営業のための契約と請求訪問販売:適用除外の裁判例の読み方

相手が法人や個人事業主でも、営業のための契約でなければ特商法の規定は適用されます。「呼ばれた」という主張とあわせて、裁判所の判断を整理します。

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「うちは事業者向けだから、クーリング・オフは関係ない」という整理が、実際の契約で通用するとは限りません。

このページの要点

  • 特商法26条1項1号の「営業のために若しくは営業として」は、名義ではなく、契約の目的と使われ方で判断される。
  • 買い手が会社でも、営業のための契約ではないとされた例がある。同じ判決の中でも、買い手ごとに結論が分かれた例がある。
  • 請求訪問販売は、契約を結ぶ意思を持った請求が必要で、「呼ばれた」という主張には具体性と裏付けが問われる。
  • 特商法の「営業のため」と消費者契約法の「消費者」「事業者」は別の物差し。契約の前に目的を確認して記録し、除外を前提にしない書面を整える。

結論:相手が事業者でも、営業のためでなければ除外されない

このページの結論

誰に当てはまるか
法人や個人事業主を相手に、講座、サービス、工事、設備、リースなどを売る事業者。「相手は事業者だから、クーリング・オフは関係ない」と考えている場合。
何をすべきか
名義や肩書だけで除外と決めず、契約の目的、使い方、事業の実態を契約の前に確認して記録する。除外に当たらない可能性を前提に、法定書面を整えておく。
期限
確認は契約の前に行う。除外に当たらない場合、訪問販売と電話勧誘販売は法定書面を受領した日から8日以内がクーリング・オフの期間になる。

適用除外(特商法の規定が当てはまらないとされる取引。用語集)のうち、事業者が最も気にするのは、買い手が営業のために若しくは営業として(買い手が自分の事業の売上や経費に関わる目的で契約すること。用語集)契約を結ぶ場合です。特商法26条1項1号は、この場合に訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定を適用しないと定め、特定継続的役務提供でも50条1項1号が同じ趣旨を定めています[1]。そのため、「法人向け」「個人事業主向け」と書いておけば、クーリング・オフも書面の義務も不要になる、という理解が広まっています。

しかし、除外されるかどうかを決めるのは、買い手の名義ではありません。消費者庁の通達は、相手が法人や事業者名であっても一律には除外されないこと、個人用や家庭用の購入は適用されうることを述べています[5]。裁判所の判断も、事業の内容、使用目的、使用状況といった実質を見ています[7][8]。

もう一つの適用除外が、請求訪問販売(買い手が自分の住居で契約するために来てほしいと請求した場合の訪問販売。用語集)です。「お客様に呼ばれて行った」ことを根拠に、書面や期間の規定は関係ないと考える事業者もいます。この主張が認められるかについても、裁判例があります[9]。

このページは、買い手の属性や呼ばれた経緯に関する裁判例を整理し、書類と確認の運用に結び付けます。判決の結論は、その事案での判断です。上級審の結果も確認できたものだけを書きます。

  • 買い手が会社や個人事業主でも、事業のための契約でなければ、特商法の規定が適用されると判断した裁判例がある[7][8]。
  • 営業のための契約かどうかは、買い手の属性や経費計上の有無だけでなく、事業内容、使用目的、使用状況、設置場所を考慮して決めると述べた裁判例がある[8]。
  • 「呼ばれた」という請求訪問販売の主張は、証言に具体性や裏付けがなく、契約の意思が固まっていない段階だったことを理由に認められなかった例がある[9]。
  • 特商法の「営業のために」と、消費者契約法の「消費者」「事業者」は別の条文で、別々に判断される[3][10][11]。

取引の類型の見分け方は取引の見分け方、事業者を相手にする場合の整理は事業者が相手のときの適用除外で手順にしています。

条文:営業のための契約と、請求した者の適用除外

営業のために若しくは営業として締結する契約

条文の引用特定商取引に関する法律 第26条第1項(柱書と第1号)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用しない。」

「売買契約又は役務提供契約で、第二条第一項から第三項までに規定する売買契約若しくは役務提供契約の申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供」

解説「前三節」は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規定です。「営業のために若しくは営業として」の意味は、条文には書かれていません。解釈は、通達、Q&A、裁判例が示しています[1]。
条文の引用特定商取引に関する法律 第50条第1項第1号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「特定継続的役務提供等契約で、特定継続的役務提供受領者等が営業のために又は営業として締結するものに係る特定継続的役務提供」

