勧誘・広告表示をめぐる判例と消費者契約法・景品表示法

広告やLP、営業トークの文言は、取消し、行政の指示、景品表示法の表示規制の三つの層で別々に点検されます。最高裁判所の判決3件と下級審4件から、事業者が整える点を読み取ります。

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「広告は不特定多数向けだから勧誘ではない」「口頭の説明は書面で保証しないと書けば足りる」という整理は、広告も取消しの基礎になり得ること、口頭の断定が別に問題になることを見落としています。

このページの要点

  • 不特定多数向けの広告やチラシでも、直ちに「勧誘」に当たらないとはいえない(最高裁平成29年判決)。カタログの表示を不実告知として取消しを認めた下級審(大阪地裁)もある。
  • 取消しの対象の「重要事項」は、内容と取引条件に関するものに限られる(消費者契約法4条5項)。将来の不確実な事項の断定は、4条1項2号として別に問題になる。
  • 表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料は、備えておく前提とされる(景品表示法7条2項の最高裁令和4年判決、特定商取引法12条の2・54条の2の同じ仕組み)。
  • 電話勧誘では、勧誘に先立つ告知(16条)と、断った相手への再勧誘の禁止(17条)が、営業マニュアルの内容まで含めて見られる(名古屋地裁の決定)。該当性を判断した裁判例は確認できていない。

結論:勧誘と広告は、取消し・行為規制・表示規制の三つの層で別々に点検される

このページの結論

誰に当てはまるか
広告、LP、SNS投稿、無料相談、セミナー、個別面談、営業トークを使って集客・販売している事業者(講座、コンサル、サービス、物品の販売を含む)。
何をすべきか
表示の中身と裏付け資料、勧誘に先立つ告知、断られたあとの再勧誘、説明の言葉を、三つの層(取消し・行為規制・表示規制)ごとに点検し、社内の営業トーク集や研修資料にも反映する。
期限
広告の公開前、営業トークの運用開始前。消費者契約法の取消権は、追認できる時から1年(霊感等を用いた不安をあおる告知は3年)、契約締結から5年(同10年)で消える(消費者契約法7条1項)。

広告やLPの文言は、契約の前の説明の一部です。そこに事実と異なる記載や、確実に利益が出るかのような記載があれば、契約を結んだ消費者に取り消されることがあります。さらに、特定商取引法の広告規制や景品表示法の表示規制、電話勧誘の行為規制にも触れ得ます。[1][2]

このページは、勧誘と広告に関する判決・決定7件を整理します。内訳は、消費者契約法の「重要事項」と「勧誘」を判断した最高裁判所の判決2件、景品表示法の根拠資料の提出を求める規定を扱った最高裁判所の判決1件、カタログの表示を理由とする取消しを判断した大阪地方裁判所の判決、広告と請求額の乖離が問題になった京都地方裁判所の判決、電話勧誘販売の行為規制に関する名古屋地方裁判所の決定、断定的判断を認めた簡易裁判所の判決です。広告の書き方は広告・LPの表示、勧誘に先立つ告知は勧誘前の明示と再勧誘の禁止で扱います。

先に要点を述べます。第一に、不特定多数に向けた広告やチラシでも、直ちに「勧誘」に当たらないとはいえません。第二に、取消しの対象となる「重要事項」は、法律が定める範囲に限られます。第三に、表示の裏付けとなる資料を備えておくことは、表示をする事業者の前提とされています。第四に、電話勧誘販売の該当性を判断した裁判例は、この調査では確認できませんでした。[5][4][6]

勧誘・広告に関する三つの規律の整理

層主な条文問題になる場面事業者の側で整えること
取消し(契約の効力)消費者契約法4条1項から4項、5項(重要事項)事実と異なる説明、将来の利益についての断定的判断、不安をあおる告知など。消費者が契約を取り消す勧誘の説明と広告の内容の一致、断定的表現の排除[1]
行為規制・広告規制(行政の指示・命令)特定商取引法3条、3条の2、12条、12条の2、16条、17条、21条、22条、23条勧誘に先立つ告知の欠落、断られたあとの再勧誘、不実告知、誇大広告。主務大臣の指示や業務停止命令告知の定型化、再勧誘の防止、表示の裏付け資料の保管[2]
表示規制(景品表示法)景品表示法7条2項ほか優良誤認表示に当たるかの判断のため、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求められる効果・実績・満足度の表示と、裏付け資料の対応表[6]

