このページの要点
- 特商法に基づく表記が義務になるのは通信販売で、根拠は法11条と施行規則23条〜25条です。訪問販売などの契約書面とは別のものです。
- 表示事項は、価格、支払時期、引渡し・提供時期、申込み期間、撤回・解除の条件に加え、事業者の氏名・住所・電話番号、追加費用、契約不適合責任、継続契約の条件などです。
- 時期は期間または期限で、送料は金額で書きます。請求による書面交付を表示しても、返品特約の内容など省略できない事項があります。
- 屋号だけ、私書箱だけでは事業者の特定になりません。表記・LP・最終確認画面・規約の返金や解約の条件は、同じ内容にそろえます。
結論:通信販売の広告には、11条と規則23条の事項を、見やすく書く
このページの結論
- 誰に当てはまるか
- 通信販売で、商品・特定権利を売る事業者と、役務(講座、サービス、会員制など)を提供する事業者。ウェブサイト、ランディングページ、SNSの投稿、メールなどの広告に載せる事項です。
- 何をすべきか
- 11条1号から5号の事項(価格、支払、引渡し・提供の時期、申込み期間、撤回・解除)と、規則23条の事項(事業者の氏名・住所・電話番号、責任者、追加負担、契約不適合責任ほか)を、広告に表示する。
- 期限
- 広告を出す時点までに揃えます。事項を一部省く場合は、広告に「請求により書面を交付する」旨を表示しますが、返品特約の内容など省けない事項があります。
「特商法に基づく表記」と呼ばれるページや欄は、特定商取引法(以下「特商法」)11条が通信販売の広告に義務づけている表示事項を、一か所にまとめたものです。法律そのものに「特商法表記」という名前の書類があるのではなく、広告に表示する事項を実務上こう呼んでいます。訪問販売や電話勧誘販売で交付する契約書面や概要書面とは、別のものです。
表示事項は、法律の11条1号から6号に並び、6号が主務省令に委ねています。委ねられた事項が、特商法施行規則23条1号から10号です。さらに、時期や金額の書き方を規則24条が、一部を省略する場合を規則25条が定めています[1][2]。このページは、この三つの条文を一覧にし、事項の欠けを探しやすくするためのものです。
通信販売の相談は、全国で多く寄せられています。2025年度(PIO-NET、経由相談を除く)は382,721件で、販売購入形態別の38.0%でした[10]。表示が欠けた広告は、返品、解約、請求額をめぐる食い違いの出発点になります。
この書類が必要になる取引の一覧
特商法に基づく表記(広告の表示事項)が必要になる取引の一覧
| 取引の類型 | 要否 | 条件・補足 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 訪問販売 | 不要 | — | — |
| 電話勧誘販売 | 不要 | — | — |
| 通信販売 | 要 | 広告に表示(請求により書面等を交付する旨を表示すれば一部を省略できる) | 特商法11条、同法施行規則23条・24条 |
| 連鎖販売取引 | 条件付き | 広告をする場合の表示事項 | 特商法35条 |
| 特定継続的役務提供 | 不要 | 表示事項の定めはない(誇大広告等は禁止) | 特商法43条 |
| 業務提供誘引販売取引 | 条件付き | 広告をする場合の表示事項 | 特商法53条 |
| 訪問購入 | 不要 | — | — |
要=法令で必要/条件付き=場合により必要/任意=法令上の義務はないが実務上置く/不要=不要。
表のとおり、特商法に基づく表記が義務になるのは通信販売です。連鎖販売取引(35条)や業務提供誘引販売取引(53条)にも広告の表示事項の定めがありますが、事項の中身が違います。また、特定継続的役務提供(43条)には誇大広告等の禁止はあっても、表示事項を一覧にした条文はありません。取引の類型の判定は30秒診断の結果と7類型の早見表で先に確認します。
どの広告に、誰が表示するのか
表示の義務を負うのは、通信販売をする販売業者と役務提供事業者です。個人事業主も含まれます。商品だけでなく、役務の通信販売でも同じ11条が適用されます。消費者庁のQ&Aは、有償の情報配信も役務の提供として対象になり、インターネット通販では商品を紹介するランディングページなども広告にあたるとしています[3]。通信販売の全体像は、消費者庁の特定商取引法ガイドの通信販売のページでも確認できます[6]。
「販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。」
「ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。」
