このページの要点
- 事業者から電話をかけ、その電話で勧誘して申込みを郵便等で受ければ電話勧誘販売。勧誘の目的を告げずに電話をかけさせた場合も含む。
- 顧客が契約のために自分から電話を請求した場合は除外されるが、勧誘の目的を告げずに請求させた場合は除外されない。通信販売の広告を見た顧客の電話は通信販売。
- 電話の冒頭に事業者名・勧誘する人の氏名・商品の種類・勧誘目的を告げ、断られたら勧誘をやめる。契約書面は赤枠・8ポイント以上で、起算日は書面を受け取った日。
- 営業代行・テレアポを使うときは、書面の交付者と時期、台本、記録の保存を契約で決める。物品では消耗品の扱いと引取り費用の記載を整える。
結論:事業者から電話で勧めて売れば電話勧誘販売、顧客が自分でかけた注文は別に整理する
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 電話で物品や権利を売る事業者と、営業代行・テレアポ会社に電話営業を委託している事業者。個人の購入者を相手にしている場合が対象です。
- 何をすべきか
- 電話の冒頭で事業者名・勧誘する人の氏名・商品の種類・勧誘目的を告げ、断られたら勧誘をやめ、申込み時の書面と契約書面(赤枠・8ポイント以上)を交付する。営業を委託するときは、誰が書面を交付するかを契約で決める。
- 期限
- 契約書面を受け取った日(先に申込み書面を受け取っていればその日)から8日。起算日が来ていない書面は、期間が進みません。
結論の表:電話での物品販売
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当てはまる取引の類型 | |
| 当てはまらない場合の条件 |
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| 必要な書類(要るもの・要らないもの) |
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| クーリング・オフの期間 |
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| 中途解約の有無と上限 |
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営業代行やテレアポを委託するときは、誰が販売業者として書面を出すのかを先に決めます。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。
物品を電話で売る取引は、電話勧誘販売(事業者が電話をかけて(又は欺くような方法で電話をかけさせて)勧誘し、郵便やネットの申込みで契約する販売。用語集)の典型です。講座やコンサルの電話営業が多い中で、物品の電話販売は、数は少ないものの、条文の規律が全面的に及びます。物品は、役務と違って「使った」「消費した」という扱いがあるため、クーリング・オフの書面に書く事項が増える点にも注意が必要です。
このページでは、電話勧誘販売に当たる条件、顧客が自分から電話をかけたときの除外、勧誘の場面で守る義務、書面と赤枠と電子化、営業を委託するときの設計、判例・処分事例・相談事例を整理します。講座の電話営業の整理はオンライン講座・Web会議のページで扱っています。
判定の根拠:電話勧誘販売の定義と、顧客からの電話の扱い
定義は特定商取引法(以下「特商法」)2条3項にあります。電話をかけるのは販売業者(役務提供事業者)で、その電話で勧誘し、申込みを郵便等で受けるか、契約を郵便等で結ぶことが要件です。
「この章及び第五十八条の二十第一項において「電話勧誘販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が、電話をかけ又は政令で定める方法により電話をかけさせ、その電話において行う売買契約又は役務提供契約の締結についての勧誘(以下「電話勧誘行為」という。)により、その相手方(以下「電話勧誘顧客」という。)から当該売買契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該売買契約を郵便等により締結して行う商品若しくは特定権利の販売又は電話勧誘顧客から当該役務提供契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該役務提供契約を郵便等により締結して行う役務の提供をいう。」
定義の細目は、電話をかけさせる方法を定める施行令2条にあります[1]。消費者庁のガイドは、電話を切った後に郵便や電話などで申込みをした場合も、電話勧誘によって購入の意思が決まったのであれば該当し、欺く方法で電話をかけさせて勧誘した場合も含む、と説明しています[6]。
通達は、「電話をかけ」を、電話により通話状態に入ろうとすることとし、録音音声や人工音声によるものも含むと説明しています。ネット回線で行う通話(画面付きを含む)も「電話」にあたります[8]。「勧誘」とは、顧客が契約を結ぶ気持ちになるのに影響を与える行為をいい、買うよう直接勧める場合だけでなく、購入すると便利になると強調するなど、客観的に見て購入の意思に働きかける言動も含みます[8]。
