セミナー会場・展示会での販売:訪問販売の判定と、必要な書類

自宅でなくても、貸会議室やホテルなどの会場で申込みを受ければ訪問販売です。営業所等の範囲、特定顧客、勧誘目的の明示、現金取引の除外、当日の書類を、条文に沿って整理します。

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「セミナーは自宅ではないから」という理由で、書面と赤枠を用意しないまま会場で契約を結ぶ運営が、最も多い落とし穴です。

このページの要点

  • 営業所等以外の場所(貸会議室、ホテル、展示会場など)で申込みを受け、または契約を結べば訪問販売。書面を受け取った日から起算して8日はクーリング・オフができる(特商法2条1項1号、9条1項)。
  • 営業所に呼び出した場合も、勧誘目的を告げずに来場を要請した相手は特定顧客で、訪問販売になる(2条1項2号、施行令1条)。案内文と会場の最初の説明で、有料の講座を案内する目的を告げる(3条)。
  • 現金取引の除外は、その場で全部を提供し代金も全額受け取る、3,000円に満たない取引に限られる(26条5項3号、施行令17条)。無条件には使えない。
  • 会場の契約後は、申込書面・契約書面と赤枠の書面をその場で渡す。買い手が事業者でも、営業のための契約かは実質で判断される。

結論:自宅でなくても、会場で申込みを受ければ訪問販売。勧誘の目的を告げ、その場で書面を渡す

このページの結論

誰に当てはまるか
セミナー、説明会、体験会、展示会、催事などを貸会議室やホテル、一日限りの会場で開き、その場で申込みや契約を受ける事業者。無料のセミナーなどと告げて事務所に呼び、契約を勧める事業者。
何をすべきか
会場での申込み・契約は訪問販売として扱い、申込書面と契約書面、クーリング・オフの赤枠を、その場で渡す。勧誘の目的を最初に告げ、現金取引の除外を安易に使わない。
期限
書面を受け取った日から起算して8日を経過するまで、購入者は書面または電磁的記録でクーリング・オフができる(特商法9条1項)。

「セミナーは自宅への訪問ではないので、訪問販売ではない」と考える事業者は少なくありません。しかし、特商法の訪問販売は、お客様の家に行く営業に限りません。条文が基準にしているのは、事業者の営業所等(営業所、代理店、露店など)以外の場所で申込みや契約を受けたかどうかです。貸会議室やホテルの一室、展示会の会場は、営業所等以外の場所です。[1]

もう一つの落とし穴は、営業所や事務所に呼ぶ場合です。無料のセミナー、特別な優待などと告げて来場させ、契約を勧める運営は、営業所で契約しても、特定顧客(呼び出された人)が相手の訪問販売になりえます。以下、会場の種類、呼び出しの方法、書類の順に整理します。