広告と申込みの画面は、別のものです。申込みの直前の画面(最終確認画面)に、分量や価格などを表示する義務は12条の6にあり、広告の表示事項とは別に課されています。申込みの画面の側は、申込みフォーム・最終確認画面の表示事項と必要な取引に整理しました。消費者庁のガイドラインも、広告で11条に従って表示しても、それで12条の6の表示義務を果たしたことにはならないと述べています[5]。
導線が通信販売かどうかも、先に確かめます。フォームだけで申込みを受けるなら通信販売ですが、無料相談の通話やZoom面談から申し込むなら、電話勧誘販売などの別の類型になることがあります。その場合、表記に「通信販売につきクーリング・オフはありません」と書いても、法定書面とクーリング・オフの規定の適用は外れません。通信販売にクーリング・オフがない意味と返品特約で、類型の考え方を整理しています。
表示事項を、条文の号ごとに一覧にする
11条1号から5号と、委任された規則23条1号から10号を、順に並べます。「書く要点」は、条文の文言と消費者庁のQ&Aの趣旨を、実務の言葉に直したものです。
法11条1号〜5号の表示事項
| 号 | 表示する事項 | 書く要点 | 表示のしかた(規則24条) |
|---|---|---|---|
| 1号 | 商品・権利の販売価格、役務の対価(送料が販売価格に含まれないときは、販売価格と送料) | 実際に取引する価格を書く。定価と称していても実売価格と異なれば不適切(Q&A Q4) | 送料は金額で表示する(1号) |
| 2号 | 代金・対価の支払の時期と方法 | 前払・後払・分割、決済手段、支払の期限を書く | — |
| 3号 | 商品の引渡時期、権利の移転時期、役務の提供時期 | いつ届くか、いつ提供を始めるかを書く | 期間または期限で表示する(2号)。Q&Aでは「直ちに」は可、「入荷次第」は不可 |
| 4号 | 申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨と内容 | 期間限定販売、申込みの締切りがあれば書く | 個数限定は、期間の定めには当たらないとガイドラインは整理 |
| 5号 | 申込みの撤回・解除に関する事項(返品特約があればその内容) | 返品の可否、期間、条件、送料、解約の条件を書く | 見やすい箇所に明瞭に判読できるように表示する(3号) |
出典:特商法11条1号〜5号、特商法施行規則24条、消費者庁Q&A、申込み段階の表示のガイドライン(確認日:2026年10月23日)。
「一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)」
「二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法」
「三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期」
「四 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約に係る申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨及びその内容」
規則23条1号〜10号の表示事項(法11条6号)
| 号 | 表示する事項 | 表示が必要になる場面 |
|---|---|---|
| 1号 | 事業者の氏名または名称、住所、電話番号 | すべての通信販売 |
| 2号 | 法人が電子的な方法で広告するときの、代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名 | 法人がウェブサイトなどで広告する場合 |
| 3号 | 外国法人または外国に住所を有する個人が国内に事務所等を有するときの、その所在場所と電話番号 | 国内に事務所等がある外国の事業者の場合 |
| 4号 | 販売価格以外に購入者が負担する金銭があるときの、その内容と額 | 代引手数料、梱包料、設置費用、年会費など |
| 5号 | 契約不適合の場合の販売業者の責任についての定めがあるときの、その内容 | 責任を免除・制限する定めがある場合 |
| 6号 | プログラムを記録した物の販売、映画・音楽などを鑑賞させる役務、プログラムを記録させる役務のときの、利用に必要な電子計算機の仕様と性能などの条件 | ソフトウェア、動画配信、アプリなどを提供する場合 |
| 7号 | 2回以上継続して契約する必要があるときの、その旨と金額、契約期間その他の条件 | 定期購入、最低利用期間付きのサービスなど |
| 8号 | 販売数量の制限など、特別の販売条件・提供条件があるときの、その内容 | 1人1点まで、会員限定、初回限定など |
| 9号 | 一部を表示せず書面・電磁的記録を請求した人に費用を負担させるときの、その額 | 請求による交付を有料にする場合 |
| 10号 | 通信販売電子メール広告をするときの、事業者の電子メールアドレス | メールで広告を送る場合 |
