このページの要点
- ネットの申込みだけで売る通信販売にクーリング・オフはない。商品と特定権利は、特約の表示がなければ引渡しから起算して8日は返品を受ける(15条の3第1項)。
- 返品特約は、広告に加え、申込みとなる操作の画面の見やすい箇所に表示する(同法施行規則44条)。表記ページだけでは足りないおそれがある。
- 広告の表記(11条)、最終確認画面(12条の6)、必要な場合の前払い通知(13条)をそろえ、返金条件を広告・画面・規約で同じにする。
- 通話や会場で勧誘する導線が併存するなら、その導線は電話勧誘販売または訪問販売。規約に「クーリング・オフは適用されません」と一括して書かない。
結論:ネットショップにクーリング・オフはないが、返品・表示・申込み画面の書類は法律で決まっている
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- ネットのフォーム、SNSのDM、LINE、メールでの申込みだけで、商品・権利・役務を売る事業者。
- 何をすべきか
- 特商法に基づく表記、申込みの最終確認画面、返品特約の表示の3つをそろえ、返金の条件を広告・画面・規約で同じ内容にする。通話や会場で勧誘する導線が併存するなら、その導線は別の類型として書面を整える。
- 期限
- クーリング・オフの期間は設けられていない。商品と特定権利は、返品の特約を表示していなければ、引渡しを受けた日から起算して8日は返品を受ける義務がある(特商法15条の3第1項)。
ネットショップの運営者から最も多く出るのは、「通信販売にはクーリング・オフがないので、返金はいっさいしなくてよいのか」という疑問です。答えは、クーリング・オフという制度がないのは事実でも、何も決めなくてよいわけではない、です。通信販売には、広告に必ず載せる事項、申込みを確定させる画面の表示、返品の扱いについての規定があり、これらを満たさないと行政処分や、申込みの取消しの対象になります。[1][3]
このページでは、ネットショップ(通信販売(郵便やインターネットなどで申込みを受けて行う販売。店頭や訪問、電話勧誘によるものは含まない。用語集))の運営者が、どの書類をどこに置けばよいかを、条文の順に整理します。取引の類型そのものの考え方は通信販売にクーリング・オフがない意味と返品特約に、広告文言の注意点は広告・LPの表示にまとめています。
結論の表:ネットショップ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当てはまる取引の類型 | |
| 当てはまらない場合の条件 |
|
| 必要な書類(要るもの・要らないもの) |
|
| クーリング・オフの期間 |
|
| 中途解約の有無と上限 |
|
通信販売にクーリング・オフはありません。ただし、通話や会場の導線が併存すれば、その導線は別の類型になります。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。
表の下の2行は見落としやすい部分です。ネットで申込みを受けていても、その前に通話やWeb会議で勧誘しているなら電話勧誘販売、会場で勧誘して申込みを受けるなら訪問販売になり、その導線にはクーリング・オフがあります。ネットショップと名乗っていても、類型は申込みの実態で決まります。自分のサービスがどの導線に当たるかは、診断の結果(物品・権利の通信販売)と同(役務の通信販売)で確かめられます。
ネットショップが用意する書類・表示の一覧
| 書類・表示 | 置く場所 | 根拠 | 要否 |
|---|---|---|---|
| 特商法に基づく表記 | サイトの広告ページ(フッターからのリンクなど) | 特商法11条、同法施行規則23条・24条 | 要 |
| 申込みの最終確認画面の表示 | 申込みを確定する操作の画面 | 特商法12条の6第1項 | 要(フォーム・画面で申込みを受けるとき) |
| 返品特約の表示 | 広告に加え、申込みとなる操作を行う画面の見やすい箇所 | 特商法15条の3第1項ただし書、同法施行規則44条 | 商品・特定権利で、返品を制限したいとき |
| 前払いの申込みを受けたときの通知 | 書面(承諾を得た電磁的方法でも可) | 特商法13条 | 代金を先に受け取り、遅滞なく発送・提供しないとき |
| クーリング・オフの赤枠 | — | 通信販売には定めなし | 不要 |
| 利用規約 | 同意の画面 | 民法・消費者契約法(特商法の義務ではない) | 任意。ただし表記・画面と食い違わせない |
判定の根拠:通信販売の定義、返品の規定、営業目的の購入者
まず通信販売の定義を条文で確認します。特商法2条2項は、郵便その他の主務省令で定める方法で申込みを受ける販売や役務の提供のうち、電話勧誘販売に当たらないものを通信販売としています。[1]
「…郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは特定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。」
次に、返品についての規定です。特商法15条の3第1項は、商品または特定権利(施設の利用権など、政令で定める権利)を売る事業者に対し、特約を表示していなければ、引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでは、購入者が申込みの撤回や契約の解除をできるとしています。[1][3]
