせん業者にも対抗できると定めています。[1]
「…当該商品若しくは当該指定権利の販売につきそれを販売した包括信用購入あつせん関係販売業者又は当該役務の提供につきそれを提供する包括信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする包括信用購入あつせん業者に対抗することができる。」
信販会社と購入者が個別に立替払契約を結ぶ個別クレジットは、割賦販売法2条4項で「個別信用購入あっせん」と定義され、35条の3の19が同じ仕組みを置いています。[1]
「この法律において「個別信用購入あつせん」とは、カード等を利用することなく、特定の販売業者が行う購入者への商品若しくは指定権利の販売又は特定の役務提供事業者が行う役務の提供を受ける者への役務の提供を条件として」
「…当該契約に係る個別信用購入あつせん関係販売業者又は個別信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して生じている事由をもつて、当該支払の請求をする個別信用購入あつせん業者に対抗することができる。」
「前項の規定に反する特約であつて購入者又は役務の提供を受ける者に不利なものは、無効とする。」
ただし、少額の取引には働きません。政令は金額の基準を定めています。[2]
「法第三十条の四第四項の政令で定める金額は、四万円とする。」
「法第三十条の五第一項において準用する法第三十条の四第四項の政令で定める金額は、三万八千円とする。」
「法第三十五条の三の十九第四項の政令で定める金額は、四万円とする。」
さらに、個別クレジットには「取消し」の規定があります。訪問販売や電話勧誘販売に係る個別クレジット契約で、販売業者が勧誘の際に一定の事項について不実のことを告げた場合に、購入者がクレジット契約の申込みやその承諾を取り消せるという規定です。[1]
「…これらによつて当該契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。」
「…当該個別信用購入あつせん業者は、当該購入者又は当該役務の提供を受ける者に対し、個別信用購入あつせん関係販売業者又は個別信用購入あつせん関係役務提供事業者に対して交付をした商品若しくは指定権利の代金又は役務の対価の全部又は一部に相当する金額の支払を請求することができない。」
最高裁判所の判決:制度の位置づけ、立替払契約の効力、告知の重要性
最高裁判所の判決は、抗弁の接続の外側にある民法上の考え方と、条文の読み方を示しています。三件を、時間の順に整理します。いずれも裁判所のウェブサイトの詳細ページ(判示事項と裁判要旨)で確認した範囲で書いており、判決書の全文は確認できていません。
裁判例抗弁の接続の規定ができる前の個品割賦購入あっせん[4]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成2年2月20日
- 事件番号
- 昭和59年(オ)第1088号(集民159号151頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/62922/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨商品の売買代金を信販会社が立て替える個品割賦購入あっせんで、売買契約が、販売業者の商品引渡しの不履行を原因として合意解除された事案です。購入者は、解除を理由に信販会社からの請求を拒めるかを争いました。割賦販売法30条の4第1項が新設される前の判断です。
判断の要点最高裁は、立替払契約に購入者が信販会社の請求を断れるとする特別の約束がある場合や、販売業者が履行しなくなる事情を信販会社が知り、または知り得たのに立替払を実行したなど、その結果を信販会社に負担させるのが信義則上相当といえる特段の事情がある場合を除き、購入者は合意解除を理由に信販会社の請求を断ることはできないとしました。
事業者の実務への示唆現在の抗弁の接続は、民法の考え方から当然に生まれるものではなく、購入者保護のために法律が特に認めた制度だと読めます。契約書や約款の工夫で同じ結果を作ろうとする設計ではなく、条文が定める範囲(対象、金額の基準)を確認するのが出発点になります。
裁判例売買契約が公序良俗に反して無効な場合の立替払契約[5]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成23年10月25日
- 事件番号
- 平成21年(受)第1096号(民集65巻7号3114頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/81723/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨個品割賦購入あっせんにおいて、売買契約が公序良俗違反で無効とされるとき、立替払契約まで当然に無効になるのかが問題となった事案です。参照法条には割賦販売法35条の3の19が含まれています。
