このページの要点
- 学習塾型(五の項)は事業者が用意する場所、家庭教師型(四の項)はそれ以外の場所で提供される指導。上限額が項ごとに違う
- 期間と総額の要件を超える契約は、概要書面を契約前に、契約書面を契約後遅滞なく渡し、赤枠の中に赤字で解除の事項を表示する
- 月謝制は原則対象外だが、教材の購入条件など実態で長期に拘束されれば対象。有効期限のない回数券は期間を超えるものとして扱う
- クーリング・オフ後も契約期間中は中途解約が可能。請求できる額は提供済みの対価と、項ごとの上限まで。教材は関連商品として解除できる
結論:塾と家庭教師は提供場所で項が分かれ、期間と総額の要件で対象かどうかが決まる
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 入学試験や学校教育の補習のための学力の教授を、幼稚園・大学を除く学校の児童・生徒・学生向けに提供し、期間が2月を超え、総額が5万円を超える契約を結ぶ学習塾・家庭教師・オンライン個別指導の事業者
- 何をすべきか
- 指導の場所(事業者が用意する場所か)で四の項か五の項かを決め、契約前に概要書面、契約後は遅滞なく契約書面を渡し、赤枠の中に赤字で解除の事項を表示する
- 期限
- クーリング・オフは契約書面を受領した日から数えて8日。その後も契約期間中は、理由を問わず中途解約ができる
結論の表:学習塾・家庭教師
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当てはまる取引の類型 |
指定役務の要件
|
| 当てはまらない場合の条件 |
|
| 必要な書類(要るもの・要らないもの) |
共通して確認するもの
|
| クーリング・オフの期間 |
|
| 中途解約の有無と上限 |
|
塾か家庭教師かは呼び名でなく、役務を提供する場所(事業者が用意する場所かどうか)で、四の項と五の項に分かれます。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。
表のとおり、学習塾や家庭教師の契約は、期間と総額が要件を超えるかどうかで、特定商取引法(以下「特商法」)の特定継続的役務提供(エステや語学教室など政令で指定された7つの役務を、長い期間・高い金額で提供する契約。用語集)の章が働くかが決まります。[1][6][10]要件を超える契約では、概要書面と契約書面の交付、クーリング・オフ、中途解約への対応が必要になります。要件以下の契約でも、ネットのフォームで申込みを受けるなら通信販売の表示などは残ります。
このページは、学習塾・家庭教師を営む事業者が、自分の契約がどの項に当たるかを決め、必要な書類を漏れなく整える順番を示します。項ごとの上限額の一覧は7業種の早見表、取引の類型の全体像はサービス別の早見表、診断の分かれ道は診断の結果(特定継続的役務提供)にあります。中途解約の考え方は中途解約と上限でも詳しく説明しています。
判定の根拠:四の項と五の項、期間と総額の数え方
特定継続的役務提供の入り口は、期間と金額の二つの要件
特商法41条1項1号は、政令で定める期間を超えて役務を提供する約束で、相手方が政令で定める金額を超える金銭を払う約束をした契約を、特定継続的役務提供契約と定めています。[1]期間と金額は、どちらも「超える」ことが要件です。期間がちょうど2月、総額がちょうど5万円なら、要件には届きません。
「役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供」
「法第四十一条第一項第一号の政令で定める期間は、別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第二欄に掲げる期間とする。」
「法第四十一条第一項第一号の政令で定める金額は、五万円とする。」
四の項と五の項は、指導を提供する場所で分かれる
別表第四は、学力の教授を二つの項に分けています。事業者が用意する場所で提供されるものが五の項(学習塾型)、それ以外の場所で提供されるものが四の項(家庭教師型)です。[6]「塾」「家庭教師」という呼び名ではなく、指導をどこで提供するかで決まります。
「…学力の教授(同項に規定する場所以外の場所において提供されるものに限る。)」
「…学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る。)」
特定継続的役務7業種の要件と中途解約の上限
| 項と役務 | 期間・金額の要件 | 中途解約の上限(提供開始後) | 提供開始前の費用の上限 | 詳しいページ |
|---|---|---|---|---|
| 四の項 学力の教授・家庭教師型 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 5万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 2万円(施行令31条、別表第四) | 学習塾・家庭教師 |