出典:特商法施行規則23条1号〜10号(取得日:2026年10月23日)。「表示が必要になる場面」は条文の文言を要約したもの。
「一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号」
「二 販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名」
「四 法第十一条第一号に定める金銭以外に購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額」
「七 商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約を二回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び金額、契約期間その他の販売条件又は提供条件」
3号のように、条文を読んで「自社には関係がない」と判断できる号もあります。大切なのは、各号を一度ずつ当てはめ、該当しない号を記録に残すことです。後から事業内容が変わって、たとえば動画配信を始めたときに、6号が突然必要になります。
表示のしかた:期間・金額・見やすさと、請求による書面の交付
規則24条は、表示のしかたを三つ定めています。送料は金額で表示すること、引渡時期や提供時期は期間または期限で表示すること、申込みの撤回・解除に関する事項は見やすい箇所に明瞭に判読できるように表示することです[2]。
「一 商品の送料を表示するときは、金額をもつて表示すること。」
「二 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期は期間又は期限をもつて表示すること。」
一部の事項を省略する場合(請求により書面を交付する旨の表示)
11条のただし書は、広告に「請求があれば、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付する」旨(または電磁的記録を遅滞なく提供する旨)を表示すれば、事項の一部を表示しないことができるとしています。広告の紙面が限られる場合のための規定です。ただし、何でも省けるわけではありません。
規則25条は、省略できる範囲を定めます。購入者が負担する金銭を全部表示しないときは、11条1号から3号、5号、6号の事項の一部を省略できます。購入者が負担する金銭を全部表示するときは、2号、3号、5号、6号の一部を省略できます。いずれの場合も、規則23条6号から10号の事項(2項では4号も)と、返品特約がある場合の返品の可否、期間その他の条件、引取りや返還の費用の負担に係る事項は、省略できません。また、負担する金銭を全部表示する場合でも、支払が前払であれば支払時期、申込みを受けた後に遅滞なく商品を送付・役務を提供しない場合は引渡時期・提供時期、契約不適合の責任を負わない場合はその責任に関する事項は、省略できません(2項ただし書)[2]。
この仕組みは、LPや通常のウェブショップでは使いにくいことに注意が必要です。広告のたびに「請求に応じて交付する」体制を維持し、請求から遅滞なく送ることが求められます。表示事項を省いたうえで体制が整っていなければ、表示義務の違反になります。事項を最初から全部書く設計のほうが、後の管理が単純です。
事業者の氏名・住所・電話番号と責任者
表記の中で、点検の件数が多いのが、事業者の特定に関する事項です。消費者庁のQ&Aは、個人事業者にも法人にも氏名または名称の表示を求め、屋号、通称、サイト名だけの表示は認められないとしています。個人なら戸籍上の氏名、法人なら登記上の名称が必要だという整理です[3]。
事業者の特定に関する事項の整理(Q&Aの趣旨)
| 事項 | 書き方の要点 | よくある例 |
|---|---|---|
| 氏名または名称 | 個人は氏名、法人は登記上の名称。屋号だけは不可。法人がウェブ等で広告するときは、代表者または通信販売業務の責任者の氏名も表示する(責任者は代表権がなくてもよい) | 「〇〇ショップ」とだけ書き、事業者名がない |
| 住所 | 現在の活動場所。私書箱は住所の表示にならない | 私書箱、所在地の抜けた地名だけの表示 |
| 電話番号 | 確実に連絡が取れる番号。営業時間外は留守番電話の利用が認められる | つながらない番号、メッセージ用の番号 |
| バーチャルオフィス等 | 取引がそのプラットフォーム上で行われ、連絡先としての使用に双方の合意があり、運営者が現住所と本人名義の電話番号を把握して確実に連絡できる場合などの要件を満たせば認められる | 契約の実態の確認なしに、住所だけを借りる |