「勧誘により」の要件について、通達は、最後の電話から1か月以上たってから申込みがあったようなケースは、これに当たらない場合が多い、と述べています。日数で一律に決まるものではなく、勧誘の威迫性・執ようさ・セールストークの内容などで異なるとしています[8]。電話のあとに顧客が自分で考えてフォームから申し込んだとしても、その決定が電話の勧誘に起因していれば、電話勧誘販売の範囲にとどまります。
事業者が顧客に電話をかけさせる方法
事業者から電話をかけていなくても、政令で定める方法で顧客に電話をかけさせ、その電話で勧誘するときは、電話勧誘販売です。
「一 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し、又は広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等(インターネットを利用した情報の閲覧の用に供される電磁的記録で主務省令で定めるもの又はその集合物をいう。第十九条において同じ。)を利用して、当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること。」
「二 電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法又は電磁的方法により、他の者に比して著しく有利な条件で当該売買契約又は役務提供契約を締結することができる旨を告げ、電話をかけることを要請すること(当該要請の日前に当該販売又は役務の提供の事業に関して取引のあつた者に対して要請する場合を除く。)。」
顧客が自分から電話をかけて注文したとき
顧客が自分から電話をかけて、その電話で注文する取引は、除外の規定があります。契約のために電話をかけることを請求した者への電話勧誘販売には、書面の交付やクーリング・オフなどの規定が働きません(26条7項1号)。
「第十八条、第十九条及び第二十一条から前条までの規定は、次の電話勧誘販売については、適用しない。」
「一 売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結するために電話をかけることを請求した者(電話勧誘行為又は政令で定める行為によりこれを請求した者を除く。)に対して行う電話勧誘販売」
「法第二十六条第七項第一号の政令で定める行為は、電話、郵便、信書便、電報、ファクシミリ装置を用いて送信する方法若しくは電磁的方法により、若しくはビラ若しくはパンフレットを配布し、又は広告を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載し、若しくはラジオ放送、テレビジョン放送若しくはウェブページ等を利用して、当該電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを請求させる行為とする。」
通達は、「請求」の範囲を、申込み・契約のために電話してほしいと明確に表示した場合や、通常の取引関係から購入の意思が明らかな場合に限る、と整理しています。商品について問い合わせたい目的で電話を請求しただけでは、該当しません[8]。消費者庁のQ&Aも、Web会議の例で、別の商品の契約の意思がなく相談のためだけに連絡した人は、その契約のために電話をかけることを請求したとはいえない、と説明しています[7]。
通信販売の広告を見た顧客が自発的に電話をかけ、その電話で広告の商品について契約の勧誘がされた場合は、勧誘の目的を告げずに電話をかけることを要請したとはいえず、電話勧誘販売に当たらず、通信販売になります。通達は、この整理を明記しています[8]。ただし、広告の商品とは別の商品を電話で勧めるなど、電話の中身が広告から離れると、別の判断になりえます。
継続的な取引関係のある顧客
もうひとつの除外は、継続的な取引関係にある顧客への電話勧誘です(26条7項2号、施行令20条)。条件は厳しく、勧誘の日の前1年間に、その事業に関して二以上の取引があった顧客に限られ、その取引に書面の交付義務違反などの違反がなかったことも必要です[2]。
「継続的取引関係にある顧客(当該勧誘の日前一年間に、当該販売又は役務の提供の事業に関して、二以上の取引…のあつた者に限る。)に対して電話をかけ、その電話において行う売買契約又は役務提供契約の締結についての勧誘により」
買い手が法人・事業者のとき
営業のために又は営業として契約する者への販売は、電話勧誘販売の規定の適用除外です(26条1項1号)。ただし、通達は、買い手が法人や事業者名であっても一律に外れるのではなく、個人用・家庭用の購入や、実態のほとんどない零細な事業者は適用されうるとしています[8]。名義だけで決めず、購入の目的で判断します。
なお、「販売業者」は、販売を業として営む者を指し、営利の意思をもって反復継続して取引を行うことをいいます。中古品や輸入品であっても対象です[8]。
勧誘の場面で守ること:冒頭の明示、再勧誘の禁止、禁止行為
電話での勧誘には、書面よりも前の段階の義務があります。まず、勧誘に先立って、事業者名、勧誘を行う人の氏名、商品や権利や役務の種類、契約の勧誘の電話であることを告げなければなりません。
「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない。」
委託先に電話をかけさせる場合も同じです。通達は、実際の勧誘を代行業者に委託する例が少なくないことを前提に、16条で告げるのは販売業者の名称であり、代行業者の名称ではないと説明しています[8]。「勧誘を行う者の氏名」は、実際に電話をかけている人の氏名です。