「…その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。 ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合…この限りでない。」
特約を表示するときの「場所」と「見え方」も条文で決まっています。電子消費者契約(インターネットでの契約)では、広告に表示するだけでは足りず、申込みとなる操作を行う画面の見やすい箇所にも表示する必要があります。[1][2]
「…顧客の電子計算機の映像面に表示される顧客が商品又は特定権利の売買契約の申込みとなる電子計算機の操作を行うための表示において、顧客にとつて見やすい箇所に明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示する方法とする。」
消費者庁の通達は、微細な文字など認識しにくい表示は特約と認められないことを示し、返品が観念できない役務の通信販売は15条の3の対象外としています。また、通達の別添7(通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン)も、見やすい箇所に明瞭に表示することを前提に、認識しにくい表示は特約と認められないという考え方を示しています。[5][6]
最後に、購入者が事業者の場合です。特商法26条1項1号は、購入者が営業のために又は営業として契約する場合には、通信販売の規定を適用しないと定めています。ただし、名義が法人や個人事業主であることだけでは決まらず、契約の目的や使い方などの実質で判断されます。この点は事業者間契約でクーリング・オフが対象外になる場面で扱っています。[1]
よくある誤り→正しいやり方
ネットショップの規約や表記で繰り返し見られる誤りを、起きやすい順に並べます。どれも、表示の場所や文言をそろえ直すことで直せるものです。
1 「通信販売なのでクーリング・オフは適用されません」と一括して書く
通信販売そのものにクーリング・オフがないことは正しい記載です。しかし、通話での勧誘や会場での申込みを受ける導線が併存している事業で、規約全体に「当社のサービスはすべて通信販売であり、クーリング・オフは適用されません」と書くと、事実と合いません。電話勧誘販売や訪問販売に当たる導線の購入者には、特商法9条や24条のクーリング・オフがあり、これに反する不利な特約は無効です(9条8項)。[1]
正しくは、導線ごとに類型を分けて書くことです。「ネットの申込みのみで受けるご注文には、クーリング・オフの制度は適用されません。返品の取扱いは第○条のとおりです」のように、通信販売に限った記載にし、通話・会場の導線がある場合は、その導線専用の書面と赤枠を別に用意します。
2 「返金しません」「理由を問わず返品不可」とだけ書く
商品や特定権利は、返品特約を広告と申込み画面に表示すれば、購入者都合の返品を断ることができます。ただし、特約は、返品の可否、条件、送料の負担などの内容を具体的に表示してはじめて特約として働き、「ご相談に応じます」のような書き方は返品特約にならないとされています。[4]
また、契約の内容に適合しない商品(不良品、誤発送)の扱いまで「返品不可」で消せるわけではありません。民法の契約不適合責任に当たる場面は、特約とは別に整理して書きます。役務や権利の「返金しない」は、消費者契約法の問題が残ります。詳しくは返金しない規約が無効になる場面と返金しない特約の裁判例を参照してください。
3 返品特約を表記ページにだけ書き、申込み画面に出さない
規則44条は、申込みとなる操作を行う画面の見やすい箇所に表示することを求めています。特約を表記ページにだけ載せていても、15条の3第1項ただし書の特約を表示したことにならないおそれがあります。特約がなければ、商品は引渡しを受けた日から起算して8日は返品を受けることになります。
直し方は、申込みボタンの直上または直下に、返品の可否と条件を2〜3行で表示し、詳細は表記ページへのリンクで補うことです。ボタンのすぐ近くに短く書き、全文は表記に置く、という二段構えにすると、画面が長くなりません。
4 表記・規約・LP・最終確認画面で返金条件が食い違う
LPには「30日間返金保証」、表記には「返品不可」、規約には「商品到着後7日以内」と書いてあるように、媒体ごとに異なる条件が並ぶ例は少なくありません。購入者は、自分に有利な記載を信じて申込みます。広告で不実のことを告げて返品の申出を妨げることは禁止され(特商法13条の2)、告げた内容と実際が違えば、民事上の取消しや返金の問題にもつながります。[1]
対策は、返金条件の元になる文言を1か所に決め、他の媒体はそこから引用することです。変更するときは全媒体を同時に直す手順を決めておきます。
5 役務に15条の3を当てはめる、または旧条番号で書く
オンライン講座の申込みフォームに「特定商取引法第15条の3により、商品到着後は返品できます」と書くのは誤りです。役務には15条の3が働かないため、返金の条件は契約で決める必要があります。条番号は、通信販売の返品は15条の3(以前の15条の2ではない)、申込み画面の表示は12条の6、表示による取消しは15条の4です。
6 前払いの承諾通知に電話番号が必要なことを見落とす