判断の要点最高裁は、販売業者とあっせん業者の関係、販売業者が立替払契約の手続にどの程度関与したか、販売業者の公序良俗に反する行為をあっせん業者がどの程度認識していたかなどに照らし、信義則上、立替払契約まで無効とするのが相当といえる特段の事情がない限り、立替払契約は無効にならないとしました。
事業者の実務への示唆売買が無効だと評価されても、与信契約は当然には消えません。購入者が与信会社の請求を止めるには、抗弁の接続や取消しの規定に当てはまることが必要になります。事業者にとっては、販売方法の違法性が、与信会社との関係では「特段の事情」の有無の問題として現れることを意味します。
裁判例名義上の購入者となることを承諾した場合の告知の重要性[6]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年2月21日
- 事件番号
- 平成27年(受)第659号(民集71巻2号99頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/86517/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。結果は破棄差戻し。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨個別信用購入あっせんで、販売業者に頼まれた購入者が、名義だけの購入者になることを承知して、あっせん業者と立替払契約を結んだ事案です。販売業者は、名義人を必要としている高齢者等がいること、その高齢者等との間では売買契約も商品の引渡しも済んでいること、高齢者等が払えなくても自分が確実に払う意思と資力があることを説明していました。
判断の要点最高裁は、こうした説明は、割賦販売法35条の3の13第1項6号の「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」にあたると判断しました。この判断には反対意見が付されています。
事業者の実務への示唆取消しの対象となる事項は、条文に列挙された事項だけでなく、購入者の判断に影響する重要な事項に広がっています。勧誘時の説明が、クレジット契約を結ぶかどうかの判断材料になる場合は、その説明の正確さがクレジット契約の効力にも関わります。名義貸しの特殊な事案であることから、通常の購入契約にそのまま当てはめることはできません。
下級審の判断:モニター商法、名義貸し、家庭教師の教材、クーリング・オフとの関係
下級審の判断は、事案ごとの色合いが濃く、結論が分かれています。ここでは、副業・紹介報酬を組み込んだ販売(モニター商法)、名義貸し、特定継続的役務の関連商品、クーリング・オフとの関係の順に並べます。下級審の判断は、その裁判所の判断であり、他の裁判所や別の事案に当然に当てはまるものではありません。上級審の結果は、確認できていないものがあります。
裁判例モニター商法とクレジット:抗弁は対抗できるが、信義則により一部の支払を命じた[7]
- 裁判所・判決日
- 名古屋地方裁判所民事第4部 平成17年10月27日
- 事件番号
- 平成12年(ワ)第4826号ほか(債務不存在確認等請求事件、反訴は立替金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/7457/detail4/index.html(確認の範囲:主要部分(事案の概要、認定事実の中心、抗弁接続と信義則の判断、結論)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨寝具を購入するとモニター会員になり、毎月一定額のモニター料を受け取れる、新規購入者を紹介すると手数料が出る、という商法です。代金をクレジットで払った購入者らが、信販会社に対し、当時の割賦販売法30条の4の抗弁接続を主張しました。
判断の要点裁判所は、モニター業務の実態が簡単なアンケートとチラシ配布にとどまり、モニター料に見合う価値を生まず、仕組みは破綻が避けられないものだったと認定し、購入者らは認定された抗弁を信販会社に対抗できるとしました。他方、全面的に認めると、購入者らが受け取ったモニター料を保持したまま代金の支払も免れることになり信義則に反するとして、受領済みのモニター料等に商品の実質的価値を加えた額から既払額を引いた範囲で、支払を命じました。
事業者の実務への示唆副業・紹介報酬の仕組みを組み込んだ販売は、売買とモニター契約が結び付けて判断されます。報酬の実態がなければ、クレジットを使った購入者は与信会社に対しても主張できる、というのがこの裁判所の判断です。旧法の事案で、現行の個別方式の規定(割賦販売法35条の3の19)とは条文が異なります。上級審の結果は未確認です。
裁判例同種のモニター商法で、背信的事情を認めず全部の支払拒絶を認めた[8]
- 裁判所・判決日
- 広島高等裁判所岡山支部第2部 平成18年1月31日
- 事件番号