三つの層は重なります。ある広告の文言が、取消しの原因と、行政の指示の対象と、景品表示法の表示規制の対象に同時に当たることがあります。

条文の枠組み:取消しの要件と、電話勧誘・広告の規制

最初に、取消しの条文を確認します。消費者契約法4条1項は、勧誘をするに際し、事実と異なることを告げた場合や、将来の不確実な事項について断定的判断を提供した場合に、消費者が契約を取り消せると定めています。[1]

条文の引用消費者契約法 第4条第1項第1号・第2号(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「重要事項について事実と異なることを告げること。」

「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。」

解説1号の不実告知は、「重要事項」についてのものです。2号の断定的判断は、将来の価額や受け取る金額など、将来の変動が不確実な事項に関するものです。どちらも、消費者が告げられた内容を事実又は確実だと誤認して契約したときに、取消しの原因になります。
条文の引用消費者契約法 第4条第5項第1号・第2号(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」

「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」

解説「重要事項」は、目的となるものの質・用途その他の内容と、対価その他の取引条件で、消費者の判断に通常影響を及ぼすべきものです。事業者の側では、広告・LP・説明会・面談の説明のうち、この二つに関わる記載を重点的に点検します。

電話勧誘販売には、勧誘に先立つ告知と、断った相手への再勧誘の禁止があります。[2][3]

条文の引用特定商取引に関する法律 第16条、第17条e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称及びその勧誘を行う者の氏名並びに商品若しくは権利又は役務の種類並びにその電話が売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げなければならない。」

「販売業者又は役務提供事業者は、電話勧誘販売に係る売買契約又は役務提供契約を締結しない旨の意思を表示した者に対し、当該売買契約又は当該役務提供契約の締結について勧誘をしてはならない。」

解説16条は、勧誘に先立って、事業者名、勧誘を行う者の氏名、商品・役務の種類、勧誘のための電話であることを告げる義務です。17条は、契約を締結しない旨の意思を表示した人への勧誘の禁止です。名古屋地方裁判所の決定は、この二つが組織的に守られていなかったことを問題にしました。
条文の引用特定商取引に関する法律 第21条第1項第6号、第22条第1項第5号(抜粋)、同法施行規則第64条第1号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。」

「電話勧誘顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項」

「電話勧誘販売に関する行為であつて、電話勧誘販売に係る取引の公正及び購入者又は役務の提供を受ける者の利益を害するおそれがあるものとして主務省令で定めるもの」

「電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘をし、又は電話勧誘販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除について迷惑を覚えさせるような仕方でこれを妨げること。」

解説21条1項6号は、契約の締結を必要とする事情についての不実告知の禁止です。迷惑を覚えさせる勧誘は、22条1項5号が主務省令に委ね、施行規則64条1号に置かれています。判決当時は22条3号に置かれていたものが、改正で現行の位置に移っています。

広告については、通信販売の誇大広告の禁止と、根拠資料の提出の規定があります。[2][12]

条文の引用特定商取引に関する法律 第12条、第12条の2(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。」

「…当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。」

「…当該表示は、前条に規定する表示に該当するものとみなす。」

解説12条の2は、主務大臣が根拠資料の提出を求め、期間内に出さなければ、12条の誇大広告に当たるとみなす仕組みです。景品表示法7条2項も、優良誤認表示について同じ仕組みを置いています。

最高裁判所の判決:重要事項、勧誘、根拠資料

最高裁判所の判決は3件です。最初の2件は消費者契約法の判断、3件目は景品表示法の判断です。判示事項と裁判要旨を確認した範囲で書いており、令和4年の判決だけは判決文を確認しました。