「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。」
不実の告知や、解除を妨げる行為は、禁止行為として定められています。物品の電話販売では、とくにクーリング・オフに関する事項の不実告知が、処分の対象になりやすい点です。
「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。」
「五 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(第二十四条第一項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第二項、第四項又は第五項の規定の適用がある場合にあつては、当該各項の規定に関する事項を含む。)を含む。)」
「六 電話勧誘顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項」
日常生活で通常必要とされる分量を著しく超える商品の売買を勧める行為は、過量販売として、契約の解除(契約から1年以内。24条の2)の対象にもなります。高齢者に同じ種類の商品を次々に売る運用は、この点の点検が必要です[4]。
書面・赤枠・電子化と、営業を委託するときの設計
電話勧誘販売の書面は、申込み時の書面(18条1項)と契約書面(19条1項・2項)の二つです。申込みを受けた際に契約を結んだ場合は、申込み時の書面は不要で、契約書面を交付します。どちらも「遅滞なく」交付する書面で、通達は、通常3〜4日以内と解されるとしています。
ただし、契約を結んだ際に商品を引き渡し、代金の全額も受け取ったときの書面(19条2項)は、直ちに交付します。訪問販売と違い、電話勧誘は隔地者間の取引で、その場で交付するのが事実上不可能なので、申込み時の書面と契約書面は「遅滞なく」とされています[8]。電話に先立って送ったダイレクトメールに価格などが書いてあっても、書面を交付したことにはなりません[8]。
記載事項は、条文と省令にあります。事業者の氏名または名称、住所、電話番号、法人は代表者の氏名、申込みまたは契約を担当した者の氏名、年月日、商品名、商標や製造者名、型式、数量、契約不適合責任の定め、解除の定め、特約があればその内容です(規則45条)。赤枠(書面の内容を十分に読むべき旨やクーリング・オフに関する事項を、赤い枠の中に赤字で記載する書式。用語集)と8ポイント以上の文字は、書面の体裁の義務です(規則46条2項・3項)[5]。
「引き渡された商品が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に販売業者がその不適合について責任を負わない旨が定められていないこと。」
「購入者又は役務の提供を受ける者からの契約の解除ができない旨が定められていないこと。」
物品の販売に特有の記載:使用・消費、現金取引、引取りの費用
物品では、クーリング・オフの記載に、次のような事項が加わります。省令は、書面に記載するクーリング・オフの内容として、商品の引取りの費用は販売業者が負担すること、商品が使用されていても、その使用による利益に相当する金銭を請求できないこと、代金が支払われていれば速やかに全額を返還することを挙げています(規則47条1項の表)。
「当該売買契約に係る商品が法第二十六条第五項第一号の政令で定める商品に該当する場合において、当該商品を使用し又はその全部若しくは一部を消費したときはその売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除を行うことができないこととするときは、第一項の書面には、同項の表第一号の下欄に掲げる内容のほか、次の各号に掲げる内容を記載しなければならない。」
対象の商品は、施行令が別表第三に挙げています。人が摂取する動植物の加工品(医薬品を除く)、不織布と織物、コンドームと生理用品、防虫剤・殺虫剤などの薬剤類、化粧品・毛髪用剤・石けん・浴用剤・合成洗剤など、履物、壁紙などです[2]。ただし、事業者が購入者に使用させたり消費させたりした場合は、この扱いは使えません(26条5項1号)。
現金取引でその総額が3,000円に満たないときは、契約書面のうち、その場で商品の引渡しと代金の全額の受領が済む場合の書面(19条2項)について、クーリング・オフの対象外とする扱いがあります(26条5項3号、施行令17条)。この扱いも、書面にその旨を記載することが求められます(規則47条5項)。電話勧誘販売では、申込みを郵便等で受け、あとで商品を送る運用が多く、この扱いが使える場面は多くありません。
電磁的方法での提供と、承諾を得たことを証する書面
書面は、買い手の承諾を得れば、電磁的方法(メールなど)で記載事項を提供できます(18条2項、19条3項)。2023年6月1日の施行からです。承諾を得る手続は施行規則50条が定めており、方法の説明、閲覧に必要な環境の確認、承諾の取得と、承諾を得たことを証する書面の交付が含まれます[3][5]。