- 平成17年(ネ)第27号(債務不存在確認等本訴、立替金反訴。原審は岡山地方裁判所平成12年(ワ)第360号)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/32922/detail4/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項の要旨と主文)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨寝具セットを買ってモニター会員契約を結んだ購入者らが、代金の立替払契約の相手である信販会社に対して債務の不存在の確認などを求め、信販会社が立替金の支払を求めた事案です。原審は抗弁の接続を認めつつも、全額の支払を拒むのは信義則に反するとして、一部の支払を命じていました。
判断の要点本判決は、当時の割賦販売法30条の4の趣旨に照らして検討し、購入者らに抗弁の対抗を認めないべき背信的な事情はうかがえないとして、信販会社からの割賦金の請求は全部拒むことができるとし、原判決を一部変更しました。
事業者の実務への示唆同じ類型の事案で、名古屋地裁と結論が分かれています。クレジットを使う販売で販売方法が違法・無効と評価される場合の影響は、事業者だけでなく与信会社との関係にも及びます。上告の有無と結果は未確認で、確定した判断として扱うことはできません。
裁判例名義貸しを承諾した購入者には抗弁の接続を認めなかった[9]
- 裁判所・判決日
- 札幌地方裁判所 令和3年9月1日
- 事件番号
- 令和元年(ワ)第1520号(求償金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/90866/detail4/index.html(確認の範囲:主要部分(抗弁接続に関する判断)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨中古車の購入に関するオートクレジットの保証委託に基づき、信販会社が被告らに求償金を請求した事案です。被告らは、販売会社との売買契約が実在しないことなどを根拠に、割賦販売法35条の3の19第1項の支払停止の抗弁を持ち出しました。
判断の要点裁判所は、被告らが、売買契約が架空であるか真意に基づかないと知りながら、頼まれて名義を貸し、実印などを渡して契約させた経緯を重く見ました。そのような購入者に抗弁の接続を認めることは制度の趣旨に合わず、抗弁を主張するのは信義則上許されないとしました。
事業者の実務への示唆抗弁の接続は購入者保護の制度であり、購入者自身が契約の仕組みを理解して関わった場合には、主張が認められないことがあります。通常の購入契約で抗弁が使えなくなる、という一般論を導くものではありません。上級審の結果は未確認です。
裁判例特定継続的役務の関連商品とクレジット:中途解約の意思は文面から柔軟に読まれた[10]
- 裁判所・判決日
- 名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日
- 事件番号
- 平成15年(ハ)第973号(求償金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/7607/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨家庭教師派遣の勧誘で自宅を訪れた社員が、約69万円の家庭教材をローン契約で結ばせた事案です。保証会社が代位弁済し、購入者に求償を請求しました。購入者は、契約不成立、錯誤・詐欺、クーリング・オフを主張しました。
判断の要点裁判所は、契約の成立を認め、錯誤・詐欺は認めませんでした。契約書の控えにクーリング・オフの記載があり、購入者の内容証明は期間経過後だったため、クーリング・オフとしては無効としました。もっとも、家庭教師派遣は特定継続的役務、教材は関連商品に当たるとして、内容証明の趣旨に将来に向かって契約の効力を失わせる意思が含まれると読み、中途解約の効力を認めて、保証会社の請求を棄却しました。割賦販売法の抗弁の接続に頼らなくても、契約書の定めで支払停止の抗弁を主張できるとも述べています。
事業者の実務への示唆クーリング・オフの期間が過ぎても、特定継続的役務の中途解約や関連商品の解除は別に問題になります(特定商取引法49条1項・5項)。通知の文面は、法的な言葉でなくても趣旨から読まれる場合があります。簡易裁判所の判断で、射程は限定的に扱います。
裁判例関連商品の解除と与信会社:精算は使用の実態と返還時の価値で決まった[11]
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所 平成16年12月22日
- 事件番号
- 平成16年(ハ)第965号(立替金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/8990/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨家庭教師派遣契約と約52万円の教材の売買契約を、信販会社の立替払い(分割払い)で結んだ保護者が、家庭教師の辞退を契機に契約を解除し、教材の返還を希望した事案です。信販会社が残りの割賦金を請求しました。
