特定継続的役務の中途解約:精算金・違約金をめぐる判例の読み方

語学教室などの特定継続的役務提供では、クーリング・オフの期間が過ぎても中途解約ができます。精算の上限と、裁判所が無効とした精算規定を整理します。

トップページ › 特定継続的役務の中途解約:精算金・違約金をめぐる判例の読み方
前払いのポイントを多く買うほど単価が安い料金設計では、解約のときの単価の扱いで、精算規定が無効になることがあります。

このページの要点

  • 特定継続的役務提供では、クーリング・オフの期間が過ぎても、将来に向かって中途解約できる。「中途解約できない」特約は無効になる。
  • 提供済みの役務の対価は、契約時の単価で計算するのが原則とした裁判例がある。最高裁は、契約時より常に高い単価で計算する規定を無効とした。
  • 解約手数料などの上限は、施行令30条・31条と別表第四で役務ごとに決まっている。違約金を書いても、上限を超えて請求できない。
  • 「新契約」と名付けても、実質が特定継続的役務なら規律が及ぶ。教材などの関連商品の精算にも上限がある。

結論:中途解約の精算は、契約時の単価と法定の上限を超えると無効になりうる

このページの結論

誰に当てはまるか
語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室などの特定継続的役務提供(指定された7つの役務)で、前払いや回数・ポイント制の契約を結んでいる事業者。
何をすべきか
中途解約の精算規定が、提供済みの役務の対価を契約時の単価で計算し、解約手数料などを法定の上限の範囲に収めているかを点検する。「中途解約できない」と書かない。
期限
中途解約は、クーリング・オフの8日が過ぎた後も、契約期間中ならいつでもできる。精算の上限は、役務ごとに施行令の別表第四で決まっている。

特定継続的役務提供(エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介の7つの役務を、政令で定める期間を超えて、政令で定める金額を超える対価で提供する契約。用語集)では、利用者は、クーリング・オフの期間を過ぎてからでも、将来に向けて契約を解除(中途解約)できます[1][3]。そのとき事業者が請求できる金額には上限があり、上限を超える精算規定や、中途解約そのものを認めない規定は、無効になります[1]。

この上限は、役務の対価と、解約によって通常生ずる損害の額(施行令で定める額)の合計までです。ところが現場では、「前払いのポイントを多く買うほど単価が安い」という料金設計の場合に、解約時の精算で、単価をどう扱うかが問題になりました。裁判所「裁判例検索」で確認できた、語学教室などの裁判例を、この観点で整理します。

最高裁判所の判決が1件、地方裁判所が2件、簡易裁判所が1件です。最高裁判決は、裁判所サイトの判示事項と裁判要旨の範囲で説明します。下級審の判決は、その裁判所の判断として書き、控訴の有無と結果は確認できたものだけを記載します。個別の事案の見通しを示すものではなく、精算規定と条項を点検する材料です。

  • 最高裁判所は、前払いのポイント制の語学教室で、使用済みポイントの対価を、契約時の単価より常に高くなる単価で計算する精算規定を、特商法49条2項1号の額を超える請求を求めるもので無効とした[5]。
  • 京都地方裁判所と東京地方裁判所も、前払いのときに単価が決まっていた場合は、提供済みの役務の対価は原則としてその単価で計算すべきとし、高い単価を使う規定の効力を制限した[6][7]。
  • 簡易裁判所は、「新契約」と名付けても、実質が語学指導の変更であれば特定継続的役務提供に当たるとし、「中途解約できない」という約款を無効とした[8]。
  • 解約手数料などの法定の上限は、施行令30条・31条と別表第四で役務ごとに確認する。このページの金額の仮の数字は、考え方を示す設例であり、実在の契約ではない。

上限額の一覧は中途解約と損害の上限、7つの役務の期間と金額の早見表は特定継続的役務の早見表で確認できます。

条文:中途解約と、事業者が請求できる額の上限

将来に向かって解除できる

条文の引用特定商取引に関する法律 第49条第1項(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「将来に向かつてその特定継続的役務提供契約の解除を行うことができる。」

