このページの要点
- 連鎖販売取引は、特定利益で取引に加わる人を誘い、特定負担を伴わせる取引。特定利益の型は施行規則68条の三つ。名称ではなく、報酬の原資と流れで当てはめる。
- クーリング・オフは契約書面を受け取った日から20日(商品の最初の引渡しが後ならその日)。その後も将来に向かう中途解約がある。対象は店舗等によらない個人。
- 概要書面と契約書面を別に交付し、契約書面の20日の解除の内容は赤枠の中に赤字で、8ポイント以上で記載する。
- 規約の勧誘禁止条項と、自社の制度の判定は別。判定の根拠と、報酬規定・広告資料の版を記録して残す。
結論:紹介報酬は「特定利益・特定負担・勧誘の連鎖」の三点で判定し、当たれば専用の書類をそろえる
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 会員・受講生・代理店などに、他の人を紹介すると報酬や割引が出る仕組みを付けて、商品・講座・会員権を個人に販売している事業者。
- 何をすべきか
- 紹介制度を三点(特定利益で誘うか、特定負担を伴うか、取引に加わる人を増やす仕組みか)で当てはめ、定義に入るなら概要書面・契約書面・赤枠・氏名等の明示・広告の表示事項をそろえる。入らないと判断するなら、報酬の原資と負担の整理を記録に残す。
- 期限
- 契約書面を受け取った日(再販売する商品の最初の引渡しが後ならその日)から20日。その後も将来に向かって解除できる中途解約がある。
結論の表:紹介報酬つき販売
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当てはまる取引の類型 | |
| 当てはまらない場合の条件 |
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| 必要な書類(要るもの・要らないもの) |
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| クーリング・オフの期間 |
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| 中途解約の有無と上限 |
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規約で『勧誘禁止』と書いても、自社の制度が連鎖販売取引に当たるかどうかの判定は別の問題です。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。
紹介報酬つきの販売は、連鎖販売取引(商品や役務の取引に加わる人を増やすことで得られる報酬を示して人を誘い、その人に購入代金や加盟金などの負担を伴わせる取引。用語集)に当たるかどうかで、書類と義務が大きく変わります。当たれば、クーリング・オフは20日、書面は概要書面と契約書面の二本立てで、広告・勧誘・禁止行為にも専用の規律がかかります。当たらなければ、これらは働きません。
難しいのは、「紹介制度」「アフィリエイト」「認定講師制度」「代理店制度」など、事業者が付けた名称では判断できない点です。判断するのは条文の要件であり、報酬の原資と仕組みの実態です。このページでは、定義の読み方、講座や認定制度に紹介報酬を付けたときの注意、概要書面(契約を結ぶ前に渡す、取引の概要を記した書面。用語集)と契約書面の整理、中途解約、禁止行為と判例・処分事例を扱います。
判定の根拠:連鎖販売取引の定義を三点で当てはめる
定義は特定商取引法(以下「特商法」)33条1項にあります。消費者庁のガイドは、これを三つの要件に分けて説明しています。取引に加わる人(再販売・受託販売・販売のあっせんなどをする人)を勧誘すること、紹介料や割引などの特定利益を示して誘うこと、入会金や商品の購入などの特定負担を伴う取引であること、です。
「…の再販売…、受託販売…若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供…若しくはその役務の提供のあつせんをする者を特定利益…を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担…を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引…をするもの」
三つのうち、特定負担の範囲は広く取られています。特定負担とは、商品の購入代金、役務の対価、取引料の負担を指し、取引料には名義を問わず、取引にあたって差し出す金品が入ります[1][6]。消費者庁のガイドは、特定負担は名目を問わず、金銭を負担させるものであれば足り、少額でも対象になると説明しています[6]。