| 五の項 学力の教授・学習塾型 | 期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四) | 2万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四) | 1万1千円(施行令31条、別表第四) | 学習塾・家庭教師 |
四の項と五の項は、上限の金額が違うため別の行にしています。要件は「期間が政令の期間を超え、かつ金額が5万円を超える」で、いずれも『超える』です(特商法41条1項、施行令24条)。
表のとおり、二つの項は期間と総額の要件が同じですが、中途解約の上限額が違います。四の項と五の項を一括りにして『学習塾・家庭教師は上限が決まっている』とだけ説明していると、契約書面の精算事項を誤ります。自社の指導がどちらの項に当たるのか、コースごとに確認してください。
期間と総額には何を含めるか
期間は、契約書面に記載する役務の提供期間で判断します。有効期限のある回数券・チケットは、その期限を提供期間とみなし、有効期限のないものは、常に政令の期間を超えるものとして扱われます。[11][12]有効期限を設けないと、期間の要件が自動的に満たされる点に注意が必要です。
総額には、授業料だけでなく、入学金・入会金・施設整備費・検定料、購入が必要な商品(教材など)の代金を含めて数えます。施行規則94条1項も、契約書面の金額の欄に、これらの費目ごとの明細と合計を書くよう求めています。[7][12]『指導は無料』と説明していても、教材などの抱き合わせ商品と合計して要件を超えれば、対象になりえます(Q&A Q21)。[11]
学習塾・家庭教師の契約を判定する順番
- 1
教えるのは、入学試験に備えるための学力、または学校教育の補習のための学力ですか。
はい次の問いへ。
いいえこの判定表の対象外。語学・パソコン・結婚相手紹介などは、別の項(語学教室・パソコン教室・結婚相談所のページ)で確認する。
- 2
対象は幼稚園と大学を除く学校の児童・生徒・学生ですか(浪人生のみのコース、小学校・幼稚園の入学試験対策は含まない)。
はい次の問いへ。
いいえ四の項・五の項には当たらない。ただし、期間・総額が大きいときは、割賦販売法や消費者契約法の確認が残る。
- 3
指導は、事業者が用意する場所(事業所、借り上げた会場など)で行いますか。
はい五の項(学習塾型)。次の問いへ。
いいえ四の項(家庭教師型)。受講者の自宅へ派遣する形も、自宅から接続するオンライン指導も、用意する場所以外として整理する。次の問いへ。
- 4
契約の提供期間は2月を超え、教材などを含む総額は5万円を超えますか(有効期限のない回数券は期間を超えるものとして扱う)。
はい特定継続的役務提供に当たる。概要書面・契約書面・赤枠・関連商品の記載が必要。
いいえ特定継続的役務提供には当たらない。フォームで申込みを受けるなら通信販売の表示、分割払いなら割賦販売法を確認する。
月謝制(1か月単位で更新)の塾は、期間の要件を満たさないため原則として対象外ですが、教材の販売などで実質的に長期の拘束になる場合は対象になります。
月謝制・回数券・教材:対象になるかが分かれる場面
学習塾の相談で最も多いのは、『月謝制だから大丈夫か』という質問です。消費者庁のQ&Aは、1か月単位で更新される月謝制の学習塾は、政令の期間を満たさないため原則として規制を受けないとしています。ただし、教材の販売などにより、実態として政令の期間を超えて契約に拘束されると判断される場合は、規制を受けることがあります(Q27)。[11]月謝制と書くだけで対象外になるわけではありません。
実態の判断で見られるのは、たとえば、入塾時に1年分の教材の購入を条件にしている、途中でやめると教材代を精算できない、月謝の更新に実質的な選択の余地がない、といった点です。教材が『購入が必要な商品』なら、その代金は総額に入り、関連商品の解除の問題にもなります。月謝は月ごとに更新される契約でも、入会時に総額が確定する設計(教材セット+月謝の契約)にしていないか、一度見直してください。
教材の通信添削や電話での学習相談が、家庭教師に当たる場合もあります。消費者庁のQ&Aは、①学力の教授に当たること、②関連商品と役務の対価の合計が5万円を超えること、③提供期間が2月を超える(期限がなければ常に該当)ことを要件とし、契約書が教材の売買の形でも、『わかるまで教える』実態があれば学力の教授に当たると整理しています(Q22・Q23)。[11]ただし、社会通念上アフターサービスと考えられ、販売の条件でもなく、消費者もそう認識している場合は、該当しないとされています。
よくある指導の形態と、特定継続的役務提供に当たるかを考える観点
