このページの要点
- 連鎖販売取引は、特定利益で誘引し特定負担を伴う取引(特定商取引法33条1項)。名称が代理店でも、紹介報酬と権利金の組み合わせで該当すると判断した裁判例(熊本地裁)がある。
- クーリング・オフは契約書面を受領した日から20日。書面の不交付・不備があれば、20日が過ぎても解除が有効とされた例がある。高裁・最高裁で類型の該当性を判断した判決は確認できていない。
- 業務提供誘引販売の広告の収入表示は、同水準の収入を得ている人が多数を占めることを示すなど、根拠の表示が必要(施行規則113条2項3号)。さいたま地裁は、根拠のない月収表示を違反と認定した。
- 口頭の「確実に稼げる」は、特定商取引法の広告規制とは別に、消費者契約法4条1項2号の断定的判断として取消しの原因になる(東京簡裁)。勧誘トークも書面と一致させる。
結論:名称ではなく、収入の源と、相手が負担するものの組み合わせで判断される
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 副業・投資・ビジネスの講座、代理店・パートナー・アンバサダー制度、紹介報酬つきの販売、「仕事を紹介する」型のサービスを運営している(運営しようとしている)事業者。
- 何をすべきか
- 自社の仕組みが、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引・通常の販売のどれに当たるかを、条文の定義から先に当てはめる。当たるなら、概要書面・契約書面・広告の表示事項・収入の根拠資料をそろえる。
- 期限
- 募集や販売を始める前。クーリング・オフの期間は、契約書面を受領した日から数える(書面の不備があれば進行しない場合がある)。
副業や投資、ビジネスの講座には、「受講すれば稼げる」「紹介すれば報酬が出る」「仕事を紹介する」といった要素が入りやすくなります。こうした要素が入ると、取引は通常の講座販売の枠を越え、特定商取引法の連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引、さらに消費者契約法による取消しの問題と重なります。[1][3]
このページは、この分野の裁判例6件を整理します。内訳は、連鎖販売取引の該当性と法定書面を判断した地方裁判所の判決、無限連鎖講に関する判決(地方裁判所と最高裁判所)、業務提供誘引販売の広告と書面の判断、副業の勧誘での断定的判断を理由とする取消しを認めた簡易裁判所の判決、投資教材の誇大な説明を扱った判決です。取引類型の見分け方は取引の見分け方、副業・投資スクールの導線ごとの整理は副業・投資スクールと紹介報酬つき販売で扱います。
先に結論の要点を述べます。確認できた範囲では、連鎖販売取引の該当性やクーリング・オフを判断した判決は地方裁判所のものです。高等裁判所や最高裁判所が、特定商取引法の取引類型の該当性やクーリング・オフを正面から判断した判決は、この調査では確認できませんでした。したがって、以下の判断は、それぞれの裁判所の判断として読みます。[5][9]
三つの仕組みの違い(条文の整理)
| 仕組み | 定義の要点 | クーリング・オフ | 主な書面と広告 |
|---|---|---|---|
| 連鎖販売取引 | 商品の再販売・受託販売・販売のあっせん、又は同種役務の提供・あっせんをする者を、特定利益を得られるとうたって勧誘し、特定負担を伴う取引をする(特定商取引法33条1項) | 契約書面を受領した日から20日(特定負担が再販売する商品の購入で、その最初の引渡しが後ならその日から)。書面又は電磁的記録で行う(同法40条1項) | 概要書面(37条1項)、契約書面(37条2項)、氏名等の明示(33条の2)、誇大広告の禁止(36条)[1][10] |
| 業務提供誘引販売取引 | 商品又は役務を利用する業務に従事することで得られる利益(業務提供利益)を収受し得ることをもって誘引し、特定負担を伴う取引をする(同法51条1項) | 契約書面を受領した日から20日。書面又は電磁的記録で行う(同法58条1項) | 概要書面(55条1項)、契約書面(55条2項)、広告の表示事項(53条)、誇大広告の禁止(54条)、根拠資料の提出(54条の2)[1][11] |
| 無限連鎖講(ネズミ講) | 「無限連鎖講の防止に関する法律」が規律する別の仕組み。特定商取引法の連鎖販売取引とは別の枠で、仕組み自体が違法・無効と評価され得る | 特定商取引法のクーリング・オフの枠では扱わない | 紹介による配当を主な収益源にした仕組みは、連鎖販売取引の書類をそろえても適法にならない |
表の整理は条文の文言と消費者庁の特定商取引法ガイドに基づきます。連鎖販売取引の20日と、商品の引渡しが書面受領より後の場合の起算は、40条1項のかっこ書に書かれています。