結論の表:セミナー会場・展示会販売

項目内容
当てはまる取引の類型
  • セミナー会場・貸会議室・展示会で当日に申込み
    → 訪問販売(診断結果 R03)
  • 事務所・店舗に呼び出して申込み(目的を告げない呼び出し等)
    → 訪問販売(診断結果 R04)
  • 会場では申込みを受けず、あとでネットのフォームだけで申込み
    → 通信販売(診断結果 R07)
    申込みを受けた場所・手段で類型が決まります。会場での勧誘の実態によっては別の判断になることがあります。
当てはまらない場合の条件
  • 購入者が営業のために又は営業として契約する場合(名義でなく実質で判断)(特商法26条1項1号(訪問販売・通信販売・電話勧誘販売)、50条1項1号(特定継続的役務提供))
  • 政令指定の取引の態様など(26条5項3号の金額、26条6項2号。政令の中身は未確認のため、ここでは条番号のみ)(特商法26条5項3号・6項2号)
必要な書類(要るもの・要らないもの)
  • セミナー会場・貸会議室・展示会で当日に申込み
    要=契約書面・赤枠・商品・関連商品の記載/条件付き=概要書面(申込み時の書面)・承諾書面(電子交付時)/任意=利用規約/不要=返品特約の表示・特商法に基づく表記・最終確認画面の表示
  • 事務所・店舗に呼び出して申込み(目的を告げない呼び出し等)
    要=契約書面・赤枠・商品・関連商品の記載/条件付き=概要書面(申込み時の書面)・承諾書面(電子交付時)/任意=利用規約/不要=返品特約の表示・特商法に基づく表記・最終確認画面の表示
  • 会場では申込みを受けず、あとでネットのフォームだけで申込み
    要=特商法に基づく表記・最終確認画面の表示/条件付き=返品特約の表示/任意=利用規約/不要=概要書面(申込み時の書面)・契約書面・赤枠・承諾書面(電子交付時)・商品・関連商品の記載
クーリング・オフの期間
  • セミナー会場・貸会議室・展示会で当日に申込み
    8日(特商法9条1項)
  • 事務所・店舗に呼び出して申込み(目的を告げない呼び出し等)
    8日(特商法9条1項)
  • 会場では申込みを受けず、あとでネットのフォームだけで申込み
    なし(役務は15条の3の対象外。返金条件は契約と広告で定める)
中途解約の有無と上限
  • 訪問販売:特商法に定めなし。解約・返金の条件は契約で定め、消費者契約法の規制を受ける(消費者契約法8条〜10条)
  • 通信販売:特商法に定めなし。解約・返金の条件は契約で定め、消費者契約法の規制を受ける(消費者契約法8条〜10条)

自宅でないから訪問販売ではない、とは言えません。営業所等以外の場所での申込み・契約が訪問販売です。 診断の分かれ道は診断の結果、取引の類型ごとの一覧は7類型の早見表にあります。

会場での取引:場所と手段で類型が分かれる

場面類型書面根拠
貸会議室・ホテル・展示会場など、営業所等以外の場所で申込みを受け、または契約を結ぶ訪問販売申込書面と契約書面、赤枠特商法2条1項1号、4条、5条
無料のセミナーなどと告げて、自社の事務所・店舗に呼び出して契約を結ぶ訪問販売(特定顧客)同上特商法2条1項2号、同法施行令1条
会場では勧誘も申込みの受付もせず、後日ネットのフォームだけで申込みを受ける通信販売特商法に基づく表記、最終確認画面特商法2条2項、11条、12条の6
常設の店舗・事務所で、来場者が自分で選んで契約する(呼び出しなし)特商法の勧誘類型の外民事の契約書・規約—

最後の2行は、申込みを受けた場所と手段で決まります。会場での勧誘の実態によっては、別の判断になることがあります。

判定の根拠:営業所等、特定顧客、勧誘目的の明示、現金取引の除外

「営業所等」とは何か

営業所等の範囲は、特商法2条1項1号の委任を受けた規則1条が定めています。消費者庁のガイドも、訪問販売の定義と、書面、クーリング・オフ、適用除外をまとめています。[4]営業所と代理店のほか、露店や屋台などと、一定の期間にわたって商品を陳列し販売する場所で店舗に類するもの、などです。[1][2]

条文の引用特定商取引に関する法律施行規則 第1条第4号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「前三号に掲げるもののほか、一定の期間にわたり、商品を陳列し、当該商品を販売する場所であつて、店舗に類するもの」

解説条文は、「一定の期間にわたり」「商品を陳列し販売する」「店舗に類する」の三つを要件にしています。貸会議室を一日だけ借りて開く説明会や、数日の展示会が、この要件に当たるかは、期間や設備の実態で判断されます。一日限りのセミナー会場を、営業所等とみなして訪問販売でないと決めるのは、安全な判断ではありません。

営業所に呼び出した場合:特定顧客

特商法2条1項2号は、営業所等での取引でも、営業所等以外の場所で呼び止めて同行させた人、その他の政令で定める方法で誘引した人(特定顧客)が相手のものを、訪問販売にしています。キャッチセールスやアポイントメントセールスと呼ばれる類型です。[1]

条文の引用特定商取引に関する法律 第2条第1項第2号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは特定権利の販売」