| 請求による開示 | 請求があれば遅滞なく提供する体制があれば、氏名・住所・電話番号を省略できる。その場合、広告に請求により交付する旨を表示する | 表示も体制もないまま省略する |
出典:消費者庁Q&A(Q15〜Q20)。Q&Aの要旨を自分の言葉でまとめた。個別の判断は、条文(規則23条1号・2号、25条)と合わせて確認する。
前払式の通信販売では、承諾や代金受領の通知(13条)に電話番号が必要になる点も、見落としやすい箇所です。前払いで受け付ける場合は、広告の表示と通知の様式の両方を点検します。
個人情報の保護を理由に、住所や電話番号の表示をためらう事業者もいます。その場合の選択肢は、請求に応じて開示する体制を整える方法と、要件を満たす連絡先を使う方法の二つがあります。どちらも、Q&Aの要件を満たしていなければ、表示義務を果たしたことになりません。屋号だけの表示は、どちらの方法にも含まれません。
表記と、広告・画面・規約のずれが招くこと
表記に正しい事項を書いても、LPの文言、最終確認画面、規約が別の内容であれば、問題は消えません。LPで「いつでも解約OK」と書き、表記や規約で解約に条件を付けると、広告の表示と実際の条件の食い違いが、誇大広告等の禁止(12条)の論点になります。12条は、解約に関する事項を含めて、著しく事実に相違する表示などを禁止しています[1]。
広告の表示を裏付ける資料も求められます。特商法12条の2は、主務大臣が、その表示が12条(誇大広告等)にあたるかを調べるため、期限を決めて、表示を裏づける合理的な根拠の資料を出すよう求められる、と定めています。期限内に出さなければ、14条1項(指示)と15条1項(業務の停止等)との関係では、その表示は12条の表示にあたるものとみなされる、という仕組みです[1]。景品表示法の同種の仕組みについて、最高裁判所は合憲との判断を示しています。
裁判例景品表示法7条2項(合理的な根拠を示す資料の提出)の合憲性[9]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日
- 事件番号
- 令和3年(行ツ)第33号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/hanrei/90989/detail2/index.html の判決文(確認の範囲:全文。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨景品表示法に基づく措置命令に対し、事業者が取消しを求めた事案。表示の裏付けとなる資料を期間内に提出しなかったときに、優良誤認表示とみなす規定の憲法適合性が争われた。
判断の要点最高裁判所は、この規定は憲法に違反しないと判断した。理由の骨子は、表示を行う事業者は表示の裏づけとなる合理的な根拠をあらかじめ持っているはずであること、みなされるのは指定の期間内に合理的な根拠を客観的に示す資料を出せなかった場合だけであり、適用の範囲が合理的に絞られていること、である。判決は規定の合憲性の判断であり、個々の表示が違反かどうかを判断したものではない。
事業者の実務への示唆LPや表記に「満足度」「実績」「効果」を書く事業者は、数字や効果の裏付け資料を手元に備えておく必要がある。特商法にも12条の2という同じ仕組みの規定があるが、同条の合憲性を直接判断した判決ではない。
裁判例広告やチラシの「勧誘」該当性(消費者契約法の差止請求)[8]
- 裁判所・判決日
- 最高裁判所第三小法廷 平成29年1月24日
- 事件番号
- 平成28年(受)第1050号
- 確認した場所と範囲
- 裁判所「裁判例検索」https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html の判示事項・裁判要旨(確認の範囲:要旨のみ。確認日:2026年10月23日)
事案の要旨事業者が不特定多数の消費者に向けて配布する広告が、消費者契約法12条の差止請求の前提となる「勧誘」に当たるかが争われた事案。
判断の要点最高裁判所は、事業者等の働きかけが不特定多数の消費者に向けたものであっても、それだけで、消費者契約法12条1項・2項の「勧誘」にあたらないとは言えない、と判断した。
事業者の実務への示唆ウェブサイトやLPのような広告が、個別の申込みの勧誘とは別とは限らない。広告に書いた条件と、表記・規約・最終確認画面の内容が違うと、広告の記載が後の紛争で問題にされる可能性がある。この判決は差止請求の「勧誘」の判断で、個別の取消権に当然に当てはまるとは限らない。
行政処分の例では、消費者庁が2026年3月に、定期購入の通信販売を行う複数の事業者に対し、誇大広告(12条)などを理由に業務停止命令と指示を出しています。申込みの画面での誤認表示(12条の6第2項)も違反の型に挙がっています。公表ページには違反内容の詳細がなく、違反の型は消費者庁の執行状況の一覧による記載です[7]。罰則の面では、12条の誇大広告等に当たる表示をした者は、法72条1項1号により100万円以下の罰金の対象になります[1]。