通達は、売上げのノルマを達成すること、他の人を勧誘すること、研修に参加することは、それ自体は金銭的な負担ではないので特定負担に当たらないが、商売に必要な物品や商品の購入代金、入会金、保証金、登録料、研修の参加費用は特定負担に当たるとしています。入会する時点では金銭の負担がなくても、入会後に商売を始めるために商品の購入などをすることが前提の契約であれば、その購入が特定負担になります。契約書に「負担は一切ありません」と書いてあっても、取引の実質で判断されます[2]。商品を自分で使うだけの愛用者として入会した人でも、のちに商売を始めるために購入をすれば、その購入が特定負担を伴う連鎖販売取引になる、という整理も示されています[2]。
「この章において「取引料」とは、取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品をいう。」
判断が最も分かれるのは、特定利益です。条文の「主務省令で定める要件」は、次の三つの型のいずれかに当たる利益と定められています。
「法第三十三条第一項の主務省令で定める要件は、次のいずれかとする。」
「一 商品(法第三十三条第一項の商品をいう。次条、第七十条、第七十三条、第八十条及び第九十条を除き、以下この章において同じ。)の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者が提供する取引料により生ずるものであること。」
「二 商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者に対する商品の販売又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者に対する役務の提供により生ずるものであること。」
「三 商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする他の者が取引料の提供若しくは商品の購入を行う場合又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする他の者が取引料の提供若しくは役務の対価の支払を行う場合に当該他の者以外の者が提供する金品により生ずるものであること。」
紹介制度を判定するときは、報酬の原資を次のように追います。
紹介制度の三点の当てはめ
| 確認する点 | 確認する資料 | 要件に近づく例 |
|---|---|---|
| 紹介された人に、取引に加わるよう誘っているか | 紹介の導線、紹介コード、規約の紹介の定義 | 紹介された人も、紹介する側として同じ制度に加わる設計になっている |
| 報酬は、誰が払う何に由来するか(特定利益) | 報酬規定、報酬の計算式、支払元の会計 | 紹介された人が払った取引料や購入代金に連動して、紹介した人に報酬が出る |
| 紹介された人(加入者)に、どんな負担があるか(特定負担) | 料金表、入会の手順、必須の購入品 | 報酬を得る立場になるために、入会金・教材・ツールなどの購入が必要になる |
| 事業者が、制度をどう説明しているか | 広告、面談の台本、LP、SNSの投稿 | 「紹介だけで収入になる」と示して加入を勧めている |
表は整理の入口です。三点がそろうかどうかは、仕組み全体の実態で決まります。
通達は、特定利益の三つの型を、勧誘の文句に置き換えて説明しています。「あなたが勧誘して加入する人が払う取引料の一定割合があなたのものになる」と誘う場合は一号、「あなたが勧誘して加入する人が買う商品の代金や役務の対価の一定割合があなたのものになる」と誘う場合は二号、「あなたが勧誘して加入する人があれば統括者から一定の金銭がもらえる」と誘う場合は三号に当たるとされています。いずれも組織の内部の人(これから加入する人を含む)が提供する金品を源泉とする利益で、組織の外の一般消費者への販売で生じる小売差益は、特定利益に含まれません[2]。
このため、次の二つを分けて確認します。ひとつは、受講生が自分の知人に講座を紹介して、その知人が「受講者」にとどまる場合です。もうひとつは、紹介された人もまた紹介する側(再販売・販売のあっせんをする側)として加わる場合です。
前者でも、紹介報酬が紹介された人の払う金品に連動していれば、特定利益の型に当たるかを確認する必要があります。後者は、取引に加わる人を増やす仕組みそのものです。
統括者・勧誘者・一般連鎖販売業者の区別
連鎖販売取引の規律は、関与する立場によって適用される範囲が分かれます。条文は、連鎖販売業を実質的に統括する者を「統括者」、統括者がその統括する一連の連鎖販売業に係る取引について勧誘を行わせる者を「勧誘者」、それ以外で連鎖販売業を行う者を「一般連鎖販売業者」と定義しています(33条2項、33条の2)。