解説「政令で定める方法」は、施行令1条にあります。
条文の引用特定商取引に関する法律施行令 第1条第1号(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「…当該売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするためのものであることを告げずに営業所その他特定の場所への来訪を要請すること。」

解説電話、郵便、電報、電磁的方法、ビラの配布、住居の訪問などで、契約の勧誘が目的であることを告げずに来場を要請することが、特定顧客の誘引方法に当たります(同条2号は、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると告げて来場を要請する方法です)。「無料のセミナー」「情報交換会」という名目で集客し、会場で有料の契約を勧める運営は、この条文の想定する型に近くなります。

勧誘の目的を告げる義務と、告げずに誘引した人への勧誘の禁止

訪問販売をしようとするとき、事業者は、勧誘に先立って、氏名または名称、勧誘をする目的である旨、商品・権利・役務の種類を明らかにしなければなりません(3条)。さらに、勧誘の目的を告げずに営業所等以外の場所で呼び止めて同行させるなど、政令の方法で誘引した人に対し、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘することは禁止されています(6条4項、施行令5条)。[1][3]

条文の引用特定商取引に関する法律 第3条e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘に先立つて、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。」

解説セミナーの案内や、会場での最初の挨拶で、「この会では、有料の講座のご案内をします」と伝える、という運用が、この条文の実務です。

書面を渡す時期と、現金取引などの除外

申込書面は、申込みを受けたとき直ちに渡すのが原則ですが、申込みを受けた際にそのまま契約を結んだときは、申込書面は要らず、契約書面を直ちに渡します(4条1項ただし書、5条1項かっこ書)。通達は、申込書面は「直ちに」=その場で、契約書面の「遅滞なく」は通常3〜4日以内、ただし申込みと同時に契約したときはその場で、と示しています。[1][6]

適用除外のうち、会場の販売で誤解されやすいのが、現金取引の除外です。26条5項3号は、契約時に商品の引渡しや役務の提供をしてその代金の全部を受け取る場合(5条2項)で、総額が政令の金額に満たないときに、クーリング・オフを適用しないとしています。[1]

条文の引用特定商取引に関する法律 第26条第5項第3号e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「第五条第二項又は第十九条第二項に規定する場合において、当該売買契約に係る商品若しくは特定権利の代金又は当該役務提供契約に係る役務の対価の総額が政令で定める金額に満たないとき。」

解説政令の金額は、3,000円です(施行令17条)。つまり、その場で全部を提供し代金も全額受け取る、3,000円に満たない取引だけが対象です。数日にわたる講座や、後日に提供する契約、代金を後払いや分割にする契約は、金額が小さくても、この除外には入りません。

このほか、使用や消費で価額が著しく減少する政令指定の商品(別表第三に掲げる、食品の加工品、化粧品など)は、書面を受領した後に使用または消費したときはクーリング・オフができなくなります(26条5項1号、施行令16条)。ただし、書面にその旨を赤枠の中に赤字で記載することが条件です(規則7条4項・6項)。会場で化粧品や健康食品を売る場合に確認します。[1][3][2]

購入者が営業のために契約する場合は、訪問販売の規定が適用されません(26条1項1号)。展示会に事業者が来場していても、名義だけで決まらず、契約の目的や使い方で判断されます。消費者庁のQ&Aは、稼ぐ目的があるだけでは営業のための契約にならず、取引への習熟などを総合して判断する、としています。個人が副業を始める目的の購入は、この点で争いになります。[5][6]詳しくは事業者間契約でクーリング・オフが対象外になる場面にあります。

よくある誤り→正しいやり方

会場での販売で起きやすい誤りを、頻度の高い順に並べます。

1 「セミナーは自宅ではないから訪問販売ではない」と考える

訪問販売の基準は、営業所等以外の場所かどうかです。自宅への訪問に限りません。貸会議室、ホテル、イベント会場、顧客の職場での申込み・契約は、営業所等以外の場所の取引で、4条・5条の書面と9条のクーリング・オフがあります。[1][2]