「販売業者又は役務提供事業者は、第一項の説明及び第三項の確認をした上で、法第十八条第二項の規定による承諾を得たときは、申込みをした者に対し、同項の規定による電磁的方法による提供を行うまでに、当該承諾を得たことを証する書面(当該承諾を書面によつて得た場合においては、当該書面の写しを含む。)を交付しなければならない。」
前払いで代金を受け取るとき
商品の送付や役務の提供に先立って代金を受け取る電話勧誘販売で、申込みを郵便等で受け、かつ代金の一部または全部を受け取ったときは、遅滞なく、申込みを承諾するか否かなどを書面で通知する義務があります(20条1項)。代金を受け取った後、遅滞なく商品を送付したときは、この通知は不要です[3]。
営業代行・テレアポを委託するとき
電話営業を委託するときの契約書は、「特定商取引法を遵守する」とだけ書いて終わらせがちです。しかし、条文の義務は、契約の売主である販売業者に課されています(16条〜19条)。誰が書面を作り、いつ、どの方法で交付するのか、電話の冒頭に告げる事項をどう担保するのか、断られた記録をどこが持つのか。これらを、契約の段階で決めておく必要があります。
委託先が勧誘だけを担うのか、契約の締結まで行うのかも、先に整理します。通達は、訪問販売の関係で、書面の交付は契約の当事者である販売業者のみならず、契約締結事務を行っている者が行ってもよいと整理しており、この考え方は電話勧誘販売の書面にも参照されています[8]。
営業委託契約で、書面の交付と記録を定める条項(論点ごとの例)
- 受託者は、電話による勧誘に先立ち、委託者の名称、勧誘を行う者の氏名、商品の種類及び売買契約の締結について勧誘をするための電話であることを告げる。
- 受託者は、勧誘を受けた者が契約を締結しない旨の意思を表示したときは、直ちに勧誘をやめ、その旨と日時を記録して委託者に報告する。
- 委託者は、申込みを受けたときは、遅滞なく、特定商取引に関する法律に定める書面を、委託者の名義で、定められた方法により交付する。受託者は、委託者の承認なく、書面に代わる電磁的方法による提供を行ってはならない。
- 受託者は、通話の記録及び勧誘の台本の版を保存し、委託者の求めに応じて提出する。
条文の義務を委託先に押し付ける条項ではなく、「誰が」「いつ」「何を」するかを決める例です。委託先を使うことで、販売業者の書面の交付義務がなくなるわけではありません。
よくある誤り→正しいやり方
物品の電話販売では、営業代行の契約と書面の電子化の論点が多く見られます。見直しの場面が多い順に並べます。
書き方の例(一般的な例) 営業委託・類型・電子化・台本(1〜4)と、物品に特有の記載(5)
1 営業代行に「法令遵守」とだけ書く
理由条文の義務を負うのは販売業者であり、契約で遵守を定めても、誰が何をするかを決めなければ運用が空白になります。
2 商談の開始経緯で類型が変わるのに、契約書で解消できると考える
理由除外の「請求」は、実際の請求の内容で判断され、契約書の確認文言では決まりません。政令の方法で請求させた場合は、除外から外れます(令19条)。
3 電子化のとき、承諾を得たことを証する書面を見落とす
理由承諾を証する書面は、電磁的方法で提供する前までに交付する義務があります(特定商取引に関する法律施行規則50条7項)。
4 冒頭の告知と再勧誘の禁止の台本・記録がない
理由16条と17条の違反は、台本やマニュアルの内容が、行政の判断で問題にされます。
5 物品に特有の記載を落とす
理由省令は、類型ごとにクーリング・オフに記載する内容を定めています(規則47条1項の表、4項)。
関係する判例・処分事例・相談事例
電話勧誘販売の該当性(無料相談やWeb会議の勧誘が電話勧誘販売に当たるか)そのものを判断した裁判例は、今回の確認の範囲では見当たらないため、取り上げていません。次の二つは、書面の不備と、勧誘の方法をめぐる判断です。詳しい整理は書面不備の判例と勧誘・広告の判例にあります。
裁判例書面の記載の誤りで、期間が進行しないとされた事例[9]
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所 平成17年5月26日
- 事件番号
- 平成17年(少コ)第1186号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/) の判決詳細ページ(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨高齢の購入者に電話で複数の商品を組み合わせて売った事業者が、代金の支払を求めて提訴した事案です。購入者の家族は、電話でクーリング・オフを申し出たうえで、商品を三度にわたり返送しましたが、事業者は受け取りませんでした。
判断の要点契約確認書に記載された販売業者の法人名と代表者名が実際と異なっていたため、法定の書面に当たらず、期間は進行しないと判断しました。起算を書面の送付日とする事業者の主張については、商品を同時に送らなければ、購入者が内容を見て考え直す機会を得たとはいえないとして、退けました。通知は書面でするものですが、趣旨は後日の紛争の防止にあるので、電話による意思表示が証拠上認定でき、商品が返送された事実もあるとして、クーリング・オフの行使を認め、事業者の請求を棄却しました。
事業者の実務への示唆書面の事業者名・代表者名の誤りだけでも、期間が進まないと判断されえます。販売業者の情報は、登記や契約の実態に合わせて確認する運用が必要です。簡易裁判所の少額訴訟の判決で、他の事案への射程は限定的に扱います。