解説エステ、語学教室、学習塾などの特定継続的役務提供でも、買い手が営業のために締結する契約は適用除外とされています[1]。

消費者庁のQ&Aは、買い手に「稼ぐ目的」があるというだけでは営業のための契約にならず、取引の種類、利益活動との関連、設備の準備の状況などから、取引に習熟しているかを総合的に判断するという考え方を示しています[4][5]。情報商材の購入を例に、除外されない場合があることも述べています。

自宅での契約を請求した者・電話をかけることを請求した者

条文の引用特定商取引に関する法律 第26条第6項第1号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「第四条から第十条までの規定は、次の訪問販売については、適用しない。」

「その住居において売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」

解説除外されるのは、買い手が「その住居において」契約するために来てほしいと請求した場合です。事業者が訪問を持ちかけて承諾を得ても、請求とは扱われないと通達は述べています。外出先での依頼も、住居ではないため対象外とされています[1][4][5]。
条文の引用特定商取引に関する法律 第26条第7項第1号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「売買契約若しくは役務提供契約の申込みをし又は売買契約若しくは役務提供契約を締結するために電話をかけることを請求した者(電話勧誘行為又は政令で定める行為によりこれを請求した者を除く。)に対して行う電話勧誘販売」

解説電話勧誘販売にも、請求した者を除外する規定があります。ただし、括弧書きのとおり、事業者の電話勧誘行為や政令で定める行為によって請求させた場合は除外されません[1]。
条文の引用特定商取引に関する法律施行令 第19条e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「当該電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに電話をかけることを請求させる行為」

解説施行令19条は、勧誘のための電話であることを告げずに電話を請求させる行為を、除外の対象から外す行為として挙げています。無料相談の名目で電話を請求させ、その電話で販売の勧誘をする場合に問題になります[2]。

通達は、電話を請求したといえるのは、申込みや契約のために電話してほしいと明確に表示した場合や、普段の取引関係から購入の意思が明らかな場合に限られること、商品の問合せ目的で電話を請求した場合は当たらないことを述べています[5]。国民生活センターは、SNS広告で知った事業者からWeb会議サービスなどで勧誘されて契約するケースが近年みられ、これらは電話勧誘販売に該当する場合があると述べています[6]。電話勧誘販売の考え方はオンライン講座と電話勧誘販売で扱います。

「営業のため」をめぐる裁判例

裁判所「裁判例検索」で確認できた、営業のための契約を判断した裁判例のうち、2件を詳しく取り上げます。どちらも下級審の判決で、控訴の有無と結果は確認できていません。事業者名や商品名は書きません。

1 買い手が会社でも、営業のための契約ではないとされた例(神戸地裁)

裁判例会社の事務所に置かれた消火器の点検・薬剤の充填契約と、訪問販売の適用除外の主張[7]

裁判所・判決日
神戸地方裁判所 平成15年3月4日(2003年)
事件番号
平成14年(ワ)第2729号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨自動車の販売と修理を営む株式会社の事務所を訪れた業者が、消火器を運び出し、「点検作業契約書」への署名を得て代金を請求した事案です。会社は、訴状をもって訪問販売のクーリング・オフを行い、消火器の返還を求めました。

判断の要点裁判所は、買い手が会社であっても、消火器の充填薬剤の購入が「営業のため若しくは営業として」の契約とは言えないと判断し、特商法26条1項1号による適用除外は当たらないとしました。業者は法定書面(特商法4条、5条の書面)を交付していないことを認めており、訴状の送達によるクーリング・オフの意思表示を有効として、消火器の引渡しを命じました。

事業者の実務への示唆買い手が法人であるという事実だけでは、除外の根拠にならないことを示す例です。「相手は会社だから対象外」と社内で整理している場合は、契約の目的が、買い手の事業そのものに関わるものかを確認する運用が必要です。この事案では、事業者側が書面を交付していなかったことも、結論に影響しています。

2 事業者が相手でも、実質で判断するとした例(大阪地裁)

裁判例電話機・複合機などのリース契約と、26条1項1号の判断[8]