解説クーリング・オフ(48条)の期間が過ぎた後でも、特定継続的役務の提供を受ける者は、将来に向かって契約を解除できます。解除に理由は要りません。抜粋の前には、起算の日と、妨害があった場合の例外が書かれています[1]。

請求できる金額の上限

条文の引用特定商取引に関する法律 第49条第2項(柱書と各号)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。」

「当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始後である場合 次の額を合算した額」

「提供された特定継続的役務の対価に相当する額」

「当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」

「当該特定継続的役務提供契約の解除が特定継続的役務の提供開始前である場合 契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額」

解説提供開始後の解除は、「提供された役務の対価」と「通常生ずる損害の額」(施行令で役務ごとに定める上限)の合計までです。開始前は、「契約の締結及び履行のために通常要する費用の額」(同じく政令の額)までです。「損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても」とあるため、契約書に違約金を書いていても、この上限が優先します[1][2]。

役務ごとの政令の額は、特商法施行令30条(提供開始後の通常生ずる損害の額)と31条(開始前の通常要する費用の額)が、別表第四を指す形で定めています[2]。語学・家庭教師・学習塾の行を表にします。

特定継続的役務7業種の要件と中途解約の上限

項と役務期間・金額の要件中途解約の上限(提供開始後)提供開始前の費用の上限詳しいページ
三の項 語学の教授期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四)5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額(施行令30条、別表第四)1万5千円(施行令31条、別表第四)語学教室
四の項 学力の教授・家庭教師型期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四)5万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四)2万円(施行令31条、別表第四)学習塾・家庭教師
五の項 学力の教授・学習塾型期間が2月を超え、かつ金額が5万円を超える(施行令24条1項・2項、別表第四)2万円又は1月分の役務の対価のいずれか低い額(施行令30条、別表第四)1万1千円(施行令31条、別表第四)学習塾・家庭教師

四の項と五の項は、上限の金額が違うため別の行にしています。要件は「期間が政令の期間を超え、かつ金額が5万円を超える」で、いずれも『超える』です(特商法41条1項、施行令24条)。

条文の引用特定商取引に関する法律 第49条第7項e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「前各項の規定に反する特約で特定継続的役務提供受領者等に不利なものは、無効とする。」

解説上限を超える精算規定や、「中途解約はできない」という特約は、この規定により無効になります。契約書や約款に書いてあるかどうかは関係しません[1]。

教材などの関連商品

語学教室などで、役務の提供に際して購入する必要がある教材は、政令で指定された商品(関連商品)に当たる場合があります。語学教室の関連商品は、書籍、音・影像・プログラムを記録した物、ファクシミリ装置とテレビ電話装置です[2]。

関連商品(施行令別表第五)

項と役務関連商品として指定されている商品
三の項 語学の教授書籍、音・影像・プログラムを記録した物、ファクシミリ装置・テレビ電話装置(施行令別表第五第三号)

関連商品のうち、使用・消費で価額が著しく減少するおそれのあるものを使用・消費した場合は解除できない。対象は別表第五第一号イ・ロ及び第二号に限る(事業者が使用・消費させた場合は除く)(特商法48条2項ただし書、同法施行令29条2項)

条文の引用特定商取引に関する法律 第49条第6項第1号(抜粋)e-Gov法令検索(取得日:2026年10月23日)

「当該関連商品が返還された場合 当該関連商品の通常の使用料に相当する額(当該関連商品の販売価格に相当する額から当該関連商品の返還されたときにおける価額を控除した額が通常の使用料に相当する額を超えるときは、その額)」

解説関連商品販売契約を解除したときに、返還された関連商品について請求できる額の上限の考え方です。使用料に相当する額と、販売価格から返還時の価額を引いた額のうち、大きいほうが上限になります。後で見る家庭教師の事案で、裁判所が参考にした規定です[1]。