判断の要点裁判所は、教材はすべて家庭教師派遣契約の関連商品に当たると認定し、中途解約・解除の確定的な意思表示を認め、当時の割賦販売法30条の4により、売買契約の解除を信販会社に主張できるとしました。精算は、関連商品の解除で販売業者が請求できる額の上限を定めた特定商取引法49条6項1号を類推適用し、教材の通常の使用料相当額か、販売価格から返還時の価額を引いた額のうち高い方を基準に、保護者の支払額を定めました。
事業者の実務への示唆クレジットを使った場合、関連商品の解除は信販会社にも主張されます。教材の精算は、使ったかどうかと返還時の価値で金額が変わります。関連商品の扱いは関連商品の書面の記載と、運用の記録に直結します。
裁判例店舗での申込みとクーリング・オフ:書面の交付が認められた購入者との分かれ目[12]
- 裁判所・判決日
- 山口地方裁判所 平成15年3月31日
- 事件番号
- 平成12年(ワ)第86号、同第304号(損害賠償請求、立替金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/7998/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨寝具の販売とモニター契約をセットにした商法で、モニター料が支払われなくなった後、購入者らが個品割賦購入あっせんの支払を拒み、クーリング・オフなどを主張した事案です。
判断の要点裁判所は、店舗で申込みをした購入者は訪問販売のクーリング・オフの対象外と判断しました。法定書面の判断では、商品名・販売価格などを購入者が正確に認識できる記載があれば多少の欠落は効力を左右しないとし、申込書控えと契約書控えを合わせて判断しました。多くの購入者は、書面の交付が認められ、解除の通知は期間経過後だとして認められませんでした。書面の交付が認められなかった1名についてだけ、クーリング・オフが成立し、割賦金の未払債務が存在しないことの確認を認めました。信販会社の信義則の主張は、未払債務の不存在確認の場面ではクーリング・オフの趣旨を考慮して制限しないとしました。
事業者の実務への示唆書面不備の厳しさについては、判断が分かれうる論点です(書面不備の判例で並べています)。この判決は、書面の交付の有無という事実認定が、クレジット残債務の帰趨を分けた例として読めます。
判決を横に並べる:論点ごとの裁判所の判断
抗弁の接続・取消しに関する判決の整理(判断はそれぞれの裁判所のもの)
| 論点 | 判断した裁判所 | 判断の方向 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 抗弁の接続の位置づけ | 最高裁 平成2年2月20日 | 特別の合意や特段の事情がなければ、合意解除を理由に請求は拒めない | 規定の新設前の判断。現行は条文が出発点[4] |
| 売買の無効と与信契約 | 最高裁 平成23年10月25日 | 売買が無効でも、特段の事情がなければ立替払契約は無効にならない | 立替払契約を止めるには抗弁の接続・取消しなどの規定が必要[5] |
| 勧誘時の告知の重要性 | 最高裁 平成29年2月21日 | 名義貸しの勧誘での告知は割賦販売法35条の3の13第1項6号の重要なものに当たる | 反対意見あり。名義貸しの事案[6] |
| モニター商法の抗弁 | 名古屋地裁 平成17年10月27日 / 広島高裁岡山支部 平成18年1月31日 | 前者は対抗を認めつつ信義則で一部の支払を命じた。後者は全部の支払拒絶を認めた | 旧法の事案。結論が分かれており、上級審の結果は未確認[7][8] |
| 名義貸しと抗弁 | 札幌地裁 令和3年9月1日 | 仕組みを認識して名義貸しをした購入者には抗弁を認めなかった | 通常の購入者への一般論ではない[9] |
| 関連商品とクレジット | 名古屋簡裁 平成15年10月10日 / 東京簡裁 平成16年12月22日 | 中途解約や関連商品の解除を与信会社に主張できるとした | 簡易裁判所の判断。精算は使用の実態で変わる[10][11] |
| クーリング・オフと立替払い | 山口地裁 平成15年3月31日 | 書面が交付されていない購入者についてだけ成立。残債務の不存在を確認 | 店舗申込みは対象外とされた点も含めて読む[12] |
よくある誤り→正しいやり方:判決から導く決済方式の設計
判決から導かれる設計上の注意を、決済方式の導入時によく見られる誤りの形に対比して並べます。特定の書類や事業者を指すものではなく、一般的な書き方の例です。
書き方の例(一般的な例) 決済方式の導入で起きがちな誤りと整え方
決済代行の分割払いと事業者の責任
理由個別クレジットでは、勧誘時の不実告知を理由に与信契約が取り消され、与信会社が請求できなくなる場合がある(割賦販売法35条の3の13)。最高裁平成29年判決は、告知の重要性を広く読んでいる
技芸・知識の教授の講座
理由割賦販売法の指定役務と、特定商取引法の特定継続的役務は、別の条文で指定されている。自社割賦に当たれば、割賦販売法の書面・表示の義務が生じる