裁判例営業マニュアルの内容が、勧誘方法の違反の認定で重視された事例[10]
- 裁判所・判決日
- 名古屋地方裁判所民事第9部 平成18年9月25日(決定)
- 事件番号
- 平成18年(行ク)第24号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/) の決定詳細ページ(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨書籍や講座を電話で売る事業者が、経済産業大臣による業務停止命令を受けるおそれがあるとして、あらかじめ命令を差し止めるよう求めた事案です。この決定は、電話勧誘販売に当たるかを争ったものではありません。
判断の要点裁判所は、立入検査での聴取、営業マニュアル、従業員のノート、数多くの苦情といった資料から、次の事実を一応認めました。すでに結んだ講座が未完了であるかのように告げて再び勧誘したこと、断られても電話をかけ直したこと、クーリング・オフの後にも勧誘したことです。これらは、事業者名の不明示(16条)、契約しない意思を示した人への再勧誘(17条)、契約が必要だという事情についての不実告知(21条1項6号)、迷惑を覚えさせる勧誘にあたる行為が、組織的に続けられていたものだとして、申立てを却下しました。
事業者の実務への示唆電話での勧誘は、断った相手への再勧誘、既契約に関する虚偽の説明、営業マニュアルの内容そのものが、判断の材料になります。社内のトーク集や研修資料も証拠になりうる点は、運用管理の面で意識しておくことです。条番号は決定当時のもので、本文では現行の条番号に置き換えています。
行政処分と相談の動き
消費者庁は、2025年1月22日、電話勧誘販売を行う事業者に対し、業務停止命令(3か月)と指示を行い、代表取締役2名に業務禁止命令を出しました。公表資料では、勧誘に先立って事業者名を告げなかったこと(16条)、契約内容を明らかにする書面を交付しなかったこと(19条1項)、解約の申出に対し、事業主として扱うのでクーリング・オフはなく、支払済みの代金も返さないという趣旨を告げて、解除を妨げたこと(21条1項)が挙げられています。勧誘は、SNSの投稿からメッセージアプリを経て通話をリクエストさせる流れでした[11]。物品の販売にも共通する、明示・書面・解除の三つの場面の失敗です。
国民生活センターによれば、2025年度のPIO-NETで、販売購入形態別の電話勧誘販売の相談は66,768件、販売方法・手口別の「電話勧誘販売」は56,663件(3番目)でした(経由相談を除く)[12]。ネガティブ・オプション(送り付け)は3,640件です[12]。また、海産物(魚介類)に関する相談で、ネガティブ・オプション又は電話勧誘販売に当たるものは、2023年度の2,876件から2024年度の3,538件、2025年度の4,358件へ増えています[13]。
事例には、電話で説明された海産物のセットを購入したが、一部の品しか入っていなかった例、店を閉めるので最後に購入してほしいと言われ、断ったのに発送すると連絡があった例などがあります[13]。事業者側の対応に置き換えると、電話で説明した内容と発送する商品の内容を一致させること、断られたら勧誘をやめること、契約内容を明らかにする書面を遅滞なく交付すること、承諾のない発送をしないこと、になります。
ヒヤリングで確かめること、業種サイトの記事
確かめる問いと理由電話販売の経緯と書面を確かめる
最初に連絡をとったのは誰で、どんな手段(電話・広告・DM)でしたか。
事業者がかけた電話か、顧客が請求した電話かを判断するためです。
広告やDMに、電話をかけるよう促す文言はありますか。その文言は、勧誘の目的を告げていますか。
政令の方法(令2条、19条)で電話をかけさせたかの判断です。
電話のあとの申込みは、どの方法(フォーム・メール・書面)で受けていますか。
申込みを郵便等で受ける要件の確認です。
通話の記録と、台本の版は残していますか。
16条と17条の運用の確認です。
営業を委託していますか。委託先は、勧誘だけですか、契約まで行いますか。
書面の交付義務者と、記録の保存先を決めるためです。
買い手は個人ですか、法人ですか。使用目的は事業用ですか、個人用ですか。
営業のための契約の除外の可能性を判断するためです。
商品は、消耗品(健康食品・化粧品など)ですか。
規則47条4項の記載の要否を判断するためです。
ここでの整理は、書類を設計するための確認事項です。
電話営業と営業代行の契約は、集客支援の事業者向けの記事でも整理しています。 テレアポの委託、 営業代行の契約、 個別営業の委託があります。通話の冒頭の明示については勧誘前の明示と再勧誘の禁止のページ、書面の整理は契約書面のページ、記録の運用はチェックリストと記録のページが参考になります。