「統括者、勧誘者(統括者がその統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引について勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)又は一般連鎖販売業者(統括者又は勧誘者以外の者であつて、連鎖販売業を行う者をいう。以下同じ。)は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者の氏名又は名称(勧誘者又は一般連鎖販売業者にあつては、その連鎖販売業に係る統括者の氏名又は名称を含む。)、特定負担を伴う取引についての契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品又は役務の種類を明らかにしなければならない。」
通達は、勧誘者について、統括者が勧誘を行わせている者をいうとし、統括者から勧誘の委託を受けて説明会などで専ら勧誘をする者(地域の代理店など)のほか、明示的に委託されていなくても、自分の勧誘と並行して他の人の勧誘も推進している者が当たるとしています。会員Aが会員Bを探して本部に紹介し、本部がBと契約する形態では、Aは勧誘者に当たるのが一般的です。勧誘者に当たるかは客観的に判断され、本人が勧誘者でないと主張しても、33条の2の適用は免れません[2]。
規約の「勧誘禁止」条項と、自社の判定は別
受講規約に「ネットワークビジネスなどの勧誘を禁止する」と書くのは、受講生が他の受講生を勧誘する行為を禁じる条項です。自社の制度が連鎖販売取引に当たるかどうかとは、別の問題です。禁止事項を列挙しても、自社の紹介報酬の仕組みが定義に当たるのであれば、書類や広告の義務は免れません[1]。
講座・認定制度に紹介報酬を付けるとき
講座やスクール、認定講師制度、アンバサダー制度に紹介報酬を付けると、連鎖販売取引の定義に近づく場面があります。当てはめは、制度を三つの点(特定利益・特定負担・加入者を増やす仕組み)に分けて行います。講座の導線の整理はオンライン講座のページ、仕事の提供やあっせんを伴う設計の境目は副業・投資スクールのページで扱っています。
設計の分かれ道
紹介報酬つき講座を設計するときの順番
- 1
紹介者が、紹介した相手の購入や加入を理由に、報酬・割引・ポイントを受け取りますか。
はい報酬の原資と、紹介された人が払う金品との関係を整理する。
いいえ紹介報酬がなければ、連鎖販売取引の定義の特定利益の問題は生じにくい。他の類型を確認する。
- 2
紹介された人は、紹介する側の立場にもなれる(同じ制度に加わる)設計ですか。
はい取引に加わる人を増やす仕組みになっているかを確認する。
いいえ紹介者だけが報酬を受け、紹介された人は受講するだけなら、仕組みの構造を再確認する。
- 3
紹介された人は、入会金・教材・ツールなど、報酬を得る立場になるための負担を伴いますか。
はい特定負担を伴う取引として、定義の要素を確認する。
いいえ負担を伴わない設計なら、定義の特定負担の要素に当たらない可能性を記録する。
- 4
定義に当たる可能性が残りますか。
はい概要書面・契約書面・赤枠・氏名等の明示・広告の表示を、定義に当たるものとして整える。
いいえ判断の根拠(報酬の原資、負担の有無)を記録して残す。
「当たらない」と判断するための記録は、報酬規定、料金表、広告・面談資料の版を残しておくことが中心です。
注意が必要なのは、紹介報酬を別建てにしない場合です。報酬を「紹介料」とは呼ばず、「ロイヤリティ」「活動費」「認定講師への報酬」などの名目で払っても、原資と流れが特定利益の型に当たれば、定義の判断の対象になります[1]。逆に、講座の受講生が口コミで知人に紹介するだけで、事業者から報酬も割引も出ない設計であれば、特定利益の要素がありません。
認定講師制度では、講師になるための認定料や教材費が特定負担に当たるかが問題になります。講師が自分で集客して受講料の一部を事業者に払う形であれば、通常は、取引に加わる人を増やして得る利益ではなく、役務の対価の整理が中心になります。講師が他の講師を増やして報酬を得る構造があるかが、分かれ目になります。
20日の期間、書面、中途解約、禁止行為の整理
連鎖販売取引に当たると判断した場合の書類と義務を、順に整理します。書面の交付(37条1項・2項)、クーリング・オフ(40条1項)、不実告知などの禁止(34条1項)は、店舗等によらないで事業を行う個人が相手のときの規律です。氏名等の明示(33条の2)と広告の規律(35条・36条)には、この限定がありません[4][5]。
概要書面と契約書面
概要書面は、特定負担をしようとする人と契約を結ぼうとするとき、契約を結ぶまでに交付します。契約書面は、契約を結んだ後に遅滞なく交付します。
「連鎖販売業を行う者(連鎖販売業を行う者以外の者がその連鎖販売業に係る連鎖販売取引に伴う特定負担についての契約を締結する者であるときは、その者。第三項において同じ。)は、連鎖販売取引に伴う特定負担をしようとする者(その連鎖販売業に係る商品の販売若しくはそのあつせん又は役務の提供若しくはそのあつせんを店舗等によらないで行う個人に限る。)とその特定負担についての契約を締結しようとするときは、その契約を締結するまでに、主務省令で定めるところにより、その連鎖販売業の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。」