正しいやり方は、会場で申込みを受ける運営では、最初から訪問販売の書類を準備しておくことです。会場の契約書面の様式、赤枠、担当者の氏名の欄、領収書と別の書面であることを、当日の運営手順書に入れます。

2 申込みはフォームだから通信販売、と整理する

申込みの手段がフォームや申込用紙の形でも、会場で勧誘し、その場で申込みの操作をさせるなら、申込みを受けた場所は会場です。会場の端末やQRコードで、その場で申込みを完了させる運営は、通信販売と整理しにくくなります。申込みを受けた場所・手段で類型が決まるため、運営の記録(誰が、どこで、何を案内し、いつ申込みを受けたか)を残します。

反対に、会場では案内だけを行い、申込みは後日、自宅などからフォームで受けるなら、通信販売として整理できる余地があります。その場合も、会場での勧誘が不実告知になれば、他の規定(特商法12条の誇大広告、消費者契約法の取消し)が問題になります。

3 「無料セミナー」と告げて集客し、会場で契約を勧める

勧誘の目的を告げずに来場を要請することは、施行令1条1号に当たり、営業所に呼んだ場合は特定顧客の訪問販売、営業所等以外の場所で呼び止めて同行させた場合などは特商法6条4項の禁止行為になります。「無料」「相談だけ」と告げながら、会場の個別面談で高額な契約を勧めるのは、典型です。[1][3]

国民生活センターが2026年9月に公表した資料には、副業の採用面接のつもりで行ったのに、65万円の講座契約になっており、「事業者間契約だから解約できない」と言われた例が挙がっています。事業者側が防ぐには、集客の案内と会場の最初の説明で、有料の講座を案内する目的を明示し、事業者間という説明だけで解約を断らないことです。[10]

4 会場での契約後に、書面を渡さない、または領収書で済ませる

契約を結んだら、遅滞なく契約書面を渡す義務があります(5条1項)。申込みと同時に契約したときは、その場で渡します。領収書や、事業者の控えへの署名だけでは、書面を交付したことになりません。書面には、種類、対価、支払時期・方法、提供時期、クーリング・オフの事項、事業者の氏名・住所・電話番号、担当者の氏名などを記載します(規則5条)。[1][2]

電子データで交付する運営(会場のタブレットで契約書面を表示する等)は、相手の承諾が前提で、承諾の手続が不十分だと、書面を交付したことにならず、クーリング・オフの権利が続くと説明されています。承諾書面のページで確認します。

5 現金取引の除外を、無条件に使えると誤解する

前の節のとおり、26条5項3号は、契約時に全部を提供し代金も全額受け取る、3,000円に満たない取引に限られます。「現金払いだからクーリング・オフは対象外」という規約の記載は、この要件を満たさない取引には働きません。分割払いやクレジットを使う契約は、割賦販売法の別の規律もあります(分割払い・カード)。[1][3]

書き方の例(一般的な例) セミナー案内の文言(勧誘の目的の明示)

案内文

よくある書き方無料セミナー開催!参加者全員に特別プレゼント。
整えた書き方有料の講座のご案内を含むセミナーです。参加は無料ですが、会場で講座のお申込みを受け付けます。お申込みは任意で、その場で決める必要はありません。

理由来場を要請する時点で、契約の勧誘が目的であることを告げる(施行令1条1号、特商法3条)。

会場の最初の説明

よくある書き方では、本日の内容に入ります。
整えた書き方本日は、当社の講座をご案内するセミナーです。ご興味があればお申込みを受け付けますが、お断りいただいても構いません。