| 指導の形態 | 考える観点 | 方向(実態で確認) |
|---|---|---|
| 事業所で集団授業。月謝のみで、教材は任意購入 | 月ごとの更新か。教材などで実質的に期間を超えて拘束されないか | 月謝制のみなら原則として対象外。拘束の実態があれば対象になりうる |
| 事業所で個別指導。半年分を一括払い | 用意する場所での指導か。期間と総額の要件 | 五の項。期間と総額が要件を超えれば対象 |
| 講師を生徒の自宅へ派遣。教材セットも販売 | 用意する場所以外での指導か。教材は購入が必要な商品か | 四の項。教材は関連商品になりうる |
| 受講者の自宅から接続するオンライン個別指導 | 事業者が用意する場所での提供といえるか | 用意する場所以外として四の項側で整理するのが基本。事業所内のブースに通う形なら場所の実態で判断 |
| 回数券(有効期限なし) | 期限がないものの扱い | 期限のないものは常に期間の要件を超えるものとして扱われる。金額次第で対象 |
| 浪人生のみを対象とするコース | 対象者の範囲 | 浪人生のみのコースは対象外。高校生と浪人生を一緒に受け入れるコースは全体が対象 |
| 小学校・幼稚園の入学試験(いわゆるお受験)対策 | 対象学校の範囲 | 学習塾型の定義の対象外(消費者庁Q&A Q24)。四の項も入学試験の対象から幼稚園と小学校を除く |
| 大学生向けの補習・資格試験対策 | 『学校教育』の範囲 | 別表第四の学校教育は幼稚園と大学を除くため、四の項・五の項には当たらない |
| 教材の販売が中心で、添削や電話での質問対応が付く | 『わかるまで教える』実態があるか | 教材の売買契約の形でも、教授の実態があれば家庭教師に当たりうる(Q&A Q22・Q23) |
表の右列は考え方の方向であり、個別の契約の結論ではありません。複数のコースがある場合は、コースごとに判断します(通達 第4章)。
学習塾型の定義には、もう一つ見落としやすい点があります。小学校・幼稚園の『お受験』対策は対象外で、浪人生のみを対象とするコースも対象外です。一方、高校生と浪人生の両方を受け入れるコースは、全体として対象になります(Q24)。[11]コースの募集要項で対象者を限定しているかどうかが、判定の材料になります。
よくある誤り→正しいやり方
実務でよく見られる書き方のうち、判定や書面の誤りにつながりやすいものを、多い順に並べます。特定の事業者の書類を指すものではなく、一般的な型です。
書き方の例(一般的な例) 学習塾・家庭教師の契約書・規約で起きがちな書き方
① 特定継続的役務提供に当たるかの判定
理由個別指導か集団授業かは要件ではなく、判断の軸は場所と期間・総額です。一律の記載は、当たる契約で書面の交付義務を果たさない結果になりかねません(罰則は71条1号)。[5]
② 塾と家庭教師の区別
理由上限額は項で違います(五の項と四の項は別の行)。呼び名で分けると、契約書面の精算事項に誤った金額を書くことになります。[6]
③ 月謝制
理由月謝制は原則対象外ですが、実態によって対象になる場合があります(Q&A Q27)。[11]
④ 回数券・チケット
理由有効期限のないものは、常に政令の期間を超えるものとして扱われます(Q&A Q3)。[11]
⑤ 赤枠のクーリング・オフ表示
理由契約書面の赤枠は、書面の内容を読むべき旨と、解除に関する事項を、赤枠の中に赤字で記載するものです(規則94条3項・4項)。条件つきの記載では、書面として足りるか疑義が残ります。[7]
⑥ 起算日と通知の方法
理由起算は書面を受領した日で、通知は書面又は電磁的記録でもできます(48条1項)。契約日起算や書面のみとする記載は、法の内容と食い違います。[3]
書類の作り方の要点
特定継続的役務提供に当たる契約では、書類が3段階で必要になります。概要書面は契約を結ぶまでに、契約書面は契約を結んだら遅滞なく渡します。[2]書面の中身は、施行規則が項目ごとに定めています。ここでは、学習塾・家庭教師の実務で重要な点を、順に整理します。
1 概要書面(契約の前に渡す、取引の条件をまとめた書面)
特商法42条1項は、契約を締結するまでに、契約の概要を記載した書面を交付することを求めています。施行規則92条1項1号が、事業者の氏名・住所・電話番号、役務の内容、購入が必要な商品、金銭の概算額、支払の時期・方法、提供期間、クーリング・オフと中途解約に関する事項などを列挙しています。[2][7]書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で書き、8ポイント以上の文字を使います(同条2項・3項)。詳しい項目の一覧は概要書面の記載事項一覧にまとめています。
2 契約書面(契約後に渡す、契約の内容を明らかにする書面)
契約書面は、特商法42条2項が定める事項を記載します。クーリング・オフの起算点になる書面ですので、記載漏れがあると、期間が進まない状態が続きます。[2]号ごとの内容は次のとおりです。