裁判所・判決日
大阪地方裁判所 平成24年7月27日(2012年)
事件番号
平成20年(ワ)第73号ほか(併合事件を含む)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:主要部分(営業のための契約の判断とその当てはめを通読。判決書は195頁)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨個人事業者らが、電話機やファクシミリ、複合機などのリース契約を、提携する販売店の訪問によって結ばされたとして、クーリング・オフなどを主張し、リース会社に責任を求めた事案です。

判断の要点裁判所は、①販売店の勧誘から契約の締結までが一連の仕組みの中で行われており、リース会社も販売業者として扱われ、訪問販売に当たるとしました。②特商法26条1項1号の趣旨は、取引に不慣れな消費者を保護する法律が、営業のための取引を当事者の自由な取決めや業界の慣行に委ねる点にあるとし、買い手が事業者であっても、営業のためでない契約は除外されないとしました。③営業のための契約かどうかは、買い手の属性や経費計上の有無といった形式面だけでなく、事業の内容、使用の目的、使用の状況、設置場所などの実質面を考慮して判断するとしました。④当てはめでは、リース料を事業の経費に計上し、現に事業で使っていた原告には除外を認め、他方で、居宅に置いた電話機、事業の規模に比べて過大なビジネスホン、使用の頻度が低いと認められた契約などについては、営業のためのものではないとして、クーリング・オフを認めました。

事業者の実務への示唆同じ判決の中でも、買い手ごとに結論が分かれました。事業者向けに売る商品やサービスでも、買い手の事業での使い方によって、除外される契約と除外されない契約が混在します。契約書面に法定の事項を書いておくか、営業のための契約であることを確かめた記録を残すか、いずれにしても、除外を前提にした一律の運用は避けるほうが安全です。控訴の有無と結果は確認できていません。

この2件は、年代も事案も異なりますが、買い手の名義ではなく、契約の目的と使われ方を見るという点で共通しています。通達も、個人用や家庭用の購入、実態のほとんどない小規模な事業の場合は適用される可能性が高いとしています[5]。

請求訪問販売の主張と、裁判所の判断

訪問販売の事業者が、「お客様から来てほしいと請求された」と主張する場面は、リフォームや設備工事、出張サービスで見られます。この主張を判断した裁判例を見ます。

裁判例リフォーム工事の契約で、請求訪問販売(26条6項1号)と類推適用を否定した部分[9]

裁判所・判決日
大阪高等裁判所 令和6年3月14日(2024年)
事件番号
令和5年(ネ)第4号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨住宅リフォーム工事を請け負った会社が、クーリング・オフを通知した施主に対し、施主からの依頼で訪問したので請求訪問販売に当たると主張した事案です。書面の不備については、書面不備の判例で扱っています。

判断の要点裁判所は、会社が提出した「施主から契約のために訪問してほしいと請求された」という証言に具体性や裏付けがなく、当時は施主に契約を結ぶ意思がまだ固まっていなかった事情もあるとして、請求した者に当たるとは認めませんでした。26条6項1号の類推適用も、押し付け販売的な要素があり、取引関係もなかったことを理由に否定しました。

事業者の実務への示唆請求したと言えるかは、契約を結ぶ意思を持って来てほしいと伝えたかで決まり、「何かの相談で呼ばれた」だけでは足りないと読めます。依頼の経緯、時期、依頼内容を記録に残す運用が考えられます。ただし、住宅リフォーム工事という事案の性質があり、射程を広げすぎない注意が必要です。上告の有無と結果は確認できていません。

消費者庁の通達も、問合せや資料請求の際に事業者が訪問を申し出て承諾を得ても請求にはならないこと、事業者が電話でアポイントを取って訪問する場合も当たらないこと、水漏れ修理で訪問した際にリフォームを勧誘した場合や、見積りの訪問でその場で別の契約を結んだ場合は除外の対象外であることを述べています[5]。Q&Aも、チラシの表示額と実際の請求額が大きく違う例は請求した者に当たらないこと、契約を住居で結ぶ明確な意思が必要であることを示しています[4]。

参考:判断されていない点に注意する判決

京都地方裁判所は令和6年1月19日の判決(令和3年(ワ)第2352号)で、ウェブサイトで低額の基本料金を表示して水回りの修理を呼ばせ、訪問後に高額な工事を結ばせた事案について、社会的相当性を超える勧誘として共同不法行為を認め、代金相当額の損害賠償を認めました[12]。事業者は、顧客からの電話依頼による訪問なのでクーリング・オフはできないと主張していましたが、クーリング・オフは予備的な請求であり、主位的な請求が認められたため、判断されていません。したがって、この判決を、「呼ばれた場合にクーリング・オフができる」あるいは「できない」と読む根拠にはなりません。広告の低額表示と実際の請求額の乖離が、不法行為の判断で重視された例として、広告の整合性の点検に使えるものです。