理由氏名または名称、勧誘の目的、役務の種類を、勧誘に先立って告げる(3条)。断った人への再勧誘は禁止(3条の2第2項)。

書類の作り方の要点

会場の運営では、当日に渡す書類を、事前に一式そろえておくのが基本です。次の一覧は、会場でその場で申込みを受ける運営の最小限です。

会場で申込みを受ける運営の書類・手順チェック

  • 案内(集客)の文言:有料の講座・商品の案内を含むことを明示している(施行令1条1号)
  • 会場での最初の説明:氏名または名称、勧誘の目的、役務または商品の種類を口頭と掲示で告げる(3条)
  • 申込書面または契約書面:役務の種類、対価、支払時期・方法、提供時期、クーリング・オフの事項、事業者の氏名・住所・電話番号・代表者名、担当者の氏名、年月日(4条1項、規則5条)
  • 赤枠と赤字:書面の内容を十分に読むべき旨とクーリング・オフの事項を、赤枠の中に赤字で。8ポイント以上の文字(規則6条2項・3項、7条6項)
  • 交付のタイミング:申込みと同時に契約したときは、契約書面をその場で渡す(5条1項)
  • 電子データで渡す場合:承諾の取得と記録(4条2項・5条3項)
  • 断った人への対応:再勧誘をしない運営ルール(3条の2第2項)
  • 運営の記録:誰が、いつ、どこで、何を案内し、申込みを受けたか

書面の号ごとの記載事項は契約書面の事項と概要書面、赤枠は赤枠の一覧にあります。赤枠の見本と書き方の要点は、赤枠の書き方にまとめています。[2]

会場で開催する講座の契約が、特定継続的役務提供(エステ、語学、学習塾など指定の7役務)に当たる場合は、概要書面が契約の前に必要です。当日の申込みで、概要書面を契約の前に渡せていない運営は、この点で不備になります。7役務の判断は特定継続的役務の7業種で確認します。

当日の申込みの扱いを、申込みの案内(募集要項)に書くときの、論点ごとの条文の例を示します。

条文例

会場での申込みの取扱い(募集要項)

  1. 当社は、会場でお申込みを受け付けた場合、お申込みの際に、お申込みの内容を記載した書面を、その場でお渡しします。
  2. 当社は、契約が成立したときは、直ちに、契約の内容を記載した書面をお渡しします。この書面には、クーリング・オフに関する事項を赤枠の中に赤字で記載しています。
  3. お申込みは任意です。ご案内を受けて、お断りいただいても構いません。お断りいただいた方に対して、当社が重ねて契約を勧めることはありません。

訪問販売に当たる会場の申込みを前提にした条項の骨組みです。クーリング・オフの期間や方法は、契約書面の赤枠に正確に書き、募集要項では要点の案内にとどめます。

関係する判例・処分事例・相談事例

会場の取引そのものを判断した裁判例は多くありません。ここでは、購入者が事業者の場合に、営業のための契約かどうかを実質で判断した二つの判決を整理します。判決当時の条文によるため、現行の26条1項1号に読み替えて使います。裁判例の整理は適用除外の裁判例にあります。

裁判例法人が購入者でも、営業のためでない契約は適用除外にならない(事務所での点検商法)[7]

裁判所・判決日
神戸地方裁判所 平成15年3月4日
事件番号
平成14年(ワ)第2729号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決詳細ページと判決書(確認の範囲:判決全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨自動車の販売・修理を業とする株式会社の事務所から、業者が消火器を運び出し、点検作業の契約書に署名を得て代金を請求した。会社が消火器の返還を求め、訴状をもってクーリング・オフ(訪問販売)を行った。

判断の要点裁判所は、会社であっても、消火器の充填薬剤の購入は「営業のため若しくは営業として」の契約とはいえず、適用除外の規定(当時の条文)は適用されないと判断した。業者は法定書面を交付していないことを認めており、訴状の送達によるクーリング・オフを有効として、消火器の引渡しを命じた。

事業者の実務への示唆買い手が法人でも、契約の目的が営業のためでなければ、適用除外にならない。「相手は会社だから対象外」と決めつけず、契約の目的と使い方を確認する。この判決は判決当時の旧条文による当裁判所の判断で、上級審の結果は未確認である。

裁判例事業者が相手でも、営業のための契約かは実質で判断する(リース契約の提携販売)[8]