裁判例商品先物取引の委託契約で、将来の価格は「重要事項」に当たらないとされた[4]

裁判所・判決日
最高裁判所第三小法廷 平成22年3月30日
事件番号
平成20年(受)第909号(損害賠償、立替金請求事件。集民233号311頁)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/80043/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。原審は札幌高等裁判所 平成20年1月25日。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨金の商品先物取引の委託契約で、消費者契約法4条2項本文にいう「重要事項」に、将来の金の価格が含まれるかが争われた事案です。参照法条は、判決当時の消費者契約法4条2項と4条4項でした。

判断の要点最高裁は、金の将来の価格は、消費者契約法4条2項本文の「重要事項」にはあたらないとしました。

事業者の実務への示唆不利益事実の不告知(現行の消費者契約法4条2項)の対象となる「重要事項」は、法が定める範囲に限られます(消費者契約法4条5項)。将来どうなるか分からないことを確実だと言い切る説明は、別に4条1項2号の断定的判断の提供として問題になります(後述の簡易裁判所の判決)。判決当時の消費者契約法4条4項は、現行の消費者契約法4条5項に当たります。事案の細部は判示事項の範囲を超えて書いていません。

裁判例不特定多数に向けたチラシの配布でも「勧誘」に当たらないとはいえない[5]

裁判所・判決日
最高裁判所第三小法廷 平成29年1月24日
事件番号
平成28年(受)第1050号(民集71巻1号1頁)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。結果は棄却。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨適格消費者団体が、事業者によるチラシの配布の差止めを求めた事案です。消費者契約法12条1項・2項(差止請求)の対象である「勧誘」に、不特定多数に向けた働きかけが含まれるかが争われました。

判断の要点最高裁は、事業者等の働きかけの相手が不特定多数の消費者であっても、それだけで、消費者契約法12条1項・2項にいう「勧誘」にあたらないとはいえない、としました。参照法条には4条1項から3項が含まれています。

事業者の実務への示唆チラシ、ウェブページ、LPのような不特定多数向けの広告でも、内容によっては「勧誘」に当たる可能性があります。差止請求(12条)の「勧誘」についての判断なので、個別の取消権(4条)の「勧誘」と同じに扱えるかは別に検討します(次の大阪地裁は、カタログ等の媒体による働きかけも、4条1項1号の勧誘に当たり得るとしています)。

裁判例優良誤認表示の根拠資料の提出を求める規定は、憲法に違反しない[6]

裁判所・判決日
最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日
事件番号
令和3年(行ツ)第33号(措置命令処分取消請求事件。集民267号29頁)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/90989/detail2/index.html(確認の範囲:全文(判決文3頁)。結果は棄却。原審は東京高等裁判所 令和2年10月28日(令和2年(行コ)第96号)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨景品表示法7条2項(優良誤認表示にあたるかを調べるため、内閣総理大臣が表示を裏づける合理的な根拠の資料を求め、期間内に出されない場合は優良誤認表示とみなす規定)が、憲法21条1項・22条1項に違反するかが争われた事案です。

判断の要点最高裁は、この規定は憲法21条1項、22条1項に違反しないとしました。理由は次のとおりです。この規定は、優良誤認表示にあたることが明らかでなくても、一定の場合にそうとみなして措置命令を迅速に出せるようにし、一般消費者の利益を守る目的を持つこと。表示を行う事業者は、その表示の裏づけとなる合理的な根拠を持っているべきこと。みなされるのは、期間内に合理的な根拠を客観的に示す資料を出さなかった場合に限られ、適用範囲は合理的に絞られていること。措置命令を受けても、根拠資料を整えたうえで改めて同様の表示をすることは妨げられないこと。以上から、必要かつ合理的な手段であり、立法府の裁量の範囲を超えないというものです。

事業者の実務への示唆LPや広告で「効果」「実績」「満足度」を表示する事業者は、表示の裏付けとなる資料を備えておく必要があります。特定商取引法にも同じ仕組みの規定があります(通信販売の12条の2、業務提供誘引販売の54条の2)。この判決は景品表示法の規定の合憲性の判断であり、個別の表示が違反かどうかを判断したものではなく、特定商取引法の規定の合憲性を直接判断したものでもありません。