消費者契約法の「消費者」「事業者」は別の物差し

事業者向けの契約で混同されやすいのが、消費者契約法の「消費者」「事業者」と、特商法の「営業のために」です。消費者契約法2条1項は、消費者を「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)」と定めています[3]。条文の文言も、判断の対象も違うため、一方の結論が他方の結論になるわけではありません。ただし、どちらも、契約の実質(事業のためか)を見る点は共通しています。

個人事業者でも、事業のためでなければ「消費者」になりうる(大阪地裁 令和3年)

裁判例カタログの燃費表示を理由とする売買契約の取消しと、購入者の消費者性[10]

裁判所・判決日
大阪地方裁判所 令和3年1月29日(2021年)
事件番号
平成28年(ワ)第12269号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:主要部分(消費者性と4条1項1号の要件の判断を通読)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨軽自動車の購入者らが、カタログやウェブサイトに載った燃費の値が実際より優れた値だったとして、消費者契約法4条1項1号(不実告知)による売買契約の取消しを求めた事案です。

判断の要点裁判所は、消費者契約法の「消費者」は、個人事業者であっても、事業のためでなく契約した場合には当たりうるとし、主に家族の家事のために購入した場合は消費者に当たるとしました。カタログの交付やそれを前提にした説明も「勧誘」に含まれるとしたうえで、購入者ごとに、カタログを受け取っていないことなどが認められる場合を除き、多くの購入者について取消しを認めました。

事業者の実務への示唆個人事業者であることだけで、消費者契約法の適用がないとは言えません。広告やカタログの表示が不実告知の基礎になりうる点も、表示の点検に関係します。結論は購入者ごとに分かれており、控訴・上告の結果も確認できていません。製造者名や車種などは書きません。

職業を持つ個人が、契約の時点では事業者に当たらないとされた例(甲府地裁 令和8年)

裁判例公的な養成プログラムの契約に付された違約金条項と、契約時点の事業者性[11]

裁判所・判決日
甲府地方裁判所 令和8年1月20日(2026年)
事件番号
令和5年(ワ)第408号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:主要部分(当裁判所の判断を通読)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨適格消費者団体(消費者全体の利益のために差止請求を行う団体)が、養成プログラムの誓約書と契約書の違約金条項について、消費者契約法9条1項1号と10条に反するとして、使用の差止めを求めた事案です。

判断の要点裁判所は、次のように判断しました。①誓約書も、法的拘束力のある合意としての実質を持ち、消費者契約にあたる。②契約を結んだ時点の個人は、免許を取って間もない研修の段階にあり、事業として、または事業のために契約する個人とはいえないから、事業者ではなく消費者である。③違約金条項は、契約を途中で解除したときの調整を定める付随的な条項で、契約の中心を定める条項ではないので、消費者契約法が適用される。④違約金の額については、事業者が主張した損害の根拠が資料で裏づけられておらず、貸与した資金の返還で損害は十分に補われるから、平均的な損害を超える部分があり、9条1項1号と10条に該当する。これらを理由に、差止めを認めました。

事業者の実務への示唆職業を持つ個人が相手でも、その契約が事業のためでなければ、消費者として扱われる場合があることを示しています。また、違約金の額は、事業者側が損害の根拠を具体的な資料で示せるかが問われます。令和8年1月の下級審判決であり、控訴の有無と結果は確認できていません。事業者性の判断は個別の事情によるため、他の契約にそのまま当てはめることはできません。

特商法の「営業のため」と消費者契約法の「消費者」「事業者」

項目特商法26条1項1号・50条1項1号消費者契約法2条1項・2項
何を決めるか特商法の規定(書面、クーリング・オフなど)が適用されるか[1]消費者契約法の取消し、条項の無効などが適用されるか[3]
着目点契約が営業のために(営業として)結ばれるか。事業内容、使用目的、使用状況、設置場所など[8]個人が、事業として又は事業のために契約の当事者となるか[3]
裁判例神戸地判 平成15年3月4日、大阪地判 平成24年7月27日[7][8]大阪地判 令和3年1月29日、甲府地判 令和8年1月20日[10][11]
注意買い手の名義、肩書だけでは決まらない。稼ぐ目的だけでも足りない[4][5]個人事業者でも、事業のためでなければ消費者になりうる[10]