条文の枠組み:定義、クーリング・オフ、広告の根拠資料
連鎖販売取引の定義は33条1項に置かれています。長い条文なので、要の部分を抜粋します。[1]
「…を特定利益(…)を収受し得ることをもつて誘引し、その者と特定負担(…)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又は同種役務の提供若しくはその役務の提供のあつせんに係る取引(…)をするものをいう。」
業務提供誘引販売取引は、「業務を提供する」として誘引する点が連鎖販売取引と異なります。[1]
「…に従事することにより得られる利益(…)を収受し得ることをもつて相手方を誘引し、その者と特定負担(…)を伴うその商品の販売若しくはそのあつせん又はその役務の提供若しくはそのあつせんに係る取引(…)をするものをいう。」
両者のクーリング・オフは、契約書面を受領した日から20日です。[1]
「第三十七条第二項の書面を受領した日」
「…から起算して二十日を経過したとき」
「…を除き、書面又は電磁的記録によりその連鎖販売契約の解除を行うことができる。 この場合において、その連鎖販売業を行う者は、その連鎖販売契約の解除に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。」
「第五十五条第二項の書面を受領した日から起算して二十日を経過したとき」
業務提供誘引販売では、広告についての規制が、収入を示す表示に直結します。[1][2]
「当該業務提供誘引販売取引に伴う特定負担、当該業務提供誘引販売業に係る業務提供利益その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。」
「…当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。」
「…当該表示は、前条に規定する表示に該当するものとみなす。」
「収受し得る金額その他の業務提供利益の指標を表示するときは、その指標と同等の水準の業務提供利益を実際に収受している者が当該業務提供誘引販売業に関して業務提供誘引販売取引を行つた者の多数を占めることを示す数値を表示するなど、業務提供利益の見込みについて正確に理解できるように、根拠又は説明を表示すること。」
連鎖販売取引と無限連鎖講の判決:名称ではなく仕組みの実態が見られる
連鎖販売取引に当たると判断した熊本地方裁判所の判決、実質がネズミ講だとして不法行為を認めたさいたま地方裁判所の判決、無限連鎖講の配当金の返還を扱った最高裁判所の判決を、順に整理します。
裁判例「代理店契約」を連鎖販売取引と判断し、法定書面の不備で20日経過後の解除を認めた[5]
- 裁判所・判決日
- 熊本地方裁判所民事第2部 令和7年12月5日
- 事件番号
- 令和6年(ワ)第19号(損害賠償等請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/95413/detail4/index.html(確認の範囲:全文。結果は主位的請求(不法行為)棄却、予備的請求(不当利得返還)一部認容。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨「数代前の先祖が財の因縁で苦しんでいる」と言われた原告らが、家系図作成契約(10万円から100万円)と代理店契約(権利金300万円)を結びました。原告らは、勧誘が意思決定の自由を侵し公序良俗に反するとして不法行為に基づく賠償を求め、これが認められない場合に備えて、消費者契約法4条3項8号(霊感等)または民法96条による取消しや、特定商取引法40条1項による解除に基づく返還を求めた事案です。
判断の要点裁判所は、不法行為や公序良俗違反の主張については、各原告がどのような勧誘を受けたのかの主張と立証が足りず、家系図作成契約の代金も著しく高いとまではいえないとして退け、家系図作成契約について、4条3項8号や詐欺による取消しの主張も認めませんでした。一方、代理店契約は、新たに代理店になる人を紹介すれば報酬(特定利益)が得られると誘い、権利金300万円(特定負担)を払わせる取引であるとして、特定商取引法33条1項の連鎖販売取引にあたると判断しました。契約書面には連鎖販売取引であることの記載がなく、概要を記した書面が渡された形跡もないので、クーリング・オフの起算日はまだ来ておらず、契約から20日が経っていても解除は有効であるとして、権利金の返還を認めました。
事業者の実務への示唆名称が「代理店」でも、紹介による報酬と権利金の組み合わせがあれば、連鎖販売取引と判断されます。法定書面の不交付・不備があれば、20日を過ぎても解除できます。霊感等を理由とする取消しは、個々の勧誘内容を具体的に立証する必要がある、という読み方もできます。判決は書面の項番号を「37条2項」と言い表していますが、条文上は37条1項が概要書面、2項が契約書面です。控訴の有無は未確認で、令和7年12月の判決です。