下級審の判決・決定:広告・カタログ、誘引の手口、電話勧誘の組織的な運用

下級審の判断は、その裁判所の判断であり、他の裁判所や別の事案に当然に当てはまるものではありません。控訴や上告の結果は、確認できていないものがあります。

裁判例カタログやウェブサイトの表示が「不実告知」として取消しの基礎になった[7]

裁判所・判決日
大阪地方裁判所第19民事部 令和3年1月29日
事件番号
平成28年(ワ)第12269号(損害賠償等請求事件)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/90136/detail4/index.html(確認の範囲:主要部分(消費者性、4条1項1号の要件の各判断)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨軽自動車を購入した人たちが、カタログやウェブサイトの燃費値は定められた測定方法によらず、実際より良い数値だったと主張し、販売店との売買契約を、消費者契約法4条1項1号(不実告知)に基づき取り消した事案です。製造者名と車種は書きません。

判断の要点裁判所は、次のように整理しました。(1)「消費者」とは事業として、または事業のために契約する場合を除いた個人のことで、個人事業者でも事業とは関係なく契約したなら消費者になり得る。主に家族の家事のために車を買った購入者は消費者にあたる。(2)「勧誘」とは、消費者が契約を結ぶ意思を固めるのに影響を与える程度の働きかけをいい、カタログを渡すことや、それを前提にした説明も含む。(3)燃費の数値は商品の品質に関わり、購入の判断に通常影響を与える重要事項にあたる。(4)カタログを受け取ったことなどが認められない購入者には、不実告知を認めない。以上により、多くの購入者について取消しを認めました。

事業者の実務への示唆広告・カタログの表示が、そのまま4条1項1号の不実告知の基礎になり得ます。購入者が個人事業者でも、使い方によって消費者になります。取消しの主張では、購入者ごとに「その表示を見たか」が問われ、結論は購入者ごとに分かれました。控訴・上告の結果は未確認です。

裁判例低額表示で来訪を促し、高額な工事契約に至った事案:不法行為を認め、クーリング・オフは判断しなかった[8]

裁判所・判決日
京都地方裁判所第1民事部 令和6年1月19日
事件番号
令和3年(ワ)第2352号(損害賠償等請求事件)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/92778/detail4/index.html(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨ウェブサイトで低額の基本料金を表示して水回りのトラブルの修理を呼ばせ、訪問後に10万円から165万円の高額な工事請負契約を結ばせた事案です。購入者は、不法行為(主位的)と、訪問販売のクーリング・オフ(予備的)による返還を求めました。事業者側は、顧客からの電話依頼(来訪要請)による訪問販売なのでクーリング・オフはできないと主張しました。

判断の要点裁判所は、サイトの表示と実際の請求額の乖離、作業を先に始めて契約しなければ費用を請求すると思わせる手口、虚偽の保険適用の説明などを総合し、社会的相当性を超える手段・態様の勧誘として共同不法行為を認め、代金相当額の損害賠償を認めました。予備的請求であるクーリング・オフは、主位的請求で認容された額に含まれるため判断していません。したがって、来訪要請なら訪問販売でもクーリング・オフができないという点は、判断されていません。

事業者の実務への示唆この判決を、クーリング・オフの根拠として使うことはできません。電話で呼ばれた場合でも不法行為責任が生じる事例として、広告表示と請求額の関係の参考にとどめます。判決中で国民生活センターの相談データベース(PIO-NET)に相談が登録されていたことが事実認定に使われていますが、件数は事案固有のもので、一般の統計ではありません。

裁判例電話勧誘販売の業務停止命令の仮の差止めが却下された決定[9]