住所と電話番号を「請求があれば遅滞なく開示します」と書く運用は、特商法11条ただし書と規則25条の条件に合う方法でなければ認められません。屋号や私書箱だけの表示の扱いについても、消費者庁のQ&Aが考え方を示しています。そのうえで、代金を先に受け取って遅滞なく発送や提供をしない場合は、特商法13条により、申込みを承諾する旨などを書面で通知する必要があり、この通知の記載事項は主務省令で定められています。表記の開示方法とこの通知の整合を、運用で確認しておきます。[1][4]
7 送料などの負担、提供時期の期間表示、申込み期間の欠け
商品の販売価格に送料が含まれないなら送料を金額で表示すること、引渡時期や役務の提供時期は期間または期限で表示することが、規則24条にあります。「順次発送」のような書き方は期間または期限にならず、「ご注文から3営業日以内に発送」のように書きます。販売価格以外に購入者の負担する金銭(手数料、設置費など)があるときは、その内容と額も表示事項です(規則23条4号)。[2]
8 動作環境、契約不適合責任の表示が漏れる
デジタルコンテンツやソフトウェアを売るときは、利用に必要な電子計算機の仕様や性能などの条件を表示します(規則23条6号)。商品の販売で、契約不適合の場合の責任について定めがあるなら、その内容も表示事項です(同条5号)。契約を2回以上続けて結ぶ必要があるときは、その旨と金額、契約期間なども必要です(同条7号)。[2]
書き方の例(一般的な例) 返品の表示(物品の販売)
返品特約の内容
理由特約の内容を、可否・例外・連絡の期限まで具体的に書くと、広告と画面で同じ表示を置きやすい。
表示の場所
理由規則44条は、申込みとなる操作を行う画面の見やすい箇所に明瞭に表示することを求める。
書類の作り方の要点
書類は、広告に載せる表記、申込み画面の表示、返品特約の表示、必要な場合の通知の4つに分けて作ります。規約は、これらと矛盾しないように最後に整えます。
特商法に基づく表記(11条)
特商法11条は、広告に必ず載せる事項を定めています。商品・権利の販売価格や役務の対価、代金の支払の時期と方法、引渡時期や提供時期、申込期間の定め、申込みの撤回または解除に関する事項などです。[1]
「一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)」
「二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法」
「三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期」
「四 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容」
「五 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合にはその内容を、第二十六条第二項の規定の適用がある場合には同項の規定に関する事項を含む。)」
表記の記載例をつくるときは、5号に「返品特約がある場合はその内容」を入れる点が実務上の要です。11条ただし書により、請求があれば書面や電磁的記録で表示事項を提供する旨を広告に載せれば一部を省略できますが、返品特約があるときの返品の可否、期間、条件、引取りや返還の費用の負担に係る事項は省略できません(規則25条)。[1][2]
申込みの最終確認画面(12条の6)
申込みを確定する画面には、商品等の分量と、11条1号から5号までの事項を表示します。同時に、ボタンの表示が申込みであることを誤認させる表示や、これらの事項について誤認させる表示は禁止されています。[1]
「…当該特定申込みに係る書面又は手続が表示される映像面に、次に掲げる事項を表示しなければならない。」
「一 当該売買契約に基づいて販売する商品若しくは特定権利又は当該役務提供契約に基づいて提供する役務の分量」
「二 当該売買契約又は当該役務提供契約に係る第十一条第一号から第五号までに掲げる事項」
返品特約の文例(論点ごと)
次の例は、物品を販売するショップが返品の条件を具体的に書くときの、論点ごとの条文の例です。数字や期間は、自社の商品の性質に合わせて決めます。
返品・交換の条件(物品の販売)
- 商品の返品は、商品の引渡しを受けた日から7日以内に、当社へ連絡のうえ、未使用かつ未開封の場合に限りお受けします。
- 商品が注文内容と異なる場合、または種類もしくは品質に関して契約の内容に適合しない場合は、前項の期間にかかわらず、返送の費用は当社が負担し、交換または返金に応じます。
- 前2項以外の購入者のご都合による返品の返送費用は、購入者の負担とします。
この条文例は、返品特約を広告と申込み画面に表示する前提の骨組みです。商品の性質(食品、受注生産品など)に応じて、例外の範囲を調整します。
前払いの通知と、役務型の返金条件
代金を先に受け取り、受領後に遅滞なく商品の送付や役務の提供をしない場合は、特商法13条により、申込みを承諾する旨などを書面で通知する必要があります。購入者の承諾を得れば、電磁的方法で提供することもできます(13条2項)。書面の交付と電子交付の承諾は承諾書面のページに整理しています。[1]
役務を売るショップでは、15条の3に頼れないため、返金の条件を時期ごとに決めて、広告・画面・規約に同じ内容で書きます。期間の途中で解約するときの清算の方法は、取引が特定継続的役務提供に当たるかどうかで変わるため、定期購入・サブスクのページと特定継続的役務の7業種で先に確認します。
利用規約との関係