なお、特商法50条2項は、49条2項、4項、6項の規定が、特定継続的役務または関連商品を割賦販売によって提供または販売するものには適用されないと定めています[1]。この場合の精算の規律は割賦販売法側にあり、分割払いと割賦販売法で扱います。また、消費者庁のQ&Aは、中途解約と返還について、Q13〜Q17で整理しています[4]。

最高裁判所の判決:ポイント制の精算規定の単価

裁判例外国語会話教室の前払いポイント制契約で、使用済みポイントの対価を高い単価で計算する精算規定[5]

裁判所・判決日
最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日(2007年)
事件番号
平成17年(受)第1930号(原審:東京高等裁判所 平成17年7月20日 平成17年(ネ)第1333号。結果:上告棄却。民集61巻3号967頁)
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:要旨のみ(判示事項、裁判要旨、判例集欄。判決書本文の逐語確認は未実施)。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨外国語会話教室の受講契約で、ポイントを前払いで登録し、1ポイントで1回の授業を受ける仕組みでした。登録するポイントが多いほど1ポイントあたりの単価が安く設定されていました。受講を始めた後に契約を解除した受講者が、規定に基づく精算金の返還を求めた事案です。

判断の要点裁判所は、精算規定が、使用したポイント数に、使用ポイント数以下で最も近い登録ポイント数に対応する単価(契約時より高い単価)を掛けて、使用済みポイントの対価を算定するものであったため、契約時の登録ポイント数に対応する単価で計算した額より、常に高い額になると判断しました。そのため、この規定は、特商法49条2項1号に定める額を超える金銭の支払を求めるものであり、無効とされました。

事業者の実務への示唆中途解約の精算で、提供済み役務の対価を契約時の単価で計算しない規定は、法定の上限を超える請求として無効になりうる、という最高裁の判断です。数量割引のあるポイント制・回数券制の講座、スクールでは、解約時の単価の扱いを点検する根拠になります。判決書の本文の逐語は確認できていないため、本ページでは裁判所サイトに掲載された判示事項・裁判要旨の範囲にとどめ、判決文の引用はしません。

下級審の判決:契約時の単価、手数料の上限、新契約の主張

1 契約時の単価で計算するとした例(京都地裁)

裁判例語学教室の150ポイント契約で、消化済みの受講料を最も近いコースの単価で計算する規定[6]

裁判所・判決日
京都地方裁判所 平成18年1月30日(2006年)
事件番号
平成17年(ワ)第784号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨外国語教室の受講契約(150ポイント、レッスン料の総額は約29万円、有効期限3年)を平成13年に結び、平成16年に中途解約した受講者が、既払金の返還を求めた事案です。教室側の規定は、消化済みの受講料を、契約時の単価(2,050円)ではなく、使用ポイント数以下で最も近いコースの単価(3,800円)で計算するものでした。

判断の要点裁判所は、前払金を受け取るときに役務の単価が決まっていた場合、提供済みの役務の対価は、原則としてその契約時の単価で計算すべきだとしました。合理的な理由なく、受講者の負担が増える別の単価を使うことは、実質的に違約金を請求するものであり、特商法49条2項1号の趣旨に反し、49条7項により無効だとしました。事業者の損害や営業上の不利益は、49条2項1号ロ(解約によって通常生ずる損害の額。上限あり)の請求で対処すべきで、数量割引制度の維持や他の受講者との公平は、別の単価を使う合理的な理由にならないとしました。結論として、事業者が取得できる額を契約時の単価で計算し直し、17万6672円の返還を認めました。

事業者の実務への示唆割引制度のある講座の中途解約条項で、割引前の単価に戻して精算する設計は、無効と判断されるリスクが高いと読めます。事業者の損害は、別表第四に定められた上限の範囲で請求する、という整理です。控訴の有無と結果は確認できていません。

2 単価と解約手数料の上限を計算し直した例(東京地裁)

裁判例語学教室のポイント契約で、約款の精算規定による控除の無効が争われた事案[7]

裁判所・判決日
東京地方裁判所 平成17年2月16日(2005年)
事件番号
平成16年(ワ)第25621号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨外国語会話教室に入学し、レッスンのポイント(600ポイントなど)を前払いした受講者が、平成16年に中途解約し、約款の精算規定による控除の無効と、精算金の支払を求めた事案です。