裁判所・判決日
名古屋地方裁判所民事第9部 平成18年9月25日
事件番号
平成18年(行ク)第24号(仮の差止命令申立事件。本案は平成18年(行ウ)第50号 営業停止処分及び実名公表処分差止請求事件)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/33813/detail4/index.html(確認の範囲:全文。結果は申立て却下。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨電話勧誘販売を行う書籍・講座の販売業者が、経済産業大臣から業務停止命令(当時の23条1項)とその公表を受けるおそれがあるとして、その仮の差止めを申し立てた事案です。申立人は、電話勧誘販売業者として該当性を争ってはいません。

判断の要点裁判所は、すでにある講座契約を「終わっていない」「終了させるには新しい講座の受講が必要」などと言って何度も勧誘し直し、断られても電話を重ね、クーリング・オフの後まで勧誘を続けた事実を、立入検査で得た聴取結果、営業マニュアル、従業員のノート、数多くの苦情から一応認めました。そのうえで、氏名等の不明示(16条)、契約しない意思を示した人への再勧誘(17条)、契約の必要性についての不実告知(21条1項6号)、迷惑を覚えさせる勧誘(判決当時の22条3号、現行は22条1項5号と施行規則64条1号)にあたる行為が組織的に続いていたと判断し、「本案について理由があるとみえるとき」にはあたらないとして、申立てを却下しました。公表の差止めを求める部分は不適法としました。

事業者の実務への示唆断った相手への再勧誘、既契約に関する虚偽の説明、事業者側の営業マニュアルの内容そのものが、行政処分の判断で重視されます。社内の営業トーク集や研修資料も証拠になる点は、事業者の運用管理の話として読めます。仮の差止めの決定であり本案の判断ではないこと、電話勧誘販売に当たるかを争った事案ではないことから、無料相談やWeb会議からの勧誘が電話勧誘販売に当たるかの根拠にはなりません。

副業の勧誘での断定的判断については、東京簡易裁判所の判決が、将来得る収入について具体的な金額を示して確実だと言い切る説明を断定的判断と認め、契約の取消しを認めています(東京簡易裁判所 平成16年11月15日判決、平成16年(少コ)第2715号)。[10]詳細は連鎖販売・業務提供誘引販売・副業商法の判例で整理しています。

なお、無料相談、Web会議、LINE通話などからの勧誘が電話勧誘販売に当たるかを判断した裁判例は、この調査では確認できませんでした。判断の材料は、条文と消費者庁の資料です。消費者庁のQ&Aは、インターネット回線を使った通話も「電話」として考え、URLを送って通話に誘う形も「電話をかけさせる」方法に当たり得ると整理しています。[11][13]最終的な当てはめは取引の実態によるため、この判例の整理では結論を示しません。導線ごとの判定はオンライン講座の電話勧誘販売で扱います。

行政処分と相談の動き:違反の型と、事業者が防げる点

電話勧誘販売の行政処分(処分日2025年1月22日)では、SNSの投稿からメッセージアプリを経て通話に誘導する勧誘経路の中で、勧誘に先立つ事業者名の不明示(特定商取引法16条)、契約内容を明らかにする書面の不交付(同法19条1項)、事業主として扱うことを理由にクーリング・オフはないと告げて解除を妨げる行為(同法21条1項)が挙げられています。[14]

訪問販売では、2026年9月17日の処分(関東経済産業局)で、契約書面の記載不備、解除に関する事項の不実告知、債務の一部履行の拒否などが挙げられています。また、同年10月19日の埼玉県の処分は、消費者庁の執行状況の一覧の記載によれば、勧誘目的等の不明示(3条)と、役務提供契約が必要な事情の不実告知(6条1項6号)が違反の型です。[15]通信販売では、2026年3月の処分で、定期購入の誇大広告(12条)と、特定申込みの手続が表示される画面での誤認表示(12条の6第2項)が、一覧の記載として挙がっています。[16]

国民生活センターによれば、通信販売での定期購入のPIO-NET相談件数は、2023年度が80,315件、2024年度が89,401件、2025年度が93,065件です(経由相談を除く)。[17]同センターは、ビジネス講座の相談では、広告・勧誘と実際の講座内容の食い違い、Web会議での事前説明のない勧誘、クレジット利用による高額化、解約条件の説明不足が問題点だとしています。[18]どれも、広告の表示、勧誘の最初の告知、契約前の条件の説明という、事業者の側で整えられる部分に関わります。