利用規約は、特商法の書類そのものではありません。ただ、規約の返金条項が表記や画面と食い違えば、購入者にとって有利な記載が信用されやすく、事業者に不利に働きます。作成の順番は、表記と画面を先に確定し、規約をそのあとに合わせる、が安全です。規約と他書類の関係は利用規約との関係で扱っています。
関係する判例・処分事例・相談事例
ここでは、広告・LPの表示に関して事業者が備えるべき資料の考え方を示した最高裁判決と、直近の行政処分、相談の動向を整理します。
裁判例優良誤認表示と、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出(景品表示法7条2項)[7]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日
- 事件番号
- 令和3年(行ツ)第33号(集民267号29頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決詳細ページ(確認の範囲:全文(判決文3頁)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨事業者が優良誤認表示(品質を実際より優れていると示す表示)をしたとして措置命令を受け、表示を裏づける合理的な根拠の資料を出すよう求められたが、提出しなかった。この場合に、表示を優良誤認表示とみなす景品表示法7条2項の規定が、憲法の保障する表現の自由や営業の自由に反するかが争われた。
判断の要点最高裁は、この規定は憲法に違反しないと判断した。理由として、規定の目的が消費者の利益の保護にあること、表示をする事業者はその裏付けとなる合理的な根拠をもっているべきであること、みなされるのは期間内に根拠を客観的に示す資料を提出しない場合に限られること、根拠をそろえたうえで改めて同様の表示をすることは制限されないことを挙げた。
事業者の実務への示唆ネットショップのLPで「効果」「実績」「満足度」を表示するなら、その裏付け資料を日頃から保管しておく運用が合理的である。特商法にも同じ仕組みの規定がある(通信販売の広告について12条の2。同条は12条の誇大広告の規定を前提とする)。ただし、この判決は景品表示法の規定の合憲性の判断で、特商法の規定を直接判断したものではない。
広告の働きかけが契約の取消しの基礎になりうる点では、最高裁平成29年1月24日判決(クロレラチラシ事件)が、不特定多数に向けた働きかけであっても、そのことだけでは消費者契約法の差止請求の対象となる「勧誘」に当たらないとはいえない、と判断しています(判示事項の範囲で記載し、全文は確認していません)。LPの記載は、申込みを受けたあとで取消しの基礎にもなりうるため、表示の裏付けと一貫性を保ちます。[8]
行政処分の例として、2026年3月、消費者庁は定期購入を扱う通信販売事業者3社に対し、業務停止命令(6か月。特商法15条1項)、指示(14条1項)、代表者への業務禁止命令(15条の2第1項)を行いました。消費者庁の執行状況の一覧によれば、違反の型は、誇大広告(12条)と、特定申込みの画面での誤認表示(12条の6第2項)です。[11]
この処分から言えるのは、LPの訴求文だけでなく、最終確認画面の表示そのものが処分の対象になる、ということです。事業者側が防ぐには、確定ボタンの画面に、定期購入であることと各回の代金、総額、解約の条件を、広告の訴求と同じ大きさ・場所で見えるように表示します。定期購入の詳細は定期購入・サブスクのページで扱います。
相談の動向を数字で見ると、国民生活センターの「2025年度 全国の消費生活相談の状況」では、通信販売の相談は382,721件で、販売購入形態別の全体の38.0%を占めます(PIO-NETの件数。消費生活センター等からの経由相談を除く)。[9]通信販売での定期購入の相談は、2023年度の80,315件から、2024年度の89,401件、2025年度の93,065件へと増えています。[10]
国民生活センターが挙げる事例には、「1回限り」と思って注文したら定期購入で、解約すると定価との差額の精算を求められた例、初回が安い商品に追加の「まとめ買い」を選ぶと数回の継続購入が条件になっていた例、「回数縛りなし」の表示を見て注文したのに2回目が届いた例があります。いずれも、購入前の画面で条件が見えていれば防げた種類のものです。[10]
ヒヤリングで確かめること
確かめる問いと理由書類を決める前に、まず次を確認します
売るものは、商品・デジタルコンテンツ・役務のどれか。
15条の3の返品の規定が働くのは、商品と特定権利です。役務は返金条件を自分で定める必要があります。
申込みの入口は、フォーム、LINE、DM、電話、会場のどれか。複数か。
通話や会場の導線があれば、その導線は電話勧誘販売または訪問販売になります。
返品・返金の条件と期間を、いつ誰が決めたか。広告・画面・規約・表記で同じか。
媒体ごとの食い違いが、最も多い誤りです。
最終確認画面に、分量、価格、支払時期、提供時期、申込期間、解約の条件が出ているか。
12条の6第1項の表示事項に当たります。
定期購入や自動更新があるか。あるなら、各回の金額と総額、期間、解約の方法が画面に出ているか。
規則23条7号の継続契約の条件と、解約の条件です。
代金を先に受け取って、後日に発送・提供する運用か。
13条の通知が必要になる可能性があります。
購入者に法人・個人事業主が含まれるか。
26条1項1号の判断に関わります。名義でなく契約の目的で判断します。
業種サイトの詳しい記事