「二 商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせん又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんについての条件に関する事項」
「三 当該連鎖販売取引に伴う特定負担に関する事項」
「四 当該連鎖販売契約の解除に関する事項(第四十条第一項から第三項まで及び第四十条の二第一項から第五項までの規定に関する事項を含む。)」
省令は、概要書面に明記する事項を次のように定めています(規則78条1項)。契約書面の記載事項は、規則80条1項の表にあります。
概要書面に明記する事項(規則78条1項の各号の要旨)
| 号 | 事項 |
|---|---|
| 一・二 | 統括者の名称、住所、電話番号、法人なら代表者の氏名。統括者以外の者が連鎖販売業を行うときは、その者についても同じ事項 |
| 三・四 | 商品(または権利・役務)の種類、性能・品質(内容)に関する重要な事項。商品名 |
| 五 | 商品・権利の販売価格、引渡しや移転の時期と方法、その他の販売条件に関する重要な事項。役務の対価と提供条件 |
| 六・七 | 特定利益に関する事項。特定負担の内容 |
| 八 | 契約の解除の条件その他の契約に関する重要な事項 |
| 九 | ローン提携販売や包括・個別の信用購入あっせんを使う場合に、購入者が信販会社などへ主張できる事由に関する事項(抗弁の接続) |
| 十 | 34条の禁止行為に関する事項 |
各号の逐語は法令で確認してください。赤枠・8ポイントの定めは、概要書面にもあります(規則78条2項・3項)。
20日のクーリング・オフ
「第三十七条第二項の書面を受領した日(その連鎖販売契約に係る特定負担が再販売をする商品(施設を利用し及び役務の提供を受ける権利を除く。以下この項において同じ。)の購入についてのものである場合において、その連鎖販売契約に基づき購入したその商品につき最初の引渡しを受けた日がその受領した日後であるときは、その引渡しを受けた日。次条第一項において同じ。)から起算して二十日を経過したとき…を除き、書面又は電磁的記録によりその連鎖販売契約の解除を行うことができる。 この場合において、その連鎖販売業を行う者は、その連鎖販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。」
2022年6月1日の施行から、解除の通知は書面に加えて電磁的記録でもできます。解除の効力は、通知を発した時に生じ(40条2項)、商品が引き渡されているときの引取りの費用は事業者の負担です(40条3項)。これらに反する特約で加入者に不利なものは無効です(40条4項)[5]。
20日が過ぎたあとの中途解約と商品販売契約の解除
連鎖販売取引には、クーリング・オフの期間が過ぎたあとも、将来に向かって契約を解除できる中途解約の規定があります。特定継続的役務提供の中途解約と同じく、書面の記載事項にも入ります。
「連鎖販売加入者は、第三十七条第二項の書面を受領した日から起算して二十日を経過した後…においては、将来に向かつてその連鎖販売契約の解除を行うことができる。」
「一 当該商品の引渡し(当該商品が施設を利用し又は役務の提供を受ける権利である場合にあつては、その移転。以下この条において同じ。)を受けた日から起算して九十日を経過したとき。」
「二 当該商品を再販売したとき。」
「三 当該商品を使用し又はその全部若しくは一部を消費したとき(当該連鎖販売業に係る商品の販売を行つた者が当該連鎖販売加入者に当該商品を使用させ、又はその全部若しくは一部を消費させた場合を除く。)。」
赤枠については、書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し、文字と数字は8ポイント以上にします(規則80条2項・3項)。さらに、契約書面のうち、20日の解除に関する内容(表の三号の下欄)は赤枠の中に赤字で記載する、と定められています(規則80条4項)。中途解約の事項は、書面に記載する内容として表の四号・五号に定められていますが、赤枠の中に赤字で書く事項として指定されているのは三号の下欄です[4]。赤枠の記載事項の一覧は赤枠のページ、契約書面の一覧は契約書面のページで整理しています。
広告・勧誘・禁止行為・取消し
広告をするときは、商品や役務の種類、特定負担に関する事項、特定利益の計算の方法などを表示します(35条)。特定利益の指標を示すときは、同じ水準の特定利益を実際に得ている人が多数派であることを示す数値を載せるなどして、見込みを正しく理解できる根拠や説明を示します。