裁判所・判決日
大阪地方裁判所 平成24年7月27日
事件番号
平成20年(ワ)第73号ほか(併合)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/ の判決詳細ページと判決書(確認の範囲:主要部分(営業のための契約の判断と当てはめ)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨個人事業者らが、電話機やファクシミリなどのリース契約を、提携する販売店の訪問販売で結ばされたとして、クーリング・オフなどを主張し、リース会社の責任を求めた。

判断の要点裁判所は、提携の仕組みの中でリース会社も勧誘に関与しており販売業者に当たるとしたうえで、適用除外の趣旨は取引に不慣れな消費者の保護にあるため、相手が事業者でも営業のためでない契約は除外されないと判断した。営業のためかどうかは、相手の属性や経費計上の有無といった形式だけでなく、事業内容、使用目的、使用状況、設置場所などの実質で判断するとし、顧客ごとに結論を分けた。事業の経費として計上し、事業で現に使用していた顧客は除外され、居宅に設置した電話機や、事業規模に比べて過大なビジネスホンの契約などは営業のためではないとされた。

事業者の実務への示唆事業者向けのセミナーや展示会でも、買い手の使い方が営業のためでない場合は、訪問販売の書面とクーリング・オフが必要になりうる。営業のための契約であることを確かめた記録を残すか、法定の書面を渡しておくか、判断が要る。この判決は判決当時の条文によるもので、控訴の有無は未確認である。

行政処分では、2026年10月19日に埼玉県が、訪問販売を行う事業者に業務停止命令(3か月)、指示、業務禁止を出しました。消費者庁の執行状況の一覧によれば、違反の型は、勧誘目的等の不明示(特商法3条)と、役務提供契約が必要な事情についての不実告知(6条1項6号)です。公表の本文までは確認できていないため、一覧の記載の範囲で述べています。[12]

展示会の事例としては、国民生活センターの見守り新鮮情報(第493号、2024年9月26日)に、一人暮らしの女性が呉服店の展示会に誘われ、着物と宝飾品を次々と契約し、毎月のカードの支払が年金では払えない額になった例があります。ほとんど使っておらず、家族が解約を希望している、という内容です。[9]

事業者側が防ぐには、高齢者や判断力の弱い人に、次々と販売しないこと、購入履歴を確認して日常生活で通常必要とされる分量を著しく超える販売をしないこと(特商法9条の2は、そのような契約の解除を申込みから一年以内に認めています)、書面を必ず渡すことです。[1]訪問販売全体の相談は、2025年度に78,392件でした(PIO-NETの件数。経由相談を除く)。[11]

ヒヤリングで確かめること

確かめる問いと理由書類を決める前に、まず次を確認します

  1. 会場は、貸会議室・ホテルなどの一時的な場所か、常設の店舗・事務所か。

    営業所等に当たるかで、訪問販売かどうかが分かれます。

  2. 集客の案内には、有料の講座・商品を案内することが書いてあるか。

    来場の要請の時点で勧誘の目的を告げない場合は、特定顧客の誘引方法になります。

  3. 会場で、その場で申込みや契約を受けるか。申込みは後日のフォームだけか。

    申込みを受けた場所と手段で類型が決まります。

  4. 支払は現金一括か、後払いか、分割・クレジットか。金額はいくらか。

    現金取引の除外は、その場で全部を提供し代金も全額受け取る、小額の取引に限られます。

  5. 契約のとき、書面を誰が、いつ、どの形で渡すか。電子データで渡すか。

    書面の交付と、承諾の取得の運営に関わります。

  6. 買い手は、個人か、個人事業主か、法人か。購入の目的は何か。

    営業のための契約かは、名義でなく実質で判断します。

  7. 断った人に、重ねて勧誘しない運営ルールがあるか。

    契約しない意思を示した人への勧誘は禁止されています。

業種サイトの詳しい記事

セミナーや催事、教室の運営について、各業種サイトの詳しい記事を案内します。

サイト内では、オンライン講座の通話や面談の整理はオンライン講座、高額なコンサルの整理は高額コンサル、勧誘前の明示と再勧誘の禁止は勧誘前の明示と再勧誘の禁止、取引の見分け方の全体はクーリング・オフが使える取引の見分け方にあります。診断は診断の結果(会場での申込み)と同(呼び出して申込み)が対応します。類型ごとの一覧は7類型の早見表です。