「役務の内容であつて主務省令で定める事項及び当該役務の提供に際し当該役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名」
「役務の対価その他の役務の提供を受ける者が支払わなければならない金銭の額」
「前号に掲げる金銭の支払の時期及び方法」
「役務の提供期間」
「第四十八条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項を含む。)」
「第四十九条第一項の規定による特定継続的役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項、第五項及び第六項の規定に関する事項を含む。)」
実務で見落としやすいのが金額の欄です。施行規則94条1項は、役務の対価その他の金銭の額について、費目ごとの明細と合計を記載するよう求めています。[7]
「入学金、入会金、授業料その他の役務の対価、施設整備費、入学又は入会のための試験に係る検定料、役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品の価格その他の費目ごとの明細及びその合計」
3 赤枠(解除の事項を、赤枠の中に赤字で表示)
契約書面には、書面の内容を十分に読むべき旨に加え、クーリング・オフ(48条1項)の事項を赤枠の中に赤字で記載します。関連商品を使用・消費したときに解除できないとする場合は、商品の名称と、その旨も赤枠の中に赤字で書きます(規則94条2項・3項・4項)。[7]文字の大きさは8ポイント以上です(同条5項)。赤枠に入れる範囲と文言の考え方は、赤枠の書き方と赤枠の一覧で整理しています。
4 電子での交付(承諾を得る場合)
書面に代えて電磁的方法(メールやダウンロードなど)で記載事項を提供するには、相手方の承諾が必要です(42条4項)。承諾は、施行令26条1項により、提供に用いる方法の種類と内容を示した上で、書面等によって得ます。[2][6]オンライン指導の事業者では、申込みから契約書面の交付まで画面の中で完結させたい場面が多いので、承諾の取り方と記録を先に設計しておく必要があります。手順は書面の電子交付の手順と承諾書面の一覧にあります。
5 関連商品(教材など)の扱い
関連商品とは、役務の提供に際して購入する必要のある商品として政令で指定されたものです。学習塾・家庭教師を含む三の項から五の項の関連商品は、書籍、音・影像・プログラムを記録した物、そしてファクシミリ装置とテレビ電話装置が指定されています(施行令29条1項・別表第五第三号)。[6]契約が解除されたとき、関連商品の売買契約も解除でき(48条2項)、すでに引き渡した商品の引取りの費用は、販売した者の負担です(同条5項)。教材を購入必須としていない場合は、契約書面にも『購入は任意』と書いておくと、関連商品かどうかの争いを避けられます。詳しくは関連商品の書面で扱っています。
6 分割払い・クレジットを使う場合
自社で2月以上かつ3回以上に分割して受領する場合は、割賦販売にあたり、特定継続的役務提供の中途解約の上限(49条2項・4項・6項)は適用されず(50条2項)、割賦販売法の規定で制限されます。[4][8]学力の教授は、割賦販売法施行令の別表第一の三で指定役務に掲げられています(第六号・第七号)。クレジットカードなどの信用供与を利用する場合は、購入者が事業者に主張できる事由を信販会社にも主張できる旨(抗弁の接続)を、概要書面と契約書面に記載します(規則92条1項1号リ、93条2項5号)。[7][8]決済方法ごとの整理は分割払い・カードと割賦販売法で説明しています。
中途解約の精算を定める条項の考え方(骨子)
- 受講者は、契約書面を受領した日から起算して【法定の期間】を経過した後は、契約期間中、将来に向かって本契約を解除できる。
- 前項の解除の場合に当社が請求できる金額は、①提供済みの指導の対価(契約時に定めた単価により計算する)と、②特定商取引法及び同法施行令が定める上限の範囲内で、解除により通常生ずる損害の額(指導の提供開始前の解除では、契約の締結及び履行に通常要する費用の額)に、法定利率による遅延損害金を加えた額を超えない。
- 既に受領した金額が前項の金額を超えるときは、当社は、その超過額を速やかに返還する。
論点ごとの骨子です。上限の金額は、塾型と家庭教師型で違うため、様式ごとに別の数字を入れます。入学金・初期費用を精算に含める場合は、費目と金額を契約書面の金額の欄に具体的に書く必要があります。
書類を整えるときの手順は、①項を決める(このページの判定表)、②金額の費目を洗い出す(教材・入会金・施設費)、③概要書面・契約書面・赤枠を同時に作る、④交付の方法(紙か電子か)と交付日の記録を決める、の順が実務的です。罰則は、書面を渡さない場合や、法定事項の欠けた書面を渡した場合に、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(71条1号)。[5]