どちらも下級審の判断であり、控訴・上告の結果は確認できていません。

事業者が書類と運用で確かめること

ここまでの内容を、契約の前の確認と、書面の設計に落とします。除外の可能性があるときほど、除外を前提にしない書き方が役に立ちます。

買い手の名義の三区分と、確認すること

買い手の名義営業のための契約と言えそうな場合確認の例
法人自社の事業のために、サービスや設備を使う。経費として計上し、事業の現場で使う契約の目的、使用する場所、費用の処理(見積りや請求書の宛名)を確認して記録する
個人事業主事業の売上や経費に結び付く使い方で、開業の実態がある開業の実態、事業での使用の有無を確認する。個人の趣味や生活のための使い方は営業のためと言えない可能性がある
個人(開業準備中・副業・会社員)「稼ぎたい」という意思だけで、事業の実態や設備の準備が伴わない場合は、営業のためと言いにくい[4][5]開業の準備の状況、取引への習熟、契約の目的を確認する。除外を前提にしない書面を整える

書き方の例(一般的な例) 営業のための契約をめぐる、よくある書き方と整えた書き方

対象者の限定

よくある書き方規約に「本サービスは事業者のみが対象です。したがって、クーリング・オフは適用されません」と書き、申込みの際に確認をしていない。
整えた書き方対象を事業者に限る場合も、申込みの際に契約の目的、開業の状況、使い方を確認し、記録する。除外に当たらない可能性に備えて、法定書面を整える。

理由営業のための契約かどうかは、契約の実質で判断され、規約の文言や名義だけでは決まらないため。

法人名義の購入

よくある書き方法人名義の申込みなので、書面の交付も期間の説明も不要と扱う。
整えた書き方法人名義でも、購入の目的が事業のためかを確認する。事業のためと言い切れない場合は、書面を交付する。

理由法人であっても、営業のための契約と言えないとされた裁判例があるため。

呼ばれた訪問

よくある書き方「お客様に呼ばれて訪問したので、請求訪問販売であり、書面は不要」と整理している。
整えた書き方依頼の経緯、時期、依頼内容を記録するが、依頼の内容が契約を結ぶ意思に基づくものか、事業者が持ちかけたものではないかを確認する。除外を前提にした運用は避ける。

理由請求した者に当たるには、契約を結ぶ意思を持った請求が必要で、裁判例でも証言の具体性と裏付けが問われたため。

無料相談の電話

よくある書き方無料相談の電話は、お客様から請求された電話なので、電話勧誘販売には当たらないと整理している。
整えた書き方勧誘のための電話であることを告げずに請求させていないかを確認し、勧誘の目的を最初に伝える。除外の可否は、請求の内容で個別に確認する。

理由施行令19条が、勧誘のための電話であることを告げずに電話を請求させる行為を、除外の対象から外しているため。

確かめる問いと理由契約の前に確かめる問い

  1. 買い手は、法人、個人事業主、個人のどれか。申込みの名義と、実際に使う人は同じか

    名義と実際の使い手が異なると、営業のためかの判断が分かれる。

  2. 契約の目的は、買い手の事業のためか、個人の生活や学習のためか

    同じ講座やサービスでも、目的によって除外の可否が変わりうる。

  3. 買い手の事業の実態(開業届、取引実績、設備の準備)を確認できるか

    稼ぐ意思だけでは営業のための契約と言えないとされているため。

  4. 訪問や電話は、買い手から契約のために請求されたものか、事業者が持ちかけたものか

    請求した者に当たるかは、契約を結ぶ明確な意思の有無で判断される。

  5. 確認した内容と、買い手に渡した書面の版を、契約の記録に残しているか

    後から説明するための材料になる。

事業者向けのコンサルティング契約を例にした整理は、コンサル・コーチングのサービス別ページで扱っています。業種サイトでは、コンサルティング契約の中途解約、成果保証の書き方を取り上げています。訪問販売に当たる場合の書面は訪問サービスのページに、早見表は7類型の早見表にまとめています。診断で迷う場合は診断の結果から確認できます。