クーリング・オフ後のクレジットの扱い
理由与信会社への請求停止の連絡が遅れると、購入者に二重の請求が及ぶ。山口地裁の事案のように、クレジット残債務の存否が争点になる
手順にすると、次のとおりです。1.決済の仕組みを、自社割賦・包括信用・個別信用に分けて書き出す。2.支払総額が政令の金額(4万円、リボ払いは3万8千円)を超えるかを、商品・役務ごとに確かめる。3.訪問販売・電話勧誘販売に当たる導線では、勧誘時に告げる事項(支払総額、各回の支払額、時期、解除に関する事項)の説明と、実際の契約書面を突き合わせる。4.クーリング・オフや中途解約の通知を受けたときの、与信会社・決済代行会社への連絡の手順を書き出す。[1][2]
国民生活センターは、2026年9月に公表したビジネス講座に関する資料で、Web会議で説明を受けて100万円を超えるクレジットで講座を契約したものの、支払いが困難になった事例を紹介しています。[14]防ぐ側の事業者としては、総支払額と分割回数、手数料、解約・返金の条件を契約前に示し、支払可能性の確認の記録を残すことが、事業者の側でできる整備になります。
2021年12月公表の資料には、個別クレジットで「永久保証」とうたうコースを契約し、1回施術したところで解約を申し出たところ、1回分の対価と違約金の請求を受けた事例が載っています。[15]公表年が古い資料ですが、有償の期間と回数、単価を書面で明示しておくことが、中途解約の精算の算定根拠に直結する点は、現行の特定継続的役務の規定(特定商取引法49条2項・6項)でも変わりません。[3][13]
講座代金の分割払いの書き方は、業種サイトでも講座に即して扱っています。オンライン講座は講座代金の分割払いと割賦販売法(オンライン講座)、投資・マネー講座は講座代金の分割払いと割賦販売法(投資・マネー講座)が参考になります。
決済方式を決めるときの確認項目
- 代金を立て替える者と、回収する者は誰か(自社・カード会社・信販会社)
- 支払総額は政令の金額(4万円、リボ払いは3万8千円)を超えるか
- 訪問販売・電話勧誘販売に当たる導線に、個別クレジットを組み合わせていないか
- 勧誘時に告げる支払総額・各回の支払額・時期・解除の説明が、契約書面の記載と一致しているか
- 副業・紹介報酬を組み込む場合、報酬の実態を説明できる資料があるか
- クーリング・オフや中途解約の通知を受けたとき、与信会社への連絡と請求停止の手順が決まっているか
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文割賦販売法2条4項、30条の4、35条の3の10、35条の3の13、35条の3の19(昭和36年法律第159号)。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000159確認日:2026年10月23日
- 条文割賦販売法施行令21条1項・2項、26条、別表第一の三(昭和36年政令第341号)。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000341確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律9条1項・8項、48条、49条5項・6項。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成2年2月20日判決(昭和59年(オ)第1088号、集民159号151頁)。裁判所「裁判例検索」の詳細ページで判示事項・裁判要旨を確認(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/62922/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成23年10月25日判決(平成21年(受)第1096号、民集65巻7号3114頁)。同上(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/81723/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成29年2月21日判決(平成27年(受)第659号、民集71巻2号99頁)。同上(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/86517/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例名古屋地方裁判所民事第4部 平成17年10月27日判決(平成12年(ワ)第4826号ほか)。判決全文のうち事案の概要・認定事実の中心・抗弁接続と信義則の判断・結論を確認(主要部分) https://www.courts.go.jp/hanrei/7457/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例広島高等裁判所岡山支部第2部 平成18年1月31日判決(平成17年(ネ)第27号)。