「第四十二条第二項又は第三項の書面を受領した日から起算して八日を経過したとき」
関係する判例・処分事例・相談事例
学習塾・家庭教師の契約について、特定継続的役務提供の該当性や上限額を直接判断した裁判例は、裁判所の裁判例検索では確認できませんでした。確認できた範囲で、家庭教師の派遣と教材の販売に関する簡易裁判所の判断が2件と、教育サービスの前払金の考え方を示す最高裁の判決があります。いずれも、その裁判所の判断であり、確定したかどうかは確認していません。詳しい整理は特定継続的役務の中途解約の判例と返金しない特約の判例にあります。
裁判例家庭教師の派遣と教材の購入:クーリング・オフの期間経過後の扱い
- 裁判所・判決日
- 名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日
- 事件番号
- 平成15(ハ)第973号(求償金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨自宅を訪れた社員の勧誘で、家庭教師の派遣と家庭教材(ローン払い)の契約を結んだ購入者に対し、ローンの保証会社が代位弁済した金額の支払を求めた事案です。購入者は、契約の不成立や錯誤、クーリング・オフなどを主張しました。
判断の要点契約は成立していると認め、契約書の控えにクーリング・オフの手続が記載されていたため、8日を経過した後の内容証明郵便は、クーリング・オフとしては認めませんでした。他方で、家庭教師派遣は特定継続的役務、教材は関連商品に当たると整理し、通知の趣旨に将来に向かって契約の効力をなくす意思が含まれていると読んで、中途解約と関連商品の解除の効力を認め、保証会社の請求を退けました。[16]
事業者の実務への示唆クーリング・オフの期間が過ぎても、中途解約と関連商品の解除は別に可能です。通知の文面は柔軟に読まれるので、『期間が過ぎたから対応しない』という運用は、中途解約の通知として扱うべきものを見落とすことになります。
裁判例家庭教師の派遣と教材:関連商品の精算
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所 平成16年12月22日
- 事件番号
- 平成16(ハ)第965号(立替金請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨家庭教師の派遣契約と教材の売買契約を、信販会社の立替払い(分割払い)で結んだ保護者が、家庭教師を辞退したことをきっかけに契約を解除し、信販会社が残りの割賦金を請求した事案です。
判断の要点教材はすべて家庭教師派遣契約の関連商品と認定し、中途解約・解除の意思表示を認めました。割賦販売法30条の4により、売買契約の解除を信販会社に主張できるとし、精算は、関連商品の解除で販売業者が請求できる上限を定めた特商法49条6項1号を類推して、教材の通常の使用料相当額か、販売価格から返還時の価額を引いた額のうち高い方を基準としました。[17]
事業者の実務への示唆教材の精算は、使ったかどうかと、返還時の価値で金額が変わります。分割払いやクレジットを使うと、信販会社との関係でも解除が主張されるので、教材の返品条件と精算方法を、契約書面に具体的に書いておくことが重要です。
裁判例大学の在学契約:前払いした授業料等の返還と入学金(教育サービスの前払金の考え方)
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日
- 事件番号
- 平成17(受)第1158号(不当利得返還請求事件。民集60巻9号3437頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ(判示事項・裁判要旨)https://www.courts.go.jp/hanrei/33837/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨大学の在学契約で、納付済みの授業料等を返さない特約の効力が争われた事案です。
判断の要点裁判所の裁判要旨によれば、返還しない旨の特約は損害賠償額の予定又は違約金の性質を持つ条項で、消費者契約法の対象になります。入学金は、入学できる地位の対価であって、特段の事情がない限り返還義務はないとされ、授業料等は解除の時期で結論が分かれるとされました。[15][9]
事業者の実務への示唆学習塾の契約そのものを判断した判決ではありません。ただし、入塾金と授業料の前払いを分け、解約の時期ごとに事業者に生じる損害の範囲で精算を設計する考え方の参考になります。特定継続的役務提供に当たる塾では、さらに49条の上限が働きます(49条7項により、これに反する不利な特約は無効)。