根拠・出典

本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。

  1. 条文特定商取引に関する法律(特商法)26条1項1号・6項1号・7項1号、50条1項1号(適用除外) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
  2. 条文特定商取引に関する法律施行令19条(電話をかけることを請求させる行為) https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295確認日:2026年10月23日
  3. 条文消費者契約法2条1項・2項(消費者・事業者の定義) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061確認日:2026年10月23日
  4. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」の「訪問販売等の適用除外に関するQ&A」Q1〜Q3(営業のための契約の判断、請求した者の範囲) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/exclusion.html確認日:2026年10月23日
  5. 消費者庁消費者庁・経済産業省「特定商取引に関する法律等の施行について」(通達、令和6年11月19日付)第5節(雑則)1(1)(PDF54頁。法26条1項1号)、同(10)(PDF60頁。法26条6項1号)、同(12)(PDF63頁。法26条7項1号) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
  6. 国民生活センター国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日公表。PIO-NETの年度別相談件数、Web会議での勧誘が電話勧誘販売に該当する場合があること)。報告書PDFは暗号化されていて本文を確認できていないため、HTML本文の範囲で参照 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html確認日:2026年10月23日
  7. 裁判例神戸地方裁判所 平成15年3月4日判決(平成14年(ワ)第2729号、動産引渡等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認。控訴の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/7033/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  8. 裁判例大阪地方裁判所 平成24年7月27日判決(平成20年(ワ)第73号ほか併合、損害賠償等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で主要部分(営業のための契約の判断とその当てはめ)を確認。判決書は195頁にわたり、全体は読み込んでいない。控訴の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/84330/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  9. 裁判例大阪高等裁判所 令和6年3月14日判決(令和5年(ネ)第4号、本訴損害賠償等・反訴請負代金等請求控訴事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認。上告の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/92978/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  10. 裁判例大阪地方裁判所 令和3年1月29日判決(平成28年(ワ)第12269号、損害賠償等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で主要部分(消費者性と4条1項1号の判断)を確認。控訴・上告の結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/90136/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  11. 裁判例甲府地方裁判所 令和8年1月20日判決(令和5年(ワ)第408号、差止請求事件)。裁判所「裁判例検索」で主要部分(当裁判所の判断)を確認。控訴の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/95722/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  12. 裁判例京都地方裁判所 令和6年1月19日判決(令和3年(ワ)第2352号、損害賠償等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認。クーリング・オフの予備的請求は判断されていない https://www.courts.go.jp/hanrei/92778/detail4/index.html確認日:2026年10月23日

よくあるご質問

相手が法人なら、クーリング・オフは必ず適用除外になりますか。

なりません。神戸地方裁判所は平成15年3月4日の判決で、買い手が会社でも、契約が営業のためでない場合は特商法26条1項1号の除外は当たらないと判断しました。消費者庁の通達も、法人や事業者名義であることだけでは一律に除外されないとしています。

個人事業主向けの講座なら、除外されますか。

名義だけでは決まりません。消費者庁のQ&Aは、稼ぐ目的があるというだけでは営業のための契約にならず、取引の種類、利益活動との関連、設備の準備などから総合的に判断するとしています。開業前の方や副業の方、個人の学習のための受講は、除外されない可能性を前提に書面を整えてください。

「お客様から来てほしいと言われた」と記録があれば、請求訪問販売になりますか。

記録があるだけでは足りないと読めます。大阪高等裁判所は令和6年3月14日の判決で、請求されたという証言に具体性や裏付けがなく、契約の意思も固まっていなかったとして、請求した者に当たるとは認めませんでした。依頼の経緯と内容を記録しつつ、除外を前提にしない運用にしておくのが安全です。

無料相談の申込みを受けて電話をかけた場合は、請求された電話として除外されますか。

特商法26条7項1号は電話を請求した者を除外しますが、施行令19条は、勧誘のための電話であることを告げずに電話を請求させる行為を除外から外しています。通達は、請求といえるのは申込みや契約のために電話してほしいと明確に表示した場合などに限られるとしています。無料相談からの勧誘を直接判断した裁判例は、このページでは確認できていません。

消費者契約法の「消費者」と、特商法の「営業のため」は同じ基準ですか。

同じではありません。消費者契約法2条1項は、個人が事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く、と定め、特商法26条1項1号は契約が営業のために締結されるかを問います。条文も判断の対象も別で、どちらも契約の実質を見る点が共通するだけです。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所

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