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律2条3項(電話勧誘販売の定義)、同法施行令2条(電話をかけさせる方法) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律26条1項1号・5項・7項(適用除外)、同法施行令16条・17条・19条・20条・別表第三 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律16条(氏名等の明示)、17条(再勧誘の禁止)、18条・19条(書面)、20条(承諾等の通知)、21条(禁止行為) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律24条1項〜5項(クーリング・オフ)、24条の2(過量販売の解除)、24条の3(取消し) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引法施行規則45条〜47条(書面の記載事項・赤枠・8ポイント・クーリング・オフの記載)、50条(電磁的方法による提供の承諾の取得) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」電話勧誘販売のページ(定義・明示事項・再勧誘の禁止・書面・クーリング・オフ・適用除外) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」Q&A「電話勧誘販売の解釈」(Q5:Web会議ツールを使う例) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/telemarketing.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付通達)第2章第1節 法第2条第3項関係(PDF 6〜7頁)、第4節 電話勧誘販売関係(PDF 46〜48頁)。2026年10月23日時点で、この日付より新しい版は消費者庁の掲載ページに見当たらない https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所 平成17年5月26日判決(平成17年(少コ)第1186号)。裁判所「裁判例検索」の判決詳細ページで全文を確認。少額訴訟の判決 https://www.courts.go.jp/hanrei/8971/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例名古屋地方裁判所民事第9部 平成18年9月25日決定(平成18年(行ク)第24号、仮の差止命令申立事件)。裁判所「裁判例検索」の詳細ページで全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/33813/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 電話勧誘販売に係る行政処分の公表(処分日2025年1月22日。業務停止命令3か月、指示、業務禁止命令) https://www.caa.go.jp/notice/entry/040837/確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表)。販売購入形態別・販売方法手口別の件数は報告書本文PDFの表で確認(PIO-NET、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20260805_1.pdf確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「各種相談の件数や傾向」魚介類(ネガティブ・オプション又は電話勧誘販売。2026年7月31日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/negative_option.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
顧客が自分から電話をかけてきて注文した場合、書面は不要ですか。
契約のために電話をかけることを自分から請求した人への販売は、18条・19条などの適用除外です(26条7項1号)。ただし、事業者が勧誘の目的を告げずに電話をかけさせた場合は除外になりません(施行令19条)。通信販売の広告を見て自発的に電話した場合は、通信販売として整理します。
電話のあとにフォームで申込みを受ける場合は、通信販売ですか。
電話での勧誘に起因して申込みがされていれば、電話勧誘販売です。申込みを郵便等で受けることも要件に入っています(2条3項)。電話のあとにフォームで申込みを受ける運用も、電話勧誘販売の範囲です。
営業代行会社に電話営業を任せれば、書面の義務は代行会社が負いますか。
条文は、書面の交付義務を販売業者に課しています(18条・19条)。委託先に任せるときは、誰が書面を交付するかを契約で決め、販売業者として管理する必要があります。
健康食品を使用してしまった場合は、クーリング・オフできなくなりますか。
施行令別表第三の商品で、購入者が使用・消費したときは、解除できなくなる扱いがあります。ただし、書面にその旨を記載していることが前提で、事業者が使用させた場合は適用されません(26条5項1号、規則47条4項)。
クーリング・オフは、いつから数えますか。
契約書面(19条)を受け取った日から8日です。その前に申込み時の書面(18条)を受け取っていれば、その日から数えます(24条1項)。書面に不備があるときは、起算日が来ていないと扱われるおそれがあります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所