裁判例通信販売の事業を掲げた会員制の仕組みが、実質的にネズミ講と判断された[6]
- 裁判所・判決日
- さいたま地方裁判所第1民事部 平成18年7月19日
- 事件番号
- 平成17年(ワ)第1645号(解約金等返還請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/33528/detail4/index.html(確認の範囲:主要部分(事案の概要・争点・判断の中心部分)。結果は請求一部認容(共同不法行為)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨通信販売の事業を名目にした会社と契約し、契約金を支払った被害者らが、会社、代表者、勧誘員に対し、共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。
判断の要点裁判所は、この会社は実質的にはいわゆるネズミ講に当たり、契約自体が公序良俗に反する違法な取引だとして、請求を一部認めました。通信販売の事業を名目にしていたものの、実際の収入の大半が新規加入者のオーナー契約金で、会員が増えなければ成り立たない仕組みだった点が重視されました。会社が、断定的判断の提供、概要書面・契約書面の不交付などを理由に、経済産業省から営業停止を命じられていた事実も認定されています。
事業者の実務への示唆マルチや紹介報酬つきの販売では、何を売っているかではなく、収入の源が商品の販売か新規加入者の支払いかという実態で見られます。約20年前の下級審判決で、その後の法改正を前提にしていません。事業者名は書かず、仕組みの見分け方の参考にとどめます。
裁判例無限連鎖講の配当金について、不法原因給付を理由に返還を拒めないとした[7]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日
- 事件番号
- 平成24年(受)第2007号(民集68巻8号1325頁)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」の詳細ページ https://www.courts.go.jp/hanrei/84582/detail2/index.html(確認の範囲:要旨のみ(判示事項・裁判要旨)。結果は破棄自判。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨公序良俗に反して無効な出資・配当の契約に基づいて受け取った金銭の返還が求められた事案です。その金銭は、無限連鎖講にあたる事業から出た配当金でした。
判断の要点最高裁は、その金銭が他の会員の出えんした金銭を元手にしていたこと、事業の破綻で多くの会員が損失を受け、破産債権者の大多数を占めるに至ったこと、破産管財人が適正で公平な清算のために返還を求めていることなどの事情があるときには、不法原因給付を理由に返還を拒むのは信義則上許されないとしました。補足意見が付されています。
事業者の実務への示唆無限連鎖講に当たる仕組みは無効で、破綻後は、先に配当を受けた者が返還を求められることがあります。破産管財人からの返還請求の事案であり、特定商取引法の連鎖販売取引の判断ではありません。事業者向けには、紹介による配当を主な収益源にした仕組みは、違法・無効になり得る、という程度にとどめて読みます。
業務提供誘引販売・副業の広告と勧誘の判決:書面、収入表示、断定的判断
副業や在宅ワークを紹介する取引では、広告の収入表示、書面、口頭の説明の三つが、それぞれ別の判決で扱われています。
裁判例業務提供誘引販売取引の広告表示と書面を判断し、業務停止命令を取り消した[9]
- 裁判所・判決日
- さいたま地方裁判所第4民事部 平成23年2月2日
- 事件番号
- 平成22年(行ウ)第29号(業務停止命令処分取消請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/82103/detail4/index.html(確認の範囲:全文。結果は請求認容(命令の取消し)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨軽貨物運送での独立を後押しする会員制の取引(入会費用約59万円と月会費、指定車両の購入あっせんがセット)をしていた事業者が、広告の月収表示などが特定商取引法に違反するとして、県知事から6か月の業務停止命令(勧誘・申込み受付・契約締結の停止)を受け、その取消しを求めた事案です。