判断の要点裁判所は、前払いのときに単価が決まっていた場合、提供済み役務の対価は、前払いのときの単価で計算するのが原則だとしました。約款が最大で約1.9倍の高い単価を使うことは、中途解約権の行使を必要以上に制約するとして、特商法49条2項と7項により、控除できる額を制限しました。大量購入の悪用の防止、他の受講者との公平、定期券や受信料との類似といった事業者の主張は採りませんでした。中途解約の手数料については、控除後の額の2割が5万円を超えるため、5万円を上限とし、受講者への精算金31万0486円の支払を命じました。

事業者の実務への示唆京都地裁の判断とあわせて、「提供済み役務の対価」の単価と、解約手数料の上限の考え方(残額の2割と5万円の関係)を整理するのに使えます。なお、判決が前提にした金額は当時の政令の定めによるもので、現行の上限は、施行令30条と別表第四(語学は、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額)で確認します。控訴の有無と結果は確認できていません。

3 「新契約」の主張と、書面の交付時期(東京簡裁)

裁判例語学の試験対策指導の契約で、面談後の「新契約」は特定継続的役務に当たらないとする主張[8]

裁判所・判決日
東京簡易裁判所 平成16年9月29日(2004年)
事件番号
平成16年(ハ)第2054号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨外国語の試験対策の指導契約(6か月、約135万円を一括払い)を結んだ受講者が、内容への不満から内容証明郵便で解約を通知した事案です。事業者は、面談の後に新しい契約(留学手続の請負、数学の指導)を結んだ、新契約は特定継続的役務に当たらないから中途解約はできない、と主張しました。

判断の要点裁判所は、新契約とされるものは、原契約の受講内容を変更したもので、語学指導を中心とする特定継続的役務提供契約に当たるとし、「中途解約できない」という約款は特商法49条7項により無効として、中途解約を有効としました。さらに、原契約の契約書面が当初は作成・交付されず、解約を申し出た後に作成・交付されたため、書面を交付した日から8日間の期間は進行しておらず、解約の申出はクーリング・オフと評価できるとして、受講者が請求した範囲(約80万円)を認めました。

事業者の実務への示唆契約の「変更」や「新契約」と名付けるだけでは、特商法の規律を免れません。実質が判断されます。また、契約書面を契約のときに渡していないと、8日の期間が進行しないという点は、書面不備の判例の論点と同じです。

補助:家庭教師派遣と教材(関連商品)を判断した簡易裁判所の例

裁判例家庭教師派遣と教材(約69万円、ローン)の契約で、8日経過後の内容証明の効力[9]

裁判所・判決日
名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日(2003年)
事件番号
平成15年(ハ)第973号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨家庭教師派遣の勧誘で自宅を訪れた社員が、家庭教材(約69万円、ローン)の契約を結ばせ、保証会社が代位弁済したうえで購入者に求償した事案です。購入者は、契約不成立、錯誤・詐欺、クーリング・オフを主張しました。

判断の要点裁判所は、契約の成立を認め、錯誤・詐欺は認めませんでした。契約書の控えにクーリング・オフの手続などが記載されていたため、8日の経過後に出された購入者の内容証明は、クーリング・オフとしては無効としました。ただし、家庭教師派遣は特定継続的役務、教材は関連商品に当たるとし、内容証明に「契約を将来に向かって効力のないものとする意思」が含まれると読んで、中途解約(49条1項・5項)の効力は認め、保証会社の請求を棄却しました。

事業者の実務への示唆クーリング・オフの期間が過ぎても、特定継続的役務の中途解約と関連商品の解除は別に可能であり、通知の文面の趣旨は柔軟に読まれる、という例です。

裁判例家庭教師派遣と教材(約52万円)の割賦契約で、教材の精算[10]