判決・決定を横に並べる:論点ごとの裁判所の判断

勧誘・広告に関する判決の整理(判断はそれぞれの裁判所のもの)

論点判断した裁判所判断の方向読むときの注意
重要事項の範囲最高裁 平成22年3月30日将来の金の価格は、4条2項本文の重要事項に当たらない商品先物取引の事案。要旨のみ[4]
不特定多数向けの広告と勧誘最高裁 平成29年1月24日不特定多数向けでも、直ちに12条の「勧誘」に当たらないとはいえない差止請求の「勧誘」の判断[5]
表示の根拠資料最高裁 令和4年3月8日景品表示法7条2項は憲法21条1項・22条1項に違反しない個別の表示の違反の判断ではない[6]
カタログの表示と取消し大阪地裁 令和3年1月29日表示が不実告知に当たるとして、多くの購入者に取消しを認めた購入者ごとに結論が分かれた[7]
低額表示と高額請求京都地裁 令和6年1月19日不法行為を認めた。クーリング・オフは判断していないクーリング・オフの根拠には使えない[8]
電話勧誘の組織的な運用名古屋地裁 平成18年9月25日再勧誘、不実告知、迷惑勧誘が組織的に行われたと一応認められ、仮の差止めを却下電話勧誘販売の該当性は争点ではない[9]
断定的判断東京簡裁 平成16年11月15日「確実に稼げる」は断定的判断。取消しを認めた少額訴訟の判決[10]

よくある誤り→正しいやり方:広告と勧誘を点検する

判決と処分の公表資料から導かれる注意を、広告・勧誘の運用でよくある誤りに対比して並べます。特定の事業者や書類を指すものではなく、一般的な書き方の例です。

書き方の例(一般的な例) 広告・勧誘でよくある書き方と、整えた書き方

表示の裏付け

よくある書き方「満足度98%」「受講生の収入が大幅アップ」と掲げ、調査の方法や裏付けの資料を残していない
整えた書き方表示ごとに、裏付けとなる資料(調査の対象・方法・時期、実績の集計)を保管し、表示との対応表を作る。資料が出せない表示は掲げない

理由特定商取引法12条の2、景品表示法7条2項は、根拠資料の提出を求め、出さなければ誇大広告・優良誤認表示とみなす。最高裁令和4年判決は、この仕組みを合憲とした

低額表示

よくある書き方広告に「1,000円から」などの低額を大きく表示し、実際の請求額が大きく異なる
整えた書き方低額表示が適用される条件と、実際に必要になる費用の範囲を、広告の見やすい位置にあわせて表示する

理由京都地裁は、サイトの低額表示と実際の請求額の乖離を、不法行為の判断で重視した。通信販売の定期購入では、特定申込みの画面の表示も12条の6第2項で規律される

勧誘の目的の告知

よくある書き方「無料相談」「採用面接」「情報交換会」などの名目で電話・Web会議に誘い、冒頭で販売の目的を告げない
整えた書き方通話の冒頭で、事業者名、担当者名、商品・役務の種類、勧誘のための電話であることを告げる定型文を決め、全員が使う

理由特定商取引法16条の義務。名古屋地裁は、氏名等の不明示が組織的に行われたことを一応認めた。行政処分でも勧誘に先立つ不明示が挙げられている

断られたあとの連絡

よくある書き方契約しないと伝えた相手に、期間を空けて再度の案内を送る・かける
整えた書き方断った人を顧客リストに記録し、勧誘の連絡を止める運用にする。再勧誘に当たらない問い合わせ対応を区別して定める

理由特定商取引法17条は、契約しない旨の意思を表示した者への勧誘を禁止する。名古屋地裁は、断られても電話をかけ直したことを問題とした

説明の言葉

よくある書き方「必ず結果が出ます」「元は取れます」と口頭で話し、書面には「成果を保証しません」と書く
整えた書き方営業トーク集と書面の説明を一致させ、断定的な表現を使わない。成果は個人差があること、保証しないことを両方で同じ内容で伝える