判断の要点裁判所は、次のように判断しました。(1)この取引は業務提供誘引販売取引(51条1項)にあたる。(2)広告には「月収例25万〜35万円以上可」「2009年度の実績を基にしています」としか書かれておらず、事業者は会員の多くの収入を把握しておらず、その水準の収入を実際に得ている人が多数を占めるという根拠も示していなかったので、53条3号、施行規則(当時の41条2項3号、現行113条2項3号)、54条に違反する。(3)契約書面にあっせんする業務の一定期間内の回数が書かれていないことは55条2項2号に違反するが、概要書面については、重要な事項が明記されていれば足りるので55条1項には違反しない。(4)停止命令の要件である「おそれ」(57条1項)は、広告の月収表示には認められるが、書面の記載漏れだけでは認められない。それでも、県知事は、命令の直前に事業者が出した弁明書に月収表示を改める予定が書かれていたのに、実際にどう改められるかを確かめないまま命令を出しており、裁量権の濫用があるとして、命令を取り消しました。
事業者の実務への示唆結論は命令の取消しで事業者側に有利な内容ですが、理由は行政手続上の裁量権の濫用で、広告表示の違反自体は認定されています。収入例を載せるときは、同水準の収入を実際に得ている人が多数を占めることなど、見込みを正確に理解できる根拠を表示します。契約書面は、業務の提供・あっせんの条件(一定期間内の回数など)の記載が必要で、概要書面は重要な事項を明記すれば足りるという整理も読み取れます。控訴の有無は未確認です。
裁判例在宅業務を紹介する取引で、「確実に稼げる」との説明を断定的判断と認め、取消しを認めた[4]
- 裁判所・判決日
- 東京簡易裁判所(少額訴訟3係) 平成16年11月15日
- 事件番号
- 平成16年(少コ)第2715号(売買代金返還請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/9002/detail4/index.html(確認の範囲:全文。結果は請求認容(商品の引渡しと引換えに代金を返還)。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨在宅でのパソコン入力などの仕事を紹介するとして、システム一式(約50万円)を買わせ、その代金をローンで払う契約を勧められた購入者が、「ローンの月々の返済額(2万円)は確実に稼げる」と言われたことを理由に、消費者契約法4条1項2号(断定的判断の提供)に基づいて契約を取り消した事案です。
判断の要点裁判所は、電話で3回あった説明についての本人尋問の供述は信用でき、将来の収入という不確実なことがらについて金額を挙げて確実だと言い切る説明は「断定的判断の提供」にあたり、購入者はそれを信じて契約したと認めて、取消しを認め、代金の返還を命じました。契約が特定商取引法51条の業務提供誘引販売取引に当たること、当事者が消費者と事業者であることは、被告も認めていました。
事業者の実務への示唆副業・在宅ワーク・投資系の講座や教材で、「確実に稼げる」「元が取れる」といった説明は、特定商取引法の広告規制とは別に、民事上の取消しの原因になります。口頭の説明も対象で、書面だけを整えても足りません。簡易裁判所の少額訴訟判決(一審のみ)で、先例としての重みは限られます。
裁判例投資教材の誇大な説明をめぐる共通義務確認の訴えが、手続上の理由で却下された[8]
- 裁判所・判決日
- 東京地方裁判所民事第4部 令和3年5月14日
- 事件番号
- 平成31年(ワ)第11049号(共通義務確認請求事件)
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」 https://www.courts.go.jp/hanrei/90579/detail4/index.html(確認の範囲:主要部分(事案の概要・多数性・支配性の判断と結論)。結果は訴え却下。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨特定適格消費者団体が、仮想通貨投資に関する教材・セミナー・システムの販売において行われた、「確実に稼げる」といった虚偽、または実際とかけ離れた誇大な効果の説明は不法行為にあたるとして、消費者被害回復の特例法に基づき、事業者らに金銭の支払義務があることの確認を求めた事案です。
判断の要点裁判所は、対象となる消費者は相当な数にのぼるとしながら、被害者によって投資の知識や経験、購入に至った経緯が違い、過失相殺をするかどうか、するとしてどの割合にするかを一人ずつ判断する必要があるため、簡易確定手続で債権の有無と額を適切かつ迅速に判断するのは難しい(支配性を欠く)として、訴えを却下しました。その理由の中で、架空の取引を勧誘したわけではなく、商品等の提供が一定程度認められることから、過失相殺をしないで済ませるほど不法行為の違法性が重大とはいえない、とも述べています。