裁判所・判決日
東京簡易裁判所 平成16年12月22日(2004年)
事件番号
平成16年(ハ)第965号
確認した場所と範囲
裁判所「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/search1/index.html)から開く判決の頁(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)

事案の要旨家庭教師派遣契約と教材の売買契約を、信販会社の立替払い(分割払い)で結んだ保護者が、家庭教師の辞退を契機に契約を解除し、教材の返還を希望した事案です。信販会社が、残りの割賦金を請求しました。

判断の要点裁判所は、教材はすべて家庭教師派遣契約の関連商品と認め、保護者の解除の意思表示を認定しました。割賦販売法30条の4により、売買契約の解除を信販会社にも主張できるとし[11]、精算については、特商法49条6項1号を類推適用して、教材の通常の使用料に相当する額と、販売価格から返還時の転売可能な価格を引いた額のうち高い方を基準に、保護者が約23万7000円を支払うべきとしました。

事業者の実務への示唆教材などの関連商品の返品と精算は、使用の実態(使ったか)と返還時の価値で金額が変わります。クレジットを使った場合には、信販会社にも解除を主張される点が事業者の実務に関係します。抗弁の接続の詳しい整理は、抗弁の接続の判例で扱います。

整理表と、設例で考える精算

特定継続的役務の中途解約をめぐる裁判例の整理

裁判所・日付論点判断の要点
最高裁第三小法廷 平成19年4月3日[5]ポイント制の精算単価契約時の単価より常に高い単価で計算する精算規定は、49条2項1号の額を超える請求を求めるもので無効(裁判要旨の範囲)
京都地方裁判所 平成18年1月30日[6]精算単価、割引制度の維持契約時の単価で計算するのが原則。別の単価を使う規定は49条7項により無効。公平や割引制度の維持は合理的な理由にならない
東京地方裁判所 平成17年2月16日[7]単価と手数料の上限前払時の単価が原則。約1.9倍の単価は控除できる額を制限。手数料は上限額を超えない範囲で計算
東京簡易裁判所 平成16年9月29日[8]新契約の主張、書面の交付時期実質が語学指導なら特定継続的役務提供。「中途解約できない」約款は無効。書面が後から交付されたため8日の期間は進行しない
名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日[9]8日経過後の通知、関連商品クーリング・オフとしては無効でも、中途解約(49条1項・5項)の効力は認めた
東京簡易裁判所 平成16年12月22日[10]教材の精算、割賦49条6項1号を類推適用して精算。割賦販売法30条の4により信販会社にも解除を主張できる

判決当時の条番号は、現行の条番号に直しています。控訴・上告の結果は、最高裁判所以外は確認できていないため、「確定した」とは書いていません。

設例:契約時の単価で計算すると、いくらになるか

考え方を確かめるための仮の数字の設例です。実在の契約ではなく、現行の語学の上限(5万円または契約残額の20%のいずれか低い額)を前提にしています[2]。

  1. 100ポイントを20万円で前払いで購入した(契約時の単価は1ポイント2,000円)。10ポイントを使ったところで中途解約した。
  2. 提供済みの役務の対価は、契約時の単価で、10ポイント × 2,000円 = 2万円。
  3. 契約残額は、総額20万円から提供済みの2万円を引いた18万円。その20%は3万6,000円で、5万円より低いため、解約によって通常生ずる損害の額の上限は3万6,000円。
  4. 事業者が請求できる上限は、2万円 + 3万6,000円 = 5万6,000円。実際に請求できる額は、この範囲内の、事業者に生じた損害の額による。
  5. 規定が「10ポイント以下で最も近いコースの単価(仮に3,000円)」で計算すると、10ポイント × 3,000円 = 3万円となり、契約時の単価の2万円を上回る。京都地方裁判所は、このような差を実質的な違約金の請求として扱い、無効としている。

この設例は、料金設計の違いを説明するためのものです。個別の契約について金額を確定するものではありません。

事業者が条項と運用で確かめること

書き方の例(一般的な例) 中途解約の精算規定の、よくある書き方と整えた書き方

中途解約の可否

よくある書き方「契約期間中の中途解約はできません」「一度お支払いいただいた受講料は理由を問わず返金しません」と書く。
整えた書き方「契約期間中でも、将来に向かって解約できます」と明記し、解約の方法と、精算の方法を書く。