三つの裁判例の整理
| 論点 | 裁判所の判断(その裁判所の判断として) | 契約書面・運用への示唆 |
|---|---|---|
| クーリング・オフ期間経過後の解約 | 中途解約と関連商品の解除の効力を認めた(名古屋簡裁) | 期間経過後の通知も、中途解約として受け付ける運用にする |
| 関連商品(教材)の精算 | 使用の実態と返還時の価額を基準に精算した(東京簡裁) | 返品条件・使用の定義・精算方法を書面に具体的に書く |
| 入学金・前払授業料 | 入学金は地位の対価として原則返還なし。授業料等は時期で区分(最高裁) | 入塾金と授業料を分け、解約の時期で区分する |
行政の執行事例では、特定継続的役務提供の章について、消費者庁が2026年1月に、エステティックの事業者に業務停止命令を出した公表があります。違反の型は、関連商品の解除ができないかのように告げる不実告知(44条1項)と、断る意思を示した者への迷惑を覚えさせる勧誘(46条1項4号、施行規則106条1号)でした。[13][7]業種は違いますが、同じ章の規定なので、教材を関連商品として販売する塾・家庭教師でも、『教材は返品できません』と告げる場面では同じ考え方が当てはまります。
国民生活センターは、クーリング・オフの一般的な説明で、家庭教師と学習塾を含む特定継続的役務提供の期間を8日と案内しています。[14]学習塾・家庭教師に限った相談件数の公表は確認できていないため、このページでは件数を載せていません。事業者の側では、相談窓口に寄せられる典型的な不満(解約の精算額が分からない、教材の返品ができない)を、契約前の説明と書面で解消することが、トラブルの予防になります。
ヒヤリングで確かめること、業種サイトの詳しい記事
確かめる問いと理由学習塾・家庭教師の契約を整える前に
指導は事業者が用意する場所で行いますか。自宅への派遣やオンラインはありますか。
四の項と五の項の分かれ目で、上限額が変わるため
対象学年と目的(入試対策か、学校の補習か、それ以外か)は何ですか。小学校入学の対策や浪人生のみのコースはありますか。
別表第四の対象に当たるかを決めるため
授業料は月謝ですか、回数券ですか、まとめ払いですか。有効期限はありますか。
期間の判定(期限なしは常に超える扱い)のため
教材や模試は購入が必須ですか。入会金や施設費はありますか。
総額と関連商品、契約書面の費目別明細のため
契約の相手方と受講者は同じですか(保護者が契約し、子が受講する場合など)。書面は誰にいつ渡しますか。
書面の交付先と、交付日の記録を決めるため
決済は現金・振込・クレジット・自社の分割払いのどれですか。
割賦販売法の整理と、書面への抗弁の記載のため
業種ごとの事情を含む詳しい記事は、学習塾向けのサイトにあります。クーリング・オフと中途解約の運用、月謝や入会金の扱い、保護者・未成年の契約、オンライン個別指導の契約書の論点を扱っています。
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律41条1項・2項(定義) https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351AC0000000057?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律42条1項から4項(概要書面・契約書面・電磁的方法による提供)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律48条1項から8項(クーリング・オフと関連商品の解除)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律49条1項から7項、49条の2、50条1項・2項(中途解約・取消し・適用除外)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律71条1号(書面を交付しない場合等の罰則)確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行令24条・25条・29条・30条・31条、別表第四(四の項・五の項)、別表第五第三号 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351CO0000000295?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則92条・93条・94条・106条 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/351M50000400089?