「収受し得る金額その他の特定利益の指標を表示するときは、その指標と同等の水準の特定利益を実際に収受している者が当該連鎖販売業に係る商品の再販売、受託販売若しくは販売のあつせんをする者又は同種役務の提供若しくは役務の提供のあつせんをする者の多数を占めることを示す数値を表示するなど、特定利益の見込みについて正確に理解できるように、根拠又は説明を表示すること。」
勧誘の場面では、統括者や勧誘者は、商品の性能や品質、特定負担、契約の解除、特定利益などについて故意に事実を告げず、又は不実のことを告げることが禁じられています(34条1項)。威迫して困惑させることも禁止です(同条3項)。不実の告知や故意の不告知で誤認して契約した加入者は、契約を取り消せます(40条の3)[3][5]。
「統括者、勧誘者又は一般連鎖販売業者は、その統括者の統括する一連の連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約を締結させ、又はその連鎖販売業に係る連鎖販売取引についての契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。」
指示の対象にも、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的な判断の提供や、契約しない意思を示した者への迷惑を覚えさせる勧誘が入っています(38条1項2号・3号)[3]。書面の電子交付を行う場合は、承諾の取得などの手続が必要です(37条3項、規則83条)。手続は書面の電子交付のページと承諾書面のページで整理しています。
よくある誤り→正しいやり方
紹介報酬つきの販売で、見直しの場面が多い順に並べます。
書き方の例(一般的な例) 紹介制度と書類(1〜6)
1 中途解約・清算の条項
理由40条の2が中途解約と上限額を定めており、これに反する特約で加入者に不利なものは無効です(40条の2第6項)。
2 電子交付と承諾
理由承諾の手続に不備があると、書面を交付したものとみなされないおそれがあります(37条3項、規則83条)。
3 断定的な表示
理由断定的判断の提供は指示の対象で(38条1項2号)、広告表示の根拠の定めもあります(規則72条2項3号)。
4 返金しない旨の規約
理由法定の解除権を狭める特約は、その部分が無効になりえます。
5 禁止事項の列挙で判断を済ませる
理由禁止条項は、受講生同士の勧誘を禁じるものです。自社の制度が定義に当たるかとは別です。
6 紹介制度の判定を記録しない
理由広告表示の根拠資料の提出を求められたときに、示せるかどうかに直結します(36条、規則73条など)。
関係する判例・処分事例・相談事例
連鎖販売取引の判例は、地方裁判所のものが中心です。詳しい整理は連鎖・副業の判例にあります。ここでは、事業者の実務に関係する点だけを取り上げます。
裁判例「代理店」の名称でも、紹介報酬と権利金で連鎖販売取引と判断され、期間経過後の解除が有効とされた事例[7]
- 裁判所・判決日
- 熊本地方裁判所民事第2部 令和7年12月5日
- 事件番号
- 令和6年(ワ)第19号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/) の判決詳細ページ(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨家系図の作成と代理店の契約を結んだ人たちが、勧誘が意思決定の自由を侵害し公序良俗に反するとして、不法行為による賠償を求め、予備的に消費者契約法4条3項8号や民法96条による取消し、特商法40条1項による解除に基づく返還を求めた事案です。
判断の要点裁判所は、不法行為や取消しの主張は、各人がどんな勧誘を受けたかの立証が足りないとして、家系図作成契約については認めませんでした。他方、代理店契約は、新規代理店を紹介することによる報酬(特定利益)を得られると誘って権利金(特定負担)を払わせる取引で、33条1項の連鎖販売取引に当たるとしました。そのうえで、交付された契約書面には連鎖販売取引であることの記載がなく、取引の概要を説明した書面が渡された形跡もないと見て、クーリング・オフの期間はまだ始まっておらず、契約から二十日を過ぎた解除も有効だと判断し、権利金の返還を認めました。
事業者の実務への示唆「代理店」という呼び名でも、紹介による報酬と権利金が組み合わされていれば、連鎖販売取引と判断されうること、書面の不交付や不備があれば二十日が経っていても解除できることがわかります。判決は書面を37条2項の書面として説明していますが、現行条文では概要書面が1項、契約書面が2項です。下級審の判断で、控訴の有無は未確認です。
裁判例収入の大半が新規加入者の契約金で成り立つ仕組みについて、共同不法行為が認められた事例[8]
- 裁判所・判決日
- さいたま地方裁判所第1民事部 平成18年7月19日
- 事件番号