事業者の実務への示唆投資・副業系の教材販売で、誇大な効果の強調は、団体訴訟の形で争われる場合があります。他方、実際に商品・サービスが提供されていたかが、違法性の程度の評価に影響し得ます。訴えが手続的な理由で却下された判決であり、広告が違法だったかを判断したものではありません。控訴の有無と結果は未確認です。
判決を横に並べる:論点ごとの裁判所の判断
連鎖販売・業務提供誘引販売・副業商法に関する裁判例の整理(判断はそれぞれの裁判所のもの)
| 論点 | 判断した裁判所 | 判断の方向 | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 連鎖販売取引の該当性 | 熊本地裁 令和7年12月5日 | 紹介報酬と権利金の組み合わせで連鎖販売取引に当たる。書面不備で20日経過後も解除有効 | 控訴の有無は未確認[5] |
| 仕組みの実態 | さいたま地裁 平成18年7月19日 | 収入の大半が新規加入者の契約金で、実質がネズミ講。契約は公序良俗に反する | 古い下級審判決[6] |
| 無限連鎖講の配当金 | 最高裁 平成26年10月28日 | 破産管財人の請求の事案では、不法原因給付を理由に返還を拒めない | 特商法の判断ではない[7] |
| 業提の広告・書面 | さいたま地裁 平成23年2月2日 | 収入表示は根拠の表示を欠き違反。契約書面の記載漏れもある。ただし命令は裁量権の濫用で取消し | 控訴の有無は未確認[9] |
| 副業の勧誘と取消し | 東京簡裁 平成16年11月15日 | 「確実に稼げる」は断定的判断。取消しを認めた | 少額訴訟の判決[4] |
| 投資教材の誇大な説明 | 東京地裁 令和3年5月14日 | 支配性を欠くとして訴えを却下。商品の提供の有無は違法性の評価に影響し得る | 広告の違法性を判断したものではない[8] |
よくある誤り→正しいやり方:副業・紹介報酬つきの仕組みの設計
判決と処分の公表資料から導かれる注意を、設計上よくある誤りに対比して並べます。特定の事業者や書類を指すものではなく、一般的な書き方の例です。
書き方の例(一般的な例) 副業・紹介報酬つき販売でよくある書き方と、整えた書き方
仕組みの呼び方
理由熊本地裁は、名称が代理店でも、紹介報酬と権利金の組み合わせから連鎖販売取引と判断し、書面不備を理由に20日経過後の解除を認めた
収入例の表示
理由業務提供誘引販売では、特定商取引法施行規則113条2項3号と、特定商取引法54条の2の定め。さいたま地裁は、根拠の表示がない月収表示を違反と認定した
口頭の説明
理由東京簡裁は、口頭の「確実に稼げる」を断定的判断と認めた。マニュアルレベルの設計は勧誘・広告の判例のとおり、処分の判断でも重視される
仕事の紹介の扱い
理由さいたま地裁は、契約書面に業務の回数の記載がないことを55条2項2号の違反とした
書面の交付時期
理由書面が交付されていない・不備があるとして、20日が経過していても解除が有効とされた例がある
手順にすると、次のとおりです。1.仕組みを、「誰が誰を紹介し、誰が何を負担し、誰が何を得るか」の図に書き出す。2.33条1項と51条1項の定義に当てはめる。3.当たるなら、概要書面・契約書面・広告の表示事項を条文の号ごとに点検する。4.収入や実績を示す表示は、裏付け資料を整理して保管する。5.口頭の勧誘も、書面と同じ内容で一致させる。当てはまらない場合でも、消費者契約法による取消しと景品表示法の表示規制は別に残ります。
公的資料からも、この分野の動きは確認できます。国民生活センターによれば、情報商材のPIO-NET相談件数は2023年度が6,256件、2024年度が4,163件、2025年度が2,623件で、副業・投資のノウハウを通信販売で買わせたあと、高額なコンサルやセミナーの契約を勧誘する例が多いとされています。[14]マルチ取引の相談は、2023年度が5,158件、2024年度が4,132件、2025年度が4,003件です。[15]ビジネス講座の相談は、2020年度の1,169件から2025年度の3,551件に増えています。[16]いずれもPIO-NETの件数で、消費生活センター等からの経由相談を含みません。
行政処分でも、違反の型は共通しています。連鎖販売取引では、統括者の名称・勧誘目的の不明示、役務の内容の不告知、断定的判断の提供、概要書面・契約書面の不交付が挙がっています。[12]業務提供誘引販売取引では、広告に特定負担や事業者の住所等を表示しないこと、契約書面の交付義務違反が挙がっています。[13]どの型も、広告・勧誘・書面の三つの層で、事業者の側で防げるものです。