理由特商法49条1項が中途解約を認め、49条7項が反する特約を無効としているため。

提供済みの役務の単価

よくある書き方「既に受講したポイントの対価は、受講ポイント数以下で最も近いコースの単価で計算します」と書く。
整えた書き方「既に提供した役務の対価は、契約時に定めた単価(登録ポイント数に対応する単価)で計算します」と書く。

理由最高裁、京都地裁、東京地裁が、契約時の単価より高い単価で計算する規定の効力を否定または制限しているため。

解約手数料

よくある書き方「中途解約の場合、契約残額の30%を解約手数料として申し受けます」と書く。
整えた書き方解約手数料は、施行令の別表第四が定める役務ごとの上限の範囲に収め、その上限を契約書面にも反映する。

理由特商法49条2項と施行令30条・31条が、損害賠償額の予定や違約金の定めがあっても上限を超えて請求できないと定めているため。

新しい契約・変更契約

よくある書き方追加の面談で別の名目の契約を結び、「特定継続的役務ではないので中途解約できない」と整理する。
整えた書き方契約の実質が、7つの役務のどれに当たるかを、契約の名称ではなく内容で確認する。変更契約でも、書面を契約時に交付する。

理由東京簡易裁判所が、新契約と名付けても実質が語学指導なら特定継続的役務提供に当たるとし、書面の交付時期も問題にしたため。

関連商品の精算

よくある書き方「教材は一度お渡ししたら、理由を問わず返品・返金できません」と書く。
整えた書き方関連商品が指定された商品に当たるかを確認し、返還された場合の精算を、49条6項の上限の範囲で書く。

理由関連商品販売契約の解除に伴う請求額にも上限があり、裁判例も使用の実態と返還時の価値で金額を整理したため。

確かめる問いと理由料金設計と条項で確かめる問い

  1. 前払いの料金に、数量割引(ポイント数・回数が多いほど単価が安い)を設けているか

    設けている場合は、解約時の精算で、どの単価を使うかが問題になる。契約時の単価を明記しておく。

  2. 提供期間と総額(入会金、教材費、諸経費、消費税を含む)は、2か月と5万円の要件に当たるか

    要件に当たるかで、中途解約の規律が適用されるかが決まる。四の項と五の項は上限が異なる。

  3. 解約手数料などの上限は、別表第四の役務ごとの額を確認し、契約書面に書いているか

    上限を超える部分は、規定があっても無効になる。

  4. 教材・機器を購入させる場合、関連商品に当たるか。返還・精算の方法を書面に示しているか

    関連商品には、クーリング・オフと中途解約の双方で解除の規律がある。

  5. 分割払い・カード払いを採る場合、決済方法ごとの精算の流れを決めているか

    割賦の場合は精算の規律が異なり、信販会社にも解除を主張されうる。

語学教室のサービス別の判定と書類は語学教室のページ、学習塾・家庭教師は学習塾・家庭教師のページで整理しています。業種サイトでは、学習塾の中途解約と返金、語学教室の書面、オンライン講座の返金と中途解約を取り上げています。相手方との個別のやり取りの見通しを示すものではなく、料金設計と条項の整理にとどまる内容です。