ネットショップの運営に関する、各業種サイトの詳しい記事を案内します。
- EC・ネットショップ:返品・返金ポリシーの作り方
- EC・ネットショップ:特商法に基づく表記
- EC・ネットショップ:定期購入の表示と解約
- 特商法表記の書き方:キャンセル・返品の書き方
- 特商法表記の書き方:適用の判定
- 解約・返金ポリシー:返金しない規定の考え方
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律(特商法)2条2項・11条・12条の2・12条の6・13条・13条の2・15条の3・15条の4・26条1項1号(現行版の施行日2026年8月12日) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則2条・23条・24条・25条・44条 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売のページ https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売広告Q&A(返品特約の表示、事業者の氏名・住所・電話番号の表示、定期購入の表示の各設問) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付)第2章第3節の15条の3の解釈(PDF 44頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁通達の別添7「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_230421_7.pdf確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日判決(令和3年(行ツ)第33号、集民267号29頁)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/90989/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成29年1月24日判決(平成28年(受)第1050号、民集71巻1号1頁)。裁判所「裁判例検索」の判示事項・裁判要旨で確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表。通信販売382,721件、全体の38.0%。経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「通信販売での定期購入」(各種相談の件数や傾向。2026年7月31日更新。2023年度80,315件、2024年度89,401件、2025年度93,065件) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/subscription_traps.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁の通信販売に関する行政処分(処分日2026年3月23日・26日、公表同月27日。定期購入の広告表示。違反の型は消費者庁の執行状況一覧の記載による) https://www.caa.go.jp/notice/entry/045634/確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
ネットショップでも、商品を買った人は8日以内なら必ず返品できますか。
返品特約を広告と申込み画面に表示していなければ、商品と特定権利は、引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまで、購入者が申込みの撤回や契約の解除をできます(特商法15条の3第1項)。特約を表示していれば、その内容が優先されます。役務は15条の3の対象外です。
返品不可と書けば、不良品でも返品に応じなくてよいですか。
返品特約は、購入者の都合による返品を制限するものです。商品が契約の内容に適合しない場合の責任は民法の定めによるため、特約とは別に整理して書きます。返品不可の一文で不良品の扱いまで消すことはできません。
特商法に基づく表記は、住所や電話番号を請求があれば開示、としてもよいですか。
請求により書面等を提供する旨を広告に表示して一部の事項を省略する方法はあります(特商法11条ただし書、同法施行規則25条)。ただし、返品特約がある場合の返品の可否・条件・費用負担などは省略できません。住所・電話番号の開示方法の細目は、消費者庁のQ&Aで確認します。
LINEやDMで注文を受ける場合も、最終確認画面の表示が必要ですか。
事業者が定める様式の書面や、電子情報処理組織を使う方法で画面に表示する手続に従って顧客が行う申込みは特定申込みに当たり、その画面に12条の6第1項の事項を表示します。LINEの会話だけでやり取りする運用でも、通話での勧誘があれば電話勧誘販売として別に扱います。
相手が個人事業主のときも、通信販売の規定は適用されますか。
特商法26条1項1号は、営業のために又は営業として締結する契約を適用除外としますが、名義が個人事業主であることだけでは決まらず、契約の目的や使い方などの実質で判断されます。事業用でなく私的に使う購入なら、適用除外にならない場合があります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所