- 平成17年(ワ)第1645号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/) の判決詳細ページ(確認の範囲:主要部分。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨通信販売の事業を名目にしながら、実際の収入の大半が新規加入者の契約金で、会員が増えなければ成り立たない仕組みだった会社に対し、契約金を支払った人たちが、会社・代表者・勧誘員に共同不法行為による賠償を求めた事案です。
判断の要点裁判所は、実質はいわゆるネズミ講にあたり、契約そのものが公序良俗に反する違法な取引だと評価して、請求の一部を認容しました。被告会社が、断定的判断の提供や概要書面・契約書面の不交付などを理由に営業停止を命じられていた事実も認定しています。
事業者の実務への示唆判断の軸は、「何を売っているか」ではなく、収入の源が商品の販売なのか、新規加入者の支払いなのか、という実態でした。判決から約20年たった古い下級審判決で、その後の法改正を前提にしていません。上級審の結果は未確認です。
最高裁判所は、平成26年10月28日の判決(平成24年(受)第2007号、民集68巻8号1325頁)で、公序良俗に反して無効な出資・配当の契約に基づき受け取った金銭について、受け取った金銭が、無限連鎖講に当たる事業の配当金であって、ほかの会員の出資金が原資だったこと、事業の破綻で損失を負った会員が破産債権者の多数を占めること、破産管財人が公平な清算のために返還を求めていることなどの事情があるときには、不法原因給付を理由に返還を拒むのは信義則に反して許されない、と述べました(裁判所サイトの判示事項・裁判要旨の範囲で確認)[9]。破産管財人による返還請求の事案で、特商法の連鎖販売取引の判断ではありません。事業者向けの示唆としては、紹介による配当を主な収益源にした仕組みが、違法・無効とされうる点にとどめます。
行政処分と相談の動き
消費者庁は、2023年3月29日、連鎖販売取引を行う三事業者に対し、取引等停止命令(9か月)と指示を行い、役員2名に業務禁止命令を出しました。公表資料は、違反の内容として、氏名等の明示義務の違反、役務の内容の不告知、勧誘の目的を隠して誘い出した人への人目のつかない場所での勧誘、断定的判断の提供、概要書面と契約書面の不交付を挙げています(条番号は公表資料の表記で、現行の33条の2、34条1項1号・4項、38条1項2号、37条1項・2項に対応します)[11]。書面と勧誘の両方で、仕組みの設計を点検する項目に置き換えられます。
国民生活センターのPIO-NET(経由相談を除く)で、マルチ取引の相談件数は、2023年度の5,158件から2024年度の4,132件、2025年度の4,003件へと減ってきています[10]。商品は健康器具、化粧品、学習教材、出資などさまざまで、解約・返金の相談が多いとされています。事例には、借金をして副業のアフィリエイトを申し込んだ例、知人に誘われたセミナーが実は勧誘だった例、マッチングアプリで知り合った相手にセミナーへ連れて行かれ断れず契約した例があります。
事業者側の対応としては、勧誘に先立つ氏名等の明示と、勧誘目的の告知、書面の交付を設計に入れることです。紹介報酬のある仕組みを「副業」とだけ呼んで説明を省く運用は、避けます。
ヒヤリングで確かめること、業種サイトの記事
確かめる問いと理由紹介制度の設計を確かめる
紹介報酬・割引・ポイントの有無と金額、原資は何ですか。
特定利益の三つの型に当たるかを判断するためです。
紹介された人が支払うものと、紹介した人の報酬の関係はどうなっていますか。
報酬が、紹介された人の取引料や購入代金に連動するかを判断するためです。
報酬の対象は、購入・登録・更新のどれですか。
取引条件の変更に伴う提供金品も取引料に入るためです。
加入するときに、購入者が負担する金額の内訳と総額はいくらですか。
特定負担の有無と範囲を判断するためです。
紹介者に求める活動と、勧誘の方法(SNS・イベント)は何ですか。
勧誘者としての義務や、勧誘目的の告知の要否を判断するためです。
買い手は、店舗等によらないで事業を行う個人ですか。
20日と書面の交付の対象になるかを判断するためです。
ここでの整理は、書類を設計するための確認事項です。
紹介制度を伴う契約の個別の論点は、代理店・FC向けの記事でも整理しています。 紹介制度の規約、 紹介と提携の契約、 FC募集と独占禁止法の整理、 集客支援の事業者向けのアフィリエイトの規約、 講座のモニター募集のモニター募集の契約があります。期間の数え方は期間の数え方のページ、勧誘の場面での明示は勧誘前の明示と再勧誘の禁止のページが参考になります。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律33条1項〜3項(連鎖販売業・統括者・取引料の定義)、33条の2(氏名等の明示)、同法施行規則68条(特定利益) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付通達)第3章(連鎖販売取引)法第33条関係・法第33条の2関係(PDF 63〜68頁)。