理由消費者契約法4条1項2号の断定的判断の提供。東京簡裁は口頭の説明を断定的判断と認めた

手順にすると、次のとおりです。1.広告、LP、SNS投稿、説明会の資料、営業トーク集を一覧にする。2.各所の表示と説明を、質・用途その他の内容と、対価その他の取引条件に分けて、事実との一致を確かめる。3.効果・実績・満足度の表示は、裏付け資料との対応表を作る。4.通話や面談の冒頭の告知、断られたあとの対応を、定型文と記録の様式にする。5.営業トーク集と研修資料は、書面の説明と一致させたうえで、保管する。[1][2]

業種サイトでは、広告の書き方を業種に即して扱っています。占い師の広告表示、コーチングの効果の言い方、エステの広告表示、オンライン講座の電話勧誘はZoom個別相談・無料セミナーと電話勧誘販売、通信販売の定期購入は定期購入の規約・最終確認画面の表示・解約条項が参考になります。行政処分の全体は行政処分の事例、相談の件数は相談件数と事例で整理しています。

広告・勧誘を点検するときの確認項目

  • 広告・LP・SNS投稿の、質・用途その他の内容と、対価その他の取引条件の記載が、事実と一致しているか
  • 効果・実績・満足度の表示に、裏付け資料があり、すぐに出せる状態か
  • 「確実」「必ず」「元が取れる」など、将来の利益を断定する表現がないか
  • 通話・面談の冒頭で、事業者名・担当者名・商品の種類・勧誘の目的を告げる定型文があるか
  • 契約しない意思を示した人への連絡を止める仕組み(リストへの記録)があるか
  • 営業トーク集・研修資料が、書面の説明と一致しているか

根拠・出典

本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。

  1. 条文消費者契約法4条1項・2項・5項、7条1項、12条1項。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061確認日:2026年10月23日
  2. 条文特定商取引に関する法律3条、3条の2第2項、12条、12条の2、12条の6第2項、16条、17条、21条1項・3項、22条1項、23条1項。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
  3. 条文特定商取引に関する法律施行規則64条1号(2023年6月1日の条番号の付け替え前は23条1号)。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
  4. 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成22年3月30日判決(平成20年(受)第909号、集民233号311頁)。裁判所「裁判例検索」の詳細ページで判示事項・裁判要旨を確認(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/80043/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
  5. 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成29年1月24日判決(平成28年(受)第1050号、民集71巻1号1頁)。同上(要旨のみ)。原審は大阪高等裁判所 平成28年2月25日判決(平成27年(ネ)第503号) https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
  6. 裁判例最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日判決(令和3年(行ツ)第33号、集民267号29頁)。判決文(3頁)を確認(全文)。原審は東京高等裁判所 令和2年10月28日判決(令和2年(行コ)第96号) https://www.courts.go.jp/hanrei/90989/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
  7. 裁判例大阪地方裁判所第19民事部 令和3年1月29日判決(平成28年(ワ)第12269号)。消費者性と4条1項1号の要件の判断を通読(主要部分) https://www.courts.go.jp/hanrei/90136/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  8. 裁判例京都地方裁判所第1民事部 令和6年1月19日判決(令和3年(ワ)第2352号)。判決全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/92778/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  9. 裁判例名古屋地方裁判所民事第9部 平成18年9月25日決定(平成18年(行ク)第24号、本案は平成18年(行ウ)第50号)。決定全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/33813/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  10. 裁判例東京簡易裁判所(少額訴訟3係) 平成16年11月15日判決(平成16年(少コ)第2715号)。判決全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/9002/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  11. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」電話勧誘販売の解釈に関するQ&A(SNSからWeb会議ツールへの導線、「電話をかけ」「請求した者」の整理) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/telemarketing.html確認日:2026年10月23日
  12. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売広告Q&A(有償の情報配信、返品特約の表示、定期購入の表示) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html確認日:2026年10月23日
  13. 消費者庁消費者庁 通達「特定商取引に関する法律等の施行について」令和6年11月19日付(第2章第1節 法2条3項関係(10)(イ)=「電話をかけ」の範囲。PDF 6頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
  14. 消費者庁消費者庁 電話勧誘販売の行政処分(処分日2025年1月22日、公表2025年1月23日)の公表ページ。違反の型のみ使用(事業者名は書かない) https://www.caa.go.jp/notice/entry/040837/確認日:2026年10月23日
  15. 消費者庁消費者庁 訪問販売の行政処分(処分日2026年9月17日、関東経済産業局。公表2026年9月18日)の公表ページ、及び消費者庁「執行状況」の一覧(2026年10月19日の埼玉県の処分は一覧の記載による) https://www.caa.go.jp/notice/entry/047504/確認日:2026年10月23日
  16. 消費者庁消費者庁 通信販売の行政処分(処分日2026年3月、公表2026年3月27日)の公表ページ。違反の型は一覧の記載による(公表ページに違反内容の記載なし) https://www.caa.go.jp/notice/entry/045634/確認日:2026年10月23日
  17. 国民生活センター国民生活センター「通信販売での定期購入」(各種相談の件数や傾向。2026年7月31日更新。PIO-NET件数、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/subscription_traps.html確認日:2026年10月23日
  18. 国民生活センター国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意-広告・勧誘と実際の講座内容が異なる、Web会議での思わぬ勧誘に気をつけましょう-」2026年9月16日公表(HTML本文で確認。PDFのみの記述は未確認) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html確認日:2026年10月23日