業種サイトでは、導線ごとの書き方を扱っています。投資・副業スクールでは副業スクールと業務提供誘引販売取引、「稼げる」「利益が出た」の表示と消費者契約法、運用実績・バックテスト・勝率の表示ルールを、紹介制度では紹介制度の利用規約を参照してください。
副業・紹介報酬つきの仕組みを点検する項目
- 紹介による報酬があるか。あるなら、後から入る人の負担に由来するかを確かめたか
- 購入・受講料・権利金・登録料など、相手が負担するものを一覧にしたか
- 連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引の定義に当てはめた結果を、記録に残したか
- 収入や実績の表示に、同水準の収入を得ている人が多数を占めることを示す根拠を併記し、裏付け資料を保管しているか
- 勧誘トークに、断定的な表現がないか。書面の説明と一致しているか
- 概要書面と契約書面を、交付の時期どおりに交付し、交付の記録を残しているか
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律33条1項、33条の2、34条1項、37条1項・2項、38条1項2号、40条1項、51条1項、53条、54条、54条の2、55条1項・2項、57条1項、58条1項。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則113条2項3号(旧41条2項3号。2023年6月1日の条番号の付け替えによる)。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 条文消費者契約法4条1項2号・3項8号、7条1項。e-Gov法令検索(asof=2026-10-23)で取得 https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京簡易裁判所(少額訴訟3係) 平成16年11月15日判決(平成16年(少コ)第2715号)。裁判所「裁判例検索」で判決全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/9002/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例熊本地方裁判所民事第2部 令和7年12月5日判決(令和6年(ワ)第19号)。判決全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/95413/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例さいたま地方裁判所第1民事部 平成18年7月19日判決(平成17年(ワ)第1645号)。事案の概要・争点・判断の中心部分を通読(主要部分) https://www.courts.go.jp/hanrei/33528/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成26年10月28日判決(平成24年(受)第2007号、民集68巻8号1325頁)。裁判所「裁判例検索」の詳細ページで判示事項・裁判要旨を確認(要旨のみ) https://www.courts.go.jp/hanrei/84582/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例東京地方裁判所民事第4部 令和3年5月14日判決(平成31年(ワ)第11049号)。事案の概要・多数性・支配性の判断と結論を通読(主要部分) https://www.courts.go.jp/hanrei/90579/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例さいたま地方裁判所第4民事部 平成23年2月2日判決(平成22年(行ウ)第29号)。判決全文を確認(全文) https://www.courts.go.jp/hanrei/82103/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」連鎖販売取引のページ(クーリング・オフ、中途解約、概要書面・契約書面) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/multilevelmarketing/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」業務提供誘引販売取引のページ(クーリング・オフ、概要書面・契約書面、禁止行為) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/businessopportunity/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 連鎖販売取引の行政処分(処分日2023年3月29日、公表2023年3月30日)の公表資料。