法14条1項は、11条、12条、12条の6などに違反した場合に、主務大臣が是正のための措置を指示できるとし、15条1項は、さらに業務の停止を命じることができるとしています。個別の処分の判断は主務大臣が行います。表記に欠けがあり、それが販売条件の誤認につながるおそれがある場合に、これらの規定が問題になります。
よくある漏れ→正しいやり方
特商法に基づく表記の漏れを、八つ取り上げます。並びは、論点が出やすい順です。直し方は、条文の号に結び付けて書いてあります。
書き方の例(一般的な例) 特商法に基づく表記
返金・キャンセルの条件
理由5号の事項は、返品特約があればその内容を含めて表示する(11条5号、規則24条3号)。解約料の定めは消費者契約法9条1項1号・10条の点検の対象にもなる
導線との矛盾
理由通信販売の表示は、通話・会場の導線から申し込んだ取引には当てはまらない。類型の判定が先
広告・規約・画面の食い違い
理由広告に書いた条件と実際の条件の食い違いは、12条の誇大広告等と12条の6第2項の誤認表示の論点にもなる
住所・電話番号・事業者名
理由規則23条1号。Q&Aは、屋号や通称だけの表示と私書箱を、要件を満たす表示としていない
支払時期と提供時期
理由11条2号・3号、規則24条2号
そのほかの規則23条の事項
理由規則23条4号〜8号。定期購入やソフトウェアの提供では特に漏れやすい
未記入欄・指示文
理由表示事項が表示されていない状態となり、11条の義務を満たさない
責任者・代表者
理由規則23条2号。責任者は代表権がなくてもよい(Q&A)
これらの漏れのうち、最初の三つは、表記の書き方というより、事業の設計と表示の整合の問題です。表記だけを直しても、LPや規約が別の内容であれば、食い違いが残ります。一度の見直しで、表記、LP、最終確認画面、規約を同時に点検する進め方が効率的です。
確かめる問いと理由表記を作る・見直すときに確かめること
導線は、フォームだけか。通話、LINE通話、Web会議、会場の導線はあるか
導線によって類型が変わり、表記だけでは足りなくなる場合があるためです。
商品と役務の両方を売っているか。それぞれの返品・解約の条件は違うか
商品は15条の3の返品の規定があり、役務は解約の条件を自社で表示する必要があるためです。
販売価格以外にかかる費用(手数料、年会費、更新料など)はあるか
規則23条4号で、内容と額の表示が必要になるためです。
定期購入や最低利用期間はあるか
規則23条7号で、金額と契約期間などの条件を広告の段階から表示するためです。
表記・LP・最終確認画面・規約の改訂を、誰が、いつ、まとめて点検するか
不一致の多くは、更新の担当が別々であることから生じるためです。
確かめた結果は、表記の文面と、公開前の点検の手順に反映します。
業種サイトには、表記の書き方の整理があります。全体の地図は特商法表記の全体地図、事業者の情報の書き方は事業者情報の書き方、価格と費用の書き方は価格・費用の表示にあります。ネットショップの表記はネットショップの特商法表記にも整理しています。広告全般の表示は広告・LPの「いつでも解約OK」とクーリング・オフ表示、サイトの全体はネットショップのサービス別ページにあります。
この書類の作成・点検は、事務所で承ります。料金と進め方
根拠・出典
本文の[1][2]などの番号は、この一覧の番号に対応しています。
- 条文特定商取引に関する法律11条(通信販売についての広告)、12条(誇大広告等の禁止)、12条の2(合理的な根拠を示す資料の提出)、14条1項(指示)、15条1項(業務の停止等)、72条1項1号(罰金) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057確認日:2026年10月23日
- 条文特定商取引に関する法律施行規則23条(法11条6号の事項)、24条(表示の方法)、25条(請求による書面等の交付と一部の省略) https://laws.e-gov.go.jp/law/351M50000400089確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売広告Q&A(Q3〜Q11、Q15〜Q21) https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/advertising.html確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」(通達別添7)。令和6年11月19日付通達に添付 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_230421_7.