根拠・出典

本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。

  1. 条文特定商取引に関する法律(特商法)2条1項・3条・4条・5条・6条4項・9条・9条の2・26条1項・5項・6項(現行版の施行日2026年8月12日) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
  2. 条文特定商取引に関する法律施行規則1条(営業所等)・5条・6条・7条 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
  3. 条文特定商取引に関する法律施行令1条(特定顧客の誘引方法)・5条(勧誘目的を告げない誘引方法)・13条・17条・別表第三 https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295確認日:2026年10月23日
  4. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問販売のページ https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/確認日:2026年10月23日
  5. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」訪問販売等の適用除外に関するQ&A(Q1 営業のための契約) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/exclusion.html確認日:2026年10月23日
  6. 消費者庁通達「特定商取引に関する法律等の施行について」(令和6年11月19日付)第2章第2節 3(3)(書面の交付時期。PDF 11〜12頁)、第5節 1 法26条1項1号(PDF 54頁) https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_01.pdf確認日:2026年10月23日
  7. 裁判例神戸地方裁判所 平成15年3月4日判決(平成14年(ワ)第2729号、動産引渡等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で判決全文を確認。判決当時の条文による https://www.courts.go.jp/hanrei/7033/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  8. 裁判例大阪地方裁判所 平成24年7月27日判決(平成20年(ワ)第73号ほか併合、損害賠償等請求事件)。裁判所「裁判例検索」で主要部分を確認。判決当時の条文による。控訴の有無は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/84330/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  9. 国民生活センター国民生活センター「見守り新鮮情報 第493号」(2024年9月26日。呉服店の展示会での次々販売の事例) https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen493.html確認日:2026年10月23日
  10. 国民生活センター国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日公表。面接や面談のつもりが講座の契約になっていた事例) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html確認日:2026年10月23日
  11. 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表。訪問販売78,392件、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html確認日:2026年10月23日
  12. 消費者庁埼玉県の訪問販売に関する行政処分(処分日2026年10月19日。業務停止命令3か月、指示、業務禁止。違反の型は消費者庁の執行状況一覧の記載による) https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/288675/news2026101901.pdf確認日:2026年10月23日

よくあるご質問

オンラインのセミナーでも、訪問販売になりますか。

訪問販売の基準は営業所等以外の場所での申込み・契約で、オンラインの会議ツールで勧誘して契約を結ぶ場合は、通話での勧誘として電話勧誘販売に当たるかが問題になります。詳しくは、オンライン講座のページで整理しています。

展示会の会場で受けた申込みでも、クーリング・オフを受けますか。

営業所等に当たらない会場で申込みや契約を受けたなら、訪問販売としてクーリング・オフ(書面を受領した日から起算して8日)の対象です。営業のための契約や、3,000円に満たない現金取引などの適用除外に当たるかは、別に判断します。

無料のセミナーの案内に、有料の講座の販売があると書かなくてもよいですか。

来場の要請の時点で、契約の勧誘が目的であることを告げない方法は、特定顧客の誘引方法に当たります(施行令1条1号)。営業所に呼んだ場合も、会場の場合も、案内文と会場の説明の両方で、有料の講座を案内する目的を明らかにします。

会場で契約書面を渡さず、後日郵送でもよいですか。

契約書面は、契約を結んだときに遅滞なく渡す義務があります。申込みと同時に契約したときは、その場で渡します。通達は、遅滞なくは通常3〜4日以内と示しますが、会場で契約するなら、その場で渡す運用が確実です。

現金払いなら、クーリング・オフはありませんか。

ありません、とはいえません。現金取引の除外は、契約時に全部を提供して代金を全額受け取る場合で、総額が3,000円に満たないときです(特商法26条5項3号、施行令17条)。後日に提供する講座や、分割払いの契約は含まれません。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所

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