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文割賦販売法2条1項・30条の4、同法施行令別表第一の三(第六号・第七号・第十一号) https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/336AC0000000159?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 条文消費者契約法9条1項1号・10条 https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/412AC0000000061?response_format=xml&asof=2026-10-23確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」特定継続的役務提供 https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」Q&A 特定継続的役務提供(Q2、Q3、Q13から16、Q21から24、Q27) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/continuousservices.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達「特定商取引に関する法律等の施行について」令和6年11月19日付 第4章(PDF 82頁から91頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 特定継続的役務提供業者に対する行政処分(2026年1月30日公表。対象はエステティック) https://www.caa.go.jp/notice/entry/044947/確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「クーリング・オフ」(2022年6月1日更新) https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第二小法廷 平成18年11月27日判決(平成17(受)1158号、民集60巻9号3437頁) https://www.courts.go.jp/hanrei/33837/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日判決(平成15(ハ)973号) https://www.courts.go.jp/hanrei/7607/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所 平成16年12月22日判決(平成16(ハ)965号) https://www.courts.go.jp/hanrei/8990/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
月謝制の学習塾でも、概要書面や契約書面は必要ですか。
1か月単位で更新される月謝制は、期間の要件を満たさないため原則として対象外です。ただし、教材の販売などで実態として長期に拘束される場合は対象になりえます(消費者庁Q&A Q27)。対象になるかを、契約の設計の段階で、教材の購入条件や総額の確定の有無から確認してください。
オンラインの個別指導は、学習塾と家庭教師のどちらになりますか。
事業者が用意する場所で提供するかどうかで分かれます。受講者が自宅から接続する形は、用意する場所以外として四の項側で整理するのが基本です。事業所内のブースに通って受講する形なら、場所の実態によって五の項になりえます。
回数券に有効期限を付ければ、特定継続的役務提供を避けられますか。
期限のある回数券は、その期限を提供期間とみなして判断します(Q&A Q3)。期限が2月を超え、総額が5万円を超えれば対象です。期限を短くして対象外とする設計は可能ですが、更新や追加購入で実質的に期間を超えないかを確認してください。
クーリング・オフの期間が過ぎたあとの解約は、断ってよいですか。
断れません。契約期間中であれば、理由を問わず将来に向かって解除できます(特商法49条1項)。請求できる額には上限があり、塾型と家庭教師型で上限が違います。上限を超える違約金の定めは、その部分が許されません(49条7項)。
入塾金は解約のときに返さなくてよいですか。
『入塾金は一切返金しない』という特約は、特定継続的役務提供に当たる契約では、そのままでは認められません。精算に含められるのは、提供済みの対価と、初期費用として具体的に書面に記載した合理的な範囲に限られます(Q&A Q14・Q15)。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所