違反の型のみ使用(事業者名は書かない。条番号は公表資料の表記を現行条文と照合して書いた) https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_transaction_cms203_230330_01.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁 業務提供誘引販売取引の行政処分(処分日2023年5月17日、公表2023年5月18日)の公表ページ。違反の型のみ使用(事業者名は書かない) https://www.caa.go.jp/notice/entry/033261/確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「情報商材」(各種相談の件数や傾向。2026年7月31日更新。PIO-NET件数、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/infoproducts.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「マルチ取引」(各種相談の件数や傾向。2026年7月31日更新。PIO-NET件数、経由相談を除く) https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/multi.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意-広告・勧誘と実際の講座内容が異なる、Web会議での思わぬ勧誘に気をつけましょう-」2026年9月16日公表(HTML本文で確認。PDFのみの記述は未確認) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260916_3.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
「代理店」「パートナー」という名称にすれば、連鎖販売取引には当たりませんか?
名称では決まりません。特定商取引法33条1項は、特定利益を得られるとうたって勧誘し、特定負担を伴う取引をするものを連鎖販売取引と定めています。熊本地方裁判所は、新規代理店の紹介による報酬と権利金300万円の組み合わせから、代理店契約を連鎖販売取引と判断しました。控訴の有無は確認できていないため、その裁判所の判断として読みます。
連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は、どこが違いますか?
連鎖販売取引は、商品の再販売や受託販売、同種役務の提供などをする者を、特定利益を得られるとして誘引する取引です(特定商取引法33条1項)。業務提供誘引販売取引は、商品や役務を利用する業務に従事して得られる業務提供利益を得られるとして誘引する取引です(同法51条1項)。どちらも20日のクーリング・オフがありますが、書面と広告の条文は別です。判定の順番は取引の見分け方で整理しています。
収入例を載せるときに、最低限必要な表示は何ですか?
業務提供誘引販売では、収受し得る金額その他の指標を表示するとき、同水準の業務提供利益を実際に収受している者が多数を占めることを示す数値を表示するなど、見込みを正確に理解できるように、根拠又は説明を表示する必要があります(特定商取引法施行規則113条2項3号)。主務大臣が根拠資料の提出を求めたとき、出さなければ誇大広告とみなされます(特定商取引法54条の2)。
「必ず稼げる」と言っていなくても、断定的判断になりますか?
消費者契約法4条1項2号は、将来の変動が不確実なことがらについて断定的な判断を示すことを、取消しの原因にしています。東京簡易裁判所は、将来得る収入について具体的な金額を示して確実だと言い切る説明を断定的判断と認めました。表現の文言だけでなく、全体として確実だと受け取られる説明かどうかが見られます。個別の説明の評価は、事案ごとに判断されます。
高等裁判所や最高裁判所の判断はありますか?
この調査の範囲では、特定商取引法の連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引の該当性、クーリング・オフを、高等裁判所や最高裁判所が正面から判断した判決は確認できませんでした。最高裁判所の平成26年10月28日判決は無限連鎖講の配当金の返還の事案で、特定商取引法の判断ではありません。確認できない内容は、このサイトに載せていません。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所