2026年10月23日時点で、この日付より新しい版は消費者庁の掲載ページに見当たらない https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律34条(禁止行為)、35条・36条(広告の表示事項・誇大広告等の禁止)、38条1項(指示)、同法施行規則72条 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律37条1項〜3項(概要書面・契約書面・電磁的方法による提供)、同法施行規則78条・80条(記載事項・赤枠・8ポイント) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律40条1項〜4項(クーリング・オフ)、40条の2(中途解約・商品販売契約の解除)、40条の3(取消し)、同法施行令23条 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」連鎖販売取引のページ(要件・クーリング・オフ・中途解約・書面・禁止行為) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/multilevelmarketing/確認日:2026年10月23日
- 裁判例熊本地方裁判所民事第2部 令和7年12月5日判決(令和6年(ワ)第19号)。裁判所「裁判例検索」の判決詳細ページで全文を確認。控訴の有無は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/95413/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例さいたま地方裁判所第1民事部 平成18年7月19日判決(平成17年(ワ)第1645号)。裁判所「裁判例検索」の判決詳細ページで主要部分を確認。上級審の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/33528/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日判決(平成24年(受)第2007号、民集68巻8号1325頁)。裁判所「裁判例検索」の判決詳細ページで判示事項・裁判要旨のみを確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/84582/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「各種相談の件数や傾向」マルチ取引(2026年7月31日更新。PIO-NET、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/multi.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 連鎖販売取引に係る行政処分の公表(処分日2023年3月29日。取引等停止命令9か月ほか。条番号は公表資料の表記で、本文では現行条文に置き換えて記載) https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_230330_01.pdf確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
受講生が知人に紹介して割引を受ける制度は、連鎖販売取引になりますか。
割引やポイントが「特定利益」の三つの型(施行規則68条)に当たり、紹介された人が特定負担を伴う取引をし、取引に加わる人を増やす仕組みになっているかで判断します。名称では決まらないため、原資と仕組みを確認します。
連鎖販売取引のクーリング・オフは、いつから数えますか。
契約書面(37条2項)を受け取った日から20日です(40条1項)。特定負担が再販売する商品の購入で、その商品の最初の引渡しが後になるときは、引渡しを受けた日から数えます。
20日を過ぎたら、契約は解除できなくなりますか。
できなくなるわけではありません。20日を過ぎても、将来に向かって解除できる中途解約があります(40条の2第1項)。商品販売契約の解除には、契約から1年以内、引渡しから90日以内などの条件があります。
規約に勧誘禁止を書いておけば、連鎖販売取引の規制は受けませんか。
受けないとはいえません。勧誘禁止は受講生同士の勧誘を禁じる条項で、自社の紹介制度が連鎖販売取引に当たるかとは別の問題です。
相手が法人の場合、20日の書面は不要ですか。
20日と書面の交付の対象は、店舗等によらないで事業を行う個人に限られます(37条、40条1項)。法人など個人でない相手の場合は、これらの規定の対象外になるのが原則ですが、実態の確認は必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所