根拠・出典

本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。

  1. 条文特定商取引に関する法律(特商法)49条1項・2項・5項・6項・7項(特定継続的役務提供契約の中途解約、損害賠償額等の制限、関連商品販売契約の解除)、50条2項(割賦販売の場合の適用除外) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
  2. 条文特定商取引に関する法律施行令30条・31条・別表第四(通常生ずる損害の額、契約の締結及び履行のために通常要する費用の額) https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295確認日:2026年10月23日
  3. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」の特定継続的役務提供のページ(7つの役務、中途解約と上限額、関連商品の解除) https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/continuousservices/確認日:2026年10月23日
  4. 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」の特定継続的役務提供に関するQ&A Q13〜Q17(中途解約と返還)、Q22・Q23(教材と添削・電話指導が家庭教師に当たりうること) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/continuousservices.html確認日:2026年10月23日
  5. 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成19年4月3日判決(平成17年(受)第1930号、解約精算金請求事件、上告棄却。原審:東京高等裁判所 平成17年7月20日、平成17年(ネ)第1333号。民集61巻3号967頁)。裁判所「裁判例検索」の詳細頁で判示事項・裁判要旨・判例集欄を確認した(判決書本文は文字が崩れて機械的に読めず、逐語の確認は未実施。要旨の範囲で記載) https://www.courts.go.jp/hanrei/34469/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
  6. 裁判例京都地方裁判所 平成18年1月30日判決(平成17年(ワ)第784号、不当利得返還請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認。控訴の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/6676/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  7. 裁判例東京地方裁判所 平成17年2月16日判決(平成16年(ワ)第25621号、解約精算金請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認。控訴の有無・結果は未確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/5508/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  8. 裁判例東京簡易裁判所 平成16年9月29日判決(平成16年(ハ)第2054号、清算金請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/9009/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  9. 裁判例名古屋簡易裁判所 平成15年10月10日判決(平成15年(ハ)第973号、求償金請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/7607/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  10. 裁判例東京簡易裁判所 平成16年12月22日判決(平成16年(ハ)第965号、立替金請求事件)。裁判所「裁判例検索」で全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/8990/detail4/index.html確認日:2026年10月23日
  11. 条文割賦販売法30条の4(包括信用購入あっせん業者に対する抗弁) https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000159確認日:2026年10月23日

よくあるご質問

クーリング・オフの8日が過ぎたら、もう解約には応じなくてよいのですか。

応じる必要があります。特商法49条1項により、特定継続的役務提供契約では、クーリング・オフの期間を過ぎてからでも、将来に向けて契約を解除できます。「中途解約できない」という特約は、49条7項により無効です。上限を超えない範囲で、提供済み役務の対価と、通常生ずる損害の額を請求できます。

前払いしたポイントを、解約時に高い単価で計算してもよいですか。

最高裁判所は平成19年4月3日の判決で、契約時の単価より常に高くなる単価で使用済みポイントの対価を計算する規定を、特商法49条2項1号の額を超えるものとして無効としました(裁判要旨の範囲)。京都地裁と東京地裁も、前払い時に単価が決まっていた場合は、その単価で計算するのが原則としています。契約時の単価を明記しておくのが基本です。

解約手数料は、いくらまで請求できますか。

役務ごとに施行令の別表第四で上限が決まっています。語学は、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額です。契約書に違約金を書いていても、この上限が優先します(特商法49条2項、施行令30条)。金額は、施行令の現行の条文で確認してください。

契約内容を変更して「新しい契約」にすれば、中途解約を断れますか。

名称では決まりません。東京簡易裁判所は平成16年9月29日の判決で、新契約とされたものが原契約の内容を変更したもので語学指導を中心とするとして、特定継続的役務提供契約に当たり、「中途解約できない」約款は無効としました。契約の実質で判断され、変更契約でも書面の交付時期が問題になります。

教材は、使っていたら返品・返金を断れますか。

関連商品に当たる場合、使用の実態と返還時の価値で金額が決まります。特商法49条6項1号は、返還された関連商品について、通常の使用料相当額(販売価格から返還時の価額を差し引いた金額のほうが大きいときはその額)を上限とします。一律に断ることはできません。クーリング・オフでの扱いは、48条2項と施行令29条の使用・消費の規定を確認してください。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

料金は書類ごとの定額です(税込):契約書 1通15,000円/利用規約+プライバシーポリシー 2点で23,000円/特定商取引法に基づく表記 11,000円 料金表を見る

詳しい内容を見る

契約書面・規約・特定商取引法に基づく表記の作成やレビューをご検討の方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「事業者のためのクーリング・オフ・特商法ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成と、お手元の書類の修正・加筆だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る