よくあるご質問

広告やLPの文言は、消費者契約法でいう「勧誘」に当たりますか?

最高裁判所平成29年1月24日判決は、不特定多数に向けられた働きかけでも、直ちに消費者契約法12条の「勧誘」に当たらないとはいえないとしました。ただし差止請求の「勧誘」についての判断です。大阪地方裁判所令和3年1月29日判決は、カタログの交付やそれを前提にした説明も、4条1項1号の勧誘に含まれ得るとしました。広告の内容によっては取消しの基礎になり得るため、広告も勧誘の一部として点検します。

将来の収益や価格の見込みを説明することは、不告知の「重要事項」の問題になりますか?

最高裁判所平成22年3月30日判決は、将来の金の価格は、消費者契約法4条2項本文の重要事項に当たらないとしました。もっとも、将来の変動が不確実な事項について確実だと言い切る説明は、4条1項2号の断定的判断の提供として別に問題になります。東京簡易裁判所は、「確実に稼げる」との説明を断定的判断と認めました。

効果や実績の表示に、裏付け資料はどの程度必要ですか?

特定商取引法12条の2は、主務大臣が根拠資料の提出を求め、期間内に出さなければ誇大広告の表示に当たるとみなすと定めています。景品表示法7条2項の同じ仕組みについて、最高裁判所令和4年3月8日判決は、憲法に違反しないとし、表示をする事業者は裏付けとなる合理的な根拠を有しているべきだと述べています。表示と資料の対応表を作り、保管しておくのが基本です。

断られたあとに、別の商品の案内をしてもよいですか?

特定商取引法17条は、電話勧誘販売に係る契約を締結しない旨の意思を表示した者への勧誘を禁止しています。訪問販売にも3条の2第2項に同様の規定があります。名古屋地方裁判所の決定は、断られても電話をかけ直した事実などを、行政処分の判断で重く見ました。どの連絡が再勧誘に当たるかは、内容と流れで判断されるため、勧誘前の明示と再勧誘の禁止で確認してください。

無料相談やWeb会議からの勧誘が電話勧誘販売に当たるかを判断した判決はありますか?

この調査の範囲では、該当性を判断した裁判例は確認できませんでした。名古屋地方裁判所の決定は、電話勧誘販売の行為規制の事案で、該当性を争ったものではありません。判断の材料は、条文と消費者庁の資料になります。確認できていない内容は、このサイトに載せていません。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所

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