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」(通達別添9)。令和6年11月19日付通達に添付 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/specified_commercial_transactions/assets/consumer_transaction_cms101_2401119_03.pdf確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁「特定商取引法ガイド」通信販売のページ https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/確認日:2026年10月23日
- 消費者庁消費者庁の行政処分の公表(2026年3月23日・26日付の通信販売の定期購入の事案。違反の型は消費者庁の執行状況一覧の記載による) https://www.caa.go.jp/notice/entry/045634/確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 平成29年1月24日判決(平成28年(受)第1050号)。裁判所「裁判例検索」で判示事項・裁判要旨を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/86454/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 裁判例最高裁判所第三小法廷 令和4年3月8日判決(令和3年(行ツ)第33号)。裁判所「裁判例検索」で判決文の全文を確認 https://www.courts.go.jp/hanrei/90989/detail2/index.html確認日:2026年10月23日
- 国民生活センター国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況-PIO-NETより-」(2026年8月5日公表。経由相談を除く件数) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html確認日:2026年10月23日
よくあるご質問
「特商法に基づく表記」のページを作れば、広告の表示義務は果たせますか。
ページを作るだけでは足りません。11条は広告に事項を表示することを求めており、広告からそのページへ容易にたどれる設計が前提です。広告に書いた条件と表記が違うときは、表記を整えても食い違いが残ります。別ページにまとめる場合も、返品特約の内容など、省略できない事項があります。
住所や電話番号を公開したくありません。省略できますか。
請求があれば遅滞なく開示する体制を整え、広告にその旨を表示すれば、氏名・住所・電話番号を省略できる場合があります(11条ただし書、規則25条)。バーチャルオフィス等の住所は、取引がそのプラットフォーム上で行われること、双方の合意、運営者が現住所と本人名義の電話番号を把握して確実に連絡できることなどの要件を満たす場合に認められるとQ&Aは述べています。私書箱は住所の表示にならず、屋号だけの表示も認められません。
役務(講座やサービス)の通信販売にも、表記は必要ですか。
必要です。11条は商品・特定権利と役務の両方を対象にしています。役務には15条の3の返品の規定は働きませんが、解約・返金の条件は、5号の「申込みの撤回又は解除に関する事項」として表示します。価格、支払時期、提供時期、継続契約の条件なども、同じように表示します。
引渡時期は「順次発送」では足りませんか。
足りません。規則24条2号は、引渡時期または提供時期を期間または期限で表示することを求めています。消費者庁のQ&Aは、「入荷次第」や「入金確認後に発送」だけでは時期を示したことにならないとしています。「注文後〇営業日以内に発送」のように書きます。
表記を更新したら、規約やLPも直す必要がありますか。
表記、LP、最終確認画面、規約の返金・解約・価格・提供時期の内容は、一致させておくのが安全です。広告に書いた条件と実際の条件が食い違うと、誇大広告等の禁止(12条)や申込み画面の誤認表示の禁止(12条の6第2項)の論点になりえます。更新のたびに、同時に点検します。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、勧誘された場所や手段、申込みの方法、役務の内容と期間・金額、購入者の属性によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 特定商取引法ガイド / 国民生活センター / 裁判所