裁判所サイトの判示事項の要旨と主文を確認(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/32922/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例札幌地方裁判所 令和3年9月1日判決(令和元年(ワ)第1520号)。抗弁接続に関する判断部分を確認(主要部分) https://www.courts.go.jp/hanrei/90866/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日判決(平成15年(ハ)第973号)。判決全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/7607/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所 平成16年12月22日判決(平成16年(ハ)第965号)。判決全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/8990/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例山口地方裁判所 平成15年3月31日判決(平成12年(ワ)第86号、同第304号)。判決全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/7998/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」特定継続的役務提供のページ(関連商品、概要書面・契約書面、クーリング・オフ、中途解約) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意-広告・勧誘と実際の講座内容が異なる、Web会議での思わぬ勧誘に気をつけましょう-」2026年9月16日公表(HTML本文で確認。PDFのみの記述は未確認) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「脱毛エステ」に関する2021年12月23日公表の資料(公表年が古く、最新年度の件数ではない。個別クレジットで契約した事例の要旨のみ使用) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20211223_1.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
決済代行会社の分割払いを使えば、割賦販売法の義務は事業者に生じませんか?
決済代行の分割払いという名称では決まりません。代金を誰が立て替え、誰が回収するかで、自社割賦・包括信用・個別信用に分けて判断します。与信会社が介在する形では、購入者が与信会社に抗弁を対抗できる(割賦販売法30条の4、35条の3の19)ため、販売時の説明と書面の整備は事業者の側にも必要です。決済方式ごとの整理は分割払い・カードのクーリング・オフにあります。
支払総額が4万円に満たない場合、抗弁の接続は働きませんか?
割賦販売法30条の4第4項と35条の3の19第4項は、政令で定める金額に満たない支払総額には抗弁の接続の規定を適用しないとしています。政令の金額は、包括信用購入あっせんの分割払いと個別信用購入あっせんが4万円、リボルビング払いが3万8千円です(割賦販売法施行令21条1項・2項、26条)。支払総額での判断なので、複数回に分けた契約は合計額で見ます。
モニター商法の判決は、副業講座の契約にも当てはまりますか?
判決は寝具の販売とモニター契約を組み合わせた事案を判断したものです。副業講座に同じ判断が及ぶとはいえず、報酬の実態、勧誘の内容、取引の類型を個別に見る必要があります。副業・紹介報酬を伴う取引の類型の整理は連鎖販売・業務提供誘引販売・副業商法の判例にあります。
購入者が名義だけ貸したと主張する場合、抗弁は認められますか?
最高裁平成29年2月21日判決は、名義上の購入者となることを承諾した事案で、販売業者が購入者に告げた内容は、割賦販売法35条の3の13第1項6号の重要なものに当たると判断しました。他方、札幌地裁令和3年9月1日判決は、仕組みを認識して名義貸しをした購入者の抗弁を認めませんでした。事案ごとの判断で、一般化はできません。
クーリング・オフの通知を受けたあと、クレジットの請求はどう扱いますか?
個別クレジットでは、購入者が与信会社に書面で申込みの撤回等をする規定があり、与信会社は書面を受領したら直ちに販売業者に通知しなければなりません(割賦販売法35条の3の10第4項)。事業者は、通知を受けたら、与信会社への連絡と請求停止、返金の流れを決済方式ごとに決めておく必要があります。クーリング・オフ後の清算は解除後の清算で扱います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所